検品と検針はいずれも、商品を顧客に届ける際に重要な工程です。効率的に行うことで、同じ時間でより多くの商品を配送できるようになります。
本記事では、検品と検針の違いや重要性について詳しく紹介します。さらに、アウトソーシングを利用するメリットについても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
検品と検針の違いとは?
「検品」と「検針」は、製品が適切な状態か確かめるという意味で使われています。
いずれも商品管理において重要な工程ですが、目的や作業内容が異なります。
ここでは、検品と検針の違いについて解説します。
検品とは
検品とは、検査を行い内容に誤りがないか確認する業務です。
具体的には、次の内容を検査します。
- 品番
- 数量
- 規格
- 不良品や欠陥品が含まれていないか
検品漏れがあると、出荷ミスや納期の遅延につながり、業務に滞りを見せる恐れがあります。
「注文していない商品が届いた」「不良品が届いた」といったクレームが来ると、責任の所在問題に発展します。
クレームが多いと企業への評価や顧客満足度の低下につながり、売上が下がる可能性も高いです。
高い精度で検品作業を行い、業務の停滞やクレームを防ぐことが重要です。
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検針には2つの意味がある
「検針」にはアパレルにおける「商品検針」と、光熱費を算出するための「メーター検針」の2通りの意味があります。
文脈に応じて、どちらの意味が利用されているか判断しましょう。
なお本記事では、以下の見出しにおいてアパレルの「商品検針」について取り扱います。
アパレルにおける検針
商品の中に折れた針や金属片が混入していないか、安全性を確保することを指します。
検針はアパレルや寝具などの体に触れる商品に対し行われる場合が多いです。
たとえば、
- ミシン針
- マチ針
- 縫い針
といった針が検針対象となります。
目視で発見するのは困難なため、金属をチェックする「検針機」を用いて検針を行う場合が多いです。
光熱費における検針
光熱費における検針は、「メーター検針」とも呼ばれています。
電気、ガス、水道などの使用量を測定し、料金を算出するために必要なデータを収集することを指します。
次の3ステップで検針を行います。
- 設置されたメーターの値を読み取る
- 読み取った値を記録し、使用量を計算する
- 使用量に基づいて料金を算出する
主に月1回行われ、1か月ごとの使用料を算出することが多いです。
検品の流れ
入荷検品と出荷検品の2手順にて行われる場合が多いです。ここではそれぞれの検品の流れについて解説します。
入荷検品
入荷検品とは、倉庫に商品が届いた際に行う作業です。商品と納品書、入荷伝票を照らし合わせることで、初期不良の有無や数量、品番に問題がないか確認します。
入荷検品を適切に行わない場合、次のようなトラブルが発生するでしょう。
- 在庫台帳の数と実際の在庫数のズレ
- 在庫切れ
- 無駄な作業の発生
- 商品破損に気づかない
- 納期遅延
入荷検品を正確に行うことで、納品ミスが見つかってもすぐに対応できます。
入荷検品が終わった商品は、在庫台帳と呼ばれるリストにデータを入力し、指定の場所に保管します。
出荷検品
商品を出荷する前に、出荷検品を行います。
倉庫からピッキングした商品について注文書と現品を比べ、状態を確認します。
- 数量や品番が正しいか
- 汚損や破損が起きていないか
- 欠陥がないか
出荷検品で問題がなければ、次の3ステップで商品を出荷します。
- 梱包
- 送り状の貼り付け
- 出荷
出荷検品でミスがあると誤出荷やトラブルにつながるため、正確に行うことが重要です。
検品作業のポイント
検品ミスを防ぐ方法には、次の3つがあります。
- 検品の手順やルールの明確化
- 機器やシステムの導入
- アウトソーシングの利用
順番に解説します。
検品手順を明確にする
検品の手順やルールを明確にし検品スタッフに徹底させることで、ミスを軽減できます。
手順やルールの明確化には次の方法があります。
- 検品のマニュアルを作成
- 倉庫内の整理整頓
- 作業動線の確保
- 保管方法の工夫
また、検品を行いやすい環境を作ることで、効率が上がりミスの軽減につながります。
機器やシステムの導入
検品作業は手間がかかり、目視と手作業で行うと検品スタッフの負担が大きいです。
- 在庫管理表の記入
- 商品番号の目視確認
- 商品数のカウント
これらの作業はミスが発生しやすいです。デジタル化することで、ミスが発生しにくくなるため、品質向上につながります。
なお、検品作業のデジタル化に役立つシステムの例は次のとおりです。
- 在庫管理システム(WMS)
- バーコードリーダー
- ハンディスキャナー
- マテハン機器
- 検品用のロボットやドローン
機器を導入することで、検品時間の短縮や人件費の削減ができます。
アウトソーシングの利用
アウトソーシング企業では、検品について専門的な教育を受けており、検品ミスを減らすためのノウハウも持っています。
企業全体でヒューマンエラー対策を徹底しているため、自社で検品スタッフを雇用するよりも効率的にミスを減らせます。
さらに、入荷・出荷時の破損や商品不良にもすぐに気づけ、納期の遅れや商品の品質低下を防げます。
適切な商品発送により、企業に対する信頼度が高まるためリピート購入や売上増加にもつながります。
アパレルにおける検針方法
目視や手作業による検針では、生産性と品質に限界があります。一般的には、検針機を活用して検針することが多いです。
検針機は主に次の3種類が使われています。
- コンベア検針機
- X線検査機
- 金属探知機
ここでは、それぞれの検針方法について解説します。
コンベア検針機
コンベア検針機とは、商品をベルトコンベアに乗せ、搬送しながら連続的に検針を行う機械です。
検針に問題がなければベルトコンベアは動き続け、商品を梱包スペースや出荷スペースにそのまま移動させます。
異物を検知すると、アラーム音を鳴らし自動的にコンベアが停止します。そのため、誤って出荷スペースに進むことがありません。
X線検査機
X線検査機は、X線を利用して商品の内部を透視し、異物の有無を検査する機械です。
磁気に反応する可能性がある商品や、ベルトコンベアを通らないような商品を検針する際に用いられることが多いです。
また、金属だけではなく、ガラスや石などの非金属異物も検出できます。
一部の機械では、白黒画像を目視するだけでなく、色を反転して見落としを防止する機能が搭載されています。
金属探知機
金属探知機は、電磁誘導を利用して金属異物を検出する機械です。
小さな金属片でも検出可能で、X線検査機に比べ導入コストが低いです。
金属探知機であれば、鉄やアルミ、ステンレスなどあらゆる金属を検知できます。
アパレルの検針で利用する場合、針に使用されている鉄のみに反応する特別な検針機を用いることが多いです。
検針を行わないと大きなトラブルにつながる恐れがある
日本には「製造部責任法(PL法)」と呼ばれる法律があります。
製造物の欠陥によりケガをしたり、財産に傷が付いたりした場合、製造責任者が損害賠償を負うと定められています。
検針を怠ることで製品の不良率が増加し、返品やリコールなどの経済的損失が発生する可能性も高いです。
特にPL法に違反したトラブルが発生した場合、賠償リスクが高まります。
製造メーカーとしての信用問題に発展すると、顧客や取引先に信頼してもらえず、売上の低下につながるでしょう。
アパレルにおける検針以外の検品事項
アパレル製品を出荷するまでに、検針以外にも検査が存在します。
ここでは4つの検査について解説します。
- 規格検査
- 寸法検査
- 外観検査
- 縫製検査
規格検査
規格検査とは、製品が規格や仕様に適合しているか確認する検査です。
主に次の項目を確認します。
- サイズ
- 原料組成
- 原産国
- 洗濯方法といった取り扱い内容
- 製品のデザインや配色
- 耐久性
- 安全基準
寸法検査
寸法検査とは、製品の寸法やサイズが仕様に合致しているか確認する検査です。
主に次の項目を検査します。
- 仕様書のとおりに各部の寸法が仕上がっているか
- 脇目の曲がりが適切か
- 縫い目がまっすぐになっているか
- 襟まわりの生地が伸びていないか
- 製品の縫製やカッティングは正確か
ミシンの不具合や作業員のミスに気づかないまま出荷すると、不良品の流通が考えられます。
外観検査
外観検査とは、製品の外観や仕上がりが品質基準に適合しているか確認する検査です。
主に以下のポイントを検査します。
- 製品に傷や汚れがない
- 色ムラ、色褪せがない
- 縫製の乱れがない
- 異臭がない
- 生地の表裏が正しい
- ステッチの形状が正しい
- 縫い糸の配色が正しい
- 柄のズレがない
- 染料の割れやベタつきがない
- ラベルやボタンの付属品が正しく取り付けられている
検査項目が多く、ベテランの検査員でも見逃す場合があります。
複数の検査員でダブルチェックすることで、ミスを減らす工夫を行うケースが多いです。
縫製検査
縫製検査とは、商品の縫製品質や縫製技術が適切であるか確認する検査です。
主に以下のポイントを検査します。
- 縫い糸の切れがないか
- 縫い外れがないか
- 目飛びがないか
- 縫い目の強度は適切か
- 縫製のズレがないか
- ボタンやホックが正常に取り付けられるか
- 糸始末が適切にできているか
縫製検査を怠ると、商品の購入後すぐに糸がほつれたり、ボタンやホックが外れるといったトラブルにつながります。
検針作業をアウトソーシングするメリット
検針作業をアウトソーシングすることには次のメリットがあります。
- ミスの心配がない
- 補修や加工に対応してくれる業者もある
- 作業スピードが上がる
順番に解説します。
ミスの心配がない
検針作業と一言にいっても、作業は多岐に渡ります。
- 入荷後検針
- 検品
- 工場への返品
- 補修
- プレス加工
- 付属品の確認
- 包装・梱包
- 出荷前検針
作業をすべて自社で行うと、時間と手間がかかります。
さらに、いずれの工程でもミスは許されないですが、発生するとトラブルにつながる可能性が高いです。
検針作業をアウトソーシングすることで検針作業をプロが行うようになるため、ミスの可能性が低くなりトラブルを防げます。
補修や加工に対応してくれる業者も
検針作業中に商品の補修や加工が必要だと判断された場合に、対応可能な業者もいます。不良品の修正が検針中に行えるようになるため、商品のロスを減らし、製品の質を向上させられます。
また、検針と同時に修正が行われるため、作業ロス時間が削減され、業務効率の向上にも貢献するでしょう。
作業スピードが速い
多種類の商品を扱う場合、それぞれの商品に最適な検品・検針方法が異なるため、検針者に高度なスキルや知識が必要です。
スキルや知識が不足していると、検針作業に時間がかかり、全体の作業時間を圧迫します。
そこで検品・検針作業をアウトソーシングすることで、商品ごとの検品・検針方法を熟知した専門スタッフが対応するようになります。
作業スピードが向上し短期間で検針が完了できるため、アウトソーシングの活用がおすすめです。
まとめ:検品と検針の違いを理解し、トラブルなく商品を出荷しよう
検品と検針はいずれも商品を顧客に提供する前に重要な工程です。
検品は広範囲な品質管理を行い、検針は特定の安全確認に焦点を当てています。
検品を行うことで商品の品質や数量のミスを防ぎ、検針によって商品の安全性を担保します。
検針を適切に行わないと製造部責任法に抵触する恐れがあり、損害賠償を求められる場合もあります。
検針は精密な作業であり、時間と手間がかかるため、検品・検針作業をアウトソーシングすることで、業務効率の向上が可能です。
検品と検針の違いを理解することで、取引をスムーズに進められます。確実に作業を遂行するためにも違いについて把握しておきましょう。