物流において適切な保管ができれば、作業効率がアップし、コストの削減につながります。
その結果、同じ時間でより多くの商品を配送できるようになるため、売上増加にも貢献することでしょう。
本記事では、保管に関する概要や必要な理由、物流倉庫の種類について紹介します。
商品ごとに保管方法や物流倉庫が異なるため、自社の状況に応じた最適な保管方法や物流倉庫の種類を確認する必要があります。
保管時の注意点や効率よく保管する方法についても解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
物流業務における保管とは?概要や必要な理由
物流サービスでは、商品の配送前や配送後の商品を一時的に保管する必要があります。
物流業務における保管とは、倉庫などで商品や荷物を預かり、安全かつ適切な環境で品質や数量を保持することを指します。
保管方法は、入荷時に正確なロケーション管理を行い、素早く出荷できるように在庫管理を徹底することが一般的です。しかし、保管場所が分かりづらいと出荷に必要なピッキング作業に時間がかかり、商品が紛失するリスクが高いです。
保管は物流において重要な要素であり、4つの理由から必要とされています。
- 商品の品質を保持するため
- お客様満足度を向上させるため
- リスク回避するため
- コスト削減や作業効率を向上させるため
ここでは、それぞれの理由について解説します。
商品の品質を維持するため
商品を顧客に届ける際、いつ配送しても品質が維持されている必要があります。
商品の品質を維持するためには、適切な環境下での保管が重要です。
商品を安全かつ適切に保管するためには、商品の種類や特性に応じて保管方法を変えなければいけません。
たとえば温度管理に特化している倉庫であれば食品や医薬品を、防錆や防湿に特化した倉庫で金属や機械部品を保管します。
商品ごとに保管方法を変えたり、適切な環境の物流センターに運んだりすることで、耐久性や品質を長く保持できます。
お客様満足度を向上させるため
お客様満足度が高ければ、商品の品質や安全性に対し信頼性がある証明になります。
リピート購入と売上増加につなげるためには、商品を購入した顧客に安心感を覚えてもらうことが重要です。
物流倉庫や環境が整っていることで、商品が適切に保管されていると感じ、安心感を覚えるでしょう。
お客様満足度が向上することで、売上増加につながり、さらなる商品の展開にも期待できます。
リスク回避するため
独自で商品を保管する際は、次のリスクが想定されます。
- 商品の盗難
- 紛失
- 破損
- 腐敗
上記のリスクが発生した場合、商品を受け取った顧客からクレームが来たり、損害賠償が発生したりするため、問題となる可能性が高いです。
このようなリスクを回避するために、物流倉庫に保管し、システムを利用した商品管理が有効です。
コスト削減や作業効率を向上させるため
倉庫内のスペースを最大限に活用することで、同じスペースでより多くの商品を保管でき、コスト削減につながります。
また、商品の保管位置を正確に把握できるシステムを導入することで、ピッキングや出荷作業にかかる時間を削減可能です。
作業時間の削減によって、商品の注文からお届けまでの時間が短縮できます。
他製品の出荷作業や商品発注の数を増やすといった売上増加につながる作業を行いやすくなります。
関連記事:物流倉庫における保管費用の相場は?計算方法や勘定科目も解説
保管において重要なロケーション管理とは
ロケーション管理とは、決められた場所に商品や荷物を管理することを指します。
一般的に棚番号で管理することが多く、決められた場所に商品を保管することで、商品の置いてある場所が一目で分かります。
入庫時に行う「棚入れ」作業や、出庫時に行う「ピッキング」作業を効率化可能です。
ロケーション管理には3つの方法があります。
- 固定ロケーション
- フリーロケーション
- ダブルトランザクション
ここでは、それぞれの管理方法について解説します。
固定ロケーション
固定ロケーションとは、種類ごとに商品の保管場所を決めて管理する方法です。
商品の場所を覚えやすくなるため、ピッキング時に迷わず商品の場所を特定できるため、誰でも商品を見つけやすいメリットがあります。
また、商品が常に同じ場所に置かれるためピッキングで迷う可能性が減ります。
欠品商品の保管場所が空くため、在庫状況を視覚的に確認する際にも便利な方法です。
固定ロケーションは、定番商品がある場合や商品の種類が少ない場合に適しています。
ただし、種類ごとに保管スペースが必要です。
商品の在庫が少ない場合、スペースの無駄が生じ、商品の在庫が多い場合、スペースが足りず収納できないことが想定できます。
在庫の増減や商品の入れ替えの際にレイアウト変更を行うことで、スペースの無駄を防げます。
商品の種類や在庫状況に応じて使い分けが必要ですが、適切に運用すれば効果的な保管方法です。
フリーロケーション
フリーロケーションとは、空いている場所に商品を保管する方法です。
スペースを無駄にせず効率的な保管が可能です。
在庫が多い場合や、商品の入れ替わりが激しい場合に適しています。
しかし、同じ種類の商品が違う場所に保管されることもあります。
状況に応じて固定ロケーションで対応することで、同じ種類の商品を1箇所にまとめる場合が多いです。
デメリットは、保管場所が随時変わるため、システム化していないと対応が難しい点です。
人間の手による管理には限界があるため、システムで管理を行うことが推奨されます。
一方、システム化すれば、効率的な倉庫保管が行える管理方法として成果を上げるでしょう。
ダブルトランザクション
ダブルトランザクションとは、固定ロケーションとフリーロケーションを合体させた保管方法です。
たとえば、ピッキングエリアは固定ロケーションで配置し、ストックエリアはフリーロケーションで配置するといった方法です。ダブルトランザクションの方法に明確な決まりはないため、物流倉庫や作業フローに応じて最適なロケーション管理を行います。
ダブルトランザクションを活用することで、保管スペースを有効活用できるうえ、ピッキング作業を効率的に行えることが魅力です。
また、エリアを分けることで、ピッキング時の移動時間を減らせます。
入出庫で異なる管理手法を行うため、システム化が欠かせません。
システム管理することで、倉庫保管を効率化できる方法といえます。
倉庫の保管を効率よく行う方法
倉庫の保管を効率よく行う方法は複数存在します。
- ロケーション管理を行う
- 商品ごとの保管場所を見直す
- スペースロスを減らす
- WMSを導入する
ここでは上記4つの方法を順番に解説します。
ロケーション管理を行う
商品ごとにロケーション管理を行っていても、出荷頻度の高い商品が奥にあったり、作業しづらい位置に存在したりする場合、作業効率が下がります。
出荷頻度の高い商品は手前、頻度の低い商品は奥に配置することで、作業効率が上がります。また、ロケーションを決める際は、倉庫の作業動線を踏まえて考えましょう。
ピッキング作業の動線を先に考慮し、そのあとにロケーションコードを決めることで、最短の移動距離で商品選定が行えます。
商品ごとの保管場所を見直す
商品ごとの保管場所を見直すことで、倉庫内の作業効率を向上させ、スペースの有効活用が図れます。
たとえば、以下のように商品ごとの保管場所を見直しましょう。
ピッキングや補充が頻繁に行われる商品は、作業動線の短縮を図るために、倉庫の出入口や作業エリアから近い場所に保管します。
一定の頻度で出荷される商品は、作業エリアから中程度の距離に保管する場合が多いです。
出荷頻度が低い商品は、倉庫の奥や上部などに保管することで、作業効率を向上させられます。
スペースロスを減らす
商品を保管する際に、十分なスペースが必要です。
倉庫が整っていない場合、十分な保管スペースが確保できない可能性があります。
無理やり商品を保管すると、商品の破損やピッキング作業のトラブルにつながります。
保管状況を確認し、無駄なスペースがないか日々倉庫内を整理整頓し見直すことが重要です。
倉庫内の整理整頓や配置を工夫することで、利用可能なスペースを増やし、スペースロスを防げます。
WMS(倉庫管理システム)を導入する
倉庫管理システム(Warehouse Management System)を導入することで、商品のデータ管理を効率よく行えます。
WMSとは、商品の入出庫データや在庫データといった保管に必要な情報を管理できるシステムです。
在庫データはリアルタイムで更新されるため、アナログでの在庫管理が必要ありません。
特に食品は、消費期限や賞味期限、温度調整が必要です。また、機嫌の管理が重要な医薬品で効果を発揮します。
システム内に消費期限や賞味期限、保管温度を記録することで、商品の期限切れを防げ、ロスカットにつながります。
ただし、WMS導入には多額の費用がかかるため、費用対効果を事前に検討し、導入は慎重に検討しましょう。
保管時の注意点について
保管の際は次の2点に注意しましょう。
- 商品の配置を効率的に行えるようにする
- 温湿度や消費・賞味の期限を管理する
順番に解説します。
商品の配置を効率的に行えるようにする
作業効率を上げるためには、保管やピッキング作業が速やかに行える動線と、保管場所の配置に気を配ることが重要です。
倉庫内で扱う商品の種類や量は変化するため、定期的に配置の見直しを行い改善を図りましょう。
温湿度や消費・賞味の期限を管理する
商品を保管する際は、傷や劣化を防ぐために適切な管理を行いましょう。
たとえば、食料品や医薬品は、温度・湿度や賞味期限の管理が重要です。
長期間保管している在庫については、経年変化による品質変化を考慮しなければいけません。
保管に必要な物流倉庫の種類
業務の目的に応じて物流倉庫の使い方は変わります。
物流倉庫の種類は主に次の4つです。
- トランスファーセンター
- ディストリビューションセンター
- プロセスディストリビューションセンター
- フルフィルメントセンター
ここでは、それぞれの物流倉庫について解説します。
トランスファーセンター
トランスファーセンターとは、在庫を持たず中継地点として利用する物流倉庫のことです。
多くの大手量販店やコンビニエンスストアが利用しており、日本の物流倉庫の主流となっています。
物流倉庫内で荷物を開梱し、検品や店舗別に仕分けたり、トラックへの積み替えを行う場合が多いです。
トランスファーセンターは店舗近辺に配置され、小ロット多頻度配送になる傾向にあります。なぜなら、複数拠点の商品を配送先別に仕分けることで、配送の効率化を図れるためです。
さまざまな販売供給元から納品される商品や製品を、各店舗に向けて積み替え作業を行うため、入荷や出荷でトラックが積み込みやすいレイアウトになっています。
トランスファーセンター式の物流倉庫の強みは次のとおりです。
- 在庫保管が必要ない
- 倉庫の面積を小さくできる
- コストを圧縮しやすい
- 配送の効率化を図れる
入出荷に関する正確な情報が必要なため、物流管理システムの導入も必要です。
ディストリビューションセンター
ディストリビューションセンターは、入荷した商品を一度保管した後、指示に従ってピッキングを行い出荷する物流倉庫のことです。
製品の受け入れ、保管、各地への配送を行うための中央ハブとして利用されることから、大規模な倉庫のケースが多いです。
在庫を出荷指示に沿って各配送先に仕分け、目的地へと出荷します。
倉庫にあらかじめ在庫を保管することで、納品先の消費者や小売店などにスムーズに商品を届けられます。
また、急な注文にも対応しやすいのがメリットです。
ただし、ディストリビューションセンターは配送拠点だけでなく保管機能も兼ね備えているため、保管場所や設備が必要です。
専有面積が大きくなり、物流拠点としてはコストが高い傾向にあります。
プロセスディストリビューションセンター
プロセスディストリビューションセンターとは、下記のように商品の加工作業が行える物流倉庫です。
- 家具・家電の組み立て
- 鮮魚や精肉の加工
倉庫と工場が一体化した施設のため、付加価値の高い物流倉庫です。
生産ラインの生成や人件費は、通常の倉庫ではそれほど必要ありません。
しかし、加工作業を倉庫内で行うためにコストがかかる傾向にあります。
ほかの物流倉庫の種類と比べるとコストは高いものの、複雑でオリジナリティのある物流サービスを提供可能なため、他の会社と差別化できる物流拠点となります。
フルフィルメントセンター
フルフィルメントセンターは、電子商取引に特化した倉庫で、通販事業の物流を効率化するために設計されています。
オンライン注文の受け取り、商品のピッキング、梱包、顧客への配送を一括で行える物流倉庫です。
自動化システムや最先端技術を導入し的確な受注処理を行っているため、商品を顧客に届けるためのフローを一括で管理できる強みがあります。
在庫の少ない商品を多種類扱うEC事業者にとっては、業務の効率化を実現させるための重要な物流拠点といえるでしょう。
物流における保管の重要性を理解し、顧客満足度を向上させよう
物流における保管は、商品の質の維持やコスト削減のために重要です。
出荷から納品までの作業が短くなることで、顧客のもとに商品が届くまでにかかる時間が短くなることで、満足度が向上します。
特に食品や医薬品は保管に注意が必要です。
ロケーション管理を行う際にシステムを利用することで、ロスの削減や商品の選定にかかる時間が短くなります。
ロケーション管理やWMSを活用し、販売している商品にとって最適な保管方法を検討しましょう。