危険物倉庫とは?法令や指定数量などを詳しく解説!

危険物倉庫を運用する際は、まず危険物について理解しなければなりません。

正しい知識がないまま運用した場合、火災や爆発といった甚大な事故を招く可能性があります。

そこで本記事では危険物倉庫に関する法令や指定数量、用途地域や価格相場などを解説します。

危険物倉庫の運用で取り返しのつかない事態にならないためにも、危険物への理解を深めていきましょう。

危険物倉庫とは?

危険物倉庫とは、法律により危険物と指定されたものを扱う倉庫のことです。

危険物の区分や危険物倉庫の定義も消防法により記されています。

また危険物倉庫は、以下3つの施設のうち、「貯蔵所」に該当します。

施設の種類概要
製造所危険物を製造する施設
貯蔵所危険物を大量の指定数量倍数で扱う施設
取扱所危険物を少量の指定数量倍数で扱う施設
(ガソリンスタンドなど)

さらに貯蔵所は保管する指定数量によって、危険物倉庫と少量危険物倉庫に分かれています。

危険物倉庫と少量危険物倉庫の違い

危険物の指定数量の倍数が「5分の1(0.2)以上・指定数量未満」の場合は、少量危険物倉庫に該当します。

少量危険物倉庫は、危険物倉庫と比べて扱う危険物の量が少ない分、建築構造や設置場所などの基準が柔軟になっています。

一方、危険物倉庫は建築構造や設置場所に厳しい基準が定められており、有資格者を置かなければ運営できないなど、多くの制限がかかるのが特徴です。

関連記事:委託倉庫と自社倉庫の違いは?メリットや役割を解説

危険物倉庫の法令

危険物倉庫は、下記のように建築構造や設置基準などが消防法にて厳しく制限されています。

基準の種類概要
位置・設置場所・保安対象物に対して規定された保安距離の確保
・延焼防止のための保有空地の設置
規模・大きさ・倉庫の軒高が6m未満かつ平屋構造
・倉庫の延床面積が1000m2以下
構造・屋根や梁は不燃材料を用いる
・壁や柱、床は耐火構造を有する
・壁への開口部設置不可
(出入口・延焼の恐れがない危険物は可)
・窓や出入口は防火設備の機能を有すること
・窓ガラスは網入りガラスが基準
設備・換気設備を必ず設置
・引火点70度の危険物を保管する場合は強制換気システムを設置
・作業に必要な採光性の確保
・消火設備の設置

危険物倉庫とは一般的な倉庫とは違い、火災や爆発などを起こす恐れがあります。そのため、建築構造や設置基準などが厳しく制限されます。

また危険物倉庫の運用時には、危険物取扱者の選任に加え、法律に則った消化設備の設置や数量の届けが必要です。

ただし各市町村の条例や規則によっては、申請内容が一部異なるといったケースもあるため注意しましょう。

危険物の分類

危険物は消防法第2条第7項により、以下のように分類されています。

  • 第1類|酸化性個体
  • 第2類|可燃性固体
  • 第3類|自然発火性物質および禁水性物質
  • 第4類|引火性液体
  • 第5類|自己反応性物
  • 第6類|酸化性液体

それぞれの分類について、詳しく見ていきましょう。

第1類|酸化性固体

酸化性固体は、単体では燃焼せず、反応すると強く酸化し熱・衝撃・摩擦により発火および爆発の危険性があるものです。

酸化性固体に該当するもの・塩素酸塩類
・過塩素酸塩類
・無機過酸化物
・亜塩素酸塩類
・臭素酸塩類
・硝酸塩類
・よう素酸塩類
・過マンガン酸塩類
・重クロム酸塩類など

第2類|可燃性固体

可燃性固体は、火災に引火しやすい物質または40℃未満の低温でも引火しやすい物質のことです。

可燃性固体に該当するもの・硫化りん
・赤りん
・硫黄
・鉄粉
・金属粉
・マグネシウム
・引火性固体など

第3類|自然発火性物質および禁水性物質

自然発火性物質および禁水性物質とは、空気に触れると自然発火する可能性がある個体や液体、もしくは水に触れると発火や可燃性ガスをおこすものを指します。

自然発火性物質及び禁水性物質に該当するもの・カリウム
・ナトリウム
・アルキルアルミニウム
・アルキルリチウム
・黄りんなど

<第4類|引火性液体

引火性液体とは、石油やアルコールのように引火しやすい液体のことです。

引火性液体に該当するもの・特殊引火物
・第一石油類
・アルコール類
・第二石油類
・第三石油類
・第四石油類
・動植物油類

第5類|自己反応性物

自己反応性物質とは、自己燃焼しやすい液体や固体の物質を指します。

自己反応性物質に該当するもの・有機過酸化物
・硝酸エステル類
・ニトロ化合物
・ニトロソ化合物
・アゾ化合物
・ジアゾ化合物
・ヒドラジンの誘導体
・ヒドロキシルアミン
・ヒドロキシルアミン塩類など

第6類|酸化性液体

酸化性液体とは、単体では燃焼せず、酸化させられた物質により火災の危険がある液体のことです。

酸化性液体に該当するもの・過塩素酸
・過酸化水素
・硝酸など

危険物倉庫で保管できる指定数量

危険物倉庫で保管できる危険物には、保管基準となる「指定数量」が定められています。指定数量や指定数量の計算式は、危険物倉庫を運用する上で知っておくべき項目です。

では、指定数量と指定数量の計算式について、詳しく見ていきましょう。

指定数量とは?

危険物の指定数量とは、危険物の貯蔵が一定数量を超えると、危険物取扱者や危険物保安標識の設置といった義務が発生する基準のことです。

危険物の種類によって指定数量は異なり、一般的に液化石油ガスや爆発物などは、比較的小さい数値が指定されています。

また指定数量を超える際には、危険物取扱者の任命・危険物保安標識の設置・危険物保安計画の作成・危険物保安設備の整備などが義務付けられます。

指定数量の計算式

危険物の量が指定数量の何倍であるかを表す数を、「指定数量の倍数」といい、指定数量の計算式ではこの倍数を算出します。

指定数量の倍数 = 危険物の量 ÷ 指定数量

算出した倍数が「1以上」であれば、指定数量以上の危険物を取り扱う場所となるため、消防法の規制を受けます。

もし算出した指定数量の倍数が「1未満」であれば、消防法ではなく市町村条例の規制を受けます。

また2種類以上の危険物を扱う場合は、各指定数量の倍数の合計を算出しなければなりません。

危険物倉庫の用途地域

用途地域とは、機能的な都市活動を推進するために、さまざまな制限を設けた用途地域指定制度のことです。

都市部では幅広い用途で建物が建設されていますが、いずれも無秩序に建設されている訳ではなく、下記の用途地域ごとの規制に則り建設されています。

用途地域建築物の制限
第一種低層住居専用地域低層住居の良好な環境を守るための地域
第二種低層住居専用地域主に低層住居の良好な環境を守るための地域
第一種中高層住居専用地域中高層住居の良好な環境を守るための地域
第二種中高層住居専用地域主に中高層住居の良好な環境を守るための地域
第一種住居地域住居の環境を守るための地域
第二種住居地域主に住居の環境を守るための地域
準住居地域道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域
近隣商業地域近隣の住民が日用品の買物などをする店舗等において、業務利便の増進を図る地域
商業地域銀行、映画館、飲食店、百貨店、事務所などの商業等の業務利便の増進を図る地域
準工業地域主に軽工業の工場やサービス施設の業務利便を図る地域
工業地域主に工業の業務利便の増進を図る地域
工業専用地域もっぱら工業の業務利便の増進を図る地域

上記のうち、第一種低層住居専用地域から商業地域までは、工場や倉庫の建設に厳しい制限が設けられるか、建設自体ができません。

一方、準工業地域・工業地域・工業専用地域は、どのような工場でも建設できます。

ただし準工業地域は、危険性や環境悪化への影響が大きいと建設に制限がかかる可能性があります。

用途地域ごとの制限

用途地域は分類ごとに、下記のような制限が設けられています。

項目内容
営業規制営業できる職種の制限。職種によっては工場や危険物倉庫は建設できない
建物種類建物種類の制限。面積(m2)や高さなどの制限がある
建ぺい率土地に対して敷地面積を利用できる割合。避難経路などの確保で一部残しておく必要がある
容積率敷地面積に対する3次元空間の割合を算出し、制限する。延べ床面積の数字が影響する
高さ制限(第一種および第二種低層住居専用地域)建築物の高さを制限する
道路斜線制限敷地と接している道路の幅員にもとづき、道路側に面した建物部分の高さを制限する
隣地斜線制限建築物の高さを制限。隣地の日当たりおよび風通しの維持が目的
日影規制建物の影響で周辺にできる日影の時間を、一定限度以下に制限する

用途地域ごとの規制や制限内容を総合的に判断した場合、工場や倉庫の営業は準工業地域、工業地域、工業専用地域の3つが最適だと言えるでしょう。

危険物倉庫の価格相場

危険物倉庫の価格について、ゼロから建築する場合とレンタルする場合の2つの相場を解説します。

利用方法価格相場
ゼロから建築床面積300坪(1棟平屋建)程度で坪単価60〜80万円
レンタル小規模 数万円〜
中規模 数十万〜
大規模 数百万円〜

危険物倉庫の運用は、面積や構造、使用する部材などが必要な基準を満たしているか確認した上で、適正価格にて購入もしくはレンタルすべきです。

では、それぞれの相場について解説します。

ゼロから建築する場合

床面積300坪(1棟平屋建)程度の危険物倉庫で、坪単価60〜80万円が相場と言われています。

ただし、建物地盤や規模、消火設備の内容によって相場は変動します。上記の金額はあくまでも目安と捉えましょう。

レンタルする場合

危険物倉庫をレンタルする場合、小規模の倉庫なら月額数万円ほどで利用できるでしょう。

ただし大規模な危険物倉庫となると、月額数百万円かかるケースも珍しくありません。

また、当然ながら倉庫の設備や立地条件によって価格は変動します。あくまでも目安として参考にしましょう。

危険物倉庫を利用する際の注意点

危険物倉庫を利用する際の注意点は、次の4つです。

  • 有資格者が必要
  • 火気厳禁
  • 保護具の着用
  • 貯蔵期間や廃棄処分に注意する

では、1つずつ詳しく解説します。

有資格者が必要

「少量危険物倉庫」以外の危険物倉庫を運用するためには、有資格者の設置が法律により定められています。

製造所、貯蔵所及び取扱所においては、危険物取扱者(危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)以外の者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱つてはならない。

消防法第13条 – Wikibooks

危険物施設において、無資格者だけで危険物を取り扱う行為は禁止されています。

また、有資格者が危険物の取扱作業に従事する際は、法令で定める危険物の貯蔵及び取扱いの技術上の基準を遵守し、細心の注意を払わなければなりません。

火気厳禁

危険物倉庫内には、引火性のある物質が含まれているケースもあります。そのため、倉庫内は火気厳禁が鉄則です。

火気厳禁で特に気をつけたいのが、タバコです。危険物倉庫内で喫煙することのないよう、火気厳禁を徹底しましょう。

保護具の着用

危険物倉庫で作業する際には、危険物の種類に応じて適切な防具を着用すべきです。具体的には、安全靴・ヘルメット・保護メガネ・手袋・防塵マスクなどが挙げられます。

危険物の種類や量、取り扱い方法によって着用する防具は異なるため、作業前に確認しておきましょう。

貯蔵期間や廃棄処分に注意する

危険物は、指定された貯蔵期間を超えると危険性が高まります。

例えば、液体石油ガス(LPG)などの可燃性ガスは、貯蔵期間を超えると不純物が溜まり、引火点が低下することで引火や爆発のリスクが高まります。

また廃棄処分についても、法律で規定された方法に則り、適切に廃棄しなければなりません。危険物毎の貯蔵期間や廃棄処分についても、利用前に確認しておきましょう。

まとめ:適切な管理下のもとで危険物倉庫を運用しよう

危険物倉庫の管理者は、消防法に定められたルールを遵守し、爆発や火災といった事故を防ぐ義務があります。

また危険物倉庫を運用する際には、法令基準をクリアすることはもちろん、消防や各自治体との協議や検査も欠かさずに実施しなければなりません。

本記事の内容を参考に、危険物倉庫についての理解を深め、適切な管理下のもと運用できるよう努めましょう。

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