EC在庫の保管場所はどうする?自社管理と外部倉庫のメリット・デメリットを解説

企業や個人を問わず誰でも、ECサイトで商品を提供できる時代となりました。しかし開設後の運営には、さまざまな課題も存在します。その中で、在庫管理や商品の保管場所について悩むEC運営者も少なくないでしょう。

保管場所の選択によっては、売上や利益に大きな影響を与えます。そのため、商品の保管場所は慎重に検討することが重要です。

今回は、自社管理と外部倉庫それぞれのメリットやデメリット、選び方のポイントをお伝えします。最適な保管場所を選び、EC事業の発展につなげたい方はぜひ参考にしてください。

EC在庫を自社保管で管理するメリット

顧客のもとに届ける商品は「自社倉庫」と「外部倉庫」のどちらかを利用して保管することになります。自社倉庫を利用して保管するメリットは、次のとおりです。

  • 在庫管理の自由度が高い
  • セキュリティリスクが低い
  • 初期費用が抑えられる

それぞれのメリットを把握しましょう。

在庫管理の自由度が高い

自社倉庫では、商品の仕入れから配送までの流れをすべて統制することになります。そのため、自社の状況に応じて最適な管理システムを構築できます。

外部倉庫の場合、在庫状況や商品の状態を確認する際に、タイムラグが生じてしまいます。在庫状況が把握できないと過不足が発生する要因となり、売上機会の損失や資金繰りの悪化につながる恐れもあるでしょう。

自社倉庫であれば必要なときにすぐに在庫状況を確認できるため、受発注計画が立てやすくなります。決められた納期やロット数での出荷が求められるケースにおいても、柔軟に対応しやすく透明性の高さが魅力です。

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セキュリティリスクが低い

商品の在庫データや個人情報の漏洩が起こると、第三者に悪用されるリスクがあります。それだけでなく、情報漏洩は企業の信用を大きく損ない、最悪の場合は損害賠償責任を問われる可能性もあるでしょう。

外部委託倉庫では、自社以外のスタッフが商品や在庫状況に触れるため、情報漏洩のリスクが高まります。

昨今、サイバー犯罪の手口は巧妙になってきており、できる限り情報を外部に持ち出さないことも対策の1つです。一方、自社倉庫であれば情報にアクセスできる人数が限られるため、リスクの軽減につながります。

初期費用が抑えられる

一般的に、EC在庫を自社倉庫で保管する場合の初期費用は、外部倉庫に委託する場合よりも高額になる傾向です。とくにEC事業を始めたばかりで注文数が少ないうちは、自社で保管するほうが初期費用を抑えられます。

必要最低限の設備のみであれば、少額投資から自社での物流システムを構築できます。その後、業績拡大に合わせて設備を投資していくことも可能です。

たとえば社内の一角に在庫保管するスペースを設け、物流量の増加に伴って外部倉庫の利用を検討する方法もあります。創業期やスタートアップ段階にある企業で、初期コストを抑えつつ柔軟な物流対応を目指したい場合は、自社保管を検討するとよいでしょう。

EC在庫を自社保管で管理するデメリット

EC在庫を自社で管理する場合、次のようなデメリットが生じます。

  • 人材を確保するのが難しい
  • 倉庫運営のノウハウが必要になる
  • スペースの拡張が難しい

自社保管の場合は、商品の入出庫や在庫管理、ピッキング、梱包作業などの作業員が必要です。倉庫内業務を任せられる人材の育成には、研修などに要する期間とコストが発生します。

しかし倉庫管理業務は力仕事が多く、単調な作業になりやすいため、人材を固定化することの難しさが課題です。

また、担当者は倉庫運営に関する専門知識も不可欠です。物流に関する法令や管理方法など、幅広い知識や経験が求められます。倉庫運営のノウハウがないまま運営を行うと、在庫の過不足や商品の破損、配送遅延、法令違反などの問題が発生する恐れもあるでしょう。

需要の変化によって販売量が急増した場合、すぐに倉庫を拡張したり、設備を増設したりすることが難しい点もデメリットです。このような場合は、外部倉庫や物流委託サービスの利用を検討することになります。

EC在庫を外部倉庫で管理するメリット

外部倉庫は、倉庫管理に関わる業務を第三者企業に委託するため、自社保管にはないメリットがあります。

  • 商品量や注文数の増減に対応しやすい
  • コストの最適化につながる
  • 物流品質が向上する

物流業務の効率化を図りたい場合は、外部倉庫を検討しましょう。

商品量や注文数の増減に対応しやすい

外部倉庫では、必要なときに必要な広さの倉庫スペースを借りることが可能です。そのため、季節需要に合わせて商品量や注文数の増減に柔軟に対応できます。

また、繁忙期と閑散期により業務量の増減が大きい場合、自社管理では人員調整が難しい側面があります。外部倉庫を運営する企業は複数クライアントの物流を管理しているため、柔軟な対応が受けられる点がメリットです。

コストの最適化につながる

外部倉庫を利用すると、固定費と変動費が発生します。固定費とは、毎月同じ額が発生する費用。変動費とは、取引量や利用量に応じて増減する費用のことです。

利用する外部倉庫によって異なりますが、固定費には一般的に、システム利用料や管理料といった科目が割り当てられます。そして変動費はスペースに応じて費用が発生したり、ロット数に応じて増減したりするのが特徴です。

自社管理の場合、人件費や管理費などの費用は常に一定額発生することになります。在庫量や出荷量の変動に柔軟に対応することが難しく、無駄なコストが発生してしまう可能性もあるのです。

それに対し外部倉庫では、利用した分だけ費用が発生します。そのため在庫量や出荷量の変動に柔軟に対応でき、コストの最適化につながるのです。

物流品質が向上する

外部倉庫を運営する企業は、商品管理や品質管理などの多くのノウハウを保有しています。倉庫管理業務を専門に行う企業に任せることで、高品質な物流サービスを受けることが可能です。

これにより自社のリソースや負担を減らし、物流戦略の見直しやサービスの向上が図れるようになります。また、外部倉庫の在庫管理システムを利用することで、より正確で迅速な物流体制を構築できるでしょう。

EC在庫を外部倉庫で管理するデメリット

EC在庫を外部倉庫で管理することで、自社のリソース削減やコストの最適化が実現します。しかし一方で、次のようなデメリットがあることを踏まえる必要があります。

  • 正確な状況の把握やコントロールが難しい
  • 柔軟な対応が難しい場合がある
  • セキュリティリスクが高まる

外部倉庫を利用する場合、自社保管より在庫に対する直接的な管理とコントロールが難しくなります。プロセスの透明性が失われるため、状況の把握が難しく、委託企業との連携が事業の成果に大きく影響します。

したがって外部倉庫を利用する際は、複数の業者を比較検討し、最適な企業を選択することが重要です。

EC在庫のおすすめ保管場所

EC事業を継続的に成長させるためには、最適な保管場所を選択する必要があります。そこで、EC在庫を保管するのにおすすめな次の3つのサービスを紹介します。

  • トランクルーム
  • レンタルオフィス
  • 物流倉庫サービス

それぞれの特徴を踏まえ、自社に合った保管場所を選定してください。

トランクルーム

短期的な利用や小口在庫の保管に適しているのが、トランクルームです。トランクルームは契約が1ヶ月単位であるのが一般的で、最低利用期間も1ヶ月〜数ヶ月程度に設定されています。

在庫の保管場所が不要になったときや、多量の保管が必要になった場合でも、比較的速やかに契約解除や変更が可能です。また多くのトランクルームでは、24時間監視カメラや入退館システムなどのセキュリティ対策が実装されています。

在庫管理や入出庫作業は自ら行う必要がある一方で、その分費用を抑えられるのがメリットです。自社の従業員が在庫の出し入れを行うため、近くのトランクルームを選ぶことで、利便性を高められます。

ただしトランクルームによっては空調設備が整っておらず、商品によっては品質を保てない場合があります。トランクルームを選ぶ際は、環境を確認しておくことが重要です。

レンタルオフィス

レンタルオフィスとは、オフィススペースを一定期間借りられるサービスです。作業スペースとしてだけでなく、商品の保管場所としても活用できます。

レンタルオフィスは倉庫と作業スペースが一体となっているため、商品を取りにわざわざ足を運ぶ必要がありません。

またレンタルオフィスでは基本的に空調設備が整っており、繊細な商品を除いて適切に保管することが可能です。ただし部屋の広さによっては、トランクルームより費用が高くなる場合があります。

物流倉庫サービス

物流倉庫サービスとは、外部業者に配送などの物流業務を委託するサービスです。トランクルームやレンタルオフィスとは異なり、商品を預かってくれるだけでなく、注文が入ったら発送まですべて委託業者が対応してくれます。

委託先が出荷指示情報を確認すると、商品をピッキングし、適切な梱包を施して配送します。また在庫管理も行ってくれるため、自社のスタッフが赴いて作業をする必要はありません。

物流業務を一任することで、自社のリソースを削減でき、根幹業務に時間を割くことが可能です。ただし中小規模のEC事業の場合は、導入や維持するためのコストが、利益収入よりも大きくなる恐れがあります。

事業規模が小さい段階ではトランクルームやレンタルオフィスを利用し、徐々に物流倉庫サービスにシフトチェンジすることも有効な策です。

各保管場所の相場

各保管場所と費用相場は、次のとおりです。

保管場所月額費用相場初期費用
トランクルームコンテナ型:2,000円~30,000
円室内型:3,000円~40,000円
月額料金の1.5倍~3.5倍程度
レンタルオフィス定員1名:25,000円~100,000円
定員2~3名:50,000円~150,000円
定員10名前後:200,000円~300,000円
月額料金の1~2倍程度
物流倉庫サービス倉庫保管料 :坪単価4,000円~7,000円
入庫料10円〜30円/個
検品料:10円〜100円/個
梱包料150円〜300円/個
配送料 :400円〜1,200円/個
0円~10万円程度

ただし上記は目安であり、費用は地域や利用する広さ、契約プランなどによって大きく変動します。

倉庫業者によっては、初期費用無料や割引などのキャンペーンを実施していることもあります。複数業者を比較検討することで、お得なプランを選択できるでしょう。

EC在庫の保管場所の選び方

EC在庫の保管場所は、次の要素を検討することで適した場所を選定できます。

  • 在庫保管場所との距離感
  • 在庫保管場所の環境
  • 利用料金
  • 保管場所の立地
  • ECサイトとのシステム連携

それぞれ見ていきましょう。

在庫保管場所との距離感

在庫保管場所と自社や配送拠点との距離は、納期や配送コストに大きく影響します。距離が近いほど素早く発送業務が実施でき、配送コストも安くなります。とくに発送業務を自社でスタッフが行う場合は、自社との距離が近いに越したことはありません。

物流業務を委託する場合も、自社との距離が近いと有事の際に駆けつけやすくなります。

在庫保管場所の環境

EC運営者にとって、商品は大切な資産です。そのため、保管場所の環境が商品に適しているかもポイントになります。食品や精密機器など、取り扱う商品によっては、温度や湿度を整えなければいけません。

なお倉庫によっては保管できない商品もあるため、必ず事前に確認しておきましょう。盗難や紛失などのリスクを回避するためにも、セキュリティ対策が万全な保管場所を選択することが重要です。

利用料金

外部倉庫を利用する際は、毎月のランニングコストが発生します。自社にとって最適なプランを選定しなければ、月額費用が重荷になる恐れがあるでしょう。

費用感は、保管スペースの広さやサービス内容、契約期間などの要因だけでなく、依頼する委託業者によっても大きく変動します。予算とニーズに合った倉庫を利用するためにも、複数の業者を比較検討するのがおすすめです。

保管場所の立地

保管場所は、配送業者の営業所近くや交通の便が良い場所を検討しましょう。配送業者との連携がスムーズな場所を選ぶことで、より効率的な配送を実現できます。

また立地条件によっては、災害リスクが高いこともあります。地震や火災、洪水といった災害のリスクがないか、有事の際に対処できるかも十分検討してください。

ECサイトとのシステム連携

物流倉庫サービスでは、ECサイトとのシステム連携を取り入れている場合があります。ECサイトと連携することで、商品の入出庫状況のリアルタイムな把握が可能です。これにより、欠品や過剰在庫が防止できます。

しかし、委託業者によってはECサイトとのシステム連携を取り入れていなかったり、特定のプラットフォームにおいては非対応であったりする場合があります。最適な物流体制を整えるためにも、自社のECサイトと連携できるか確認しておくとよいでしょう。

まとめ:在庫管理する商品や在庫規模によって保管場所を決めよう

ECサイトの保管場所を選ぶ際はコストや利便性、リスク管理などさまざまな要素を加味して検討することが重要です。運営するEC事業の規模や商品特性などを正確に把握し、自社にとって最適な保管場所やサービスを選択しましょう。

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