EC物流倉庫にかかる費用の目安は?項目ごとの相場を解説

新しいEC事業を始めるにあたって、物流倉庫を管理する際にかかるコストは大きな課題です。

EC物流倉庫を利用する際は、基本料や倉庫保管料などさまざまな費用が発生します。そのため、事前にどのくらいの費用がかかるか把握することが大切です。

この記事では、EC物流倉庫の費用を項目ごとに紹介します。コストを抑えるコツもあわせて解説していくので、EC物流倉庫を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

EC物流倉庫の利用にかかる費用

EC物流倉庫の利用をするにあたって、以下の費用が発生します。

費用相場
基本料システム利用料:2~5万円/月
業務管理料:1~5万円/月
倉庫保管料3,000~7,000円/坪
人件費従業員数による
電気料金空調や温度管理の方法による
入庫費用10~40円/個
その他の変動費梱包料:150~300円/個
配送料:400~1,000円/個
デバンニング料:2万~5万円

項目ごとに詳しく解説していきます。

基本料

基本料とは、EC物流倉庫のシステム利用料です。倉庫管理システムを利用する際に発生し、相場は1ヶ月2万円~5万円ほど。

利用料の中には入出庫や検品に使うハンディーターミナルや、印刷に使用するプリンターなどの費用も含まれています。

  • 入荷管理
  • 出荷管理
  • 在庫管理
  • 進捗管理

倉庫管理システムは上記の在庫管理にかかわる情報や業務を管理できるため、倉庫内作業の効率化を図れるメリットがあります。

また、複数のECサイトの在庫を一括管理することも可能です。

なお、システム利用料は契約時に基本料として請求される場合が大半で、月間出荷数が多いほど基本料は高くなる傾向があります。

さらに基本料には、システム利用料とは別で業務管理料がかかります。業務管理料とは物流倉庫内の商品管理にかかる手数料のことで、相場は1ヶ月1万円~5万円です。

物流倉庫によってはシステム利用料と合わせて請求する場合もあるため、事前に詳細を確認しておきましょう。

倉庫保管料

商品を保管するスペースの利用料として、倉庫保管料がかかります。倉庫の家賃のようなものに近く、以下のように倉庫や商品によって貸し方が異なります。

  • 坪貸し(1坪)
  • 棚ごと(1パレット)
  • ラックごと(1ラック)

1坪あたり月額3,000円~7,000円が相場です。

なお地域によって費用は異なり、全国の主要な地域の相場は以下のとおりです。

エリア倉庫保管料の相場(坪単価)
東京都3,500円~7,000円
千葉エリア3,000円~4,000円
仙台エリア2,800円~4,000円
近畿エリア3,700円~4,500円
中部エリア3,500円~4,000円

東京都は地価が高いエリアだと7,000円近くかかり、地方エリアは3,000円~4,000円と低コストで利用できます。

人件費

人件費は倉庫管理の費用の大半を占めており、従業員の給与や福利厚生などの費用全般が含まれています。

ピッキングや出荷、検品など行うには従業員が必要なため、ある程度の人数は必要です。

また物流業務には、専門的な知識や技術が求められる特徴があり、コスト削減をしにくい費用でもあります。繁忙期や閑散期によっても必要な従業員数は異なり、常に適切な人数を確保しなければいけません。

人手不足のまま業務を行うと、納品までに時間がかかってしまいます。そうすると、顧客に良いサービスを提供できなくなり、経営に悪影響を与えてしまいます。

さらに、従業員の教育や研修の費用もかかるため、物流倉庫を管理する際は人件費がどのくらいか先に把握しておくことが大切です。

電気料金

倉庫内の空調や照明を使用する際に電気料金がかかります。

冷蔵・冷凍商品など保管時に温度管理が必要な場合は、負担が大きくなる傾向があります。扱う商品に合わせて管理環境・管理費用を事前に把握しておきましょう。

入庫費用

入庫費用は、商品を倉庫へ搬出する際にかかる費用のことです。

商品の大きさや形態によって費用は異なり、商品1個当たり10円~40円が相場。商品が小さい場合は1ケースで換算される場合もあり、1ケース30円~100円が相場です。

ただし商品の搬入に大型のリフトカーを使用する場合や、商品の個数や検品を行う際はさらに追加費用が発生する場合があります。

出荷料

保管していた商品を出荷指示に基づいて倉庫から取り出す作業の費用を、出荷料(ピッキング料)といいます。1個当たり10円~30円が相場です。

出荷量にコンポや流通加工量を含めている場合があり、見積もりの際は業務内容も確認する必要があります。

関連記事:ECビジネスの出荷とは?作業の流れやよくあるミスを解説

その他の変動費

その他の変動費として、以下の費用が発生します。

費用料金
梱包料150円~300円/個
配送料400円~1,000円/個
デバンニング料2万円~5万円

デバンニング量は、コンテナから荷物を取り出す際の作業費用です。

大きな荷物をコンテナから積み下ろす際は、フォークリフトなどの機械を使用することもあり、費用も高くなる傾向があります。

梱包料や配送料は、生産量や販売量によって幅広く異なります。

物流コストを抑えるコツ

物流コストを抑えるために、以下4つのコツを押さえましょう。

  • 適切に在庫管理を行う
  • 人件費を見直す
  • 自社に適している倉庫を選ぶ
  • 物流管理システムを導入する

それぞれ解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

適切に在庫管理を行う

倉庫を利用する際は、保管費が高い割合を占めています。そのため倉庫に保管している在庫数が多すぎないか、デッドスペースはないかチェックすることが大切です。

適切に在庫管理を行って余剰在庫を削減することで、光熱費や人件費などのコストを減らせます。

また、自社の物流にあった倉庫のサイズか見直すことも、より良い運用に繋がるでしょう。外部倉庫を利用している場合は、在庫数に対して利用面積が適切か見極めることが大切です。

常に商品の在庫など状況を見極め、業務環境を整えていくことで無駄なコストをかけずに済みます。

人件費を見直す

人件費を削減するためには、作業の効率化を図ることが大切です。

工程や作業にムラや無駄があると、人件費は増加してしまいます。物流倉庫業務の入荷や収納、保管の手順をマニュアル化することで、コスト削減に繋がります。

また、人材派遣や紹介サービスなどを活用すれば変動費にすることも可能です。

繁忙期や閑散期によって必要な人員に差がある場合は、固定費だから減らせないと諦める前に外注も検討すると良いでしょう。

自社に適している倉庫を選ぶ

以下の項目を見直しながら、自社に適している倉庫であるかチェックしましょう。

  • 立地
  • サービス内容
  • サポート体制
  • 在庫量や出荷量の変化に柔軟に対応できるか
  • 梱包などのオプション

倉庫には入荷された商品を保管するエリアと、出荷するための商品を準備するエリアがあります。エリアごとに商品のバランスやレイアウトを最適化すると、作業効率を高められてコストを削減できます。

また、自社倉庫を保有していない場合や人材が不足している場合は、倉庫管理をアウトソーシングするのもひとつの方法です。

倉庫管理をアウトソーシングすれば、他の物流作業に集中でき、設備投資をする必要もなくなるためコストを抑えられます。

物流管理システムを導入する

倉庫管理システムを導入すれば、人為的に起こるミスを減らせます。

入荷や出荷業務などの業務もシステム管理ができるため、従業員の教育コストも削減できるメリットがあります。さらに倉庫内の状況を可視化すれば誤発注も防止でき、物流コスト削減に繋がるでしょう。

人的ミスや効率化を図って人件費を削減するために、物流管理システムの導入も検討してみてください。

EC物流倉庫の種類とメリット

EC物流倉庫を選ぶ際は、以下のポイントを押さえましょう。

  • 倉庫の立地は適切か
  • 自社にメリットがあるか
  • 料金とサービス内容のバランスが良いか
  • システムの連携は容易にできるか

ここではEC物流倉庫の種類と、それぞれの特徴・メリットを解説していきます。

選び方を参考にし、自社に合う倉庫を見つけましょう。

販売主体型

メリットデメリット
商品の注文から発送まで業務全般を任せられる
スピードや効率化を重視できる
品質やサービスは倉庫次第になる
商品の保管や配送方法のカスタマイズが難しい

販売主体型の倉庫は、次のような販売サービス全般を依頼できるため、自社で行う作業があまり無いのが特徴です。

  • 注文受付
  • EC販売業務
  • 発送手配
  • 返品処理
  • 販売業務

注文受付から発送手配、返品処理など手間のかかる作業をサポートしてくれます。

そのため、大手ECモールに出店している入出荷の頻度が多い企業におすすめです。例でいうと「FBA(フルフィルメントbyAmazon)」が有名です。

また、販売主体型は1つの拠点で業務を行うため、EC物流に必要なスピード感や効率化を実現できます。

アフターフォロー業務まで任せられるので、自社に業務の負担がかかりません。

ただし自社の業務を負担軽減はできますが、ルールが厳しく商品の保管や配送方法など細かなカスタマイズは難しい点がデメリットです。そのため、ECサイトで取り扱っている商品と相性の良い倉庫を選ぶことが大切です。

倉庫サービス主体型

メリットデメリット
商品に合わせて最適な保管方法を提案してくれる
委託できる範囲が広くカスタマイズ性に優れている
自社のニーズに柔軟に対応可能
委託する業務範囲が多いほど費用が高くなる

倉庫サービス主体型は、カスタマイズ性を求める企業におすすめです。

倉庫によってサービス内容は異なり、下記のような流通加工に対応しています。

  • 電化製品やパソコンの組み立て
  • 木材・ガラス材・生鮮食品のカッティング

タグ付けやラベル貼り、梱包などの自社のニーズに柔軟に対応することも可能です。ただし、カスタマイズ性に優れている分、委託する業務が多いほど費用は高くなるので注意しましょう。

業種特化型

メリットデメリット
取り扱う商品の最適な環境で保管・流通加工が可能
必要な機械が揃っている
在庫管理が得意ではない

業種特化型は、特定の業種で取り扱われる商品に対して、保管に最適な温度管理や流通加工ができます。そのため設備費用を削減したい事業者や、特定の商品を扱っている事業者におすすめです。

たとえば、アパレル業界では検針やプレス加工などの流通加工が必要です。

業種特化型の倉庫にはミシン・検針器が置いてあるので、その場でほつれの修理、検品に対応できるメリットがあります。自社で物流倉庫を設置・維持する場合は、それなりの費用がかかります。

機械や設備が整っている業種特化型の倉庫を利用すれば、高い費用対効果が見込めるでしょう。

システム会社主体型

メリットデメリット
コストを抑えられる3社間で認識のズレが生じるとトラブルに繋がる可能性がある

システム会社主体型の倉庫は、物流システムの会社が物流倉庫と提携しているサービスの倉庫のことをさします。

物流業務がシンプルな事業者におすすめです。

事業者がシステム会社に相談し、自社の商品や希望に合う倉庫を紹介してもらえるため、最適な倉庫探しができるメリットがあります。

また運用がシステム化されているため、コストを抑えられる点も魅力です。

ただし物流倉庫と直接やりとりしないため、3社間で認識のズレが発生しトラブルにつながる可能性があります。

システム会社に相談する際に、自社の意見や要望を細部まで伝えてコミュニケーションを行うことが大切です。

まとめ:EC物流倉庫はトータル費用で予算を決めることが重要!自社に最適な倉庫を見つけよう

EC物流倉庫を利用する際は、さまざまな項目で費用が発生するため、トータルでかかる費用を事前に把握しておくことが大切です。

  • 基本料
  • 倉庫保管料
  • 人件費
  • 電気料金
  • 入庫費用
  • 出荷料
  • その他の変動費

業務をマニュアル化したり物流管理システムを導入したりすることで、業務の効率化を図れてコスト削減に繋がります。また、EC物流倉庫を選ぶ際は自社の商品との相性や物流業務などを考慮して最適な倉庫を見つけることが大切です。

ぜひ本記事を参考にして、自社に合う倉庫を見つけて快適な環境でEC事業を行いましょう。