「商品の保管場所が埋まってきたから、物流業務を任せて本業に注力したい」
このような課題をお持ちではないでしょうか?
最近では、自社で商品を保管せず物流倉庫を利用する企業が増えています。
この記事では、ネットショップを運営する方が、初めてEC物流倉庫を選ぶための知識を解説しています。
物流倉庫の知識をつけることで事業全体の最適化につながるので、ぜひ参考にしてください。
EC物流倉庫とは?特徴や種類を解説
EC物流倉庫とは、ネット通販やネットショップの物流業務を専門で扱っている倉庫です。
Amazonなどのネットショッピングモール型ECサイトで出店、または自社でネットショップを運営する会社が利用しています。
スマートフォンの普及や在宅時間の増加により、オンライン上で商品を購入する機会も多くなりました。そのため、EC物流在庫の需要は年々高まっています。
EC物流倉庫の特徴
EC物流倉庫の特徴は、個人向けの出荷が主なことです。
個人のお客様の場合、注文後の出荷対応の早さ、梱包の丁寧さなど質の高い対応が求められます。
またキャンペーンのチラシ同封や、プレゼント用のラッピングなど柔軟な対応ができる倉庫が多いです。
EC物流倉庫の種類
EC物流倉庫の種類は4つに分かれます。
- 販売を主体とした倉庫
- 業種に特化した倉庫
- 倉庫サービスをメインとした倉庫
- システム会社が提携している倉庫
物流業務をどこまで委託したいか、事業者の特徴と合わせて選びましょう。
1.販売を主体とした倉庫
商品を預かり、出荷、顧客対応など、物流業務を一貫してサポートするEC物流倉庫です。
有名なところでは、Amazonが運営する「FBA(フルフィルメントBy Amazon)」があります。
商品の出荷などはもちろん、返品手続きやギフトラッピングなどフルサポートで対応できるのが特徴です。
関連記事:Amazon(FBA)倉庫とは?納品方法や注意点を解説
2.業種に特化した倉庫
特定の業種に特化した流通・加工をおこなう倉庫です。
食品であれば温度を調整する機能を搭載した倉庫、アパレルであれば修理を行う倉庫があります。
3.倉庫サービスをメインとした倉庫
基本は商品の入庫から保管がメインですが、倉庫によっては出荷やラッピングまで対応しています。
販売を主体とした倉庫と役割は似ていますが、物流業務の一部を委託できるためコストを抑えたい場合に活用できます。
4.システム会社が提携している倉庫
在庫の保管、管理をシステム化している倉庫です。他の種類の倉庫と連携したハイブリッド型も存在します。
倉庫内の運用をシステムで対応しているため、費用を安価に抑え管理も容易なことが特徴です。
ただし、システム化している分、イレギュラーな対応はしにくい弱点もあります。
EC物流倉庫の委託費用
物流倉庫の費用は、毎月定額に発生する「固定費」と、入出庫に伴い発生する「変動費」の2つです。
固定費は商品の個数、預ける単位、使うシステムにより増減します。
一方、変動費は預ける商品の種類やサイズにより金額が変わります。
それぞれ、具体的に見ていきましょう。
固定費
固定費の項目は以下の通りです。
項目 | 相場 |
---|---|
倉庫保管料(坪単価) | 2,700〜7,000円/月 |
システム利用料 | 20,000〜50,000円/月 |
業務管理費 | 10,000〜50,000円/月 |
倉庫保管料は個数単位で契約する個建て、スペース単位で契約する坪建てなど、倉庫により借り方が異なります。
また食品など冷蔵が必要な場合は、追加料金が発生するケースが多いです。
自社の商品の取り扱う商品のサイズ、個数、特徴を踏まえて、どの借り方が適切か選びましょう。
変動費
変動費の項目は以下の通りです。
項目 | 相場 |
---|---|
デバンニング料 | 20,000〜35,000円/回 |
入庫料 | 10〜30円/個 |
検品料 | 10〜100円/個 |
ピッキング料 | 10〜30円/個 |
梱包料 | 150〜300円/個 |
配送料 | 400〜12,00円/個 |
変動費は入出庫の度に料金が発生します。入出庫の機会が多い会社は、なるべく単価の安いところを選びましょう。
細かい検品の有無など対応できる倉庫が分かれる点、委託内容により価格が高くなる点は注意が必要です。
EC物流倉庫を利用する3つのメリット
物流倉庫を利用するメリットは3つあります。
- 本業に集中できる
- 物流業務の品質を統一できる
- 繁閑期も対応可能
物流業務をアウトソーシングすることで、お客様満足度が向上し、売上増加に繋がるケースもあります。
それぞれの項目を見ていきましょう。
1.本業に集中できる
物流業務を自社で対応する場合、保管場所の確保・管理者の採用・商品管理の手間など負担がかかります。
また、規模が拡大すると保管場所を増築しなければならず、設備投資も高額です。
その点、物流倉庫を利用すれば、管理の稼働も倉庫の整備も必要ありません。時間や場所、お金の効率化につながります。
余力ができたリソースを本業に注力すれば、売上も伸ばしやすいでしょう。
2.物流業務の品質を統一できる
物流倉庫を利用すれば、ノウハウを持つ担当者が物流業務を実施するため、品質を統一できます。
EC運営会社はお客様と直接触れ合う機会がないため、商品の印象が満足度に直結します。
受け取りの印象は商品だけでなく、梱包の丁寧さや配送までの時間など全てで判断されます。
そのため質の高い物流倉庫を選べれば満足度が向上し、口コミでの拡散、リピーターの獲得にも繋がるでしょう。
3.繁閑期も対応可能
繁閑期に対応できるかは、ビジネスにおいて重要です。
自社で物流業務をすると繁忙期は人員を多く、閑散期は人員を少なくするなど調整が必要です。
人件費だけでなく、採用者の育成・指導などを含めると時間もかかります。
その点、物流倉庫を利用すれば繁閑期に合わせて人員を増減してくれ、育成の手間もなくなります。
余分な稼働と心配をしなくて済むことも、物流倉庫を利用するメリットです。
EC物流倉庫を利用する3つのデメリット
EC物流倉庫を利用するデメリットも見てみましょう。
- コストが発生
- 物流業務ノウハウが蓄積されない
- 現場が確認しにくい
物流倉庫以外にも共通しますが、アウトソーシングする上で知っておきたい項目です。
それぞれ詳しく解説します。
1.コストが発生
物流業務を委託するにはコストが発生します。
コストは固定費、変動費によって分かれますが、商品のサイズが大きいものや、検品に手間がかかるものは比較的コストが高くなります。
また最近では、会社もオンライン販売をおこなう会社が増え、倉庫が不足するケースも発生しています。
人気のある倉庫のコストは徐々に上がっているため、委託内容に見合ったサービスが受けられるのか判断しましょう。
2.物流業務ノウハウが蓄積されない
物流業務を委託した場合、ノウハウが自社に蓄積されません。
規模が拡大していくと、自社で物流業務を管理した方がコストを抑えられるケースもあります。
ただし、それまで物流業務をしていなければ、効率的に運営できません。
さらに、迅速かつ正確なオペレーションを構築するには長い時間がかかります。
物流業務ノウハウを自社に溜めなくて良いか。事前に考えておきましょう。
3.現場が確認しにくい
物流倉庫では商品の配達ミスなどトラブルが発生します。
しかし倉庫が近くにないと現場を確認できず、伺ってもすぐに入らせてもらえないケースもあります。
現場に伺いたくても倉庫が近くにない場合や、中に入るには業務を中断する必要がありすぐには入れないこともあります。
見に行けない際は委託先から要因と再発防止策の報告を受けられます。
ただし時間がかかりすぐに対策ができない場合があることは知っておきましょう。
EC物流倉庫の選び方のポイント6つ
EC物流倉庫の特徴から、失敗しないためのポイントは6つあります。
- 立地とコストの関係
- 作業を楽にするシステム連携
- 出荷など質の高さ
- 迅速なオペレーション
- 返品などのトラブル対応
- ギフトラッピングなど付随業務
全て満たすところを選ぶことで、物流倉庫を信頼し本業に集中できます。
1つずつ内容を説明します。
1.立地とコストの関係
EC物流倉庫を選ぶ際は保管料に着目しがちですが、立地場所と配送料含め全体コストを見る必要があります。
保管料は中心地ほど高く、郊外ほど安い傾向があります。一方で配達コストはその逆になることが多いです。
そのため、立地で確認する点は2つあります。
- 商品の製造先または仕入先のエリア
- 購入されるお客様が多いエリア
中間あたりに位置する倉庫があれば無駄なコストが発生しません。
特定のエリアがない場合は、配送に便利な幹線道路近くの倉庫もおすすめです。
2.作業を楽にするシステム連携
EC物流倉庫に管理システムが導入されているか確認しましょう。
預けた荷物の個数やサイズ、種類、入荷日時、出荷予定日、ステータス、在庫数などをシステムに登録し確認ができます。
帳簿と実在庫のズレをすぐに確認できるので、遠くて倉庫に行けない事業者にとっては重宝するでしょう。
3.出荷など質の高さ
EC運営会社にとって、商品を正確かつ丁寧に送ることはお客様の印象を左右します。
誤った商品を送ってしまうとお客様は悪い印象を抱くため正確さは必須です。
さらにお互いの顔が見えないからこそ、お礼の手紙を添えるなど丁寧に対応することで、他社と差別化を図れます。
物流倉庫の実績を見て、仕事を依頼できるのか判断しましょう。
4.迅速なオペレーション
ネットショップで購入すれば基本的に数日で商品が届きます。しかし、商品の到着までに期間が空くとお客様の満足度は低下します。
商品を迅速に発送するためには、倉庫内の環境整備が欠かせません。
商品が整理整頓されているか、よく注文される商品は前の方にあるかなど、注文後すぐに対応できる状態にあるかチェックしましょう。
5.返品などのトラブル対応
オンライン上で商品を購入する場合、実物を確認できません。
手元に届いた商品がイメージと違ったり、サイズが合わなかったりと、実店舗より返品率が高い傾向です。
返品時は、出荷された商品のステータス確認など、見なければならない項目が多いです。
そんな時でも、スムーズに手続きができることで、満足度の維持につながります。
次回購入に繋がることもあるので、返品時の対応は事前に決めておきましょう。
6.ギフトラッピングなど付随業務
クリスマスやお歳暮などは、通常とは異なるラッピングが必要になります
実店舗の場合、店舗でラッピングしてもらい商品を届けます。
一方ネットの場合、購入した商品のラッピングに対応していれば、直接送り先へ配送することが可能です。
直接送ることで注文者は余分な配送料を払う必要がなく満足度も向上します。
ラッピングだけでなくメッセージカードの同封や季節やイベントに合わせたカスタマイズ対応ができるとなお良いでしょう。
まとめ:EC物流倉庫を活用して売上げアップにつなげよう
EC物流倉庫は個人向けの出荷が多く、物流業務の正確さ、丁寧さ、早さが求められます。
システム連携を強化している倉庫であれば、タイムリーに実在庫の確認やステータスのチェックができるため重宝します。
また、プレゼントを購入した際のラッピング対応やトラブル対応も行えると、お客様満足度が上がりやすいです。
契約する際は保管料だけでなく物流全体のコストに着目すること、物流ノウハウは自社に蓄積されないことは注意しましょう。
上手にアウトソーシングができれば自社の売上アップに繋がるため、前向きにご検討ください。