商品を品質の高い状態で保管し、迅速に出荷するために、在庫管理は重要です。
在庫管理には、ミスの少なさと質の高さのどちらも求められるため、コストがかかります。
しかしコストが増加すれば、経営難に陥る可能性もあるため、費用を削減しなければなりません。
そこで今回は、在庫管理にかかる費用の内訳や在庫管理システムの費用相場、具体的な費用削減方法を紹介します。
本記事を参考に、自社で抱えている在庫の管理体制が整っているか、確認してみましょう。
在庫管理が与える悪影響
在庫管理の影響から、経営を圧迫されることもあります。
保管スペースが余っているから、欠品すると顧客に迷惑がかかるからと、多くの在庫を抱えてしまうのは悪い例です。
在庫管理は以下のような悪影響を与えます。
- キャッシュフローの圧迫
- 処分にもコストがかかる
それぞれ深掘りしていきます。
関連記事:在庫管理とは?発送代行などの効率化システムについても解説
キャッシュフローの圧迫
商品の生産には、発注、支払い、入荷などの工程があります。商品を再び現金にするには、販売しなければなりません。
また、販売先によっては費用が支払われるまでタイムラグが発生します。
多くの在庫を抱えてしまうとその分、費用がかかり資金が圧迫されます。
最悪の場合、支払いに充てる予算が用意できず、倒産に追い込まれるかもしれません。
現金が少ない期間が続いてしまうと、経営に悪影響となるため、必要以上に在庫を増やさないようにしましょう。
処分にもコストがかかる
多くの在庫が売れ残った状態になると、販売促進のため値下げを行うのが一般的な手段です。
値下げすることにより、利益は少なくなりますが現金化できます。
しかし、値下げしても売れ残った場合、廃棄することになるでしょう。
商品によっては在庫の廃棄にコストがかかる場合もあります。
そのため、必要なときに適切な数が用意できる管理体制を整えましょう。
在庫管理にかかる費用やコストの内訳
在庫管理にかかる費用は、以下の6種類に分けられます。
- 設備費
- 保管費
- 人件費
- 棚卸評価損
- 価格補償費
- 返品費
それぞれ解説します。
設備費
設備費は、在庫を管理する倉庫の建築費、光熱費、在庫の運搬に必要なフォークリフトの購入費などが該当します。
扱う商品によっては、温度管理できる環境を作るために空調設備も必要です。
在庫数に合った、適切な規模の設備にすることで、設備費を抑えられます。
保管費
保管費は、在庫を保管する倉庫にかかるコストを指します。
また、自社倉庫と外部倉庫によってコストに違いがあります。
- 自社倉庫の場合:建築費、光熱費、減価償却費、保険料、人件費、物流加工費
- 外部倉庫の場合:保管費
外部倉庫を利用する場合、商品の特徴や寸法、重量で保管単価を決定し、保管数に応じた保管費を支払います。
人件費
人件費は、商品のピッキングや在庫入れ替え、運搬の業務にかかるコストです。
在庫の種類や数が増えると作業量が多くなるため、人件費も高くなります。
棚卸評価損
棚卸評価損は、在庫の品質が低下することで起きる損失のことです。
災害による損傷や、経年劣化、需要の低下によって棚卸評価損が生じます。
価格補償費
価格補償費は、小売店が値下げによって発生した損失を補填するための費用です。
たとえば、小売店に500円の商品を納入し、小売価格700円で販売した場合、200円の利益が得られます。
しかし、キャンペーンを行い小売価格を600円に値下げすると、利益が100円となり本来の利益が得られません。
そこで、損失を補填するために卸価格を400円に下げて、小売店側に差額を補填する費用を価格補償費と呼びます。
返品費
返品費は本来得られるはずだった費用と、返品に伴う物流コストの合計です。
返品された商品の保管費や廃棄にかかるコストも返品費となります。
在庫管理の費用相場
在庫の種類や数が増えると管理が難しくなるため、在庫の余剰や欠品を引き起こしやすくなります。
在庫管理のミスを減らし、作業を効率的に進めるために、システムの導入がおすすめです。
利用するシステムによって在庫管理の費用は異なるため、以下4種類に分けて費用相場を紹介します。
- クラウド型の場合
- オンプレミス型の場合
- スクラッチ型の場合
- オープンソース型の場合
それぞれの相場は以下になります。
在庫管理システムの種類 | 初期費用 | ランニングコスト(月額) |
クラウド型 | 0〜10万円 | 数千〜数万円 |
オンプレミス型 | 数百万〜千万円 | 0〜10万円 |
スクラッチ型 | 数百万〜数千万円 | 数万〜数十万円(サポート体制によって変動) |
オープンソース型 | 0円〜(販売価格が非公開のシステムは要問い合わせ) | 数千〜数万円(サポート体制によって変動) |
クラウド型の場合
クラウド型在庫管理システムは、インターネット経由でアクセスして利用します。
どの業界でも利用できる汎用性の高さと、手軽に導入できるのがメリットです。
機能性をこだわりたい場合、初期費用が10万円程度になることもありますが、中には0円から利用できるシステムもあります。
ランニングコストは在庫の数や種類によって変動しますが、月額数千円〜数万円に収まる場合が大半です。
また、クラウド型の場合、利用するプランによっては出荷数に注意が必要です。
一定の件数を超えると単価が変わることもあるので、在庫の規模に合ったプランを利用しましょう。
オンプレミス型の場合
オンプレミス型在庫管理システムは、企業のサーバーにシステムを構築するため、自社内に設置することになります。
一つの業界に特化した企業や、出荷数が多い企業におすすめです。
オンプレミス型の場合、サーバーやネットワーク機器、ライセンス料の購入などで、数百万〜千万円の初期費用が必要になります。
初期費用が高い一方、ランニングコストは高くても10万円程度で、システム会社に依頼するサポートの幅にもよります。
クラウド型と違い、ランニングコストが変動しないため、長期的に利用しやすいです。
また、オンプレミス型の場合、自社でサーバーを管理するための人材が必要になるため注意しましょう。
自社でセキュリティ性能の高いシステムを運用したい場合はオンプレミス型がおすすめです。
スクラッチ型の場合
スクラッチ型在庫管理システムは、独自のシステムを一から構築することになります。
企業のニーズに沿ってカスタマイズできるのが特徴です。
スクラッチ型の初期用は、構築するシステムの規模や要件、機能によって決まるため、相場と呼べる基準がありません。
数千万円の費用がかかることもあるため、慎重に検討して導入しましょう。
オープンソース型の場合
オープンソース型在庫管理システムは、オープンソースソフトウェアとして公開されています。
無料公開されているシステムも存在します。有料で価格が公開されていないソフトウェアも多く、確認には問い合わせが必要です。
オープンソース型の特徴は、知識があれば自身でカスタマイズできることです。有料サポートのソフトウェアもあるため、知識がなくても自社のニーズに合わせてカスタマイズできます。
サポートの手厚さは利用するシステムによって幅があるため、導入前に確認しておきましょう。
在庫管理の費用の計算方法
在庫管理の費用を計算するのに役立つのが、在庫金利です。
在庫金利とは、在庫を持つことで発生する費用を架空の金利に置き換えた指標です。
そのため、実際に支払うことはなく、コストを把握するために会計上で用いられます。
在庫金利は以下などのコストを元に設定します。
- 在庫を購入するために調達した資金の借入金利
- 在庫管理するための倉庫にかかる賃料
- 倉庫の管理費
500万円の在庫を使い、200万円の利益が出たと仮定します。
前述した3つのコストを参考に、在庫金利を5%とした場合、以下の計算式が成り立ちます。
■200万円の利益を得るためにかかった在庫管理費用
在庫金額(500万円) × 在庫金利(0.05) = 25万円
■在庫金利を加味した利益
200万円 – 25万円 = 175万円
概算になりますが、在庫管理にかかるコストの把握に役立ちます。
在庫管理の費用を削減する方法
以下の方法を用いることで、在庫管理の費用を削減できるでしょう。
- 在庫管理システムを導入する
- 適正在庫数を把握する
- 受発注業務を効率化する
- アウトソーシングする
それぞれ解説します。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムの導入にはコストがかかりますが、在庫数を正確に記録できるため、ヒューマンエラーを阻止できます。
トラブルが減ることで、効率的な在庫管理が可能です。
在庫状況は保管場所から離れた位置でも確認できるため便利です。
また、在庫管理システムを使うことで、タイムラグなく在庫数が確認できます。保管場所が異なる在庫も一元管理できるため、ミスが起きづらくなります。
適正在庫数を把握する
適正在庫数を把握できれば、在庫が不足することも余剰することもありません。
在庫が不足すると機会損失になりますし、余剰するとキャッシュフローを圧迫し、処分となる可能性も出てきます。
最適な状態を維持できれば企業への損失が出ないため、費用が削減できます。
受発注業務を効率化する
受発注業務がアナログな手法で行われる業者では、多くの人件費がかかります。
システムを導入し、人員を減らすことで効率よく受発注できるようになり、人件費も抑えられます。
また、システムを導入すれば、人為的なミスも軽減されるほか、タイムラグがなく在庫管理できるようになるでしょう。
アウトソーシングする
アウトソーシングを利用することで、受発注作業、検品、ピッキング、梱包などに必要な人件費が軽減されます。
外注すれば、保管場所を自社で用意する必要がないため、設備費もかかりません。
梱包や出荷の業務を請け負ってくれる業者を選べば、更に人件費を減らせるため、コア業務に多くの人員を充てられます。
まとめ:在庫管理の費用を削減できる経営を目指そう
在庫の数は余剰しても不足しても経営に悪影響となるため、多くの企業を悩ませる課題です。
そのため、適正在庫数を理解できていない企業は、出荷データを元に算出しましょう。
システムを導入しアウトソーシングを活用してプロに依頼することで、ヒューマンエラーの発生率が少なくなります。
在庫管理が引き起こすミスが経営の悪化につながることもあるため、費用を削減し安定した経営を目指しましょう。