多くのものがインターネットで購入できる時代となり、ECは生活の一部になりました。
現在EC事業に取り組んでいない方の中にも、EC事業への参入を目指す方は多いのではないでしょうか。
この記事では、EC事業に参入するために必要な基本的な知識をまとめています。
新規で参入を検討している方はぜひ最後まで読み、事業の成功確率をあげましょう。
EC事業とは?
EC事業とは、”Electronic Commerce”の略で、電子商取引を意味します。
本来はインターネット上の取引を指しますが、一般的には商品やサービスをECサイトで販売することと認知されています。
ネットショップで買い物をすることが当たり前になり、EC事業が普及していることは多くの方が実感しているでしょう。
ここでは実際にどの程度EC事業が普及しているのか、売上と事業者数をもとに解説します。
EC市場の売上推移
EC市場の売上規模はBtoB、BtoC問わず上昇しています。
令和4年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、22.7兆円に拡大しています。また、BtoB-EC市場規模は420.2兆円に増加しました。
これまでの傾向から、今後もEC市場規模は伸びていくことが予想できます。
EC市場の事業者数
EC市場の中でも、特に物販系の分野では毎年、市場規模が拡大しています。
売上の増加は事業者数の増加と密接に関係するため、EC市場に参入する事業者数も売上に比例して増加しているでしょう。
商品を販売している方は、今後EC化を避けて通るのは難しいと予想できます。
EC事業者の業務内容
EC事業者の業務内容は大きく分けると以下の2種類です。
- フロント業務
- バックエンド業務
ここではそれぞれの意味と主な業務内容を解説します。
フロント業務
フロント業務はお客様が商品を注文するまでの業務を指します。
言い換えると、売上に直接的に関わってくる業務です。
主なフロント業務は以下の通りです。
- 商品開発、サービス企画
- ECサイトの作成、運営
- Webマーケティング
- カスタマーセンター
EC事業を行う上で、コア業務になることが多く、立ち上げの際に特に力を入れるべき業務といえます。
バックエンド業務
バックエンド業務はお客様が商品を注文したあとの業務を指します。
お客様満足度に関わるサービス業務です。
主なバックエンド業務は以下の通りです。
- 受発注確認
- 在庫管理
- 配送
- 決済処理
売上に直接的に関わることの少ない業務ですが、お客様満足度を向上し、リピート注文に繋げるために必要な業務といえます。
EC事業の立ち上げに必要な5つの準備
EC事業にビジネスの範囲を広げる場合以下の5つの準備が必要です。
業務内容 | 実施の要否 |
---|---|
事業計画の策定 | 必須 |
ECプラットフォームの選定 | 必須 |
サイト作成 | 必須 |
商品開発、製造 | 任意 |
物流体制の構築 | 任意 |
実は必須の業務は3つしかありません。
実施が任意の業務は、元々事業を行っている場合は流用もできるため、事業の状況に合わせて取り組みを決めましょう。
ここでは業務の内容について解説します。
事業計画の策定
事業計画の策定とは以下の業務を指します。
- 目的、目標の明確化
- 市場分析
- 競合調査
- EC事業で取り扱う商品の選定
- コア業務の決定
EC事業を迷わず進めるためには、最低限これらの内容を検討しておくことが大切です。
特に目的と目標はしっかりと定めることで、EC事業を運営する中で迷った際の指針となります。
また、EC事業をスタートすると、お客様の声が届かなくなるため、事業計画の時点では直接お客様の声を確認すると良いでしょう。
ECプラットフォームの選定
ECサイトを運営するインターネット上の場所をECプラットフォームと呼びます。
ECプラットフォームは大きく分けると以下の2種類です。
プラットフォーム | 特徴 | おすすめの企業 |
---|---|---|
自社ECサイト | ・自社で柔軟にカスタマイズ可能 ・決済方法なども自社で決定できる | 大企業 |
Amazonや楽天など既存サイト | ・出店が簡単 ・認知があるため集客不要 | 中小企業 |
自社ECサイトは自由にカスタマイズできますが、すべての業務を自分で行う必要があります。
たとえば、集客や決済業者とのやり取り、サイト制作などです。
一方で、Amazonや楽天といった既存サイトの場合、面倒な手続きが不要。EC事業に必要なものはすべて揃っているため、簡単に始められます。
ただし、既存サイトのルールに則した運営が必要です。
サイト作成
ECサイトは、自社の商品を取り扱うインターネット上の店舗のようなものです。
自社サイトの場合だけでなく、Amazonや楽天を利用する場合にも、商品を紹介するための場所は作成します。
サイト制作はプログラミングが必要なものから、絵を描くようなイメージで誰でも簡単に作成できるものまで方法はさまざまです。
基本的に難易度が高い方法ほど自由度も高く、逆に難易度が低い方法は自由度も低い傾向があります。
商品開発、製造
すでに事業を行っており、商品を持っている場合は開発・製造を省略できます。
一方で、EC事業を伸ばすための施策として、ネット限定商品の開発などに取り組む方もいます。
商品開発のポイントは事業計画を中心に考えることです。
既存の商品だけで、EC事業の目的や目標を達成できる場合、商品開発は必要ありません。
反対に既存商品だけでは達成が困難な場合、商品開発にリソースを集中すべきです。
物流体制の構築
物流体制の構築も既存の事業で構築済みの場合、新しく取り組む必要はありません。
しかし、実際には多くの会社が物流体制には力を入れています。
理由は以下の2点です。
- 物流の量も距離も大きく伸びる
- EC事業の物流は大切な付加価値につながる
特に後者はAmazonを筆頭に短納期を売りにするEC事業者が多いです。
短納期がスタンダードになりつつあるため、マイナスのイメージを与えないレベルの物流はすべての事業者に必要といえるでしょう。
EC事業者がもつ5つのメリット
EC事業者がもつ5つのメリットは以下の5つです。
- 事業の将来性がある
- 売上が大きく伸びる可能性がある
- 固定費が少ない
- 紹介可能な商品に上限がない
- 事業の撤退が容易
EC事業に参入する企業が多いことには明確な理由があります。
メリットを理解した上で参入を決めましょう。
それぞれのメリットについて解説します。
事業の将来性がある
EC事業の市場規模と事業者数は拡大を続けています。
ビジネスを考える際、大切なのは伸びる市場に身をおくことです。
その点、EC事業は今後も伸び続けると予想できるため、多くの方にとって魅力的な事業といえます。
売上が大きく伸びる可能性がある
EC事業は店舗事業と比較して、以下のように対象顧客の数が圧倒的に多いです。
店舗事業 | 店舗に来店可能な距離に住んでいる方が対象 |
EC事業 | インターネットを利用できるすべてのユーザーが対象 |
見込み顧客の数は売上の上限に影響します。
EC事業ではインターネット上のユーザーすべてが見込み顧客となるため、売上の上限が高く、売上が伸びる可能性も高いです。
固定費が少ない
EC事業は店舗ビジネスと比較して以下の観点で固定費が少ない傾向があります。
家賃 | 店舗家賃が不要。サーバー代のみのため安価。 |
人件費 | 必要最低限の人数で運営可能。自動化できる範囲も広い。 |
光熱費 | サーバー代に含まれるため不要。 |
配送料や倉庫運営費などは、店舗ビジネスもEC事業も変わらないため、トータルの運営コストはEC事業の方が安いです。
紹介可能な商品に上限がない
EC事業では、商品ページを作成するだけで商品の紹介ができます。
そのため、以下のように店舗ビジネスと比較すると紹介可能な商品数に大きな差があります。
店舗事業 | 店舗の棚スペースが上限。実物の商品を陳列する必要がある。 |
EC事業 | 商品ページの作成のみ。実物は不要で商品ページの上限はない。 |
EC事業では、商品を紹介できないことによる機会損失がなくなるでしょう。
事業の撤退が容易
事業を撤退する際の難易度は以下の要素で決まります。
- 雇用の維持ができるか
- 既存事業に影響を与えないか
- お客様に迷惑をかけないか
- 固定費を払い続けられるか
EC事業の場合、雇用は最低限であり、固定費も店舗事業と比較すると安価です。
また、既存事業やお客様への影響は、店舗ビジネスで補えるものも多いでしょう。
たとえば、一定期間内は配送を続けるなどです。
撤退が容易にできるため、EC事業はリターンが大きくリスクの小さい事業といえます。
EC事業者がもつ3つのデメリット
EC事業者がもつデメリットは以下の3つです。
- 顧客の顔が見えない
- 競合が増える
- 集客が難しい
事業を行う際はメリットだけでなく、デメリットにも目を向けて選択しましょう。
それぞれ解説します。
顧客の顔が見えない
EC事業では、ネット上で注文までのすべての行動が完結するため、お客様と接することがありません。
お客様と直接会話しないことで、以下の情報が欠如します。
- 購入を決めた理由
- 誰のために購入したのか
- 誰と選ぶのか
- 購入前に何を確認したのか
実際にお客様に会うことで、ペルソナを具体化できます。
ペルソナが具体化できれば、効果の高いマーケティング施策や、ニーズを捉えた商品開発が可能です。
そのため直接、お客様と会えない影響は大きいといえます。
競合が増える
EC事業は対象となる見込み顧客も増加しますが、同時に競合他社と呼べる相手も増加します。
店舗事業と比較した場合の違いは以下の通りです。
店舗事業 | 見込み顧客の生活圏内にある店舗のみが競合 |
EC事業 | インターネット上にあるすべてのECサイトが競合 |
店舗事業であれば、近くの店舗をすべて対策することもできます。
一方EC事業では、競合の数が膨大なため、ベンチマークの対象を見極めた対応が重要になるでしょう。
集客が難しい
EC事業は店舗運営とは異なるマーケティング手法が必要です。
リスティング広告やSEO対策など、これまで経験のない分野にも取り組む必要があります。
店舗事業では、地域の方との繋がりで売上が伸びることもありますが、EC事業は完全に実力の勝負です。
Amazonや楽天といった既存サイトへの出店をしない方は特に集客は意識して取り組むべきでしょう。
EC事業者がビジネスを成功させる3つのコツ
EC事業を成功させるコツは以下の3つです。
- リソースを集中すべき箇所を決める
- 外注をうまく利用する
- お客様を知る機会を作る
それぞれ解説します。
リソースを集中すべき箇所を決める
EC事業を行う際に大切なのは「やらない業務を決める」ことです。
やらない業務を決めることで、リソースを集中すべき業務がわかります。
EC事業は売上の上限が高い分、以下のようにできることも多いです。
- Webマーケティング
- ECサイト用の商品開発
- 物流改善
- カスタマーセンター設立
すべてに力を入れるためにリソースを増やす場合、EC事業の強みである固定費の低さや、撤退のしやすさを失います。
最初のステップは今あるリソースをひとつの業務に最大限集中し、事業を伸ばすことを考えましょう。
外注をうまく利用する
たとえば、リソースを集中する業務以外は積極的に外注すべきです。
- サイト構築
- Webマーケティング
- コールセンター
- 物流
- 倉庫管理
リソースの集中をする場合、その他の業務は外注化することで、変動費としてEC事業を進められます。
コア業務のみ固定費として保有し、自社の強みを作りましょう。
お客様を知る機会を作る
EC事業では、すべてWeb上で買い物が完結するため、お客様と話す機会がありません。
そのため、お客様を知るためには意図的に話す機会を設ける必要があります。
たとえば以下のような取り組みがおすすめです。
- 購入者へのインタビュー
- 対象者へのアンケート
すべてメールや電話でも可能ですが、直接会うことで得られる情報は多いため、時間とお金が許す限り直接会う機会を作る方が良いです。
EC事業者はポイントを押さえた運営が大切
EC事業は成長性が高く魅力的な事業です。
一方で、ライバルも多く、全員が成功できるわけではありません。
EC事業を立ち上げ、運営する際のポイントをこの記事では解説しました。
これから新しく参入する方はぜひ参考にしてください。