物流センターのひとつに「TC(トランスファーセンター)」があります。TCとは在庫を持たず商品の積み替えを行うセンターのことです。しかし、TCに物流を委託する利点やどのような業態において有効なのか分からない方もいるでしょう。
そこで本記事では、トランスファーセンターの概要や物流委託するメリット・デメリットについて解説します。物流センターはDCやPCといった機能別に種類が分かれているため、委託の際には違いを押さえて最適なセンターを選択することが重要です。トランスファーセンターへの委託を検討している方はぜひ参考にしてください。
TC(トランスファーセンター)の特徴とは?
TC(トランスファーセンター)とは、センター内に在庫を持たずに荷物の積み替えを行う物流センターのことです。センター内では到着した荷物を開梱・検品し、店舗別などへの仕分けをして出荷します。
在庫を持たず、商品が通過する機能から「通過型センター」と呼ばれることもあります。ここでは、トランスファーセンターの概要として以下の4点を解説します。
- TC1とTC2の違い
- クロスドッキングについて
- TCでの作業の流れ
- 主な実例
TC1とTC2の違いはピッキングの有無
トランスファーセンターには「TC1」と「TC2」の2種類があり、違いは「ピッキングの有無」です。
タイプ | 特徴 |
TC1 | ・発送先の店舗別に梱包された状態で入荷・検品をして発送先ごとに積み替えを行う |
TC2 | ・複数の店舗に発送する商品がまとめて入荷・開梱してピッキングを行い、仕分けたうえで積み替える |
入荷時点で発送先別に商品が梱包されているTC1型は、中身をピッキングして仕分ける必要がないのが特徴です。そのため、商品到着後は中身の検品だけを行い、それぞれの配送先のトラックへと積み替えます。
対して、TC2型は複数の発送先の商品がまとめて入荷するため、荷物の開梱後にピッキングを行って配送先別に梱包する作業が発生します。作業工程が増えるため、人員や細かな入出荷管理が必要となります。
クロスドッキングもTCの一種
トランスファーセンターでは荷物の開梱・検品をしない場合もあり、「クロスドッキング」と呼ばれます。パレットやコンテナ単位での積み替えのみを行い、通常のトランスファーセンターにおける開梱作業や、ピッキング作業がないのが違いです。
クロスドッキングの主要な例は、ヤマト運輸や佐川急便といった運送業です。顧客から預かった荷物を開梱せず、そのまま発送するのでクロスドッキングにあたります。
トランスファーセンターとクロスドッキングは同一のものとして扱われることもありますが、厳密には作業工程が異なるので押さえておきましょう。
TCでの作業の流れ
トランスファーセンターでの、基本的な作業の流れは以下の通りです。
順番 | 工程 | 内容 |
1 | 入荷 | 各地から荷物がセンターに入荷ので荷物の数を確認する |
2 | 開梱・検品 | 開梱して中身を検品する |
3 | ピッキング・仕分け | 商品を配送先別にピッキングして仕分ける ※TC1では行われない |
4 | 梱包 | 荷物を再梱包する |
5 | 積み替え・出荷 | 配送先ごとのトラックに積み替えて出荷する |
入荷検品や梱包は多くの場合センター側の作業員が行いますが、トラックのドライバーが作業する場合もあります。
主な実例はコンビニなど
トランスファーセンターを活用する主な事例は、大手コンビニエンスストアなどです。配送元からまとめて送られてきた商品を、各地のTCで配送先ごとに仕分けして出荷します。
配送元のセンターからは大量の商品が出荷されていますが、コンビニ各店に届く商品数は少ないため、TCにて小ロットずつに仕分けられます。他にもスーパーマーケットや、食品関連の小売チェーンなど、各店舗に小ロットを高い頻度で配送する場合に有効です。
トランスファーセンターに物流委託するメリット
トランスファーセンターに委託するメリットは、おもに以下の4点です。
- 比較的小規模で作業が可能
- 各店舗への効率的な配送が可能
- 人件費等のコスト削減
- CO2削減など環境への配慮
業務委託を検討している事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
比較的小規模で作業が可能
トランスファーセンターは在庫を持たないという特性上、商品の保管スペースが不要になります。DCやFCといった形態では、荷物を保管しておくための棚やピッキングのための通路確保など、広大な敷地が必要です。
トランスファーセンターの場合は、トラックの荷受けや開梱・検品用のスペースがあれば作業できるので、広い敷地を用意しにくい都市部でも運営できます。
関連記事:物流における保管とは?重要な理由と効率よく行う方法について解説
各店舗への効率的な配送が可能
トランスファーセンターに物流委託することで、各店舗に商品を直送するよりも効率的な配送に繋げられます。小さめの敷地でも運用できることから、都市部にセンターを設けやすく、各店舗への短時間での出荷を実現可能です。
また配送地域が近場になるためトラックの移動時間が短く、台数の削減にも有効です。加えて高頻度での配送ができるため、1回あたりの荷物量が減って配送先での荷受け時間を減らせる利点もあります。
人件費等のコスト削減
トランスファーセンターへの委託は、さまざまなコストの削減にも繋がります。
たとえば、自社で各店舗への商品発送を行うと、作業員に対する人件費が必要です。自社で人員を抱えると、閑散期と繁忙期で増減をしにくいため、費用がかさむおそれがあります。
しかし、物流センターでの委託の場合作業に必要な人員を、物量に合わせて適切に割り振るのが一般的です。閑散期にも人員を抱えることを考えれば、年間トータルでの費用は安くなる場合があります。
作業賃などの費用は各事業者によって異なるので、見積もりを取って自社で出荷するのとどちらがコスト面でのメリットがあるかを比べてみてください。
CO2削減など環境への配慮
トランスファーセンターに限らず、物流センターへの業務委託はCO2削減など環境への配慮にも繋がります。近隣店舗への効率的な配送や、トラックの台数を削減できるといった効果により、排出されるCO2量が削減可能です。
近年では環境省や国土交通省においても、物流事業でのCO2削減対策を促進しており、事業者としてのCO2削減が求められています。こうした環境への配慮の観点からも、トランスファーセンターへの物流委託は有効です。
参考:物流分野におけるCO2削減対策促進事業(国土交通省連携事業)
トランスファーセンターへ物流委託するデメリット
トランスファーセンターに委託するデメリットは、おもに以下の4点です。
- 店舗直送よりも時間がかかる
- 急な注文への対応ができない
- システム導入が不可欠
メリットと見比べて、委託するかを総合的に判断しましょう。
店舗直送よりも時間がかかる
トランスファーセンターへ委託すると、出荷した荷物がセンターに集まるため直送に比べると時間がかかります。そのため、店舗数や発送の頻度が低い場合はトランスファーセンターの利点を活用できません。
店舗数が多く、高頻度での出荷業務が発生している場合に検討してみましょう。人件費や出荷工数の削減につながる可能性があります。
急な注文への対応ができない
トランスファーセンターは在庫を持たないのが基本的な特徴なので、急な注文への対応はできません。誤入荷や破損・汚損などにより急遽商品が必要になった場合も、出荷元から再度手配してもらう必要があります。
また、在庫がないことによりボリュームディスカウントを発揮しにくいのもデメリットです。ボリュームディスカウントとは、大量在庫の仕入れなどによって商品1点あたりの仕入れ単価を安く抑えることです。
DCなどのように在庫を保管する機能があれば可能です。しかし、トランスファーセンターは在庫がないので、別で在庫を保管する倉庫を用意する必要があります。
そのため、トランスファーセンターは製造後すぐに出荷されて消費される、食料品などに向いているのです。
システム導入が不可欠
トランスファーセンターは荷物の入荷後、開梱や検品を経てすぐに積み替えが行われるため、緻密な入出荷管理が重要です。入荷と同時に出荷が行われるので、高度な入出荷管理のシステム導入が不可欠です。
委託の場合はセンター側のシステムを利用することになりますが、物流管理システムの理解や従業員への教育などが必要となります。
TC以外の物流センターを紹介
トランスファーセンター以外の物流センターについて解説します。機能別にセンターの種類が分かれており、おもに以下の4種類です。
- DC(ディストリビューションセンター)
- PDC(プロセスディストリビューションセンター)
- FC(フルフィルメントセンター)
- PC(プロセスセンター)
それぞれの事例も紹介するので、自社の業務形態に応じたセンターを選択しましょう。
DC(ディストリビューションセンター)
DC(ディストリビューションセンター)は、入荷した商品を一旦在庫として保管し、注文に応じてピッキングして出荷するセンターのことです。在庫を持たない「通過型センター」であるTCに対し、DCは「在庫型センター」と呼ばれることもあります。
物流センターとしてはオーソドックスなスタイルで、在庫の保管が発生するため大規模な設備が必要です。TCとは違い棚入れ業務など工数が増えるため、人件費が増大する点がデメリットです。
一方で、各種小売業や家電量販店など店舗内に在庫を大量に持てない場合でも、センターから出荷することで顧客に迅速に商品を届けられる利点があります。家具販売店のニトリなどの大手企業は、自社でDCを持っている場合もあります。
PDC(プロセスディストリビューションセンター)
PDC(プロセスディストリビューションセンター)は、DCに流通加工の機能を付け足したセンターのことです。たとえば、センター内で精肉・鮮魚の加工を行って出荷したり、機械などの部品を一部組み立てた状態で出荷したりする場合に活用されます。
通常のDCでもラベル貼りといった軽作業は行われますが、PDCの場合は冷蔵設備や加工機械などより専門性の高い設備があるのが特徴です。その分、施設の維持管理などに費用がかかり、商品の保管だけでなく加工設備も必要なためさらに広い敷地が必要です。
FC(フルフィルメントセンター)
FC(フルフィルメントセンター)は、商品の保管・出荷だけでなく以下のような業務を包括的に行う物流センターを指します。
- 受発注
- 決済処理
- 顧客対応
- 在庫管理
- 返品
など
代表的な例は、Amazonのフルフィルメントセンターが有名です。近年ではAmazonだけでなく楽天やYahoo!ショッピングなど、大手ECモールにおいても導入が進んでいます。
特にインターネット通販(EC事業)でよく活用される手法で、最低限のオペレーション人員以外をすべてセンター側に委託できます。そのため、人件費の削減に効果を発揮するだけでなく、ノウハウがない事業者でもECサイト運営を始められる点がメリットです。
ただし、利用にあたっては手数料を取られるため、利益を出すためには事業者側の工夫が必要です。
PC(プロセスセンター)
PC(プロセスセンター)とは、流通加工を行い発送する物流センターのことです。長期的な保管機能がない点がPDCとは違います。
スーパーマーケットなど生鮮食品の小売業でおもに利用され、外食産業においては「セントラルキッチン」と呼ばれます。各店舗で加工をするよりも、PCでまとめて加工して各店舗に出荷する方が効率的で、コストの削減にも繋がるのが利点です。
2023年における全国スーパーマーケット協会の調査では調査対象企業の45.3%がプロセスセンターを活用しています。
参考:一般社団法人全国スーパーマーケット協会 2023年年次統計調査
まとめ:高頻度で小ロットの配送にはトランスファーセンターへの委託がおすすめ
トランスファーセンターは在庫を持たず、荷物の積み替えを行う物流センターのことです。コンビニエンスストアなど、各店舗に高頻度かつ小ロットで配送する場合に活用できます。
自社で倉庫を持たなくてもセンターへの物流委託は可能なので、出荷に関わる人件費や工数に悩んでいる事業者の方は委託を検討してはいかがでしょうか。