法人向けの携帯電話を選ぶ際には、「繋がりやすさ(通信の安定性)」が極めて重要です。社員の連絡手段や業務用デバイスとして利用する法人携帯では、圏外や通信不良による業務への支障は極力避けたいところです。そこで本記事では、基地局数・人口カバー率・周波数帯(バンド)・第三者による通信品質の評価という4つの軸から、NTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンク各キャリアの「繋がりやすさ」を比較します。数字は2026年10月時点で公表されている最新の公的データ(総務省)を中心に、出典と時点を明記して解説します。
- 対象読者:企業の情報システム担当者や総務担当者
- 本記事のポイント:料金やキャンペーン情報は扱わず、電波の繋がりやすさに絞って比較します。楽天モバイルも参考として数字を併記します
基地局数の比較 ~エリア展開力の裏付け~
まずは基地局の設置数です。基地局の数は通信エリアの広さや、混雑時に通信を受け止める容量に直結します。ここでは総務省「令和7年度 携帯電話及び全国BWAに係る電波の利用状況調査」(2026年1月公表)から、2025年3月末時点の4G・5G基地局数を比較します。
ドコモ
4G基地局数は約25.9万局と3社の中で最も多く、長年にわたって全国にきめ細かくエリアを築いてきたことがわかります。一方で5G基地局は約5.3万局と、au・ソフトバンクの約半分です。ドコモは4G用の周波数を5Gに転用する方式を控えめにし、5G専用の周波数(3.7GHz帯・4.5GHz帯など)での展開を中心に進めてきたため、5Gの局数では差がついています。なお、3G(FOMA)は2026年3月31日でサービスを終了しました。
au(KDDI)
4G基地局数は約19.8万局でドコモに次ぐ規模です。5G基地局数は約11.0万局と4社の中で最も多く、5G専用周波数(3.7GHz帯・4.0GHz帯)と、4G周波数の5G転用の両方で展開しています。28GHz帯(ミリ波)の5G基地局も約1.5万局と多く設置しています。3Gは2022年3月末に終了しています。
ソフトバンク
4G基地局数は約18.3万局です。5G基地局数は約10.4万局で、そのうち約8.5万局は700MHz帯〜3.5GHz帯(4G用だった周波数の5G転用を含む)です。4Gの周波数を積極的に5Gへ転用し、短期間で5Gのエリアを広げてきたのが特徴です。3Gは2024年4月15日(石川県は7月31日)に終了しています。
| キャリア | 4G基地局数 | 5G基地局数 | 補足 |
|---|---|---|---|
| ドコモ | 259,008局 | 52,532局 | 3G(FOMA)は2026年3月末で終了 |
| au(KDDI) | 197,990局 | 110,037局 | 5G基地局数は4社で最多 |
| ソフトバンク | 183,486局 | 104,441局 | 4G周波数の5G転用が多い |
| (参考)楽天モバイル | 67,159局 | 35,108局 |
4Gまでの基地局網ではドコモが最も厚く、5Gではau・ソフトバンクが先行している、という構図です。どのキャリアも全国に数十万局規模の基地局を持っており、基地局数だけで「繋がる・繋がらない」が決まるわけではありませんが、局数が多いほど「圏外になりにくい」「混雑しにくい」傾向は強まります。
豆知識:5Gのミリ波(28GHz帯)は電波が届く範囲が極端に短く、駅やイベント会場などのピンポイント利用が中心です。日常の繋がりやすさには、4Gや700MHz帯〜3.5GHz帯の5Gのエリアがより大きく影響します。
人口カバー率の比較 ~エリアの広さと隙間の少なさ~
人口カバー率は、各社のサービスエリアに住んでいる人口の割合を示す指標です。99%に近いほど「人が住んでいる場所ならほぼどこでも繋がる」ことを意味します。ただし山間部や海上など、人が住んでいない場所は含まれない点に注意が必要です。
4G人口カバー率
ドコモ・au・ソフトバンクの4Gは、いずれも人口カバー率99%を超える水準に達しています(auは「99.9%超」と公表)。都市部から地方まで、人が住んでいる場所の4Gエリアの広さは3社でほぼ横並びです。
5G人口カバー率
5Gは各社で差があります。総務省「新たな目標に基づく5Gインフラの整備状況(令和6年度末)」によると、2025年3月末時点の5G人口カバー率は次のとおりです。
| キャリア | 5G人口カバー率 | うち5G専用周波数(サブ6) |
|---|---|---|
| ドコモ | 89.4% | 65.3% |
| au(KDDI) | 94.6% | 54.7% |
| ソフトバンク | 97.1% | 49.6% |
| (参考)楽天モバイル | 61.1% | 61.1% |
5Gの人口カバー率はソフトバンク、au、ドコモの順に高くなっています。一方、通信速度が出やすい5G専用周波数(サブ6)でのカバー率はドコモが最も高く、「5Gの広さ」と「5Gの速さ」で強みが分かれています。なお、4社のエリアを重ね合わせた全国の5G人口カバー率は、2026年3月末時点で98.6%です(総務省「5Gの整備状況(令和7年度末)」)。
まとめると、4Gのエリアの広さは3社とも横並びで、5Gはキャリアによって差がある状況です。「圏外で何も繋がらない」という事態は3社とも現在では稀ですが、5Gを業務で使いたい場合は、利用する地域の5Gエリアを各社のエリアマップで確認しておくと安心です。
地下や屋内のエリア対策
法人利用ではオフィスビル内や工場、地下鉄での移動中などの通信品質も重要です。屋内や地下で繋がりやすいかどうかは、主に低い周波数帯(いわゆるプラチナバンド)のエリアで決まります。
プラチナバンドによるエリア確保
低い周波数の電波は、建物の中や物陰にも届きやすい性質があります。ドコモは700MHz帯と800MHz帯、auは700MHz帯と800MHz帯、ソフトバンクは700MHz帯と900MHz帯を割り当てられており、各社ともこれらの帯域で広いエリアを作っています(2025年3月末時点の4G基地局数は、ドコモの800MHz帯が約7.5万局、auの800MHz帯が約8.5万局、ソフトバンクの900MHz帯が約6.4万局)。3社とも低い周波数帯を持っているため、基本的な屋内・地下への電波の届きやすさは高い水準にあります。
地下鉄や駅構内の5G対応
4Gは主要な地下鉄・駅構内ですでにエリア化されており、5Gのエリア化も各社が進めています。地下区間の5G対応状況はキャリアや路線によって異なるため、社員の通勤・移動で使う路線がある場合は、各社が公開しているエリア情報で確認すると良いでしょう。
FWAやローカル5Gの活用
補足ですが、社内ネットワーク用途では、各社のFWA(Fixed Wireless Access:工事不要の据え置き型ルーター)やローカル5Gも選択肢になります。建物内に専用の基地局を置いて社内の無線LANの代わりに使う例もありますが、本記事の範囲を超えるため詳細は割愛します。
周波数帯(バンド)の比較 ~電波特性と端末互換性~
キャリアごとに使える周波数帯(バンド)にも違いがあります。繋がりやすさを考えるうえで、「どの周波数をどれだけ持っているか」は重要な要素です。下の表は、総務省が公表している各社への周波数の割当状況です。
| 周波数帯 | ドコモ | au(KDDI) | ソフトバンク |
|---|---|---|---|
| 700MHz帯 | 20MHz | 20MHz | 20MHz |
| 800MHz帯 | 30MHz | 30MHz | — |
| 900MHz帯 | — | — | 30MHz |
| 1.5GHz帯 | 30MHz | 20MHz | 20MHz |
| 1.7GHz帯 | 40MHz(東名阪のみ) | 40MHz | 30MHz |
| 2GHz帯 | 40MHz | 40MHz | 40MHz |
| 3.4〜3.5GHz帯 | 80MHz | 40MHz | 80MHz |
| 3.7〜4.9GHz帯(5G) | 200MHz | 200MHz | 200MHz |
| 28GHz帯(5Gミリ波) | 400MHz | 400MHz | 400MHz |
| 合計 | 840MHz | 830MHz | 820MHz |
低周波数帯(プラチナバンド)の充実度
前述のとおり、ドコモとauは700MHz帯と800MHz帯、ソフトバンクは700MHz帯と900MHz帯を、エリアを広げるための主力として使っています。低い周波数帯の割当幅は3社とも合計50MHzで並んでいます。700MHz帯は5Gへの転用も進んでおり、2025年3月末時点で700MHz帯の5G基地局はソフトバンクが約2.1万局、auが約1.7万局、ドコモが約0.8万局です。
中~高周波数帯の活用状況
1.5GHz帯〜3.5GHz帯は、主に都市部の容量(混雑対策)を担う周波数です。5G専用の3.7GHz帯〜4.9GHz帯(サブ6)は、3社とも200MHzずつ割り当てられており、速度と容量の面で5Gの中心になっています。2025年3月末時点のサブ6の5G基地局数は、auが約4.2万局、ドコモが約3.4万局、ソフトバンクが約1.3万局です。28GHz帯(ミリ波)は超高速ですが範囲が狭く、駅や大規模施設などで使われています。
周波数と端末互換性(対応バンド)
法人の場合、社員が使うスマートフォンが各キャリアの周波数に対応しているかどうかで、繋がりやすさが変わります。日本向けに販売されている主な機種(iPhoneや国内向けAndroid)は、3キャリアの主要な周波数に対応しているため、通常は意識する必要はありません。ただし、海外製のSIMフリー端末や特殊なIoT機器を社用に使う場合は、各キャリアのエリアの主力となる周波数(ドコモ・auの800MHz帯、ソフトバンクの900MHz帯など)に対応しているかを、端末の仕様とキャリアの動作確認端末一覧で確認すると安心です。
インフラシェアリングと地方の5G
KDDIとソフトバンクは、地方の5G基地局を共同で整備する取り組み(株式会社5G JAPAN)を進めています。総務省の調査では、2025年3月末時点で約30.2万局の5G基地局のうち、半数を超える約16.5万局がインフラシェアリングを行っています。地方で5Gを使う機会が多い企業は、こうした整備状況も参考になります。
通信品質の比較 ~第三者による評価~
繋がりやすさ=圏外にならないこと、に加えて、実際の速度や安定性も重要です。ここでは、利用者の端末で測定したデータをもとに評価している英国の調査会社Opensignalの「日本モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」(2026年4月発表、2026年1月1日〜3月31日のデータ)の結果を紹介します。
- au:体感の安定度を示す「一貫した品質」で首位。音声アプリ、5Gゲームでも単独1位で、地域別の受賞数も最多
- ドコモ:「5Gダウンロード・スピード」で1位
- ソフトバンク:「ダウンロード・スピード」で1位(前回のレポートから17%向上)。5Gにつながっている時間の割合を示す「5G利用率」でも単独1位
- (参考)楽天モバイル:「アップロード・スピード」「5Gアップロード・スピード」で1位
このように、評価の項目によって首位のキャリアは異なり、3社ともそれぞれに強みがあります。安定性を重視するならau、5Gでの速度ならドコモ、5Gにつながる時間の長さやダウンロード速度ならソフトバンク、という傾向が読み取れます。もっとも、実際の速度は場所・時間帯・端末によって大きく変わるため、導入前に主要な拠点で試験的に使ってみることをおすすめします。
補足:各社が公表する「最大通信速度」は理論値で、実際の速度とは異なります。業務用途では、オンライン会議やクラウドの利用に必要な速度(一般的に数Mbps〜数十Mbps)が安定して出るかどうかを重視すると良いでしょう。
法人利用に適したキャリアは?繋がりやすさ総括
以上、繋がりやすさの観点でドコモ・au・ソフトバンクを比較してきました。4Gのエリアの広さは3社とも横並びで、どのキャリアを選んでも日常業務で困ることは少ないでしょう。その上で、あえて特徴を挙げるなら次のとおりです。
- ドコモ:4G基地局数が最も多く、全国にきめ細かいエリアを持っています。5Gの人口カバー率は3社で最も低いものの、5G専用周波数(サブ6)でのカバー率は最も高く、5Gでのダウンロード速度の評価も1位です。地方の支社や出張が多い企業に向いています。
- au(KDDI):5G基地局数が最も多く、第三者評価で「一貫した品質」が首位と、安定性のバランスに優れています。都市部・地方とも極端な弱みが少ないキャリアです。
- ソフトバンク:5Gの人口カバー率が最も高く、5Gにつながる時間の割合も1位です。4Gの周波数を5Gに転用してエリアを広げてきたため、5Gを広い範囲で使いたい企業に向いています。
法人携帯を選ぶ際は、繋がりやすさに加えて、主要な拠点・出張先でのエリア、料金、サポート体制もあわせて比較することが大切です。複数のキャリア・販売代理店の提案を比べることで、自社に合った回線と料金プランを選びやすくなります。
※本記事の数字は、総務省の公表資料(2025年3月末時点・2026年3月末時点)とOpensignalのレポート(2026年4月発表)にもとづきます。最新のエリアは各社の公式サイトでご確認ください。
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