映像コンテンツは資産計上できる?勘定科目や仕訳のポイントを解説

社内のPRや広告収益を得るために映像コンテンツを制作したものの、会計処理の方法がわからずに困っている方も多いのではないでしょうか。

動画制作は動画の目的や作り方、納品方法などによって資産として計上するか、経費として処理するかが変わります。同じ項目でも、金額により勘定科目が変わることがあるため、正しい知識を持って仕訳に当たる必要があります。

この記事では、会計上の映像コンテンツの取り扱いや、適切な勘定科目の設定方法を解説していきます。仕訳時の注意点や、項目や金額ごとの具体的な勘定科目も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

映像コンテンツは原則資産計上しない

会計上の資産には、下記3つの種類があります。

流動資産現金・預金・貸付金など、1年以内に現金化できる資産。
固定資産会社が長期間保有するものや、1年を超えて現金化される資産。
有形固定資産と無形固定資産に分けられる。
有形固定資産には、設備・建物・車両・工具・パソコン、家具などが含まれる。
無形固定資産には、特許権や借地権、営業権などの権利・ソフトウェアなどが含まれる。
繰延資産有形・無形を問わず、1年以上企業に利益をもたらす資産。
本来費用として処理される支出だが、一時的に資産として計上できる。

映像コンテンツは、流動資産と固定資産に当てはまりません。無形固定資産とも考えられますが、該当するのはパソコンなどにインストールして使用するソフトウェアです。映像コンテンツにはプログラムなどが施されていないため、該当しないと考えるのが自然でしょう。

条件を満たせば繰延資産に該当し、資産として計上できます。広告動画などを作成し、映像コンテンツを通して1年以上収益が得られていれば、無形の繰延資産と考えられるためです。

しかし、一般的に1つの映像コンテンツを長期間使い回すことはありません。ほとんどの場合長くとも2年程度で使わなくなるため、動画制作費を経費として処理します。

一方で、下記のような撮影機材や編集ツールは資産として償却することが多いです。

  • カメラ
  • 音響機材
  • 照明機材
  • 動画編集用のパソコン
  • 動画編集ソフト
  • 動画を記録するDVD

一般的に、映像コンテンツそのものは資産として扱いませんが、制作のために必要な機材や消耗品は資産計上することがあると覚えておきましょう。

ただし、会計のフローは社内ルールや会計士、弁護士の見解によって異なることもあるため、事前に確認しておくのがおすすめです。

【種類別】映像コンテンツの勘定科目

勘定科目とは帳簿に取引内容を記録する際に使用する、分類項目のことです。費用ごとに勘定科目を設定して仕分けすることで、お金の流れがわかりやすくなり、会計処理がスムーズになります。

勘定科目は企業側が自由に設定できますが、一般的に映像コンテンツ制作の仕訳では、下記のいずれかを使用します。

  • 広告宣伝費
  • 販売促進費
  • 制作原価
  • 売上原価

どれを選ぶかは、動画の目的や利用方法によって異なります。動画制作の目的別に、設定する勘定科目を解説していきます。

  • 自社のPRための動画制作
  • 広告収入を目的とした動画制作

自社のPRための動画制作

自社のPRのため使用する映像コンテンツを外注した場合、使用期間によって勘定科目を分けるのが最適と考えられます。

動画の使用期間勘定科目
通年広告宣伝費
一時的販売促進費

なお広告宣伝費と販売促進費は、いずれも「販売費および一般管理費」に該当するため、大きな違いはありません。したがって、社内にルールがある場合はそちらを優先しましょう。

一方で制作を内製し、車内でのみ制作費を使った場合は、「人件費」として計上します。また、制作にあたり編集ソフトなどを新規購入した場合は、「消耗品」に分類したり、「資産」として計上したりする必要があります。

状況によってルールが変わるため、事前に顧問税理士や経理担当者に確認しておきましょう。

広告収入を目的とした動画制作

広告収入を目的とした動画の制作費は、外注と内製で勘定科目が変わります。

動画の制作方法勘定科目
外注制作原価
内製売上原価

YouTubeやTikTokなどに投稿する、広告収入を目的とする動画の制作を外注した場合、勘定科目は「制作原価」になります。想定した利益を得られなかったなど、金額的に重要性が無いと判断される動画は、売上原価や広告宣伝費として計上します。

ただし、制作原価は「販売費および一般管理費」に該当しないため、PR動画と混同しないように注意が必要です。収益が十分に上がっている動画を広告宣伝費などに仕分けた場合、指摘が入ることもあるため気をつけましょう。

動画を内製した場合は、「売上原価」として計上します。広告収入を目的とした動画は、企業の利益に直接関係する項目であるため、慎重に仕訳を行う必要があります。

意図せず不正の判定を受けるおそれもあるため、必ず顧問税理士や会計士に相談しましょう。

映像コンテンツの制作に必要な機材の勘定科目

映像コンテンツの制作を内製化する場合、撮影や編集に使う機材などを経費として計上できます。以下では、映像コンテンツの内製によく利用される、5つの項目の仕訳に使う勘定科目を解説していきます。

  • 動画編集ソフト
  • 動画編集用のパソコン
  • 撮影機材
  • 動画を記録するDVD
  • 空のDVD

動画編集ソフト

動画編集ソフトは、「消耗品費」「通信費」のいずれかで経費計上します。クラウドをソフトを利用する場合は「通信費」、それ以外は「消耗品費」と考えると良いでしょう。

ただし、100,000円以上〜200,000円未満の動画編集ソフトは、会計上の法律で消耗品として扱えません。そのため、購入時に全額を「一括償却資産」として仕訳し、決算時に3分の1の金額を「減価償却費」として計上します。

以下は、150,000円の編集ソフトを購入した際の仕訳の例です。

【購入時】

【決算時】

また動画編集ソフトが200,000円以上の場合は、上記と同じ方法で5年かけて減価償却します。

動画編集用のパソコン

100,000円以下で購入した動画編集用のパソコンの勘定科目は、「消耗品費」です。動画編集ソフトと同様に、価格が100,000円以上〜200,000円未満のものは「一括償却資産」として3年かけて処理します。

200,000円以上のパソコンは、勘定科目を「工具器具備品」に分類し、法務上で定められた耐用年数に従って減価償却処理を行います。動画編集用のパソコンの耐用年数は、新品の場合4年です。中古のパソコンを購入した場合は、下記の計算式で耐用年数を算出します。

耐用年数を経過している場合4年 × 20%
耐用年数を経過していない場合4年 – 経過年数 +(経過年数 × 20%)

たとえば、新品のパソコンを240,000円で購入した場合、下記のように仕分けします。

【購入時】

【決算時】

動画編集にはそれなりにスペックが必要なため、高額なパソコンを購入することも珍しくありません。仕訳のルールを理解したうえで、適切に処理できるようにしておきましょう。

撮影機材

撮影機材の勘定科目は、パソコンと同じで金額ごとに下記のように扱います。

撮影機材の価格勘定科目
100,000円未満消耗品費
100,000円以上200,000円未満一括償却資産
200,000円以上工具器具備品

100,000円未満の機材であれば、「消耗品費」として計上します。100,000円以上〜200,000円未満の場合、「一括償却資産」として3年かけて償却しましょう。

200,000円以上の場合は、撮影機材の法務上の耐用年数に従って減価償却します。5年と定められているため、250,000円のカメラを購入した場合は以下のようになります。

【購入時】

【決算時】

商業クオリティの映像を撮影するカメラや音響機材は、安くとも200,000円以上を超えます。価格帯ごとの計上方法を理解して、適切に仕訳を行いましょう。

動画を記録するDVD

動画を記録し、放映に繰り返し使用するDVDは、勘定科目を「工具器具備品」として、「固定資産」に計上します。耐用年数は2年で、制作会社に映像を記録してもらったDVDを5,000円で購入した場合、下記のように計上します。

【購入時】

【決算時】

空のDVD

自社で映像を記録するために、空のDVDを購入した場合は「消耗品費」として計上します。法律上、100,000円以上購入した場合は消耗品に仕訳できませんが、超過するケースはほとんど無いため、気にしなくてもよいでしょう。

映像が記録されたDVDとは勘定科目が異なる点には、注意が必要です。

映像コンテンツの仕訳で注意するポイント

映像コンテンツに関する仕訳では、下記3点に注意しましょう。

  • 基本的には広告宣伝費として一括計上する
  • 100,000万円以上の機材は消耗品にならない
  • 必ず顧問税理士や会計士に相談する

それぞれ解説していきます。

基本的には広告宣伝費として一括計上する

映像コンテンツそのものの勘定科目は、「広告宣伝費」で一括計上が基本だと思っておきましょう。現状、映像コンテンツに関する税法は明確化されていませんが、社歌やCMソングについては下記のような記載があります。

法人税法基本通達 7-1-10 (社歌、コマーシャルソング等)

社歌、コマーシャルソング等の制作のために要した費用の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(昭55年直法2-8「十九」により追加、昭60年直法2-11「一」により改正)

第1款 減価償却資産|国税庁

同じく自社PRを目的とする上記が、損金に算入できると定められているため、映像コンテンツも同様に扱えると考えられます。ただし、広告収入を目的とする動画の制作費に関しては、「制作原価」となるため注意しましょう。

100,000万円以上の機材は消耗品にならない

パソコンやカメラなどの編集・撮影機材は、100,000円以内であれば消耗品費として計上できます。しかし、いずれも高額になることが多く、「一括償却資産」として計上せざるを得ないケースが多いです。

減価償却には、条件や勘定科目ごとに細かいルールや特例が存在します。そのため、適切な知識を持って仕訳に当たらなければ、税務署から指摘が入るおそれがあります。

迷ったら国税庁に連絡する、顧問税理士に相談するなど、間違いが起こらないようにしましょう。

必ず顧問税理士や会計士に相談する

勘定科目は自由に設定できます。しかし、社内のルールに則って制作しなければ、会計処理が面倒になります。

そのため、動画制作以外の仕訳のルールなどを確認し、適切な勘定科目で計上することが大切です。社内の経理部と連携を図り、スムーズに作業できる体制を整えましょう。

また適切に計上できていないと、不要な税金が発生することもあります。したがって必ず顧問税理士や会計士にも相談し、適切な仕訳を行いましょう。

まとめ:映像コンテンツの仕訳ルールを理解して正しく計上しよう

映像コンテンツは原則資産計上は行わず、経費として処理します。勘定科目は、自社PRのための動画制作と、広告収益を得るための動画制作で異なるため、注意しましょう。

PRのための動画制作広告宣伝費・販売促進費
広告収益を得るための動画制作制作原価・売上原価

また、動画編集用のソフトやパソコン、撮影機材などは資産として減価償却が可能です。金額ごとに計上方法や勘定科目が変わるため、項目ごとのルールや耐用年数を理解しておくことが大切です。

ただし、勘定科目の決め方や会計処理の方法は、会社ごとに異なります。したがって、社内のルールを把握し、経理部や顧問税理士と連携を取りながら作業を進めることが、スムーズな仕訳のポイントです。

この記事で映像コンテンツの仕訳の方法を理解し、業務の参考にしてください。