EC物流倉庫にかかる費用の目安は?項目ごとの相場を解説

新しいEC事業を始めるにあたって、物流倉庫を管理する際にかかるコストは大きな課題です。

EC物流倉庫を利用する際は、基本料や倉庫保管料などさまざまな費用が発生します。そのため、事前にどのくらいの費用がかかるか把握することが大切です。

この記事では、EC物流倉庫の費用を項目ごとに紹介します。コストを抑えるコツもあわせて解説していくので、EC物流倉庫を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

EC物流倉庫とは?

EC物流倉庫は、ネットショップで扱う商品の入荷・検品・保管からピッキング・梱包・出荷、返品対応までを一括で行う “EC特化型” 倉庫です。BtoC 小口配送が中心で、多品種少量の商品にも対応できる設備・システムを備えています。

物流倉庫とEC物流の違い

BtoB中心の一般物流倉庫は大口・定期出荷を前提にレイアウトやWMSが組まれるのに対し、EC物流倉庫は多品種小ロット・翌日配送を想定した棚割りと動線が求められる。両者は保管単価や人員配置の考え方も異なるため、自社ビジネスに合うモデルを見極めることがコスト最適化の第一歩となる。​

EC物流倉庫の特徴

多品種小ロットでの在庫管理

SKU 数が多く数量が少ない在庫でもリアルタイムに管理できるため、欠品と過剰在庫を抑制します。 ​

迅速な注文処理と発送

24時間の自動受注システムと倉庫内動線最適化で、当日~翌日発送を実現します。 ​

流通加工・カスタマイズへの柔軟性

ギフト包装や同梱物封入など、販売促進に直結する軽作業を倉庫側で完結できます。

EC物流倉庫に求められる主要機能

リアルタイム在庫可視化、マルチチャネル連携、流通加工への柔軟対応、AI自動棚入れ――この4点が現代のEC倉庫の必須機能だ。とくに誤出荷防止とピーク時の処理能力を両立するため、ハンディターミナルとAGVを組み合わせたフロア設計が導入企業で急増している。​​

EC物流倉庫の業務の流れ

入荷 → 検品 → 入庫保管 → ピッキング → 仕分け → 梱包・流通加工 → 出庫・配送 → アフターフォローという順で進行します。各工程をWMSで一元管理することで、作業進捗と在庫精度を可視化できます。

EC物流倉庫の課題と改善ポイント

課題は「出荷遅延」「在庫差異」「保管コスト高」の3つに集約できる。改善策として①波動予測×人員シフト最適化、②WMSとマーケットプレイスAPIの自動同期、③マテハン機器導入によるピッキング歩行距離50%削減が効果的だ。​​

EC物流倉庫の利用にかかる費用

EC物流倉庫の利用をするにあたって、以下の費用が発生します。

費用相場
基本料システム利用料:2~5万円/月
業務管理料:1~5万円/月
倉庫保管料3,000~7,000円/坪
人件費従業員数による
電気料金空調や温度管理の方法による
入庫費用10~40円/個
その他の変動費梱包料:150~300円/個
配送料:400~1,000円/個
デバンニング料:2万~5万円

項目ごとに詳しく解説していきます。

基本料

基本料とは、EC物流倉庫のシステム利用料です。倉庫管理システムを利用する際に発生し、相場は1ヶ月2万円~5万円ほど。

利用料の中には入出庫や検品に使うハンディーターミナルや、印刷に使用するプリンターなどの費用も含まれています。

  • 入荷管理
  • 出荷管理
  • 在庫管理
  • 進捗管理

倉庫管理システムは上記の在庫管理にかかわる情報や業務を管理できるため、倉庫内作業の効率化を図れるメリットがあります。

また、複数のECサイトの在庫を一括管理することも可能です。

なお、システム利用料は契約時に基本料として請求される場合が大半で、月間出荷数が多いほど基本料は高くなる傾向があります。

さらに基本料には、システム利用料とは別で業務管理料がかかります。業務管理料とは物流倉庫内の商品管理にかかる手数料のことで、相場は1ヶ月1万円~5万円です。

物流倉庫によってはシステム利用料と合わせて請求する場合もあるため、事前に詳細を確認しておきましょう。

倉庫保管料

商品を保管するスペースの利用料として、倉庫保管料がかかります。倉庫の家賃のようなものに近く、以下のように倉庫や商品によって貸し方が異なります。

  • 坪貸し(1坪)
  • 棚ごと(1パレット)
  • ラックごと(1ラック)

1坪あたり月額3,000円~7,000円が相場です。

なお地域によって費用は異なり、全国の主要な地域の相場は以下のとおりです。

エリア倉庫保管料の相場(坪単価)
東京都3,500円~7,000円
千葉エリア3,000円~4,000円
仙台エリア2,800円~4,000円
近畿エリア3,700円~4,500円
中部エリア3,500円~4,000円

東京都は地価が高いエリアだと7,000円近くかかり、地方エリアは3,000円~4,000円と低コストで利用できます。

人件費

人件費は倉庫管理の費用の大半を占めており、従業員の給与や福利厚生などの費用全般が含まれています。

ピッキングや出荷、検品など行うには従業員が必要なため、ある程度の人数は必要です。

また物流業務には、専門的な知識や技術が求められる特徴があり、コスト削減をしにくい費用でもあります。繁忙期や閑散期によっても必要な従業員数は異なり、常に適切な人数を確保しなければいけません。

人手不足のまま業務を行うと、納品までに時間がかかってしまいます。そうすると、顧客に良いサービスを提供できなくなり、経営に悪影響を与えてしまいます。

さらに、従業員の教育や研修の費用もかかるため、物流倉庫を管理する際は人件費がどのくらいか先に把握しておくことが大切です。

電気料金

倉庫内の空調や照明を使用する際に電気料金がかかります。

冷蔵・冷凍商品など保管時に温度管理が必要な場合は、負担が大きくなる傾向があります。扱う商品に合わせて管理環境・管理費用を事前に把握しておきましょう。

入庫費用

入庫費用は、商品を倉庫へ搬出する際にかかる費用のことです。

商品の大きさや形態によって費用は異なり、商品1個当たり10円~40円が相場。商品が小さい場合は1ケースで換算される場合もあり、1ケース30円~100円が相場です。

ただし商品の搬入に大型のリフトカーを使用する場合や、商品の個数や検品を行う際はさらに追加費用が発生する場合があります。

出荷料

保管していた商品を出荷指示に基づいて倉庫から取り出す作業の費用を、出荷料(ピッキング料)といいます。1個当たり10円~30円が相場です。

出荷量にコンポや流通加工量を含めている場合があり、見積もりの際は業務内容も確認する必要があります。

関連記事:ECビジネスの出荷とは?作業の流れやよくあるミスを解説

その他の変動費

その他の変動費として、以下の費用が発生します。

費用料金
梱包料150円~300円/個
配送料400円~1,000円/個
デバンニング料2万円~5万円

デバンニング量は、コンテナから荷物を取り出す際の作業費用です。

大きな荷物をコンテナから積み下ろす際は、フォークリフトなどの機械を使用することもあり、費用も高くなる傾向があります。

梱包料や配送料は、生産量や販売量によって幅広く異なります。

GoQSystem連携倉庫の料金例

GoQSystemとAPI連携するRSL・FBA・ヤマトフルフィルメントの在庫保管料は1坪換算で3,500〜6,000円、梱包配送代行料は1件あたり450〜650円が相場。受注〜出荷を自動化することで月間200件規模でも人件費を約30%削減できる。

物流コストを抑えるコツ

物流コストを抑えるために、以下4つのコツを押さえましょう。

  • 適切に在庫管理を行う
  • 人件費を見直す
  • 自社に適している倉庫を選ぶ
  • 物流管理システムを導入する

それぞれ解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

適切に在庫管理を行う

倉庫を利用する際は、保管費が高い割合を占めています。そのため倉庫に保管している在庫数が多すぎないか、デッドスペースはないかチェックすることが大切です。

適切に在庫管理を行って余剰在庫を削減することで、光熱費や人件費などのコストを減らせます。

また、自社の物流にあった倉庫のサイズか見直すことも、より良い運用に繋がるでしょう。外部倉庫を利用している場合は、在庫数に対して利用面積が適切か見極めることが大切です。

常に商品の在庫など状況を見極め、業務環境を整えていくことで無駄なコストをかけずに済みます。

人件費を見直す

人件費を削減するためには、作業の効率化を図ることが大切です。

工程や作業にムラや無駄があると、人件費は増加してしまいます。物流倉庫業務の入荷や収納、保管の手順をマニュアル化することで、コスト削減に繋がります。

また、人材派遣や紹介サービスなどを活用すれば変動費にすることも可能です。

繁忙期や閑散期によって必要な人員に差がある場合は、固定費だから減らせないと諦める前に外注も検討すると良いでしょう。

自社に適している倉庫を選ぶ

以下の項目を見直しながら、自社に適している倉庫であるかチェックしましょう。

  • 立地
  • サービス内容
  • サポート体制
  • 在庫量や出荷量の変化に柔軟に対応できるか
  • 梱包などのオプション

倉庫には入荷された商品を保管するエリアと、出荷するための商品を準備するエリアがあります。エリアごとに商品のバランスやレイアウトを最適化すると、作業効率を高められてコストを削減できます。

また、自社倉庫を保有していない場合や人材が不足している場合は、倉庫管理をアウトソーシングするのもひとつの方法です。

倉庫管理をアウトソーシングすれば、他の物流作業に集中でき、設備投資をする必要もなくなるためコストを抑えられます。

物流管理システムを導入する

倉庫管理システムを導入すれば、人為的に起こるミスを減らせます。

入荷や出荷業務などの業務もシステム管理ができるため、従業員の教育コストも削減できるメリットがあります。さらに倉庫内の状況を可視化すれば誤発注も防止でき、物流コスト削減に繋がるでしょう。

人的ミスや効率化を図って人件費を削減するために、物流管理システムの導入も検討してみてください。

外部委託(3PL)を活用するメリット・デメリット

メリットは固定費を変動費化できる点と専門人材・設備を即時利用できる点。デメリットは業務ノウハウが社内に残りにくいこと、委託先トラブル時のリスク分散が難しいことだ。委託比率を段階的に上げ、KPI共有会議を月次開催することでリスクを低減できる。​​

EC物流倉庫が向かないケースと代替策

SKUが極端に少なく出荷も月数十件以下のスタートアップ、またはハンドメイド商品の一点物を扱う事業者は、汎用EC倉庫より自社内保管+宅配便集荷の方が費用対効果が高い。こうした小規模事業者は、配送ラベル自動発行アプリと小型什器で「ミニWMS」を構築する方法がおすすめだ。

EC物流倉庫の種類とメリット

EC物流倉庫を選ぶ際は、以下のポイントを押さえましょう。

  • 倉庫の立地は適切か
  • 自社にメリットがあるか
  • 料金とサービス内容のバランスが良いか
  • システムの連携は容易にできるか

ここではEC物流倉庫の種類と、それぞれの特徴・メリットを解説していきます。

選び方を参考にし、自社に合う倉庫を見つけましょう。

販売主体型

メリットデメリット
商品の注文から発送まで業務全般を任せられる
スピードや効率化を重視できる
品質やサービスは倉庫次第になる
商品の保管や配送方法のカスタマイズが難しい

販売主体型の倉庫は、次のような販売サービス全般を依頼できるため、自社で行う作業があまり無いのが特徴です。

  • 注文受付
  • EC販売業務
  • 発送手配
  • 返品処理
  • 販売業務

注文受付から発送手配、返品処理など手間のかかる作業をサポートしてくれます。

そのため、大手ECモールに出店している入出荷の頻度が多い企業におすすめです。例でいうと「FBA(フルフィルメントbyAmazon)」が有名です。

また、販売主体型は1つの拠点で業務を行うため、EC物流に必要なスピード感や効率化を実現できます。

アフターフォロー業務まで任せられるので、自社に業務の負担がかかりません。

ただし自社の業務を負担軽減はできますが、ルールが厳しく商品の保管や配送方法など細かなカスタマイズは難しい点がデメリットです。そのため、ECサイトで取り扱っている商品と相性の良い倉庫を選ぶことが大切です。

倉庫サービス主体型

メリットデメリット
商品に合わせて最適な保管方法を提案してくれる
委託できる範囲が広くカスタマイズ性に優れている
自社のニーズに柔軟に対応可能
委託する業務範囲が多いほど費用が高くなる

倉庫サービス主体型は、カスタマイズ性を求める企業におすすめです。

倉庫によってサービス内容は異なり、下記のような流通加工に対応しています。

  • 電化製品やパソコンの組み立て
  • 木材・ガラス材・生鮮食品のカッティング

タグ付けやラベル貼り、梱包などの自社のニーズに柔軟に対応することも可能です。ただし、カスタマイズ性に優れている分、委託する業務が多いほど費用は高くなるので注意しましょう。

業種特化型

メリットデメリット
取り扱う商品の最適な環境で保管・流通加工が可能
必要な機械が揃っている
在庫管理が得意ではない

業種特化型は、特定の業種で取り扱われる商品に対して、保管に最適な温度管理や流通加工ができます。そのため設備費用を削減したい事業者や、特定の商品を扱っている事業者におすすめです。

たとえば、アパレル業界では検針やプレス加工などの流通加工が必要です。

業種特化型の倉庫にはミシン・検針器が置いてあるので、その場でほつれの修理、検品に対応できるメリットがあります。自社で物流倉庫を設置・維持する場合は、それなりの費用がかかります。

機械や設備が整っている業種特化型の倉庫を利用すれば、高い費用対効果が見込めるでしょう。

システム会社主体型

メリットデメリット
コストを抑えられる3社間で認識のズレが生じるとトラブルに繋がる可能性がある

システム会社主体型の倉庫は、物流システムの会社が物流倉庫と提携しているサービスの倉庫のことをさします。

物流業務がシンプルな事業者におすすめです。

事業者がシステム会社に相談し、自社の商品や希望に合う倉庫を紹介してもらえるため、最適な倉庫探しができるメリットがあります。

また運用がシステム化されているため、コストを抑えられる点も魅力です。

ただし物流倉庫と直接やりとりしないため、3社間で認識のズレが発生しトラブルにつながる可能性があります。

システム会社に相談する際に、自社の意見や要望を細部まで伝えてコミュニケーションを行うことが大切です。

関連記事:EC物流倉庫は委託するべき?メリットや注意点を解説

EC物流会社おすすめ10選比較表

アートトレーディング/ウルロジ/オープンロジ/スクロール360/meteco ほか主要10社を、月間出荷上限・保管単価・連携モール数の3指標で比較。導入ハードルを下げたい事業者には初期費用無料・SaaS型WMSのオープンロジが適している。

EC物流倉庫を利用するデメリット

・物流業務が倉庫1社に集中するためリスク分散が難しい
・過剰在庫や欠品に気づきにくい
・委託した分だけ社内にノウハウが残りにくい

これらを補うには、定期的なKPIレビューと複数倉庫の活用を検討することが重要です。

「EC物流倉庫を選ぶポイント」

委託できる業務範囲を確認

フルフィルメント全体か、出荷だけかで候補が変わります。 ​

費用構成と自社SKU数の適合

固定費・変動費のバランスが事業規模に合うかを必ずシミュレーション。 ​

商品の特性・温度帯に合う設備

アパレルと冷凍食品では必要な保管・検査体制が異なります。 ​

立地とシステム連携

配送リードタイムと自社ECシステムとのリアルタイム在庫連携可否を確認します。 ​

よくある失敗例と注意点」

・契約前にサービス内容を十分詰めず追加費用が発生
・WMS連携をテストしないまま移行し在庫差異が拡大
・「初期費用0円」のみに着目し総コストが高騰

上記を防ぐには、SLA と費用内訳を細部まで書面化し、テスト出荷で実務検証を行うことが必須です。 ​

まとめ:EC物流倉庫はトータル費用で予算を決めることが重要!自社に最適な倉庫を見つけよう

EC物流倉庫を利用する際は、さまざまな項目で費用が発生するため、トータルでかかる費用を事前に把握しておくことが大切です。

  • 基本料
  • 倉庫保管料
  • 人件費
  • 電気料金
  • 入庫費用
  • 出荷料
  • その他の変動費

業務をマニュアル化したり物流管理システムを導入したりすることで、業務の効率化を図れてコスト削減に繋がります。また、EC物流倉庫を選ぶ際は自社の商品との相性や物流業務などを考慮して最適な倉庫を見つけることが大切です。

ぜひ本記事を参考にして、自社に合う倉庫を見つけて快適な環境でEC事業を行いましょう。

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