物流センターと倉庫の違いは?役割や仕事内容を解説

物流業界において、「物流センター」と「倉庫」という言葉をよく耳にします。一見似ているようで、実は大きな違いがあるこの2つの施設。単なる保管場所なのか、それとも物流の要となる拠点なのか。

本記事では、物流センターと倉庫の役割や機能の違いを詳しく解説します。それぞれの特徴や作業内容、メリット・デメリットを比較しながら、貴重な指針となる情報をお届けします。物流戦略の立案や見直しの際に、ぜひ活用してください。

物流センターと倉庫の違い

物流センターと倉庫は、どちらも商品を保管する場所という点で共通しています。しかし、役割や機能には以下のような違いがあります。

項目物流センター倉庫
おもな機能保管中心保管や仕分け・梱包・発送準備など多機能
おもな目的商品や原材料の保管物流全体の効率化
規模比較的小規模大規模が多い
設備基本的な保管設備高度な自動化設備
商品の流れ入出荷頻度低め・長期保管も高い回転率・短期の入出荷
人員体制少人数で運営可能多くの人員や専門知識が必要
運営コスト比較的低い高い

これらの違いを理解することで、最適な選択ができます。

物流倉庫の役割や作業内容

物流倉庫は、サプライチェーンにおいて重要な役割を果たしています。ここでは、以下の4項目について説明します。

  • 物流倉庫は保管がおもな役割
  • 物流倉庫での作業内容
  • 物流倉庫のメリット
  • 物流倉庫のデメリット

それぞれ詳しく見ていきます。

物流倉庫は保管がおもな役割

物流倉庫は、商品の安全な保管を主軸とする重要な物流施設です。自社での保管スペース確保が困難な企業や、在庫管理の最適化を目指す企業にとって、物流倉庫の利用は効果的な選択肢となるでしょう。

ECサイトや小売業の販売商品・製造業の製品など、幅広い分野の物品を扱います。食品・飲料から衣料品・雑貨、電子機器、工業製品まで、さまざまな商品の一時保管が可能です。

物流倉庫の中には、保管品の特性に応じた環境管理機能を備えた施設もあります。温度管理が不可欠な食品・医薬品、湿度管理を要する精密機器など、特殊な保管条件を必要とする商品も適切に管理できます。

物流倉庫での作業内容

物流倉庫では、商品の入荷から出荷まで、一連の作業を行います。

作業区分内容重要ポイント
入荷作業商品の受け入れや数量確認・検品正確性が後続作業の効率に直結
保管作業商品の適切な場所への配置と管理効率的なレイアウト設計が鍵
ピッキング出荷指示に基づく商品の取り出し倉庫作業の中ではとくに重要な工程
棚卸し定期的な在庫数の確認と記録更新正確な在庫管理に不可欠
出荷準備商品出荷のための集荷や発送準備迅速かつ正確な作業が求められる
在庫管理入出荷情報の記録と在庫状況の把握過剰在庫や欠品防止に寄与

物流倉庫のメリット

物流倉庫を活用することで、以下のようなメリットを得られます。

大量保管が可能大規模な商品保管が可能なため必要なときに迅速に供給できる
品質管理が充実温度や湿度の管理設備が整っており商品の品質を維持できる
セキュリティ対策監視カメラや警備システムが整備されており盗難や損傷を防ぐ
コスト削減自社で保管施設を持つ場合に比べて設備投資や運営コストが低減
在庫管理の効率化在庫管理システムにより在庫の過剰や不足を防ぐ
需要変動への対応需要の変動に柔軟に対応でき安定した供給を維持できる

これらのメリットを生かすことで効率的な物流戦略を構築し、競争力を高められます。

物流倉庫のデメリット

物流倉庫には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

流通効率物流センターに比べて商品の流通効率が低くなることがある
初期投資設置には一定の初期投資が必要
特殊な設備を必要とする場合はさらにコストが高くなる
運営コスト継続的な運営には保管料や人件費・セキュリティ対策費用などが発生
在庫管理の精度在庫管理が不十分だと在庫不足や過剰在庫の問題が発生する
スペースの制約限られたスペースで効率的に商品を保管するために、適切なレイアウトや管理が必要

物流倉庫の導入は、物流戦略にとって重要な決断です。メリットとデメリットを十分に理解し、最適な物流倉庫を選ぶことが大切です。

物流センターの役割や種類

物流センターは商品の保管だけでなく、仕分けから梱包・配送までを一貫して行う総合的な物流拠点です。物流センターにはさまざまな種類があり、それぞれ役割や機能が異なります。ここでは、以下の代表的な物流センターの種類とその特徴について解説します。

  • 配送センター
  • デポ
  • DC:ディストリビューション・センター
  • TC:トランスファー・センター
  • PDC:プロセス・ディストリビューション・センター
  • PC:プロセスセンター
  • FC:フルフィルメントセンター

詳しく見ていきます。

配送センター

物流の効率化と顧客サービスの向上を目的とした施設です。おもに小売業やEコマース企業で活用され、商品の保管から出荷までを一元管理します。入荷した商品を迅速に仕分け、顧客からの注文に応じて効率的にピッキングと梱包を行います。

配送センターの特徴は、高度な在庫管理システムと迅速な出荷処理能力です。戦略的に配置することで、配送時間の短縮と配送コストの削減を実現しています。注文から配送までのリードタイムの短縮や、季節変動への柔軟な対応が求められる業界ではその重要性が高まっています。

デポ

配送センターよりも小規模な物流拠点で、おもに卸売業などの配送を担う施設です。デポの目的は、商品のお届けにかかる時間を短縮することにあります。基幹となる物流センターより小型で、地域ごとに拠点を構える特徴があります。

広域にわたる配送網を持つ企業や、多頻度の小口配送が求められる業界では、デポの重要性が高いといえるでしょう。効果的なデポ運用により、配送コストの削減と顧客サービスの向上を同時に実現できるため、物流戦略の中核として位置づけられることが多くなっています。

DC:ディストリビューション・センター

商品の保管や仕分け・配送を、一元的に管理する総合的な物流施設です。おもな役割は、メーカーや卸売業者から大量に入荷した商品を、小売店舗や顧客向けに効率的に仕分けて配送することです。

DCの特徴は、高度な自動化システムと大規模な処理能力にあります。バーコードやRFIDを活用した在庫管理システム、自動仕分け機や無人搬送車(AGV)などの先端技術を導入し、大量の商品を迅速かつ正確に処理します。

多くの企業にとって、DCの活用は物流効率の大幅な向上につながるでしょう。とくに、多品種大量の商品を扱う小売業やeコマース企業では、DCの重要性が高まっています。

TC:トランスファー・センター

通過型センターとも呼ばれ、おもに商品の仕分けや積み替えを行う物流施設です。TCの特徴は、基本的に在庫を持たないことにあります。入荷した商品はすぐに仕分け作業を行い、次の納入先へ出荷するため、商品の滞留時間が非常に短いのが特徴です。

TCを活用することで、企業は物流のスピードアップと効率化を図れます。在庫を持たないため、保管コストの削減や商品回転率の向上が期待できます

一方で、TCの運営には高度な情報システムと正確なオペレーションが不可欠です。入荷と同時に出荷情報が必要となるため、入出荷の迅速な連携が求められます。

PDC:プロセス・ディストリビューション・センター

流通加工・在庫型センターと呼ばれる物流施設です。従来の物流センターの機能に加え、高度な流通加工機能を備えている点が特徴です。PDCでは、商品の保管や仕分けだけでなく、組立てや加工、包装などの付加価値作業も行います。

食品業界では生鮮食品の加工や調理、セット商品の組み合わせなどを行うことで、店舗での作業負担を軽減し、効率的な流通を実現しています。

PDCの導入により在庫管理の効率化と同時に、商品の付加価値向上も可能です。ただし、専門的な設備や技術が必要となるため、初期投資や運営コストが高くなる傾向があるでしょう。

PC:プロセスセンター

物流機能に加えて、商品の加工や製造工程を担う施設です。おもな役割は商品の保管・配送だけでなく、半製品の最終加工や製品の組立て、パッケージングなどの付加価値作業を行うことです。

PCの特徴は、生産機能と物流機能の統合にあります。製造工程の一部をPCに移管することで、生産の柔軟性が向上し、市場の変化に迅速な対応が可能です。

多くの企業にとって、PCの活用は生産・物流プロセスの効率化につながるでしょう。とくに、製品のカスタマイズや地域ごとの仕様調整が必要な業界では、PCの重要性が高いといえます。

FC:フルフィルメントセンター

EC通販や通信販売に特化した物流センターです。ここでは、商品の受注から発送までの一連の業務を一括して行います。FCのおもな目的は顧客への迅速かつ正確な配送を実現し、顧客満足度を向上させることです。

FCでは在庫管理や受注処理・梱包・出荷、そして顧客対応までを一貫して行います。これにより、顧客からの注文に対して迅速に対応し、短期間での商品配送が可能です。また、FCは返品や交換対応・カスタマーサポートも含めて行うため、ECサイト運営における総合的なサービスを提供します。

物流センターでの作業内容

物流センターの作業は、商品の入荷から出荷まで多岐にわたります。ここでは、以下の作業内容をお伝えします。

  • 入荷や検品
  • 保管
  • ピッキング(仕分け)
  • 流通加工
  • 出荷前検品
  • 梱包・出荷

これらの作業は効率的な物流を実現し、顧客満足度を高めるために欠かせません。

入荷や検品

物流センターにおける入荷作業は、サプライヤーやメーカーから商品を受け入れる最初のステップです。トラックやコンテナで運ばれてきた商品を、指定の場所に移動し、数量や状態を正確に確認します。この際、破損や欠品がないか、注文内容と一致しているかなどを細かくチェックする「検品」作業も同時に行います。

これらの作業は、正確な在庫管理を行うための基礎となるため、非常に重要です。入荷・検品作業を適切に行うことで、在庫の過不足を防ぎ、顧客からの注文に迅速に対応できます。

関連記事:物流の検品とは?行うタイミングや効率的な方法も紹介

保管

物流センターでの保管作業は、単に商品を置いておくだけではありません。商品の種類や特性に合わせて適切な温度・湿度で保管し、品質を維持することが大切です。たとえば、食品や医薬品など温度管理が必要な商品は、定温倉庫や冷蔵倉庫で保管します。

また、倉庫内は整理整頓され、清潔に保たれている必要があります。これは商品の品質を維持するだけでなく、作業効率を向上させるためにも重要です。

さらに近年では、在庫管理システム(WMS)を導入し、在庫状況をリアルタイムで把握する企業が増えています。

ピッキング(仕分け)

注文内容に基づいて、必要な商品を保管場所から取り出す作業です。ECサイトなど消費者からの注文が多い企業では、ピッキングのスピードと正確性が顧客満足度に直結するため、とくに重要です。

近年ではバーコードやRFIDなどの技術を活用し、ピッキング作業の効率化が進んでいます。これらの技術により作業時間の短縮やミスの削減が可能となり、より迅速かつ正確なピッキングを実現できます。また、ピッキングと同時に仕分け作業を行うことで、出荷準備を効率化することも可能です。

流通加工

顧客ニーズに合わせた商品のカスタマイズや、販売形態に応じた調整を行います。おもな作業内容は価格ラベルや商品情報ラベルの貼付、複数商品を組み合わせたセット商品の作成、部品の簡易組立てなどです。

季節限定パッケージの作成やギフト用ラッピングなど、マーケティング戦略と連動した付加価値創出も行われています。

近年では、自動化技術の導入により流通加工の効率化が進んでいます。ラベル貼付ロボットやAI画像認識を用いた品質検査システムなどの活用により、作業精度の向上と労働力不足の解消が可能です。

出荷前検品

商品の出荷前に行われる最終チェックの工程です。この作業では商品の数量や品質・ラベルの正確さなどを確認し、顧客に正確な商品を届けるための重要な役割を果たします。

商品の外観検査や数量確認、ラベルやバーコードのチェックなどが含まれます。近年では、バーコードリーダーや画像認識システムを活用することで、検品作業の効率化と精度向上が図られています。

出荷前検品を効果的に行うためには、作業手順の標準化や従業員の教育が重要です。また、定期的な検品プロセスの見直しや改善を行うことで、常に高い品質の維持が求められます。

梱包・出荷

物流センターにおける最終工程であり、商品の保護と配送準備を行う作業です。商品の種類やサイズ・配送方法に応じて、最適な梱包材や梱包方法を選択します。また、近年では環境に配慮した梱包材の使用も求められています。

出荷作業においては、配送業者との連携が不可欠です。物流管理システムと配送業者のシステムを連携させることで、リアルタイムでの配送状況の把握や、効率的な配送ルートの設計が可能となります。さらに、ラストワンマイル配送の課題に対しても、宅配ボックスの活用やドローン配送の実用化など、新たな取り組みが進められています。

まとめ:物流センターと倉庫は出荷・保管と機能が異なる

物流センターと倉庫は、物流業務において異なる役割と機能を持つ重要な施設です。どちらの施設を選ぶべきかは、企業の規模や業種、物流戦略によって異なります。

小規模なECサイトや小売業であれば、倉庫で十分な場合もあります。しかし、大規模なメーカーや卸売業など、商品の流通量が多い企業にとっては、物流センターの利用が不可欠といえるでしょう。

本記事で解説したそれぞれのメリット・デメリットを踏まえ、自社の物流ニーズに合った最適な選択が、物流効率化への第一歩となります。

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