一括物流とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説

物流業務の中で重要な役割を担っているのが、物流拠点です。近年、物流業界では従来の複数の拠点をつくるケースから、1ヵ所に集約する一括物流が増えています。

自社で一括物流を導入するか悩んでいる方もいるでしょう。

この記事では、一括物流の仕組みやメリット・デメリットを解説します。実際に一括物流を導入した事例も紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。

一括物流(一括納品)の仕組みとは

店舗が行う複数の取引先からの仕入れを物流センターでまとめてから、一括で各店舗に配送するシステムや仕組みを一括物流(一括納品)と呼びます。

商品の発注窓口を1つにまとめるため、発注作業の負担が減るだけでなく納品車両の削減や検品・格納作業がしやすいことが特徴です。

なお、一括物流には在庫型センターと通過型センターの2種類があります。

在庫型センターでは回転率の低い日用品、通過型センターでは毎日消費される食品など商品によって最適な方法をとっています。

知っておきたい物流2024年問題について

トラックドライバーの長時間・過重労働を解決するために、2024年4月から改正改善基準告示で拘束時間の上限や休息期間に関する基準などが設けられました。

労働時間が従来に比べ短くなることで、運送能力が不足し荷物が運べなくなる可能性があります。これを「物流2024年問題」と呼び、トラック業界ではドライバー不足が課題となっています。

経済産業省の試算では、営業用トラックの運送能力不足の割合は、2024年で14.2%、2030年で34.1%程度です。物流2024年問題を解決するには、荷主とトラック事業者の連携が欠かせません。

消費者側でも宅配BOXの設置で再配達を減らすなどの配慮が可能なため、社会全体での取り組みが期待されています。

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物流センターの種類

物流センターには以下の4種類あります。

  • 在庫型センター(DC)
  • 通過型センター(TC)
  • 流通加工・在庫型センター(PDC)
  • フルフィルメントセンター(FC)

それぞれの特徴や詳細を解説します。

在庫型センター(DC)

在庫型センターは、倉庫など広大なスペースで在庫を保管する物流センターです。食品と比べ商品回転率が低い日用品や雑貨などを扱っています。

商品を多く保管できるため、一度に大量の商品を購入することで仕入れコストの削減が可能です。

一方で、大規模な設備や大きなスペースが必要とされるだけでなく商品も大量に管理するため場所の確保や管理するためのコストが高くなります。

通過型センター(TC)

通過型センターでは、在庫を保管せず配送先の店舗ごとに集荷した荷物の仕分けを行います。各店舗への配送拠点となるため、店舗の近くに設置されることが多いです。

主に食品スーパーや大手コンビニエンスストア、大手家電量販店で導入されています。

通過型センターは、ピッキング業務の有無によってTC1型とTC2型に分類されます。具体的には以下のとおりです。

TC1型・配送先の店舗ごとに仕分けられた商品が入荷されるためピッキングは不要。
・簡単な検品作業のみで、各店舗や顧客へ配送される。
TC2型・複数の配送先へ届ける商品をまとめて入荷。
・ピッキング作業があるため、商品の配送先情報や入出庫情報の細かな管理が必要。
・TC1型に比べて商品の搬出入が多い。

流通加工・在庫型センター(PDC)

流通加工・在庫型センターとは、高度な加工が行える工場の機能を併せ持った物流センターです。

例えば、家具なら部品の組み立てや設置、食品では精肉や鮮魚の加工などを行います。コンビニエンスストアやスーパーマーケットへの納品が多く、生鮮食品の扱いが主になるため、高い管理能力が必要です。

高品質を保ちながら安全でスピーディーに商品を運べることで、付加価値を高められる特徴があります。一方で、品質を保つために工場のような生産ラインや多くの労働力が必要となり、コストがかかることは避けられません。

フルフィルメントセンター(FC)

フルフィルメントセンターは、ECサイトで扱う商品の管理から注文処理、ピッキング、梱包、配送のような物流業務に加え、決済処理や顧客データ管理、カスタマーサポートも行う物流センターです。

最先端の設備とシステムを導入した物流センターで、世界12ヶ国でネット通販を展開するAmazonの物流拠点が代表的です。日本でも、ヤマト運輸などフルフィルメントサービスを提供する会社は多く存在します。

一括仕入れと直接仕入れの違い

意味が混ざりやすい一括仕入れ、直接仕入れ、スケールメリットについて解説します。

一括仕入れとは

一度に大量の商品を仕入れることを一括仕入れと言います。運送費や人件費などコストを削減できるだけでなく、スケールメリットによりメーカー側も製造費を抑えられるため、仕入れ価格を下げることが可能です。

メーカーと小売業の間に入る卸売業(問屋)が代表例で、メーカーが全国に点在する多くの店舗へ自ら商品を届ける負担や、小売業がさまざまな取り扱いメーカーと直接取引をする負担を軽減しています。

近年では、コスト削減や利益向上の目的から小売業や住宅メーカー、家具小売店、ネット通販など、導入している業種もさまざまです。

直接仕入れとは

商品を製造するメーカーから問屋を通さず、直接店舗へ仕入れを行う方法を直接仕入れと言います。

仲介業者を経由せずに仕入れられるため、中間マージンを削減し仕入れコストを削減できます。商品が農産物など鮮度が質につながる商品を、新鮮な状態で販売できるのも特徴です。

他にも、メーカーと直接取引することで偽物や類似品を仕入れるリスクを抑えられたり、正規品の証明を求められた場合にもスムーズに対応できます。

直接仕入れを行う場合には、メーカーが提示した発注量(ロット)、店舗の数や規模を満たす必要があります。

スケールメリットとは

スケールメリットは「規模のメリット」「規模の優位性」などと呼ばれ、数量が多くなることで単体での製造や梱包、発送などに対しコストが安く抑えられることを指します。

例えば、ある製品を工場でつくる場合、設備の使用にかかる固定費は変わらないため、少ロットではなく大量のロットで生産した方が経費を削減可能です。

また、トラックで配送する場合にも、配送先が同じ荷物を混載するなど積載量が多くなれば、荷物1つ当たりの輸送コストが抑えられます。

スケールメリットは物流だけでなくあらゆる業種で働く効果で、認知度の向上や信頼性や利便性の確保にもつながります。

一括物流のメリット

一括物流のメリットは以下の3つです。

  • 効率化が図れる
  • 在庫管理がしやすい
  • コスト削減が可能

それぞれ詳しく解説します。

効率化が図れる

複数の物流拠点を設置している場合、複数の拠点から商品をピックアップしたり在庫調整のために拠点間で輸送が必要です。

1つの拠点に商品が集まっていれば、必要な商品をすべて積んで配送先の店舗に直接行けるため、拠点ごとの積み下ろしがなくなり時間も労力も削減できます。

さらに配送ルートも最短で行き来でき、効率化につながります。

在庫管理がしやすい

拠点が複数あると、拠点ごとに在庫の変動があるためトータルでの在庫量の把握が難しくなります。

在庫管理の具体的な方法について、それぞれの拠点の担当者に任せられることも一因です。

拠点が集約されていれば、在庫量の全体像が可視化されやすく入出荷のコントロールもしやすく、在庫切れや過剰発注のミスも防げるでしょう。

関連記事:在庫管理とは?発送代行などの効率化システムについても解説

コスト削減が可能

物流拠点をまとめることで、設備や建物の数が減るため管理費の削減が可能です。さらに、複数の小さい物流拠点から1つの大きい拠点にすることで、管理や配送にかかる人員も集約できるため、結果的に費用を抑えられます。

従来は、複数の配送拠点を持つことで、1つの物流拠点で問題が起きても全体への影響が少なくてすむためコストが抑えられると考えられていました。

しかし、人材や設備にかかるコスト面から大型物流施設へのニーズが拡大しています。

一括物流のデメリット

一括物流のデメリットは以下のとおりです。

  • 配送までの時間が長くなる可能性がある
  • リスク分散が難しい

それぞれ詳しく解説します。

配送時間が長くなる可能性がある

物流拠点を集約すると、配送先の数や場所によって距離が長くなるため、商品が届くまでの時間が延びる可能性があります。

生鮮食品などリードタイムの短さが求められる商品の取り扱う場合には、通過型の物流センターにするなど工夫が必要です。

また、配送にかかる時間が長くなると、人件費や燃料費などのコストが増えてしまうため、メリットとデメリットを精査してから一括物流を導入しましょう。

リスク分散が難しい

災害やトラブルが発生した場合、複数の拠点があれば他の拠点から発送するなどの対応で、損害をカバーできる可能性があります。

しかし、拠点が集約されていると、すべての機能が停止してしまい物流全体に大きな支障が発生します。BCP対策やリスク管理において、リスク分散しづらいことがデメリットです。

一括物流の事例3選

ここでは、一括物流を採用している3社の事例を紹介します。

ホームセンター

家具・インテリア雑貨・ホームセンター商品を取り扱うA社では、通過型物流の物流センターの利用率が20%と低く、多くの取引先が店舗へ直接納品していました。

そのため、納品用の車両による渋滞や滞留で近隣に迷惑をかけたり、店舗への納品時間を管理できていなかったことで店舗への負担が大きいという課題がありました。

一括物流とミルクラン方式を導入した結果、店舗向け物流を集約し通過率は65%に向上。店舗への納品車両は半分以下に減りました。さらにセンター便が店舗に到着する時間を把握できたことで、計画的な人員配置と店舗業務に集中できる環境が作れたそうです。

参考:物流事例:島忠(ホームセンター)様

スポーツ用品店

スポーツ用品を取り扱うB社では、メーカー各社から毎日のように納品があり、荷受けや検品、値札貼りから陳列まで毎日作業に追われていました。そのため、本来時間を割くべき商品説明や試着、サイズの確認のような接客に専念できず、店舗側にとって販売機会を失っていることが課題でした。

一括物流を導入した結果、メーカーからの納品を物流センターに集約し店舗への納品を週2回に減らすことに成功しました。値札貼りの作業も店舗から物流センターでの対応に変え、荷受け・検品など仕入れ関連の業務にかかる時間を1日当たり約50%削減、店舗への納品時間帯の固定化だけでなく、店舗スタッフの最適配置と人数削減につながりました。

参考:物流事例:スポーツ用品店の一括物流センター運営

インテリアショップ

インテリア・雑貨を取り扱うC社では、約7000アイテムのオリジナルブランド商品や海外で生産されたインテリア雑貨や家具の管理と配送を一括物流で行っています。

具体的には、商品の保管・流通加工・発送、海外からのコンテナの荷受け・検品・一時保管。全国125店舗と海外7店舗へのオーダーに応じたピッキング、流通加工、梱包などです。

同社には、配送の問い合わせに応える余裕がない、カテゴリが混載した状態での店舗納品などの課題がありました。

物流センター側で商品をカテゴリ別に納品したり、店舗やスタッフ・配送業者からの問い合わせに応対するカスタマーセンター機能を果たすことで対応可能になりました。

参考:物流事例:(株)Francfranc様

まとめ:一括物流の導入には倉庫管理システムがおすすめ

一括物流を導入して物流拠点を集約すると、在庫の管理がしやすくなり、配送の効率化やコスト削減ができるメリットがあります。一方、リスク分散が難しく配送時間が長くなることがデメリットです。

物流の効率化を図るためには、倉庫管理システム(WMS)の導入がおすすめです。入出荷管理・在庫管理・進捗管理を行えるため、無駄なコストをかけずに物流の最適化を実現できます。

倉庫管理システムは、企業規模や費用などさまざまなサービスがあるため、自社に合ったシステムを導入しましょう。

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