物流倉庫における流通加工とは?種類や目的について詳しく解説

近年、EC市場の拡大や消費者ニーズの多様化により、物流における流通加工の重要性が高まっています。しかし、流通加工とは具体的にどの工程を差すのか分からないという方もいるでしょう。

本記事では、物流倉庫における流通加工の種類や目的、課題点などについて詳しく解説します。流通加工について理解を深め、企業の競争力強化につなげたい方はぜひ参考にしてください。

流通加工とは?

流通加工とは、商品の価値を高めたり利便性を向上させたりするために、物流過程で加工を施すことです。商品特性や販売形態、消費者のニーズに合わせて多種多様な加工が行われます。

商品が物流倉庫に届くと、その時点ではタグやバーコードが記載されていなかったり、日本語表記になっていなかったりします。商品が売れるようにするため、タグやバーコードの貼付や詰め替え、梱包などを行うのが流通加工です。

なお直接的な加工ではありませんが、商品が正常に動作するかや衣類に針がないかなどを確認する検針・検品の工程も流通加工に含まれます。これにより消費者に商品が届けられる前に安全な商品を消費者に届けることが可能です。

近年、EC市場の拡大や消費者ニーズの多様化により、流通加工の重要性が高まっています。小分け包装やギフトラッピングなどの加工需要が増え、個別の消費者ニーズにどれだけ応えられるかが課題点です。

流通加工の種類

商品の特性によって、必要な流通加工の種類が異なります。

  • 検品・検針・計量
  • 梱包・ラッピング
  • 裁断・スチーム加工
  • 印刷加工
  • 値札付け・ラベル張り
  • 組立・セット組み
  • チラシやノベルティの封入

それぞれ、商品の品質を向上させるための重要な工程です。流通加工への理解を深めましょう。

検品・検針・計量

検品は製品の外観や寸法、機能、性能などを検査し、品質基準を満たしているかどうかを確認する作業です。具体的には、以下のような項目をチェックします。

  • 傷や汚れがないか
  • 寸法が正しいか
  • 部品がすべてそろっているか
  • 機能がきちんと動作するか
  • 性能がスペックどおりか

検品は、不良品の出荷を防ぐために欠かせない作業です。目視による検査だけでなく、測定器や検査機器を用いて行うこともあります。

検針は、製品に金属片などの異物が混入していないかどうかを検査する作業です。金属片が混入すると製品が破損したり、人体に危害を加えたりする恐れがあります。商品の安全性を確保するためには、検品や検針が欠かせません。

また商品の重量や体積を測定するため、計量が実施されることもあります。計量は商品の品質チェックや、出荷時の送料を計算する際に必要です。

それぞれ商品の状態や特性を把握し、適切に在庫管理するための重要な工程となります。

梱包・ラッピング

輸送中の商品を保護するためには、適切な梱包を施して破損を防がなければなりません。段ボールや緩衝材などの資材を使用し、商品の品質が保たれたまま届けられるよう丁寧に梱包します。割れ物や湿気に弱い商品、長期間の輸送が必要となる場合などにおいて、とくに注意する必要があるでしょう。

また、消費者のニーズに合わせてギフト用のラッピングを施すこともあります。EC物流においては、お歳暮やお中元などの用途でギフトラッピング需要が高い傾向です。

裁断・スチーム加工

衣料品やアパレル製品においては、裁断やスチーム加工が必要となる場合があります。裁断とは布地や紙、皮革などの素材を必要な大きさに切断する作業です。専用の裁断機やハサミを用いて行います。

スチーム加工は素材に高温の蒸気を当て、シワを伸ばしたり形を整えたりする作業のことです。到着した商品の型崩れやシワを取り除くことで、商品の見栄えを整えます。

印刷加工

物流倉庫では、ポスターやチラシ、パンフレットなどの印刷物まで対応している場合があります。おもに次のような印刷加工を施します。

  • 製本加工
  • 紙器加工
  • 光沢加工
  • エンボス加工

印刷加工を得意とする企業では、紙だけでなくガラスや木製品などへの特殊印刷まで対応できるケースも。印刷により商品に付加価値をつけることで、豊富な商品ラインナップを展開できます。

値札付け・ラベル貼り

ラベル張りは、荷物に商品情報が記載されたものを貼りつける作業です。ラベルは、商品を倉庫に入庫してから出荷するまでのさまざまな場面で活用されます。

ラベルを貼付することにより、商品名やコード、入り数などが素早く識別できます。商品名が記載されたラベルにより、外装を見るだけで中身の判断が可能です。

また宛名やDM用のラベル、商品陳列が必要な商品であれば、顧客の要望に応じて値札などの貼付も行います。

組立・セット組み

商品によっては、組み立てて販売可能な状態にする組立作業が行われます。物流倉庫に届いた部品や材料をもとに、材料家具や機械製品などを完成させる作業です。組立済みの商品は届いてからすぐに使用できるため、顧客の負担を減らして満足度を高められます。

セット組みは、複数の商品を組み合わせて1つに梱包する作業です。ギフト詰め合わせやバラエティセットとして販売することで、多様な顧客ニーズに対応できます。

チラシやノベルティの封入

顧客に商品を配送する際に、チラシやノベルティなどを同梱する工程です。おもに販売促進やリピーターの獲得を目的として実施します。

具体的には、次のような内容の販促物を封入します。

  • 新商品発売のお知らせ
  • キャンペーンの告知
  • 商品サンプル
  • 割引クーポン
  • 顧客満足度アンケート

また、ギフト商品の場合にメッセージカードを封入することも。同梱発送は、継続購入の促進や顧客満足度向上に大きく影響する要素です。

流通加工の目的

流通加工は、商品の品質を高めて顧客の利便性を向上させるために欠かせません。流通加工は、次の目的により行われます。

  • 商品に付加価値をつける
  • 消費者満足度を高める
  • 競合との差別化を図る

流通加工の目的と意義を理解しましょう。

商品に付加価値をつける

流通加工を施すことで商品に新たな機能や利便性を加え、付加価値を高められます。付加価値が高く魅力的な商品は、消費者に選ばれやすくなるでしょう。

たとえば大口の商品は、消費量が少ない人のニーズにそぐわないことがあります。そこで商品を小分けにして販売すれば、少量だけ購入したい人のニーズを満たすことが可能です。

「複数の商品をまとめて購入したい」「知人や友人にプレゼントを渡したい」などの希望を持つ消費者に対しては、セット売りやギフトラッピングによって商品の付加価値を高められます。消費者ニーズに合わせた加工を実施することで、購買意欲の向上が見込めるでしょう。

顧客満足度を高める

リピーターや新規顧客を増やすためには、顧客のもとへ適切に商品が届けられ、購入後も満足してもらうことが重要です。適切な検品や在庫管理を行い、ミスの防止に努めなければなりません。

不良品や誤出荷はクレームの発生につながり、継続購入の機会を失ってしまいます。そのため、安定した物流品質を保つことが求められます。そのうえで、顧客目線に立ったきめ細やかなサービスを実施する必要があるでしょう。

物流では1つのミスが命取りになります。たとえ商品の品質が良かったとしても、いい加減な梱包であれば顧客の印象は悪くなってしまいます。入出荷時の検品を綿密に行うだけでなく丁寧な加工や梱包を施し、商品の品質を担保することが大切です。

競合との差別化を図る

流通加工で競争に打ち勝つためには、自社独自の強みや競合他社との差別化ポイントを明確化することが重要です。競合他社が行っていない流通加工サービスを自社で行えば、それだけで差別化が実現します。

たとえば組立が必要となる商品を提供する際に、完成させてから輸送することで、顧客の利便性を高められます。また包装も他社と一風変わったデザインを導入すれば、ブランドイメージの訴求にもつながるでしょう。

流通加工における課題点

物流において流通加工は、商品価値を高め顧客満足度の向上や競合差別化に貢献する重要な活動です。しかし近年、多様化する顧客ニーズへの対応や、物流コストの圧迫が大きな課題となっています。

具体的には迅速な配送や、きめ細かなサービス、環境面への配慮などさまざまなニーズが求められています。しかし、個々のニーズへの柔軟な対応のためには、設備投資や人件費などのコストが必要です。物流業界の人材不足も年々、深刻化しています。

多様化するニーズに応えるためには、サプライチェーン全体の最適化によりコストを減らし、人件費削減や作業効率向上を図ることが急務となります。具体的には、次の内容に対して取り組んでいく必要があるでしょう。

  • 流通加工サービスの充実
  • 品質管理体制の強化
  • スピーディーな配送の実現
  • ミス防止の取り組み

これらを実現していくためには、IT技術の活用やロボットによる省人化など、テクノロジーを取り入れることも有効な手段です。これにより人為的ミスの削減やコストの削減、物流品質の向上につなげられます。

顧客ニーズの多様化は、物流業界にとって大きな課題であると同時に、新たなビジネスチャンスでもあります。変化に柔軟に対応し、顧客に最適なサービスを提供することで、競争力を強化できるでしょう。

流通加工を行う際のポイント

物流事業を成功させるためには下記3つのポイントを押さえて、流通加工を実施することが重要です。

  • 作業工程の無駄をなくす
  • 設備や人員を適切に配置する
  • 顧客ニーズを常に把握する

それぞれのポイントを理解しましょう。

作業工程の無駄をなくす

業務に無駄があると従業員の待ち時間が生じたり、作業が重複したりといった事態につながります。流通加工を効率化するためにも作業工程を可視化し、時間のロスにつながる要因を見つけ出すことが重要です。

作業工程の無駄を見つけたら、次のような改善を講じましょう。

  • 作業手順の見直し
  • 倉庫内の配置変え
  • 業務の標準化

また各工程間の情報を共有できるシステムの導入により、部門同士の連携強化や無駄の削減につながります。サプライチェーン全体の情報を見える化するSCMや、倉庫内の入出庫履歴や在庫管理などを把握するWMSなどの導入が効果的です。

設備や人員を適切に配置する

流通加工の効率化には、内容に合った設備の導入と、作業量に合わせた人員の配置が不可欠です。設備や人員が適切に配置されていないと、作業効率や品質の低下を招きます。

物流倉庫における流通加工では、セル生産方式とライン生産方式が採用されています。それぞれの特徴やメリットは次のとおりです。

特徴メリット
セル生産方式製品ごとに独立したセルで完結させる
1人もしくは少人数で対応する
商品種別に合わせて柔軟に対応できる
従業員のモチベーションが維持されやすい
ライン生産方式複数の作業を連続的に行う
ラインを構築する複数人で独立した単純作業を受け持つ
大ロットに対応できる業務の質を一定に保てる
従業員の教育コストが抑えられる

セル生産方式は各工程を小人数で対応するため、高いスキルと経験が必要です。ライン生産方式は多くの量に対応できる一方で、一度立ち上げると変更が難しく、多品種や少量生産には不向きです。

近年では需要変動や消費者ニーズに対応するために、これらの生産方式を組み合わせて対応するハイブリット方式も採用されています。また人手不足やミス削減のために、ロボットによる自動化システムを導入する方法も有効な策の1つです。

流通加工を効率化するためには自社の強みや課題を理解し、最適な生産体制の構築が求められます。

顧客ニーズを常に把握する

流通加工におけるニーズを把握することで、顧客満足度を高めるサービスを提供できます。顧客の利便性を高める加工により、企業の競争力を高められるでしょう。

顧客ニーズを調査するには、次のような方法があります。

  • 販売データや満足度調査などの情報を集める
  • SNSやレビューなどから口コミを調べる
  • 市場調査を実施する

得られた情報は商品企画やサービス開発に活かし、顧客に喜ばれる流通加工の提供につなげましょう。ニーズに応えるサービスを提供することで、競合企業との差別化を図り、顧客との信頼関係を構築できます。

まとめ:物流倉庫における流通加工の重要性を理解しよう

物流における流通加工は、単に商品の形を変えるだけでなく、顧客に価値を提供する活動です。顧客ニーズを常に把握し、それに応じた加工を行うことで、顧客満足度向上やコスト削減、競争力強化を実現できます。

企業の持続的な成長や発展のためにも、流通加工の重要性を理解し、顧客ニーズの充足を目指しましょう。