冷凍食品や惣菜といった自社で製造した食品を出荷する場合、冷凍庫や賞味期限の管理などの課題があります。そのため、食品の物流を外注しようと考えている事業者の方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、食品物流を外注する際のメリットや委託先の選び方を解説します。食品は温度管理などの専門的な設備が必要なため、自社で物流を賄うにはコストが大きくノウハウも必要です。食品の出荷をしたくとも、物流部分がボトルネックとなっている事業者の方はぜひ参考にしてください。
食品物流の外注における概要と特徴
食品物流の外注について、概要や特徴について以下の2点を解説します。
- 食品物流を外注する際のおもなサービス内容
- 食品物流の課題
食品物流に起こりやすい問題点や、外注することで何ができるのかを押さえておくと、委託する際もスムーズです。食品の出荷業務に悩みを抱えている事業者の方は確認しましょう。
食品物流を外注する際のおもなサービス内容
食品の物流は、おもに以下のような作業を委託できます。
- 入荷・検品
- 保管(常温/冷蔵/冷凍)
- 在庫管理
- 加工
- 梱包
- 出荷
- 返品対応
- アフターサービス
どこまで委託できるかは、外注先の物流センターによって異なります。物流プロセス全般を委託できるため、荷主の事業者は販売や営業活動に専念できるでしょう。
ただし、物流業務を外注すれば作業量や出荷量に応じて料金がかかります。コストは物量や作業内容によって異なりますが、外注する場合は複数社に見積もりを取って見比べるのがおすすめです。
また、作業の全てだけでなく流通加工や出荷業務など一部のみを委託することも可能です。作業の工数を減らせばその分費用も安く済むため、必要な部分を委託しましょう。
食品物流の課題
一般的に食品の物流業務には、以下のような課題があります。
- 温度や賞味期限の管理
- 衛生的な環境の構築
- リードタイムが短い
- 小ロットで配送頻度が高い
- 流通加工が必要な場合がある
食品物流は賞味期限や温度管理などに注意しなければいけません。加工して出荷する手間がかかる場合もあるため、専用の設備が必要な点が課題となります。
また、生鮮食品など鮮度が重要なものはリードタイムが短く、小ロットで配送頻度も多くなりがちです。衛生面でも気を配る必要があるため、ノウハウのない事業者にとっては解決すべき問題が多数あります。
食品の物流を専門の物流業者に外注できれば、上記のような課題を解決しやすくなるでしょう。
食品物流を外注するメリット6選
食品物流を外注する、具体的なメリットはおもに以下の6点です。
- 人件費などのコスト削減
- 自社で設備や人材の手配が不要
- リードタイムの削減や配送頻度のアップ
- 品質管理や在庫管理のノウハウがある
- 事業拡大に注力できる
- CO2削減や食品ロスなど環境への配慮
メリットが大きい分、費用もかかるため、費用対効果を見極めながら委託を検討しましょう。
人件費などのコスト削減
食品物流を外注することで、入出荷作業や流通加工に関する、物流業務全般の人件費が削減可能です。物流業務に従事する人員を自社で抱えなくて済むため、教育にかかるコストの削減効果もあります。
一方で、外注先との密な連携が必須となるため、システム利用料などの管理コストは増えるおそれがあります。また、外注費用として作業員の人件費も含まれてくるため、委託前にトータルでかかるコストを比較して検討しましょう。
自社で設備や人材の手配が不要
外注によって、自社で設備や人材を準備する必要がなくなります。食品の取り扱いは衛生面や賞味期限などの管理も行うため、冷凍庫や冷蔵車といったさまざまな設備投資を行う必要があります。
保管スペースも用意することになるため、自社で全てを準備するには大きなコストがかかります。加えて、作業に従事する人材の手配も必要で、閑散期であっても繁忙期に備えて多めの人員を抱えておくことになるでしょう。
外注する場合はこうした設備や出荷人員の手配が不要なため、管理や手間が削減できます。物流を受託する専門業者は、複数の事業者から物流業務を受託して出荷量に応じて内部で適切に人員配置を行うのが特徴です。
そのため、閑散期には少ない人員で対応し、繁忙期には人数を増やして配置するといったフレキシブルな対応を行います。安定した人材の確保がしやすい点がメリットです。
リードタイムの削減や配送頻度のアップ
食品物流の外注は、リードタイムの削減や高頻度の配送が可能です。たとえば、土日が休みで規定を変えにくい企業の場合でも、対応してる物流事業者を選択すれば土日祝の配送を実現できるでしょう。
また、食品は鮮度などの問題から、どうしてもリードタイムが短くなりがちです。スムーズな配送のためには人員の確保や効率的な出荷が不可欠ですが、外注することによって解決できます。
品質管理や在庫管理のノウハウがある
食品に関する実績がある物流事業者であれば、品質管理や在庫管理のノウハウがあるため安心して委託可能です。食品は鮮度を保つために温度管理は重要で、賞味期限切れを起こしたり、腐らせたりしたまま出荷してしまうと自社の信用に関わります。
そのため、食品物流のプロに任せることが品質の担保の観点からもおすすめです。外注先を選ぶ際には、管理方法や過去の実績を確認しましょう。
事業拡大に注力できる
物流部分を外注すれば、人材の手配や出荷リソースに悩まされる心配がなくなり、自社では安心して事業拡大に注力できます。出荷が追いつかないために、事業を思うように拡大できなかった場合は、ぜひ検討しましょう。
近年のEC市場では出荷リードタイムをいかに短くできるかが売上拡大のポイントです。現に、楽天市場やYahoo!ショッピングモールといった大手ECモールでは、出荷リードタイムが優良店舗などのバッジ獲得のための条件のひとつとなっています。
出荷リソースの確保は事業拡大における重要事項なので、市場競争を勝ち抜くためにも物流の外注は有効な手段です。
CO2削減や食品ロスなど環境への配慮
食品物流の外注は、食品ロスやCO2の削減にもつながります。品質や在庫の管理を適切に行いやすくなり、廃棄される在庫の数を削減できるでしょう。
また、物流を委託することで他社の荷物と合わせて物流センターからまとめて発送されます。自社でそれぞれ出荷するよりも、業界全体でのトラック台数削減につながり、その分CO2の削減にも貢献できます。
国際的にもサプライチェーンにおけるCO2排出量の把握と削減が求められる傾向にあり、CO2削減の観点からも物流の外注は有効です。
食品物流を外注する際の選び方
食品の物流を外注する場合、以下のようなポイントを意識して選ぶとよいでしょう。
- 料金体系が自社に合っているか
- 配送頻度や出荷指示のタイミングなどを確認
- 温度管理や品質管理の状態に問題はないか
- 食品物流の実績があるか
- 物流倉庫の見学ができるか
自社に合った外注先を選ぶことが重要です。外注を検討している場合は参考にしてください。
料金体系が自社に合っているか
まずは料金体系を確認しましょう。料金は大きく分けると従量制と固定制があり、それぞれ以下のような特徴があります。
料金体系 | 特徴 |
従量制 | ・出荷するごとに料金がかかる ・出荷が少ないとその分費用もかからない ・固定制よりも単価が高くなりがち |
固定制 | ・出荷量に関係無く一律の料金 ・出荷数が多いと1件当たりの費用は安い ・出荷数が少ない場合も固定で料金がかかるため割高に |
ピッキングや梱包、配送料金など工程ごとに請求されたり、1件あたりの単価にすべて含まれていたりと料金の計算方法はさまざまです。また、上記とは別に保管料がかかることが多く、商品の点数や体積によってひと月あたりの金額が計算されます。
費用が予算に対して適切か、費用対効果も見極めながら選択してください。
配送頻度や出荷指示のタイミングなどを確認
配送頻度や、自社のリードタイムに合った発送ができるかは重要なポイントです。ECサイトなどのBtoCの場合は、注文者の要望に応じて到着日を柔軟に変更する機会が多くなります。
そのため、出荷指示のタイミングや配送内容の変更を指示した場合でも、すぐに対応ができるかチェックしておきましょう。BtoCやBtoBのどちらを得意としているかでもプランや対応可能な業務内容が変わってくるため注意が必要です。
自社の業務内容に合った外注先を選ぶのがおすすめです。
温度管理や品質管理の状態に問題はないか
食品の物流は、雑貨やアパレルといった常温で管理できるものよりも温度や品質管理に細心の注意が必要です。消費者の口に入るものや健康に関わるものを取り扱うには、設備が整っている事業者を選んでください。
また、倉庫・センターだけでなく配送トラックにも冷蔵・冷凍の機能があるかは要確認です。普段から食品物流を取り扱うような外注先であれば、設備の用意があります。
しかし、温度管理が必要か判断がつかない場合もあるので必ず申し伝えるようにしましょう。
食品物流の実績があるか
品質を担保するためにも、食品物流の実績がある事業者を選ぶのも重要なポイントです。また、小ロットかつ高頻度な配送になりがちな食品は、実績のない業者ではスムーズな出荷ができない可能性があります。
物量によっても対応の可否が変わってくるため、ヒアリングの際に毎日のおおよその出荷量は正確に伝えてください。
物流倉庫の見学ができるか
可能なら、実際に出荷する物流の現場を見学できるか問い合わせてみましょう。衛生上や防犯上の理由からできない場合もありますが、自社の商品がどのような環境で取り扱われているのかは訊いておくのがおすすめです。
倉庫見学ができる場合は、倉庫内の衛生状態やスタッフの働く様子などを見て、外注しても問題無さそうかをチェックしてください。倉庫見学の可否がホームページに記載がなくても、担当者に問い合わせればできる場合もあります。
食品物流を外注できる事業者の例
食品物流を受託している事業者を2社紹介します。
- オープンロジ
- 美翔物流
いずれも食品物流の実績があります。どの事業者に依頼するか検討中の方は、問い合わせてみるとよいでしょう。
オープンロジ
オープンロジは、全国に70拠点の物流倉庫を構える物流代行業者です。常温/定温/冷蔵・冷凍の三温度帯による管理ができるため、食品物流の外注も受託しています。
特にEC事業者向けの機能が充実しており、自社ECサイトとAPI連携や同梱物などを条件設定して自動でセットする機能などがあります。また、オンライン上からの入出荷指示を行い、在庫や入出庫の状況をリアルタイムで確認可能です。
さらに、初期費用や固定費が無料かつ従量課金制で小ロットからの配送にも対応しているため、個人事業主から大手企業まで幅広く外注できます。13,000社以上の導入実績がある日本最大級の物流代行業者なので、物流課題を抱えている方はホームページ上から無料相談を行うとよいでしょう。
美翔物流
美翔物流は、食品配送や学校給食の配送など、食品物流全般を受託している企業です。大阪を中心に関西7ヶ所に倉庫を構えています。
常温・冷蔵・冷凍の配送に対応し、流通加工なども行っている食品配送のスペシャリストです。複数社の荷物をまとめて1台のトラックで配送する「共同配送」も行っているため、小ロットかつ低単価での出荷が実現できます。
また、24時間の配送体制が整っており、鍵を預けて商品を格納納品するサービスも提供しています。商品の持ち込みだけでなく集荷も行っているため、物量が多い事業者の方でも活用できます。
倉庫が大阪・京都・三重にあるため、関西圏の方は検討してみてください。
まとめ:食品物流を外注するなら品質管理の方法や実績を確認しましょう
食品の物流を外注する場合、温度管理や品質管理の観点から実績のある物流会社に任せるのがおすすめです。外注先を選ぶ際には、料金体系や配送頻度、品質管理の方法など自社に合った企業を選択することが重要です。
しかし、外注が実現すれば人件費の削減やサービスの向上につなげられるでしょう。食品物流を行うには設備投資や人員の確保などハードルが高いため、ぜひ外注を検討してください。