物流倉庫において欠かせない機能が「保管」や「出荷」です。
適切に業務を行うためには、各手順について把握し、注意点を理解する必要があります。
そこで今回は、物流倉庫の保管や出荷手順・注意点などについて詳しく解説。
物流倉庫の保管や出荷に課題を感じている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
物流倉庫の役割とは?
物流倉庫は、単に保管としての機能を持つだけでなく、物流を支えるためのさまざまな機能を担っています。
従来では、自社で所有している倉庫に商品を保管し、管理や配送までを社内で行う手法が取られていました。
近年、オンラインで商品売買がさかんに行われるようになり、保管から出荷までを担う「物流倉庫」の勢いが高まっています。
倉庫や物流施設の工事受注額は、2009年以降毎年増加傾向。今後も成長していくことが予想されます。
それに伴い、物流業務を自社で完結させるのではなく、アウトソーシングするサービスが普及。
中小企業が自社で大規模な物流体制を構築するのは難しいため、効率的な在庫管理や配送などをシステム化して担ってくれる物流倉庫が求められています。
物流倉庫と物流センターの違い
物流倉庫と似た施設に、物流センターがあります。
物流倉庫は、商品を出荷日まで保管しておく拠点のこと。物流センターは、モノの流れを支える物流拠点のことを指します。
かつて物流倉庫は商品の保管が主な役割でしたが、現在は物流センターとしての機能を持つ倉庫も増えています。
さまざまな業態の物流サービスが増えているため、物流センターや物流倉庫の定義があいまいになり、今ではほぼ同義として捉えられることも。
物流センターの種類は、以下のとおりです。
TC(トランスファーセンター) | 通過型センターと呼ばれ、在庫機能を持たない物流センター。 入荷した荷物はすぐ仕分けを行い、次の拠点へ出荷する。 |
DC(ディストリビューセンター) | 在庫型センター。商品を預かり、在庫管理や出荷業務を行う。 |
FC(フルフィルメントセンター) | 在庫型センターの機能を持ち、通信販売業において、 受注から返品対応、クレーム処理なども総括的に担う物流センター。 |
物流倉庫というとDCの機能を持つ倉庫が一般的ですが、業態は多様化しています。
大きなくくりでいえば、物流倉庫も物流センターの一部といえるでしょう。
物流倉庫とレンタル倉庫の違い
レンタル倉庫は、倉庫や場所全体を貸し出すサービスです。
入出庫の確認や、倉庫施設の管理はレンタル倉庫業者が行ってくれますが、物流倉庫のような倉庫内業務は含まれません。
そのため、検品や仕分け、流通加工や配送手配などは自社で対応する必要があります。
また、物流倉庫は保管する商品に合わせた防火設備や防犯設備などが整っているため、レンタル倉庫に比べて安全に保管できるのがメリットです。
物流倉庫の主な業務
物流倉庫は保管だけでなく、さまざまな業務を担っています。主な業務は以下のとおりです。
- 入庫:倉庫に商品を搬入する
- 検品:指示書と内容に誤りがないかチェックする
- 保管:商品の質が保たれるように適切に保管する
- 流通加工:ラベル・シール貼付やラッピングなど
- ピッキング:指定の商品を集める
- 仕分け:集められた荷物を分類する
- 出庫:商品を倉庫外に出す
入荷から出荷までの間に、さまざまな工程があります。
以上のように商品を入荷・保管し、出荷されるまでの一連の業務を引き受けるのが物流倉庫です。
物流倉庫における保管業務とは
物流倉庫における保管とは、倉庫内で依頼者から商品を預かり、適切に管理することです。
商品の品質が保たれる環境や、出荷指示に応じてスピーディに出荷できる環境が求められます。
また、在庫管理も保管業務の一環です。
入出庫における在庫数をチェックして、不足があれば発注をかけます。
保管作業に欠かせないロケーション管理
物流倉庫ではロケーション管理が行われます。
ロケーションとは、倉庫内の商品を保管する番地のことです。
倉庫内のどこに何があるのかを把握するために、棚に番地を割り振って管理します。
ロケーションの管理方法は以下の3種類。
- 固定ロケーション
- フリーロケーション
- ダブルトランザクション
どのロケーションを選ぶかで、メリットやデメリットが異なります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
固定ロケーション | 配置を覚えやすい | 空いている棚がデッドスペースになる |
フリーロケーション | 保管場所が増える | ピッキングに時間がかかるシステムの導入が必要 |
ダブルトランザクション | 配置を覚えやすい保管場所が増える効率的にピッキングできる | ピッキングエリアに補充する工程が発生する |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.固定ロケーション
固定ロケーションは、常に同じ位置に商品を配置する方法です。
メリットは、作業員が商品の配置を覚えやすいこと。
慣れると作業しやすくなり、スピーディーにピッキングできます。
ただし、在庫の増減が多いと棚が空いたり、反対に不足したりすることがあります。
固定ロケーションは扱う商品の数が多く、品種があまり変動しない場合に適した方法です。
2.フリーロケーション
フリーロケーションは、商品と番地の紐付けを行わない方法です。
空いている棚から順次保管していくので、棚を最大限に利用できるのがメリットです。
しかし、どこになにがあるかを把握するためには、システムの導入が必要。
コンピュータ上で保管場所を管理します。
品種が多く、小ロットを取り扱う場合に適した方法です。
管理システムなしでフリーロケーションを採用するのは難しいでしょう。
3.ダブルトランザクション
フリーロケーションを取り入れれば、効率よく保管やピッキングができます。
しかし、商品の配置がバラバラなので、広範囲を歩いて集めなければならず、時間がかかってしまいます。
ダブルトランザクションは、固定ロケーションとフリーロケーションの両方のメリットが得られる方法です。
倉庫内のエリアを以下の2つに分けます。
- ピッキングエリア:商品をピッキングするエリア
- ストックエリア:商品の在庫を保管するエリア
ピッキングエリアで商品を集め、在庫が少なくなった商品をストックエリアから補充する方法です。
ダブルトランザクションのメリットは、2つのエリアに分けることでピッキングエリアが小さくなり、作業の動線が短くなる点にあります。
歩き回る時間を短縮できるため、効率よくピッキングできます。
ただし、ピッキングエリアの商品がなくなるとピッキングができません。そのため、適切なタイミングで補充する工程が必要です。
保管の注意点
保管を行う際、いくつか注意するポイントがあります。
- 保管スペースを見直す
- 出荷頻度に合わせてレイアウトする
- 最適な作業動線を確保する
保管業務を行う際は、それぞれのポイントを意識しましょう。
関連記事:倉庫の保管スペースを有効活用する7つの方法!目指せ無駄ゼロ
1.保管スペースを見直す
効率的に保管するためには、スペースの見直しが重要です。
倉庫内にスペースロスがあると、本来入庫できるはずの数を仕入れられません。
棚の隙間や高さなどにデッドスペースがないか、確認しましょう。
荷物の大きさごとに無駄が生まれないよう配置すると、たくさん荷物を入れられます。
ただし、荷物同士の隙間を詰めすぎると、ピッキングに支障をきたす恐れがあります。
作業の行いやすさとスペースの削減が、ほどよいバランスになるように調整しましょう。
2.出荷頻度に合わせてレイアウトする
作業スピードを向上させるためには、出荷頻度に合わせたレイアウトが効果的。
レイアウトするための基準として、「ABC分析」を用いるのがおすすめです。
出荷頻度の多い順に、商品をA・B・Cに分類します。
- Aランク:出荷頻度や流動性が高い商品
- Bランク:出荷頻度や流動性が平均的な商品
- Cランク:出荷頻度や流動性が低い商品
Aランクの商品は倉庫の出入り口から近い場所や、出荷通路側に配置。ピッキングの動線が短くなるように調整します。
Bランクの商品はAランク商品の奥に配置し、Cランクの商品は倉庫の奥にしまうとよいでしょう。
出荷頻度に合わせてレイアウトすることで、効率的に商品を集められます。
3.最適な作業動線を確保する
作業動線とは、ピッキングリストを取得し、棚へ移動、商品を梱包するために運ぶなどの人が移動する経路のことです。
スムーズな作業動線が確保されていないと、効率が悪くなり、作業スピードが落ちます。
最適な作業動線をつくるために、各工程が最短で結ばれるように倉庫内の配置を行いましょう。
また、ピッキング指示データをハンディーターミナルに飛ばせるようなシステムにすれば、移動距離を減らせます。
無駄な動線をカットすることで時間を短縮でき、人件費削減やコストカットにつながります。
物流倉庫における出荷業務とは
一般的な出荷は、商品を市場に出すことを指します。
物流倉庫における出荷とは、出荷指示を受けた商品を物流倉庫から発送する業務のことです。
ここから、以下の3点を解説します。
- 出荷と配送の違い
- 出荷と出庫の違い
- 出荷業務の流れ
出荷と間違われやすい業務や、出荷業務の流れについて見ていきましょう。
出荷と配送の違い
配送は、商品を顧客に届けるために、トラックに積み込んだ荷物を運搬して送り届ける作業のことです。
出荷は商品を送り出すことなので、配送は出荷業務の一部といえます。
出荷と出庫の違い
出庫は、単に商品を倉庫から出す作業のことを指します。
出荷は商品を棚から出して、売上計上を行い、運搬するまでの一連です。
つまり、出庫も出荷業務の一部に含まれます。
出荷業務の流れ
出荷業務は以下のような流れで進みます。
- 受注データの取り込み・出荷登録
- 在庫引き当て処理
- ピッキング
- 検品
- 梱包
- 出荷・発送
それぞれ詳しく解説していきます。
1.受注データの取り込み・出荷登録
顧客からの受注データを取り込み、出荷指示の登録を行います。
取引先から送られてくるデータによって必要な作業はさまざま。
FAXやメールのほか、CSVで送られることもあります。
このようなデータを一括で管理するために、多くの物流倉庫でWMS(倉庫管理システム)が採用されています。
取り込んだ受注データから、商品を集めるためのピッキングリストを作成します。
2.在庫引き当て処理
在庫引き当て処理とは、商品の欠品が発生しないように、実在庫数と有効在庫数を把握するための工程です。
例えば、実際の在庫数が30個あったとしても、すでに10個の受注が決まっている場合は有効在庫数が20個になります。
在庫引き当て処理を行わないと、在庫がないのにもかかわらず受注を受け付けてしまう恐れがあるため、重要な工程です。
3.ピッキング
ピッキングは指定された商品を集める工程です。
以下の2種類のピッキング方法があります。
- シングルピッキング:受注ごとに商品を集める
- トータルピッキング:複数の受注を合算して集める
ピッキング業務はハンディ―ターミナルなどの機械を用いる方法と、人の目視で集める場合とがあります。
集めた商品は検品担当者や梱包担当者に引き渡します。
4.検品
検品は、入出庫の際に誤りがないか確認する作業です。
以下のような検品作業を行います。
- 入荷検品:入荷された商品に誤りがないか
- 不良品仕分け:不良品がないか
- 数量検品:商品の数量が合っているか
- 混入検品:異物混入がないかどうか
- 作動検品:機械が作動するか
- 出荷検品:ピッキングで集めた商品が伝票通りか
物流の検品は、伝票通りの商品が数量通り入っているかの数量検品がメインです。
倉庫によっては、不良品のチェックや機械類の動作確認まで引き受けることもあります。
5.梱包
ピッキングした商品を発送前に梱包します。
梱包時は、商品の大きさに合わせて適切なサイズの資材を選ぶことが重要です。
商品が輸送時に傷つかないようダンボールや緩衝材を使用。
要望に応じて、包装紙でラッピングを行うこともあります。
6.出荷・発送
トラックに荷物を積み込み、発送する工程です。
運送業者に引き渡すか、自社配送を行います。
出荷で起こりやすいミスと対策
出荷時にミスが起こると適切に商品が届かず、顧客の信頼を失いかねません。
どのようなミスが起きやすいのかを把握しておくことで、対策しやすくなります。
出荷作業で起こりやすいミスは以下のとおりです。
- 商品タイプの間違い
- 商品数の間違い
- 送り先の間違い
- 品番の間違い
- 同梱物の入れ忘れ
これらのミスを防止するためには、次のような対策が有効。
- ミスが起こりにくいようなロケーション管理を行う
- チェック体制を整える
- WMS(倉庫管理システム)を導入する
出荷で起こりやすいミスと対策について、見ていきましょう。
1.商品タイプの間違い
ピッキングの際に起こりやすいミスとして、商品タイプの間違いがあります。
同じ商品の色違いやサイズ違いなど、商品を誤って計上してしまうミスです。
カラーやサイズを複数展開している商品があると、間違いやすくなります。
2.商品数の間違い
商品の数量を間違えるパターンです。
バラ売りとケース単位の両方を取り扱っていると、バラ1個と1ケースの取り違えが生じかねません。。
また、まとめ買いなどで1件あたりの受注量が多くなると、商品を数え間違えるリスクが高まります。
3.送り先の間違い
送り状の貼り間違いや記入ミスなどがあると、誤った宛先へ発送してしまいます。
誤発送されると、複数の顧客からクレームを受けなければいけません。
個人情報も流出してしまうため、送り先の間違いに十分気を付ける必要があります。
4.品番の間違い
品番のケタを読み違えると、誤った商品をピッキングする可能性があります。
ハンディ―ターミナルなどの機械を導入していない場合は目視によるチェックになり、品番の間違いが起こりやすいのです。
検品をすり抜けてしまうと、気が付かないまま誤発送される恐れがあります。
5.同梱物の入れ忘れ
商品と一緒に封入すべき同梱物を入れ忘れるミスも起こりがちです。
ピッキングリストに記載のある同梱指示を見落としたり、商品に気を取られて抜け落ちてしまったりすると、同梱物の入れ忘れが起こります。
対策1.ミスが起こりにくいようなロケーション管理を行う
このようなミスを防ぐためには、ロケーションを見直すことが重要です。
類似商品が近くにあると、ピッキングミスが生じやすくなります。
間違いが起こりやすい商品は近づけ過ぎないように配置しましょう。
また、作業に十分なスペースを確保して作業しやすい空間を作り出すことも、ミス防止につながります。
作業スペース周りは綺麗にし、日頃から整理整頓を心がけるようにしましょう。
対策2.チェック体制を整える
出荷業務は一つのミスが命取りとなるため、チェック体制を整えておくことも忘れてはいけません。
ミスが起こりやすい工程を見直して強化しましょう。
「梱包前の検品では必ず商品1点ずつ確認する」「2人以上でダブルチェックを行う」など、仕組み化することで商品の誤出荷予防になります。
また、作業手順をマニュアル化してルールを統一しておけば、業務の質を標準化できます。
ヒューマンエラー防止のために業務フローを最適化し、決められた手順での作業を徹底しましょう。
対策3.WMS(倉庫管理システム)を導入する
出荷時のミス防止には、WMS(倉庫管理システム)の導入がおすすめです。
WMSとは、物流倉庫における入出庫管理や在庫管理などの機能を搭載したシステムです。
主な機能は以下のとおり。
- ロケーション管理
- 入出庫管理
- 在庫管理
- 納品書作成
- 棚卸管理
- 帳票・ラベル発行
WMS庫内物流の正確性を高めて、スピードアップを図るのに役立つシステムです。
SKU単位のロケーション管理を行うことで、商品ごとの配置を明確にできます。
また、ハンディ―ターミナルを用いるため、機械の目で間違いを見つけられます。
WMSを導入すれば、人の目による抜け漏れやミスを防止できるのです。
まとめ:物流倉庫業は人々の生活を支えるサービス
物流倉庫業は、わたしたちの生活と密接に結びつくサービスです。
大切な商品を預かり、送り出す仕事だからこそ、保管や出荷を適切に行うことが大切です。
誤出荷や誤配送を未然に防ぐために、マニュアルやルールを定めて、働きやすい仕組みをつくることが必要でしょう。
倉庫内業務を見直して地道に改善していくことが、顧客の信頼につながります。
記事内で紹介したポイントを、ぜひ参考にしてみてください。