食品や医薬品などの温度管理が必要な商品を扱う企業にとって、冷蔵・冷凍倉庫は欠かせません。しかし、自社で設備を整えるには多大な投資が必要になります。そこで注目されているのが、冷蔵・冷凍倉庫の外注です。
外注により初期投資を抑えつつ、専門性の高い管理を実現できます。
本記事では、冷蔵・冷凍倉庫を外注するメリットや選び方、注意点について説明します。コスト削減や品質管理の向上を目指す方は、参考としてください。
冷蔵・冷凍倉庫の4温度帯倉庫とは?
冷蔵・冷凍倉庫には、商品の特性に合わせて異なる温度帯が設定されています。従来は画像のとおり7区分の温度帯に分けられていました。
しかし、国土交通省は冷蔵倉庫の温度帯区分を細分化するため、倉庫業法第三条の登録の基準等に関する告示の一部を改正。この改正は令和5年12月28日に公布され、令和6年4月1日から施行となりました。この改正により温度帯は7区分から10区分へ、より細分化されています。
ここでは、4つの温度帯の特徴について解説します。
- 冷蔵倉庫の特徴
- 冷凍倉庫の特徴
- 温度管理の必要がない常温倉庫
- 10℃~20℃帯の定温(低温)倉庫
それぞれ詳しく見ていきます。
冷蔵倉庫の特徴
10℃以下の低温環境に保たれた倉庫であり、生鮮食品や乳製品・医薬品など、温度管理が必要な商品の保管に適しています。庫内温度と湿度を適切に管理することで、商品の鮮度を維持し、賞味期限を延長できます。
冷蔵倉庫は、倉庫業法に基づき登録を受けた施設のみが営業可能です。法令に準拠した温度管理と衛生管理が徹底されており、食中毒などのリスクを低減します。
冷蔵倉庫の活用により品質保持による顧客満足度の向上に加え、廃棄ロスやコストの削減にもつながります。ただし、初期投資や維持費など、コスト面には注意が必要です。
冷凍倉庫の特徴
冷蔵倉庫が-18℃から10℃までの温度で管理されるのに対し、冷凍倉庫は-18℃以下の温度で維持されます。冷蔵倉庫の分類の中に冷凍倉庫が内包されているともいえますが、管理できる品物に違いがあります。
冷凍倉庫はアイスクリームや冷凍魚類・冷凍食品など、低温での保管が必要な品物の保管に最適です。品質の劣化を防ぎ、長期間にわたって新鮮な状態を維持できます。また、冷凍倉庫は保管温度が低いため、細菌の繁殖を防ぐ効果もあります。
冷凍倉庫は冷蔵倉庫に比べて設備や運用コストが高くなるため、導入や利用には慎重な検討が必要です。コストとメリットを比較し、最適な活用方法を見つけることが重要です。
温度管理の必要がない常温倉庫
温度管理がとくに必要ない倉庫です。倉庫内の温度は外部の気温に依存しており、特別な温度調整は行われません。そのため、夏は倉庫内の温度が高くなり、冬は低くなることがあります。
このような特徴から、常温倉庫は比較的安価に利用できる点が魅力です。また、さまざまな大きさの倉庫があり、用途に応じて選べます。常温倉庫では、温度変化に影響を受けにくい製品の保管が適しています。
具体的には、以下のような製品が保管可能です。
- 原料や指定可燃物
- 化学品や塩
- 家具や建築ボード
- ダンボール
日本工業規格では常温を5℃〜30℃と定義していますが、実際の倉庫の温度は立地条件や取り扱う商品によって異なることがあります。そのため、倉庫を利用する際には、事前に温度条件を確認することが重要です。
5℃~18℃帯の定温(低温)倉庫
一般的に5℃〜18℃の間で温度調整が行われ、冷蔵倉庫よりも高く、常温倉庫よりも低い環境を提供します。おもに野菜や種子・花苗、ワイン・日本酒・医薬品などの保管に適しています。
これらの商品は、極端な低温や高温を避け、適度な温度管理が必要となるため、定温(低温)倉庫が最適な保管環境となるでしょう。とくにワインや日本酒など、温度変化に敏感な商品の品質維持に効果的です。
定温(低温)倉庫は、常温倉庫と冷蔵倉庫の中間的な役割を果たします。温度変動の影響を受けやすい商品でも、極端な低温管理が不要な場合に利用されます。
冷蔵倉庫の温度区分帯
倉庫業法施行規則第三条の十一では、冷蔵倉庫の保管温度は常時摂氏10度以下に保つことが求められています。しかし、近年の冷凍食品保管量の増加や電力料金の高騰などを背景に、冷蔵倉庫の温度帯区分が細分化されました。
これは、過剰な冷凍による品質劣化や保管コストの上昇を防ぎ、環境負荷を低減するためです。各温度区分は保管する商品の特性に合わせて設定されており、より適切な保管環境の選択が可能となりました。
この温度区分の見直しにより適正な取引が促進されます。商品ごとに最適な温度帯を選択できるため、保管効率の向上や電力消費の最適化が図れます。
冷蔵・冷凍倉庫を外注するメリット
外部倉庫の利用により、以下のメリットがあります。
- 廃棄ロスの減少
- コスト削減が期待できる
- 高品質を保てる
- 売上急増にも対応できる
詳しく説明します。
廃棄ロスの減少
食品業界では廃棄ロスが大きな問題となっており、コスト削減と環境保護の観点からも対策が求められます。廃棄ロスを減らすためには、在庫管理の徹底が必要です。適切な在庫管理システムを導入することで、在庫の過剰や不足を防ぎ、廃棄の減少につなげます。
次に、需要予測の精度を高めることも効果的です。過去のデータを分析し、需要変動を予測することで、無駄な生産や仕入れを避けられます。さらに賞味期限の管理も重要で、商品の回転率を高めるために先入れ先出しの徹底が必要です。
また、廃棄ロスの減少には、従業員の意識改革も欠かせません。従業員に対して廃棄ロスの問題とその影響について教育し、意識を高めることが大切です。
コスト削減が期待できる
冷蔵・冷凍倉庫を自社で保有する場合、建築費や冷蔵設備導入費・定期メンテナンス費など、多大な設備投資が必要です。これらの費用は、企業の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。
一方、冷蔵・冷凍倉庫の外注は、設備投資を最適化する有効な手段です。設備投資の代わりに保管料や利用料などの支払いで、初期費用を抑えつつキャッシュフローを改善できます。また、メンテナンス費用も外注先の負担となるため、長期的なコスト削減効果が期待できます。
高品質を保てる
商品の品質を維持するためには、適切な在庫管理が欠かせません。しかし、自社で在庫管理を行う場合、人的ミスやシステムの不備などにより正確な情報把握が困難になる場合があります。
一方、冷蔵・冷凍倉庫の外注先は、高度な在庫管理システムを導入しているのが一般的です。バーコードや耐凍RFIDなどを活用し、入庫から出庫までのすべてのプロセスをデータ化することで、リアルタイムでの在庫状況の把握を可能にします。
また、在庫管理システムは、賞味期限や消費期限の管理にも有用です。期限切れが近い商品を優先的に出荷するなど、適切な対応を取ることで廃棄ロスを減らし、コスト削減にも貢献します。
売上急増にも対応できる
事業の急成長や季節変動など、ビジネス環境の変化に伴い在庫量は大きく変動します。自社倉庫の場合、保管スペースの不足は新たな倉庫の建設や賃貸を余儀なくされ、多大な設備投資とリードタイムを要します。
一方、冷蔵・冷凍倉庫の外注は、需要変動に合わせた柔軟なスペース確保が可能です。繁忙期には保管スペースを迅速に拡大し、閑散期には縮小することで、常に最適な保管キャパシティを維持できます。これにより、急激な売上増加にも機敏に対応し、ビジネスチャンスを最大限に活かせます。
冷蔵・冷凍倉庫の外注先の選び方
冷蔵・冷凍倉庫の外注先選びは、事業の成功を左右する重要な事項です。ここでは、選び方のポイント4つを説明します。
- 取り扱い商品の保管実績はあるか
- 繁忙期や出荷波動への柔軟性
- トラブル発生時の対応力
- 業務範囲とサービス内容が合っているか
詳しく見ていきます。
取り扱い商品の保管実績はあるか
冷蔵・冷凍倉庫の外注先選定において、取り扱う商品特性に合致した保管環境を提供できるか否かは、品質維持と安全確保の観点から大切です。食品や医薬品・精密機器など、各製品にはそれぞれ最適な保管温度・湿度が存在し、適切な環境下でなければ品質劣化や安全性の問題を引き起こす可能性があります。
たとえば、-10℃以下での保管が必須とされる冷蔵食品であっても、チョコレートのように温度変化に敏感な商品では、より厳格な温度管理が求められます。外注先の保管実績や技術力を精査し、取り扱い商品に合った温度管理や湿度管理、衛生管理体制を有しているかの確認が肝要です。
繁忙期や出荷波動への柔軟性
ビジネスにおいて、季節要因やキャンペーンなどによる需要変動は避けられません。食品業界ではバレンタインやクリスマスなどのイベント時に需要が急増し、在庫管理が課題となるケースが多く見られます。
冷蔵・冷凍倉庫の外注先を選ぶ際には、こうした需要変動に柔軟に対応できるかの確認が大切です。繁忙期には一時的に保管スペースの拡大を、閑散期には保管スペースを縮小してコストを抑えられるかなど、状況に合わせた柔軟な対応が求められます。
トラブル発生時の対応力
予期せぬ事態に迅速かつ効果的に対処できる業者を選択することで、事業の安定性が確保されます。この選択により顧客との信頼関係を維持し、ブランド価値を守れます。
業者のリスク管理体制や緊急時の対応計画を詳細に確認しましょう。BCP(事業継続計画)の策定状況や定期的な見直しの実施など、平常時からの備えが重要です。
加えて、業者の技術力や問題解決能力も考慮します。設備トラブルへの対応スピードや、修理・復旧の実績なども、対応力を測るうえで有効な指標です。
業務範囲とサービス内容が合っているか
冷蔵・冷凍倉庫の外注先選定において、業務範囲とサービス内容の適合性は極めて重要です。まず、自社商品の最適な温度帯に対応しているかを確認しましょう。冷蔵・冷凍倉庫は、C3級(+10℃以下から-2℃未満)からSF4級(-50℃以下)まで、10種類の温度帯があります。
各温度帯に適した商品例を把握することも大切です。C3級からC1級は乳製品や野菜、F1級以下は冷凍食品やアイスクリーム、SF2級以下はマグロなどの鮮度重視商品に適しています。自社商品に最適な温度帯を提供できる外注先を選ぶべきでしょう。
冷蔵・冷凍倉庫を外注する場合の費用相場
外注費用はおもに坪単価をベースに算出されます。この坪単価は地域によって大きく異なり、首都圏ほど高額で、地方に行くほど安価になります。
地域別の坪単価相場は以下のとおりです。
首都圏 | 10,000円~20,000円程度 |
近畿エリア | 8,000円~20,000円程度 |
中部エリアと福岡エリア | 8,000円~ |
外注費用は坪単価だけでなく、さまざまな要素で構成されています。保管料の算出方法にも「個建て料金」や「坪建て料金」など複数の方式があります。これらの費用設定は物流企業ごとに異なるため、詳細な見積もりを取ることが重要です。
外注する場合の注意点
冷蔵・冷凍倉庫の外注は単なる取引関係ではなく、長期的な関係構築を目指すべきです。そのためには、以下の点に留意しましょう。
- 定期的な情報交換
- 課題解決への共同作業
- 改善提案の積極的な実施
- 情報共有体制の構築
また、コミュニケーションの円滑さも重要です。定期的な打ち合わせや報告体制が整っている業者を選ぶことで、信頼性の高い関係を築けます。
まとめ:冷蔵・冷凍倉庫の活用で適切に商品を管理しよう
冷蔵・冷凍倉庫の外注は、品質維持とコスト削減を両立させる有効な手段です。適切な外注先選定には、保管実績や対応力、サービス内容など多角的な評価が不可欠です。費用面では地域による相場差を考慮しましょう。
外注後も定期的な品質チェックと情報共有を行い、パートナーシップを強化することが重要です。市場環境の変化に応じた柔軟な戦略の見直しにより、効率的で安定した事業運営が可能となります。