映像制作・動画制作の見積もり項目とは?相場や安く抑えるコツも紹介

映像制作の外注をできるだけ安くするには、見積書の項目や確認方法を正しく理解する必要があります。実際に相見積もりを取ってみたものの、内容が複雑でよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

映像制作に必要な料金の多くは、人件費と施設や機材の利用料です。したがって、費用を払う対象や高額になる理由を知ることで、適正価格で映像制作を外注できるようになります。

この記事では、映像制作の見積書の項目ごとの詳細や、確認時の注意点について解説していきます。費用を抑えるポイントも解説しているため、業者選びに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

映像制作・動画制作の見積書の項目

映像制作や動画制作の見積もり項目は、大きく「企画費」「人件費」「諸経費」に分けられます。詳細な見積もり項目を表にまとめました。

制作費用は、企画や動画の作成方法によって変わるため、項目ごとの意味を理解すれば適正価格で発注できるようになります。それぞれの詳細を、詳しく解説していきます。

企画費

費用相場20,000円〜500,000円

企画費とは、動画の構成・台本の作成や、進行管理を行う制作スタッフに発生する費用です。下記の2つが、代表的な企画費としてよく見積書に記載されます。

  • 企画・構成費
  • ディレクション費

企画・構成費

企画・構成費は、映像の企画や方向性、作り方を決めるための費用で、下記のような項目が含まれます。

  • ターゲット選定
  • 演出方法の策定
  • スケジュール調整
  • キャストやスタッフの資料作成
  • 台本作成
  • 各作業の修正

おもにプロデューサーが担当し、動画の種類や尺などで、費用も大きく変わります。たとえば出演者が多い長尺の動画を作る場合は、工数が大幅に増えるため、企画・構成費も高くなります。

ディレクション費

ディレクション費は、打ち合わせや撮影の準備、進行管理など、制作全体の統括を行う映像ディレクターの人件費です。

ディレクション費は、一般的に制作費全体の20%〜30%で計算されます。実績やスキルのあるディレクターに担当して貰う場合、比例して割合も大きくなります。

人件費

費用相場50,000円〜300万円

人件費は、演者やスタッフに支払う費用です。制作に関わる人数が多いほど、高額になります。反対に、アニメーション映画など、演者を必要としない動画の場合は、費用が抑えられる傾向にあります。

人件費の項目には、下記3つが記載されることが多いです。

  • キャストの人件費
  • クリエイターの人件費
  • クリエイターの人件費

キャストの人件費

キャストの人件費は、動画に出演する役者やモデル、インフルエンサー、ナレーターなどの出演料です。一般的に出演料として料金を提示するため、工数に関係なく金額が決まります。

プロの役者や人気のモデルなど、実力や知名度があるキャストを起用すると、費用が高額になります。社員を演者にするなど、工夫すれば費用を抑えられますが、素人の起用によって動画の品質が著しく低下することも珍しくありません。そのため、キャストは予算とクオリティのバランスを見ながら決定することが大切です。

またオーディションでキャストを決める場合、その分の費用が加算されることもあります。

クリエイターの人件費

クリエイターの人件費、映像制作に関わる技術者に支払われる料金です。映像制作には、下記のようなクリエイターが関わります。

  • 動画編集者
  • カメラマン
  • アニメーター
  • CGデザイナー

動画の種類によって必要な人材は変わるため、必ず上記すべてのクリエイターが関わるわけではありません。たとえばアニメーションのみで制作する場合は、カメラマンは不要です。また特殊な演出が必要な場合は、上記以外のクリエイターを起用する場合もあります。

費用の算出方法はクリエイターによって異なります。カメラマンは日当で計算されることが多く、動画編集者やアニメーター、CGデザイナーは基本的に工数ベースです。

いずれも知名度や実力、実績があるクリエイターに依頼する際は、費用が高くなります。また大掛かりな撮影の場合は、カメラマンがアシスタントを起用することもあるため、その分の費用が加算されることもあります。

スタッフの人件費

スタッフの人件費は、制作に関わるスタッフの人件費です。以下のような職種に支払う費用が該当します。

  • 照明
  • 音声
  • スタイリスト
  • ヘアメイク
  • アシスタントディレクター

撮影が大掛かりな現場では、裏方のスタッフ無しに制作を進めるのは困難です。無理に削減すると撮影が円滑に進まず、スケジュールの遅延や追加料金の発生などのトラブルにつながります。

そのため、撮影の規模に応じて必要な人材を制作会社に確認し、十分なリソースを確保したうえで制作に望むことが大切です。また照明や音声に関しては、カメラマンの人件費と一緒に計上されることもあるため、覚えておきましょう。

諸経費

費用相場10,000円〜100万円

諸経費は、撮影に使う道具や場所の利用料など、ここまでに挙げた費用以外にかかる経費が該当します。外部の業者や施設に支払う料金であることが多いため、制作会社ごとに差が出づらい費用です。

映像制作に必要なものは、撮影方法や動画の種類などによって変わるため、細かい諸経費まで挙げるときりがありません。そのため以下では、代表的な5つの諸経費について詳しく解説していきます。

  • 機材費
  • スタジオ・ロケ地の使用費
  • MAスタジオスタジオ費
  • 音響効果費
  • マスターデータ作成費

機材費

機材費は下記のような撮影機材の使用料です。

  • カメラ
  • 音声・音響機材
  • 照明機材

スペックが高いカメラや特殊な照明などを必要とする場合は費用も高額になります。

撮影機材は種類が多いため、見積書にすべて記載するのは現実的ではありません。したがってほとんどの場合、「撮影機材費」といった形で、一括で記載されます。また機材運搬車が必要な場合は、見積書に「車両費」という項目を設けることもあります。

金額が高くて不安な場合は、一度制作会社に質問してみると良いでしょう。

スタジオ・ロケ地の使用費

撮影にスタジオを利用したり、ロケを行ったりする場合、使用料が発生します。また下記のような撮影に必要な作業や人件費も諸経費として計上されます。

  • ロケ地までの交通費
  • レンタカーの利用料
  • ロケ弁当の費用
  • キャストやスタッフの宿泊代
  • 下見やロケハンの人件費

MAスタジオ費

MAは動画編集時にナレーションや効果音を入れる作業のことで、音入れとも呼ばれます。音響スタジオを借りて、効果音の作成やナレーションの収録を行う場合に発生します。

一般的には、スタジオのレンタル費と音響エンジニアに支払う報酬をまとめて、「MAスタジオ費」として見積書に記載することが多いです。費用形態は制作会社ごとに異なり、日当ベースや工数ベースなど、さまざまな方法で算出されます。

音響効果費

動画に挿入する音楽に関する、下記のような費用が音響効果費として計上されます。

  • 既存の楽曲の購入費
  • 既存の楽曲の使用料
  • オリジナル楽曲の制作費

既存の楽曲を使う場合は、著作権の取り扱いに応じて必要な費用が異なります。

著作権フリー楽曲を購入するだけで使用可能
著作権がある楽曲の購入と、音楽の著作権料をJASRACに支払う

音響効果費はフリー素材を使えば削減可能です。しかし、音楽は動画のクオリティを大きく左右するため、使用楽曲は慎重に決めましょう。

マスターデータ作成費

マスターデータは、制作した動画をDVDやBlu-ray Discに複製する費用です。複製する数と動画の尺によって料金が変わります。

現代ではクラウド上で納品のやり取りが行われることが多いため、存在しないケースも多いです。しかし、有形の商材として販売・配布する動画を作る場合は、諸経費として計上されます。

映像制作・動画制作の見積書を確認するのポイント

映像制作・動画制作の見積書は、下記4つのポイントを意識して確認しましょう。

  • 項目ごとに詳細が記載されているか
  • 権利関係が明確になっているか
  • 追加料金が発生しないか
  • 制作スケジュールや納期が記載されているか

見積書の確認が甘いと、契約後に想定外の費用がかかる、映像を自由に使えないなどのトラブルが起こるリスクがあります。

それぞれ詳しく解説していくため、理解しておきましょう。

項目ごとに詳細が記載されているか

見積書には、通常内訳や作業内容が項目ごとに記載されています。大枠だけ記載されている見積書の場合、制作会社との間に認識の齟齬があることに気付けないまま、契約してしまうリスクが上がります。

追加料金が発生する、イメージ通りの動画に仕上がらないなど、さまざまなトラブルに発展するため、必ず下記のポイントを確認しましょう。

  • 作業ごとの費用
  • 作業内容の詳細
  • 費用の単位や支払い先

権利関係が明確になっているか

映像制作には音楽やイラストなど、著作権が発生する素材が多く使われます。そのため動画と一緒に、オリジナルの楽曲やイラストを制作する場合は、注意が必要です。

著作権を譲渡してもらえない場合、制作した動画以外で素材を自由に使用できなくなります。他人の著作物を使用するには、ライセンス料を払う義務が生じるためです。

また、キャストの肖像権についても同様です。動画が利用できる範囲が変わるため、必ず確認しましょう。

追加料金が発生しないか

映像制作では、下記のような理由で追加料金が発生する場合があります。

  • 撮影期間が伸びた
  • 大幅な修正が生じた
  • 修正を複数回依頼した

撮影では、天候の不良や機材不調など、さまざまな要因で撮影期間が伸びる可能性があります。そのため、事前に延長時の料金を明確にしておかないとトラブルにつながります。

また修正に関しても同様です。無料で修正に応じてくれる範囲や回数を明確にしておかないと、追加の支払いをしないと、対応してくれないおそれがあります。

明記されていない場合は、必ず制作会社に確認しましょう。

制作スケジュールや納期が記載されているか

見積書の確認では、金額以外の部分に目を向けることが大切です。特に納期や制作スケジュールが明記されていない場合には、注意が必要です。

必要なタイミングに納品が間に合わなければ、制作に当てた費用や時間が無駄になります。また、スケジュールが明確化されていない場合、曖昧に制作が進み、納期が遅れる可能性が高くなります。

トラブルを避けるために、見積書は料金以外の項目も必ず確認しましょう。

見積額を安くするポイント

下記5つのポイントを意識すれば、映像の制作費用を抑えられます。

  • あらかじめ予算を決めておく
  • キャスティングをしない
  • 企画と構成を持ち込む
  • フリー素材を使用する
  • 編集だけ依頼する

満足の行く動画が制作できれば、安く済むに越したことはありません。ただし、無理に安くしようとすると、クオリティが著しく低下するため、バランスを見ながら調整することが大切です。

それぞれ詳しく解説していきます。

あらかじめ予算を決めておく

事前に予算を決めたうえで見積もりを依頼すれば、制作会社は料金内で制作できる方法を考えてくれます。

予算を業者任せにすると、想定外の金額の見積書が届くことも珍しくありません。映像制作は基本的に言い値であるため、業者都合で料金を決められるためです。

適切な提案を受けるため、必ず予算を明確にしてから連絡しましょう。

キャスティングをしない

役者やモデルなどを起用すると、本人の出演料に加えてヘアメイクやスタイリストなど、多くの人件費がかかります。そのため、人物を使用しない動画やアニメーションの方が安価に制作できる傾向があります。

またアニメーションの場合、撮影が必要ないためスタジオ代なども不要です。ただし、長編アニメーションや複雑なCGを使用する場合は、高額になるため注意しましょう。

一部内製する

社内にマーケティングの知見があれば、企画と構成を内製するのがおすすめです。プロデューサーやディレクターの人件費を抑えられるため、制作費も安くなります。また自社で撮影した映像データを使って、編集のみ依頼すれば大幅に費用を削減できます。

ただし、企画や構成、撮影はいずれも映像制作において重要な作業です。スキルや経験が必要なため、素人が行っても良い動画ができる可能性は低いです。

したがって、費用を削減したいという目的だけでの内製は避け、社内のリソースを確認してから実行しましょう。

フリー素材を使用する

動画に使用する楽曲やイラストにフリー素材を利用すれば、アニメーターの人件費や音響効果費を抑えられます。

ただし、イラストや音響効果は動画のクオリティを左右するため、安易に利用するのは厳禁です。安易に使うと成果が出づらい動画になるため、イメージに合うものだけを使用することが大切です。

まとめ:映像制作・動画制作の見積もり項目を理解すれば失敗を防げる!

映像制作の見積書の項目は、大きく企画費、人件費、諸経費に分かれます。それぞれの項目を理解していれば、自社の動画制作に必要な作業や削減できるポイントなどがわかります。適正価格で発注できるようになるため、コストパフォーマンスの高い動画制作が期待できるでしょう。

ただし見積書は料金以外の部分に目を向けることも大切です。権利関係や修正回数などに関する取り決めが明確になっていないと、追加費用が発生するおそれもあります。

この記事を参考に、見積書の確認方法を理解し、発注失敗のリスクを減らしてください。