EC事業者にとって検品業務は、売上と顧客満足度の向上に不可欠です。
しかし、検品業務の品質を上げる方法を知らない方が多いのではないでしょうか。
この記事では、検品業務の重要性と課題、そして品質を上げるコツについて解説します。
検品業務の重要性を知りつつ、取り組み方を迷っている方は、ぜひこの記事の内容を自社の業務に取り入れましょう。
EC事業における検品の種類
EC事業における検品には以下の2種類があります。
- 入庫検品
- 出庫検品
それぞれ解説します。
入庫検品
入庫検品とは、倉庫に届いた商品を確認し、システムに登録することを指します。入庫時に行う確認は以下のとおりです。
- 正しい商品・数量が届いているか
- 商品に傷や不備はないか
物流のシステム化が進むにつれて、入庫情報の登録などは、ハンドスキャナーを使って自動化されています。
一方で、上記の確認事項は人の目で見た確認が必要です。商品の知識がある程度必要な作業なため、検品する方のスキルや経験によって精度にばらつきがでます。
出庫検品
出庫検品とは、ピッキングした商品が正しい状態か、梱包前に確認する作業です。確認すべき作業は入庫検品と同様ですが、以下の理由から出荷検品はより慎重に行う必要があります。
- 出庫検品はお客様にお届けする前の最終確認にあたる
- 出庫検品で発覚するミス=倉庫内のミスのため、今後の改善に繋げられる
運送中は梱包のへこみなどがない限り、商品の確認は行いません。よって、万が一のミスに気づける最後のタイミングが出庫検品です。
また、入庫検品が正しく行われている場合、出庫検品で発覚するミスはすべて倉庫内に原因があります。原因を知ることで、再発防止の取り組みなど、品質向上に役立つでしょう。
EC事業における検品の重要性
EC事業における検品の重要性は以下の3点です。
- 正しい商品と数量で納品する
- 納期を正確に把握できる
- クレーム発生時の原因調査ができる
検品の重要性を知ることで、改善活動のきっかけとしましょう。
正しい商品と数量で納品する
物流業務は人が行う作業も多いため、最終チェックの機能として出庫検品を行います。なぜならヒューマンエラーは完全には無くならないため、発生した際に気づける仕組みが大切だからです。
特にEC事業では、正しい商品と数量での納品が求められます。ECサイトで商品を購入した方は、店舗で購入するよりも長い時間、納品を待っています。
そのため、届いた商品の内容に不備がある場合、店舗で購入したお客様よりも、心象を大きく損ねる可能性が高いです。検品業務は、お客様の購買体験に大きな影響を与える業務といえるでしょう。
納期を正確に把握できる
入庫検品を正しく行うことで、倉庫内の在庫数量を正確に把握できます。在庫数量の把握は納期の把握に繋がります。
これは、物流システムが倉庫内の在庫数量をもとに、納期の算出をしているためです。検品の際に正しい数量を把握できていない場合、以下の問題が生じます。
在庫数を多く登録 | 本来の納期よりも短い納期を案内してしまい、納期遅れのクレームにつながる |
在庫数を少なく登録 | 本来の納期よりも長い納期を案内してしまい、お客様が離脱し機会損失となる可能性がある |
お客様満足度や売上の向上のためには正しい数量の把握が必須です。
クレーム発生時の原因調査ができる
クレームは発生した後の対応と、再発防止に努めることが大切です。再発防止には、発生した原因を正しく知る必要があります。
たとえば商品に関するクレームは以下の2種類あります。
- 正しい商品、数量で納品されていない
- 商品に不備がある
このうち前者はほとんどの場合、倉庫内の作業が原因です。一方、後者は以下のようにさまざまなタイミングで発生している可能性があります。
- 製造中
- 輸送中(工場→倉庫)
- 保管中
- 輸送中(倉庫→お客様)
- 使用時
倉庫に入るタイミングと、出るタイミングで正しく検品をしていないと、商品不備が発生したタイミングを特定できません。反対に正しく検品ができていれば、発生した可能性のある箇所を絞り込めるでしょう。
ECの検品作業の進め方
ECの検品作業は以下の3ステップで行います。
- 作業前準備
- 担当者と担当範囲を決める
- 入庫検品、出稿検品を行う
正しいステップを守ることで、検品の品質が向上します。
作業前準備
作業前は以下を徹底して行いましょう。
- 手や服についた汚れを落とす
- 検品スペースの整理整頓
- 入庫検品、出稿検品を行う
検品作業はお客様の商品に直接触れることもあります。商品を汚さないためにも、清潔な状態で行うのが理想です。
また検品スペースにものが多いと、思わぬ接触で商品を傷つけたり、誤った商品を同梱したりする恐れがあります。人も場所もきれいな状態にすることで、高品質な検品作業が可能です。
担当者と担当範囲を決める
担当者と担当範囲を決める目的は以下の通りです。
担当者を決める | 責任の所在を明確にして、当事者意識を持たせる |
担当範囲を決める | 検品の漏れや無駄な重複作業を避ける |
検品作業は単調な作業で、手を抜くことも比較的簡単にできます。そのため、正確な検品作業には、全員が一生懸命にやる状態を環境から作ることが大切です。
入庫検品、出稿検品を行う
担当として割り振られた範囲の作業を行います。注意点は、迷った際は相談するということです。
商品によっては付属品などが複雑で、ひと目で判断できないこともあるでしょう。その際は、担当外も含めて確認した上で、検品を進めることが大切です。
検品のミスはクレームに直結するため、曖昧な判断で進めてはいけません。
ECの検品作業が抱える課題
ECの検品作業が抱える課題は以下の通りです。
- 人的ミスが発生する
- 商品に合わせた検品設備が必要
- 検品作業への意識が低い
- スキルにばらつきがある
それぞれ解説します。
人的ミスが発生する
検品作業は人の手で行う作業が多いため、ヒューマンエラーは避けられません。検品作業のミスは改善しづらい点も、ヒューマンエラーがなくならない要因です。
検品ミスは、実際にクレームに発展しないと気づくことができません。クレームに発展した際の事業リスクが大きいため、人的リスクを減らすべきです。
しかし、クレームに発展しないと改善がしづらいというジレンマを抱えています。
商品に合わせた検品設備が必要
検品は人の手だけでなく、特殊な設備を用いて行うこともあります。
たとえば、アパレル系の商品の場合、検針機やX線検査機を利用する方が多いでしょう。これは針など怪我の恐れのある異物の混入を検知するために行います。
その他、機械とは別に、医薬品はクリーンルームでの作業が必要な場合も多いです。商品特性に合わせた検品設備やスペースが必要になるため、費用や場所の確保が課題となります。
検品作業への意識が低い
検品作業は行わなかったとしても、すぐに問題になることはありません。理由は以下の2点です。
- 大前提として、入庫も出庫も正しい商品で行われている
- ミスがあったとしてもそれが発覚するまでに時間がかかる、あるいは発覚しない可能性もある
そのため、物流量がピークのタイミングでリソースが不足した場合、他の作業と比較して手を抜く方が多いでしょう。
必須の業務ではないという考えが、検品作業への意識を低下させています。
スキルにばらつきがある
検品作業は、経験によってスキルに大きく差が出ます。
たとえば、同じ商品を検品したことがあれば、商品の正しい姿や付属品などを把握しています。一方で、まったく知らない商品を初見で検品する場合、明らかな不備や数量違いなど以外は気づくのが難しいでしょう。
一般的に中小企業では検品業務を専任で行うことは少ないため、経験の量には差が出やすいです。その結果、検品のスキルにばらつきが生じます。
ECの検品作業を効率的に行うコツ
ECの検品作業を効率的に行うコツは以下の通りです。
- 作業マニュアルの作成とOJT
- 検品専用の機械やシステムの導入
- 物流代行サービスに外注する
EC事業者は外注も含めて検品の効率化を検討しましょう。
作業マニュアルの作成とOJT
人的ミスが発生する原因は主に以下2つです。
- 対応者によって作業方法が異なる
- 人の手で行うため完璧な作業は不可能
後者は人が行う場合避けられませんが、前者は対応できます。
その対応が作業マニュアルの作成とOJTです。実際、作業マニュアルの作成をしている企業は多いのではないでしょうか。
しかし、その中で日々作業マニュアルの改善をしている企業は多くないはずです。
マニュアルは一度作成して完了ではなく、日々のブラッシュアップすることで完成度を高めます。また、マニュアルは作成することが目的ではなく、記載された作業を遂行することが目的です。
作業者全員がマニュアルに沿った対応ができるまで、徹底したOJTをしましょう。
検品専用の機械やシステムの導入
これはヒューマンエラーをなくすために、人の手で行う業務を減らす方法です。人の手で作業をする場合、完璧な作業は不可能なため、機械やシステムで代行します。
機械やシステムで自動化すれば、人が行うよりも作業の品質は上がり、ミスが減ります。
注意点としては、専用の機械を設置する必要があるため、検品専用のスペースが必要です。機械を移動するのは難しいため、そのスペースは他の作業では使えません。
状況に合わせた柔軟な対応が難しいため、倉庫スペースを考慮した上で導入しましょう。
物流代行サービスに外注する
物流代行サービスに外注した場合、以下の2つを同時に、かつ低コストで満たせます。
- 作業マニュアルの作成とOJT
- 検品専用の機械やシステムの導入
物流代行サービスは検品業務だけでなく、物流業務の全般を高い品質で代行します。
利用はさまざまなメリットがあるため、検品業務で迷っている方は依頼しましょう。
EC物流倉庫サービスに検品作業を外注するメリット
EC物流倉庫サービスに検品作業を外注すると以下のメリットを得られます。
- プロの品質で検品ができる
- 最新の設備で検品作業を行える
- 出荷量に合わせた柔軟な対応が可能
- コア業務にリソースを集中できる
これらdのメリットに魅力を感じる方はぜひ検品業務の外注化を進めましょう。
関連記事:EC事業者に必要な物流倉庫サービスとは?特徴やメリットを解説
プロの品質で検品ができる
さまざまな商品を扱った経験から、精度の高い検品が可能です。
初めて取り扱う商品も、過去の似た事例を参考に、品質の高い業務ができるでしょう。加えて、EC物流倉庫サービスでは長年作り込まれたマニュアルが充実しています。
人の入れ替わりがあった場合も、マニュアルに準じて作業することで、全員が同じレベルのパフォーマンスを発揮します。
自社工場のレベルをプロのレベルに上げるためには、多くの時間とお金が必要です。検品作業を外注した方が、安く質の高い検品作業を実現できるでしょう
最新の設備で検品作業を行える
EC物流倉庫サービスは、物流業務の自動化を積極的に進めているサービスが多いです。そのため常に最新の設備で検品作業を行えます。
特に、最近では検品のAI化も進んでおり、映像から自動で異常を検知する機械も開発されています。AIを利用することで、ヒューマンエラーを回避する検品作業が可能です。
ただし、AI機器は高額な場合が多く、自社工場で導入するのは難しい企業が多いでしょう。一方、外注化することで、最新の設備を安い価格で利用できます。
出荷量に合わせた柔軟な対応が可能
EC事業は世界中の人が見込み顧客のため、少しのきっかけで売上が大きく伸びる可能性があります。売上に比例して出荷量も大きく伸びますが、物流品質を維持したまま出荷量を増やせるEC事業者は多くはないでしょう。
その点、EC物流倉庫サービスを利用すれば、必要なタイミングで必要な量のリソースを確保でき、安定した物流サービスを提供可能です。
物流のリソースが不足し、検品作業の品質が落ちた場合、重大なクレームに発展する恐れがあります。正しい商品を確実に届けられる物流体制を整えておくことで、顧客満足度の高いサービスを安定して提供できるでしょう。
コア業務にリソースを集中できる
EC物流倉庫サービスでは、検品だけでなく、物流に関する幅広い業務を外注可能です。
そのため、商品開発やサービス企画のような、売上に直結するコア業務にリソースを集中できます。リソースが少ない中小企業こそ、業務の選択と集中が大切です。
EC事業を伸ばすために、コア事業以外を外注する選択肢を持ちましょう。
まとめ:物流代行サービスを利用してミスのない検品を目指そう
検品業務はEC事業の中で、顧客満足度と売上の向上につながる重要な役割があります。一方、自社のリソースで高品質な検品業務を行うのは難しいでしょう。
そのため、代行企業の高品質なサービスの利用も視野に入れて検討することが大切です。物流代行サービスを利用して、ミスのない物流を目指しましょう。