店舗デザインの費用はどのくらい?業態別の相場や節約のポイントも解説
公開日:2020.09.16 最終更新日:2024.10.01
店舗の立ち上げやリニューアルを行う際は、デザイン会社に依頼する場合が多いです。
社員や顧客の快適性や集客効果を考慮したデザインが必要ですが、実際の費用がどのくらいかかるかわからない事業者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、店舗デザインにかかる費用や節約のポイントについて解説していきます。
業態別の相場もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
店舗デザインの料金相場
店舗デザインの料金は、打ち合わせ内容をもとに図面を作成する「設計・デザイン費用」と設計図をもとに内装工事を行う「工事費用」の合計価格です。料金相場は業界や物件の状態によって大きく変動しますが、低くて約200万円ほど、店舗の種類や規模によっては1,500万円以上かかることもあります。
中でも変動が大きいのは、居抜き物件とスケルトン物件のどちらに該当するかという点。ここでは、それぞれにおける料金相場について解説します。
スケルトン工事の場合
骨組み以外を解体してゼロから内装するスケルトン工事の場合、坪単価で20万~50万と言われています。床や壁の内装や水道の配管や電気配線など、設備の配置などで大がかりな工事になるためその分、期間も長くかかるでしょう。
また、スケルトン工事の場合は内装工事を行う前に、保健所から営業許可を得なければなりません。営業許可証の取得にも16,000~19,000円程度の手数料が必要です。
居抜き工事の場合
前のテナントの設備などが残った状態で行われる居抜き工事の場合、料金の相場は200万~400万円前後です。スケルトン物件に比べてコストを抑えられますが、設備の増設や配線を変える場合には追加料金がかかります。
設備やインテリアが最初から備わっているため、工事費用が大幅に削減される点が魅力です。店舗のイメージを再現できそうな居抜き物件があれば、初期費用を抑えて営業をスタートできます。
店舗デザインで発生する料金
店舗デザインの料金は「設計・デザイン費用」と「工事費用」を合計した金額ですが、その中にもさまざまな内訳があります。見積もりを取る際には、内訳まで把握しておくと安心です。
- 設計費用
- 施工費用
- 設備工事費用
- 資材費用
- 設備費用
- その他の費用
以下では、それぞれの費用について詳しく解説します。
設計費用
設計費は、依頼主と設計士が内外装の設計やデザイン、設備やレイアウトなどを打ち合わせ、図面の作成をするためにかかる費用です。居抜き物件で20万~60万円、スケルトン物件で120万~180万円ほどかかります。
設計費は、店舗の坪数や施工費用の全体から算出する方法があります。坪数で算出する場合、1坪あたり3万~10万前後が相場で、広くなるにつれて割引が適用されることが多いです。全体から算出する場合は、施工費の総額の10%~15%前後の費用が相場で、JDC(一般社団法人商環境デザイン協会)でも目安として提示されています。
内装工事費用
設計時に作成された図面に従い、壁紙や床の張り替え、設備工事、家具の設置などの施工にかかる費用です。施工費用は、居抜き工事かスケルトン工事かで費用は大きく変動します。
居抜き物件の場合は、200万~400万円が相場です。スケルトンの場合、居抜き物件の5倍の施工費用がかかると一般的にいわれており、規模によっては1,000万円以上かかります。
設備工事費用
設備工事には、電気・ガス・水道・空調等に関する工事が含まれます。電気・水道・ガスの工事には150~300万程度、空調工事は80万~120万円程度かかることが多いです。店舗に不要な工事が含まれている場合もあるため、事前に必ず確認しましょう。
資材費用
壁紙や床、家具などの資材にかかる費用です。壁のクロス張り替えは1平米あたり1000~1500円、床材はクッションフロアやタイル、フローリングで1平米あたり3,200~8,000円ほどかかります。
使用する資材によって費用が大きく変わるため、費用を抑えたい部分や強化したい部分については、事前に設計士に相談しておく必要があります。たとえば店舗の壁を木目調にしたいとき、一枚ものの木の板が使われたものと木目がプリントされた壁紙では、見た目に大きな差はないものの、料金は異なるでしょう。
設備やインテリアの費用
家具や備品、美容器具、インテリアなど、店舗に必要な設備にかかる費用です。家具や備品などの設置には規模にもよりますが、合計すると80万~120万ほどかかります。業務用の美容器具では200万円以上かかるものもあります。
居抜き物件の場合は、前のテナントのものをそのまま使えることが多いです。居抜き物件では新しく購入する必要がなく費用の節約もできますが、故障や劣化している場合は修理や新規の購入などの追加料金が発生します。居抜き物件を利用する際は、現状の設備に問題がないかも把握しておかなければいけません。
その他の費用
店舗デザインの料金には、手数料や税金、保険料などがかかります。
業界別の料金相場と押さえておきたいポイント
店舗デザインの料金相場は、業界によって大きく変わります。以下では、各社の事例を参考にそれぞれの店舗デザインにかかる費用相場を見ていきましょう。。
美容室・エステサロン
費用合計(居抜き) 400万~600万円 坪単価 15万~40万円 工事費用 150万~200万円 設計費用 30万~60万円
美容室やエステサロンは、飲食店に比べると価格は比較的抑えやすいです。しかし、シャンプー台やパーマ器具、施術台など設備が必要です。収容人数や店舗規模によって、美容機器の設置や購入、動線は変わるため、店舗規模によっても料金相場は大幅に変動するでしょう。
また、顧客の快適性や店舗のコンセプトに合ったデザイン性のため、インテリアにもこだわる必要があります。その分、デザインや家具などにかかる費用が高くなる可能性もあります。
飲食店
費用合計(スケルトン) 1,000万~1,800万円 坪単価 レストラン約35万円、和食レストラン約45万円、焼肉店約50万円~、カフェ約20万円 設備工事 170万~280万円程度 空調工事 80万~120万程度 設計費用 20~30坪で120万~180万円程度
飲食店は、給排水やガスなどの設備が必要で、他の業種に比べると店舗デザインの費用が高くなる場合が多いです。とくに、飲み物がメインのカフェに比べて食事を提供するレストランは使用する設備も多く、坪単価も高くなります。そのため、1坪あたりの値段から算出すると総額で20坪で400万~1,000万以上かかるでしょう。
小売店
費用合計(居抜き) 200万~300万円 内装工事 80万~120万円 設計費用 20万~30万円
食品や日用品を販売する小売店は、特別な設備が必要ないため大規模な工事は必要ありません。居抜き物件としても使いやすいでしょう。8~12坪あたりの小規模な小売店の場合で、居抜き工事で200万~300万円が相場です。
アパレル
1坪あたり(居抜き物件) 10万~40万円 設計費用 30万~50万円
給排水設備などが不要であるため、他の業界に比べると設備工事の費用は抑えやすいです。デザインやインテリアにこだわる場合、設計・デザイン費用が高くなる可能性があります。
集客効果のある陳列方法や、フィッティングルームの広さ、壁紙・床など顧客の目に付く部分も重要です。店舗のイメージにマッチした居抜き物件が見つかれば、費用や期間を抑えられるでしょう。
病院・クリニック
坪単価 30万~80万円 内装工事 200万~700万円 外装工事 500万~1,000万円 設計費 250万~500万円
病院やクリニックの料金相場は、規模感や診療科目によって変動します。たとえば、X線室のように特殊な設備を導入した場合は、坪単価も高くなります。患者が動きやすい動線や清潔感にこだわったレイアウトが求められるでしょう。また、換気設備の整備や医療機器をつなげる電気の配線など、設備の考慮も重要です。
一方で美容クリニックは、清潔感はもちろんですが「美しさ」を求めて来院する人が多いため、高級感のあるデザインやインテリアの配置が効果的です。
パン屋
坪単価 30万~50万円 内装工事費用 500万~1,000万円
パン屋はレストランと比べると価格は低いですが、厨房のオーブンなど設備投資も必要で、相場は他の業界に比べてやや高めです。
陳列による視覚的な集客効果や、店内を周りやすい顧客の動線もあるため、デザインやレイアウトにおいてもこだわりが求められます。イートインスペースを用意しておく場合など、営業形態においても変動しやすいです。
店舗デザインの業者によっても費用が変わる
費用を最適化するには、業者ごとの特徴や得意分野を押さえ、自社にあった依頼先を見つけることが重要です。店舗デザインの業者別の特徴は、次のとおりです。
業者 | 特徴 | メリット | デメリット |
内装業者 | 物件の内装を手がける業者 |
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設計業者 | 設計やデザインを行う業者 |
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工務店 | 施工をメインに行う業者 |
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これらの特徴を把握し、最適な依頼先を見つけてください。
内装業者
内装業者は、店舗の内装全般に対応できる業者です。設計から施工まで一貫して行えるうえ、費用も安く抑えられるメリットがあります。一般的な店舗内装であれば、安定したクオリティの内装を低価格かつスピーディに実現可能です。
ただし施工メインの業者は、デザイン力に弱い傾向があります。既製のデザインをベースにした施工に慣れていることが多く、オリジナリティあふれる空間を求める方には、やや物足りなく感じるかもしれません。デザインにこだわりたい場合は、設計業者への依頼を検討しましょう。
設計業者
設計業者は、デザインと設計業務に特化した業者です。流行のデザイン設計や、顧客のブランドイメージにあった空間作りを得意としています。
デザインに特化した内装を実現したい場合に適していますが、施工に関してはほかの業者に依頼しなければなりません。デザイン設計に専門的な知識と技術が必要なことや、別途業者を手配する必要が生じる点から、トータルコストは高額になる傾向です。
工務店
工務店は店舗の内装工事だけでなく、一般的な住宅の建築など、幅広い工事に対応する業者です。設計業者から設計図を受け取って施工を行うため、店舗デザインは不得意なケースが多い傾向にあります。
設計業者に依頼する場合は、工事を工務店に依頼するのが一般的です。しかし、中には設計やデザインを得意する工務店も存在します。設計から工事まで工務店に一貫して依頼できる場合は、費用負担を押さえられるでしょう。
ただし工務店によって得意分野や強みが異なり、自社の求めるデザインを実現できるとは限りません。実績や提案内容を吟味し、複数の業者を比較検討してください。
店舗デザインの費用を抑えるコツ
以下のような方法で、店舗デザインの費用を抑えることもできます。
- 複数社見積もりを比較する
- 居抜き物件を利用する
- デザインの優先順位をつける
- セットアップオフィスを利用する
- 発注先を一括にする
- 補助金・助成金を利用する
- 家具や備品を自社で調達する
- 内装素材を安価なものにする
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説します。
複数社見積もりを比較する
会社によって得意とする規模やデザインは異なり、同じ施工内容でも金額に違いが出ます。中には相場を大きく上回る金額を請求する悪質な業者も存在します。そのため、金銭トラブルを防止するためにも相見積もりを行うことが安心です。
自社が納得できる条件や価格の会社を見つけるための比較検討を行いましょう。
居抜き物件を利用する
居抜き物件は、スケルトンの5分の1の価格です。自社の条件に合う物件が見つかればお得に利用できるでしょう。工事にも時間がかからず、開業までもスムーズに進めることが可能です。
しかし、設備が故障していたり、劣化して使いものにならなかったりする場合もあります。そのような場合には、追加費用が発生することにも留意しておかなければいけません。
またレイアウトの自由度が低いため、店舗のイメージに合わないと、追加で工事が発生して結果的に費用が高くなることもあります。
居抜き物件は、ネットでの情報収集や出店エリアでの不動産の紹介、テナント募集の看板などから探すことが可能です。物件を検討する場合は、はじめに居抜き物件を探して自社の希望条件に合うものがあるか確認してみるのも良いでしょう。
デザインの優先順位をつける
すべてを希望通りにすると見積もり金額が予算を大幅に上回ってしまうこともあります。そのため、デザインにこだわりたい箇所に優先順位をつけながら、費用を抑える工夫が必要です。
店内でも、顧客の視界に入らない場所や社員のみが使用するスペースなど、妥協できる部分はあります。「顧客が滞在するスペースには高級感を出したい」「壁紙は絶対にこの素材がいい」など優先したい希望を洗い出し、費用を抑えつつ理想の店舗デザインを実現させましょう。
発注先を一括にする
設計と施工の業者を同じ発注先にすることで、費用を抑えられます。設計と施工の発注先が同じであれば、全体的な予算に配慮した設計やデザインが行われるためです。
設計士によるデザインや設計は質が高いですが、別で発注した場合はその後の施工にかかる費用を気にしないこともあります。そのため、施工の打ち合わせ時にどうしても予算がオーバーすることもありえるのです。
発注を一括にすることで、設計士と施工の担当者が連携し、自社の要望を叶えられるよう進めてもらえることが期待できます。また別々で依頼すると発生する、打ち合わせの手間が省ける点も魅力です。
発注を一括で行うことが不安な場合には、店舗デザインの会社が公表している施工事例や、口コミ・評価を確認してみましょう。
補助金・助成金を利用する
対象の事業者は、以下の補助金や助成金が利用できる場合もあります。
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業再構築補助金
- 業務改善助成金
- 受動喫煙防止対策助成金
申請書類の作成や審査には時間がかかる上に、必ず受け取れるとは限りません。またほとんどの場合、給付金は後払いです。
しかし、給付金を受け取れた場合、事業の大きな助けになります。店舗デザインの費用を抑えたい場合は、対象となる補助金や助成金の申請を検討してみましょう。
家具や備品を自分で調達する
たとえば、ネットオークションで出品されている物の中には未使用品もあるため、運が良ければ安く入手できるでしょう。
しかし、場合によってはトータルコスト的に自分で調達すると高くなることもあり、見積もりの内訳と自己調達のインテリアや備品を比較する必要があります。
内装素材を安価なものにする
高品質な素材を使用すると費用がかさみます。そのため費用を安く抑えたい場合は、内装素材を変更することも1つの手段です。
内装素材の質にこだわりたい場合、顧客の目に留まりやすい箇所は希望のイメージ通りの素材を使用し、目立たない箇所の素材を変えることもできます。店舗のイメージを損なわない程度に、費用を抑えましょう。
納得できる費用でおしゃれな店舗デザインを実現しよう
店舗デザインの費用は、業界の特性や利用する物件などにより相場が幅広いです。特殊な設備が必要とされる場合、とくに坪単価も上がり費用がかさみがちになります。しかし、使用素材を変えたり、居抜き物件を利用したりすることで、費用を抑えることも可能です。
また、複数の業者を比較検討することで、自社の納得いく費用かつ希望通りのデザインを実現することにつながります。店舗デザインを依頼する場合は、自社の業務形態や予算、希望のデザインなどを洗い出し、綿密な打ち合わせを行うことが大切です。自社に合った店舗デザインの業者を選び、顧客が快適に過ごせる空間にするための店舗デザインを行いましょう。
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この記事を書いた人
編集部員 河田
編集部員の河田です。編集プロダクションでの書籍編集の経験を経て、現在はEMEAO!のWebコンテンツ編集・執筆とお客様へのインタビューを担当させていただいています。日々、コツコツと皆さんのお役に立つ情報を発信していきます!よろしくお願いします。