新冷媒のR32とは?R410Aとの違いやメリット・デメリットを解説
公開日:2023.12.21 最終更新日:2024.07.12
エアコンに使われている冷媒はR32とR410Aがありますが、具体的な違いがどこにあるのか知らない方もいるのではないでしょうか。
両者の違いがわかれば、冷媒を選ぶときの基準が明らかになります。
この記事では、R32の特徴やR410Aとの違いを解説しています。また、冷媒の規制や充填方法、メリット・デメリットも紹介しますので、ぜひ最後まで読んでください。
新しい冷媒として誕生したR32とは
R32は環境へのダメージが少ない新しい冷媒です。従来の主流だったR410A冷媒に比べ、地球温暖化係数が約3分の1で、オゾン層を破壊する心配がありません。
日本は京都議定書を採択するなど温室効果ガスの削減に力を入れてきており、R32が家庭用エアコンの主流となっています。
R32の特徴
R32の特徴はエネルギー効率が良く、R410AやR22など従来の冷媒と比べ冷媒充填量を約30%減らせることです。
さらにR32はGWP(地球温暖化係数)が675で、ODP(オゾン層破壊係数)がゼロであることから、地球温暖化への影響が低くなっています。
また冷媒の安全性を示すISO規格では、4つの燃焼性のうち最も燃焼性の低い微燃性に分けられ、安全に使用できる冷媒であることが示されています。
R410AやR22が混合冷媒なのに比べ、R32は単一冷媒です。再充填する場合、混合冷媒のように一度すべて抜く必要がないので、扱いやすく経済的にも優れています。
冷媒の歴史
冷房装置が発明されてから、冷媒の主流は何度も変わってきました。ここでは冷媒の歴史について解説します。
冷媒に求められている要素
冷媒に求められている要素は以下の4つです。
- 環境性
- 安全性
- エネルギー効率
- 経済性
環境性とは、地球温暖化にどのくらい影響を与えるかを表すもので具体的な数値としてODP(オゾン層破壊係数)やGWP(地球温暖化係数)が使われます。
安全性では国際規格で定められた燃焼性、エネルギー効率ではCSPF(期間エネルギー効率)や電力使用量で測ることが可能です。
環境への配慮から冷媒の規制が始まる
冷媒の主流は以下のように変化してきました。
- CFC(クロロフルオロカーボン)
- HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)
- HFC(ハイドロフルオロカーボン)
CFCは、1928年に発明され空調機器・冷蔵庫の冷媒以外にも幅広く使われてきた人工物質です。1970年代にCFCが空気中に放出されるとオゾン層を破壊することがわかったため、1987年のモントリオール議定書で段階的全廃が義務付けられました。
次に、主流となったHCFCはCFCと比べ環境への負荷が少ない冷媒でした。しかしオゾン層への影響から、CFC同様にモントリオール議定書で2020年までの全廃が決められました。
そこで登場したのがHFCです。HFCはオゾン層を破壊しない冷媒とされていましたが、温室効果ガスのひとつであることが判明したため、1997年に採択された京都議定書で温室効果ガスの排出抑制対策のために規制が進んでいます。
関連記事:20年前のエアコンと最新式の違いは?電気代や性能などを比較
R410AとR32の違い
R410AはR32とR125の混合ガスですが、R32は単一冷媒です。
どちらもHFCでGWP(地球温暖化係数)はR32が675、R410Aが2,090です。GWPと冷媒充填量を掛け合わせて算出する地球温暖化への総合的な影響は、R32が472であるのに対しR410Aは2,027と大きな差があります。
しかし、燃焼性に関してはR32に微燃焼性があるのに対しR410Aが不燃となっておりR410Aの方が優れた特性です。
R32のメリット
R32のメリットは以下の6つです。
- 蒸発潜熱(蒸発するときに周りから奪う熱量)が大きくコンパクト化が可能
- 従来の冷媒に比べてGWP(地球温暖化係数)が低い
- 単一冷媒であるため扱いやすい
- 熱伝導率が大きいため効率的
- 毒性がないため安全性が高い
- オゾン層破壊の心配がない
それぞれ解説します。
蒸発潜熱(蒸発するときに周りから奪う熱量)が大きくコンパクト化が可能
R32は冷凍サイクルで重要な蒸発するときに周りから奪う熱量が大きいため、より少量で従来と同じ効果が得られます。その結果、機器のコンパクト化が可能です。
従来の冷媒に比べてGWP(地球温暖化係数)が低い
従来の冷媒では地球温暖化に与える影響を表すGWPがR22は1,810、R410Aは2,090なのに対し、R32は672と環境へのダメージが低いです。
単一冷媒であるため扱いやすい
R32は単一冷媒のため、追加充填が可能です。R410Aのような混合ガスの場合には、それぞれのガスの比率がわからないため一度全部抜くことが必要になります。追加充填ができれば、作業が少なくなり経済的にも負担が減るためR32は扱いやすいといえます。
熱伝導率が大きいため効率的
R32は熱伝導率が大きいため効率よく冷却が可能です。モノを冷却するときには熱交換が行われますが、熱の伝わり方が早い材質であればそれだけ熱の移動がスムーズになります。
冷媒の液熱伝導率は以下のとおりです。
- R32:115 mW/(m・K)
- R410A : 81 mW/(m・K)
- R134a : 75 mW/(m・K)
- R1234ze(E) の:69 mW/(m・K)
参考:ヒートポンプシステム高性能化のための基礎研究 – Marelli
毒性がないため安全性が高い
R32は毒性がないため安全性が高い冷媒です。冷媒の安全性を取り決めた国際規格(ISO817)でA:低毒性とB:高毒性に分けられており、R32は低毒性と記されています。
参考:次世代冷媒・冷凍空調技術の基本性能・最適化・評価手法および安全性・リスク評価
オゾン層破壊の心配がない
オゾン層を破壊する心配がないことは大きなメリットです。オゾン層を破壊することがわかったCFC、HCFCは特定フロンと呼ばれ、2020年までに全廃されています。
関連記事:R22型フロンを使用した業務用エアコンを入れ替えるべき理由
R32のデメリット
新冷媒のR32にもデメリットがあります。具体的には以下の3つです。
- 温室効果が二酸化炭素の675倍ある
- 微燃焼性があるため取り扱いに注意
- 圧力が高いため施工では高耐圧仕様の道具が必要
温室効果が二酸化炭素の675倍ある
R32はHFCの中で温室効果が低い方に分けられます。しかし、二酸化炭素と比べると地球温暖化への影響が675倍もあり、環境へのダメージが大きいです。
そのため、R32を含めたHFCの規制が進められています。
微燃焼性があるため取り扱いに注意
R32は微燃焼性があり取り扱いに注意しなければいけません。従来のR410AやR22は不燃性に分けられ、燃焼へのリスクがありませんでした。
しかし、R32では特定の条件が揃うと燃焼する可能性があります。万が一に備えて、着火につながる可能性のある機器の使用は避けましょう。
圧力が高いため施工では高耐圧仕様の道具が必要
R32は圧力が高く高耐圧仕様の専門の道具が必要です。R22に比べ、R32やR410Aは圧力が1.6倍と高くなっています。ゲージマニホールドやチャージホースを使う場合は、R22で使うものと併用は避けましょう。R32とR410Aでは同じ道具が使用可能です。
R32冷媒の充填方法とは?
R32冷媒の充填方法を解説します。冷媒を充填する際は、エアコンの内部を真空状態にした後、冷媒ガスを注入します。詳しい手順は以下のとおりです。
- 真空ポンプにゲージマニホールドを通してチャージングホースをエアコン室外機のサービスポートに接続します。
- エアコン内部を真空状態にするため真空ポンプを稼動し、完全に乾燥させる。(1時間程度かかる)
- 配管を接続し、30分真空引きと内部乾燥を行う。
- コントロールバルブをサービスポートへ取り付ける。
- R32はサイホン管無しのボンベのため、逆さにしてガス充填を開始する。
- 冷媒の充填量は市販の秤を使って計量し、規定量を充填する。
- 規定量のガスが注入されたら、サービスポート、ゲージマニホールド、ガスボンベの順でバルブを閉める
まとめ:R32の冷媒が広がれば温暖化削減効果が高まる
R32はオゾン層を破壊する心配がなく、地球温暖化係数が従来の主流だったR410AやR22に比べ3分の1と環境への影響が少ない冷媒です。
1970年代にフロンがオゾン層へ与える影響について指摘されてから、CFC、HCFCと特定フロンの全廃が進められ、現在はR32を含むHFCが代替フロンとして広まっています。
R32は熱伝導率が高く効率的に利用できるメリットがある反面、微燃焼性があるため取り扱いに注意しなければいけません。
ダイキンによると、R410Aの製品がすべてR32に置き換わったときのCO2削減効果は3.7億トンとも言われており、大きな温暖化削減効果が期待されています。
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この記事を書いた人
hata