システム開発の見積書の前提条件|適切に見積もりしてもらう方法は?
公開日:2021.04.06 最終更新日:2024.08.17
システム開発にあたり、クライアントと費用項目を確認しながら見積もりを作成し、合意の上で契約する事が大切です。 このコラムでは、システム開発時の見積もりについて、見積もり時の費用項目と注意すべきポイントをそれぞれ解説します。
システム開発で発生する見積書とは
システム開発の見積書とは、システム開発会社とクライアントとの取引において、費用面について事前にクライアントに提示する文書です。見積書の内容には、作業項目、費用、工数、期間等が記載されます。
クライアントは見積書を参考に、発注するかどうかを判断します。 クライアントがシステム開発会社に依頼する際は、複数社から見積もりを取って検討します。金額を比較検討するために複数社に相見積もりを依頼するのが一般的です。
同じシステム開発の内容で相見積もりを取っても、開発会社ごとに金額が異なる場合が大半です。異なる理由は、人件費や作業工程がシステム開発会社によって変ってくるためです。
また、システム開発会社の見積書は内訳の見方が難しかったり、算出方法の違いについて理解不足だったりすると内容を判断しづらい面があります。
したがって、見積書を正しく判断できるように、事前に基礎知識とチェックポイントを抑えておきましょう。
システム開発の見積もりを依頼する前に知っておくべきこと
システム開発の見積もりは、算出方法や導入するための条件によって金額がブレるケースが多くなります。クライアント側は、金額のブレによって発注して良いか判断が付きにくいこともあるでしょう。
では、見積書の見方で困惑しないように、具体的に見積依頼する際に知っておきたいポイントを確認しておきましょう。
開発会社ごとに見積額のブレ幅がある
システム開発の見積書は、開発会社によって金額のブレがあり、100万円単位で見積書に誤差が生じるケースもあります。 はじめてシステム開発を依頼する際は、実際にどれくらい費用がかかるか検討できない場合も多いでしょう。
そこで、システム開発社によって見積もり金額にブレが生じること、また、その理由について理解しておくことが大切です。
「2段階見積もり」を提示される場合もある
システム開発会社の見積もりは「2段階見積もり」の場合が多くなります。「2段階見積もり」とは、見積書の提示方法で、概算と詳細の2回に分かれています。
1回目は、条件が揃っていない段階で、クライアントにヒアリングを行ったあとの概算の見積書です。2回目は、詳しい条件が揃ったところで再度提示される見積書です。システム開発の工数が多くなると、見積もりの算出が複雑で難易度が高くなり、実際の費用と見積もり金額の誤差が大きくなってしまいます。
したがって、リスク回避のために、2回に分けて見積もり提示する方法として「2段階見積もり」を行う会社が増えています。 もし、システム開発会社から「2段階見積もり」を提示された場合は、金額の誤差がでることを知っておくと理解が深まります。
理由①条件が揃っていない時点では概算になるため
システム開発の条件や仕様が定まっていない時点での見積書は、ざっくりと概算で提示されるケースが多くなります。詳細が未定で見積書を作成するため、算出された金額と実際の金額のブレ幅は大きくなります。
理由②開発途中で仕様の追加・変更もありえるため
システム開発の初期段階から、システムの細かい内容まで決まっていることは稀です。そのため、仕様の追加や変更によって開発途中でも金額が変更になることがあります。 したがって、大まかな見積書を初期の段階で提示してもらい、開発途中で追加や変更の可能性があることを事前に把握しておきましょう。
理由③開発会社ごとに算出方法が異なるため
システム開発会社の見積もりは、会社によって算出方法が異なります。算出方法の種類には、「トップダウン、パラメトリック、ボトムアップ、プライスツーウィン法」等があり、早く算出する場合、正確に算出する場合、前例を参考に算出する場合などで方法が変わります。
システム開発の見積もり時に注意すべきポイント
システム開発の見積もりを作成するにあたり、何を確認するべきか、何を注意すべきかを事前に知っておくことで、契約までがよりスムーズになり、契約後の認識違いも防ぐことができます。
ここでは、システム開発時の見積もりを作成する際の費用項目と、作成時の注意点などを解説します。 なお、業者を選ぶポイントとしては、こちらの優良なシステム開発業者の選び方をご参照ください。
システム開発時の見積もりで、費用項目とともに確認しておきたいチェックポイントは以下の通りです。
- 作業範囲は明確であるか
- 作業中のリスクが含まれているか
- 理工数が計上されているか
- 調査、分析に必要な工数が含まれているか
- 数字が妥当であるか
- 前提条件が明確であるか
- 必要なハードウェアやソフトウェアの購入金額が含まれているか
- 責任範疇は明確であるか
- 検収方法、検収条件は明確であるか
以上の事柄と同様に、見積もりを複数の会社に依頼することで検討材料を確保し、見積もりが妥当であるのかを判断するのがポイントです。
見積りに含まれる作業範囲を明確にする
適切な比較検討を行うためにも、作業範囲を明確にしましょう。作業範囲を明確にするには「自社の目的を実現するためにどのような機能を実装したいか」を詳細に伝えることが大切です。要望を具体化することで、開発手法やデザイン、期間などが定まりやすくなります。
また作業範囲が明確でなければ、開発途中で追加費用が発生する原因にもなります。事前にすり合わせておくことで、不要な工数が含まれるリスクや、追加費用が発生する要因の排除が可能です。
見積り内容が明確な根拠に基づいているか確認する
見積り提示を受ける際は、どのような前提条件のもとで費用を算出しているか確認することが重要です。具体的には、次の項目を確認しましょう。
- 各作業に対する単価が明確に示されているか
- 作業内容について説明があるか
- 作業にかかる時間が明記されているか
これらについて説明がない場合は、見積り金額が妥当かどうか判断できません。作業に関わるエンジニアの人数や時間、各作業にかかる工数がどのように算出されたか、丁寧な説明があるとよいでしょう。
システム開発への知識が少ないと、説明内容を理解するのが難しい場合もあるかもしれません。もし不明瞭な点があれば、遠慮せずにその場で確認を取るようにしてください。
プロジェクト全体のリスク評価を実施する
システム開発を外部に依頼する際は、起こりうるリスクを事前に把握しておきましょう。プロジェクト中に発生しうるリスクは次のとおりです。
- スケジュール遅延のリスク
- 品質に関するリスク
- 予算オーバーのリスク
たとえばシステムの稼働開始が遅れるとプロジェクトが頓挫したり、品質の低下を招いたりといった問題を引き起こす恐れがあります。これらの潜在的なリスクを考慮しながら見積り内容と照らし合わせることで、トラブル防止につなげられます。
予期せぬトラブルが生じた際の対応を確認しておく
信頼できる委託業者を見つけたとしても、予期せぬトラブルが起こる可能性はゼロではありません。スケジュールの遅延やシステムのエラーなど、さまざまなトラブルが起こり得ます。
そのため、打ち合わせ段階でトラブルが起きた場合の対応や、責任の所在を明確にしておくことが重要です。速やかに問題解決へと導くために、契約書にトラブル発生時の対応について明記しておくと、安心して進められます。
また双方の信頼関係に亀裂が入らないように、事前準備を怠らないことが大切です。トラブルを未然に防ぐためにも詳細な要件定義を定め、緻密な計画を練るようにしましょう。
必ず複数社から相見積りを取る
自社にとって最適な企業を選ぶためにも、必ず複数社から相見積もりを取るようにしてください。各社のサービス内容を比較することで、自社のニーズに合った企業を選定できます。
ただし、相見積りをして費用がもっとも安い企業を選ぶのではなく、品質やサービス内容も考慮して比較することが大切です。複数の見積りを取ることで、より良い条件で契約を結べるでしょう。
システム開発見積りの主な費用項目
システム開発時に見積もり対象となる費用項目は、以下の10項目です。
- 要件定義費用
- 設計費用
- UIデザイン費用
- 進行管理費用
- 開発費用
- 導入費用
- 導入支援費用
- 購入費用
- 旅費、交通費用
- 保守費用
要件定義費用とは、開発するシステムの仕様や調整の実現方針を決定する際に発生する費用です。 UIデザイン費用とは、ユーザーから見たシステム画面(UI)を誰でも見やすく使いやすいデザインにするための費用となります。
導入支援費用とは、システムを円滑に利用するために、開発会社が作成するマニュアルや、操作方法の説明会を開催する際に必要な費用です。 そして、完成したシステムに必要なメンテナンス及びバグの修正、機能の改修などを行う保守費用が必要になります。
また、上記の費用以外でも、システム会社から不要な費用や別途必要な費用がある場合がありますので、なにか不審な点がある際はその都度質問し、食い違いが発生しないよう注意しましょう。
ここから、それぞれ詳しく解説していきます。
要件定義費用
要件定義とは、システムに求められる機能や性能、操作性などを具体的に決めることです。要件定義費用は、顧客へのヒアリングや要件定義書の作成にかかる費用を指します。
期待に沿ったシステムを構築するためには、要件定義が不可欠です。打ち合わせ回数が増えるほど要件定義費用も大きくなりますが、手戻りを防ぐ重要なプロセスです。
設計費用
システムの全体構造や、各機能の実現方法を設計する作業にかかる費用です。システムの品質を担保し、開発期間を長引かせないためにも、具体的な形を設計する必要があります。
設計に必要な作業時間(工数)を算出し、人件費を乗せて算出します。
UIデザイン費用
UIデザインとは、ユーザーが製品やサービスを操作する際の「見た目」と「操作性」を設計することを指します。具体的には、画面レイアウト設計やグラフィック、インタラクションデザインなどの設計にかかる費用です。
デザインの複雑度によって単価は変動します。また修正回数が増えると、費用が追加される場合もあります。
進行管理費用
プロジェクト全体の進捗を管理し、円滑に開発を進めるための費用です。プロジェクトマネージャーの人件費が割合の多くを占めます。
開発費用
システムのプログラミングやテストなど、実際の開発作業にかかる費用です。開発に必要な時間に、エンジニアやプログラマーの人件費を乗じて算出します。開発環境の設備費用も考慮されることが一般的です。
導入支援費用
開発したシステムを顧客の環境に導入し、運用を開始するための費用です。システムのインストールやデータ移行のほか、顧客に使い方をレクチャーする工程も含まれます。
購入費用
システムを稼働させるために必要なパソコンやサーバー、ソフトウェアなどを購入する費用です。大量のデータを処理したり、複雑な計算を行ったりする必要がある場合は、高性能なスペックのサーバーが必要となります。
多くのユーザーが同時にシステムへアクセスする場合、ハードウェアの購入費用は高額傾向にあります。
旅費・交通費用
開発者やプロジェクトメンバーが顧客先を訪問したり、会議に参加したりするために必要な費用です。遠隔地での開発が必要となる場合や、複数回に渡って行き来する必要が生じた際は費用が大きくなります。
保守管理費用
システムを導入後、安定的に稼働させるために必要となる費用です。保守管理費用は、システム構築後も継続的に支払います。
バグ修正やメンテナンス、バージョンアップなどにかかる費用が含まれます。
発注者も知っておくべきシステム開発の見積算出方法4つ
システム開発の見積もりを算出する方法には、以下の4つがあります。システム開発会社の見積書を正しく判断するために、クライアント側の担当者は算出方法を知っておくとベターです。
算出方法 | メリット | デメリット |
トップダウン法 | 前例があると金額のズレ幅が少ない 早く算出できる | 初めてシステム開発する際は不向き |
パラメトリック法 | データがあれば正確に算出しやすい 機械的に計算できる | 前例がないと算出の精度が劣る |
ボトムアップ法 | 工数ごとに算出しやすい 精度の高い算出が可能 | 大規模案件には向いていない 算出に時間がかかる |
プライスツーウィン法 | 予算に過不足なく算出しやすい | 予算によっては品質低下する場合もある |
トップダウン法(類推見積もり)
トップダウン法は、今まで行った過去の類似のシステム開発の前例を参考にして金額を算出する方法です。過去のデータを基に算出できるので、スピーディーに行えるというメリットがあります。
条件や判断材料がまだ揃っていない初期段階で用いられる方法として利用できます。工数や費用に大きなブレがなく正確性に優れた算出方法です。
パラメトリック法(係数モデル)
パラメトリック法は、過去のデータを基に算出する方法で、特定の数学的モデルを利用して作業を点数化して計算します。見積もりの精度の高さは、より正確なデータ数値によって決まります。
機械的に計算を行うため、知識や経験がなくても正確に数値を入力すれば、比較的簡単に見積もりを行うことができます。
ボトムアップ法(工数積上げ)
ボトムアップ法は、作業ごとに工数を積み上げて、システム完成を想定して算出する方法です。作業工程の抜け漏れを防止できるというメリットがあります。
工数積み上げ方式なので、工数の多い大規模なプロジェクトよりも、中・小規模なプロジェクトに向いている算出方法です。
プライスツーウィン法
プライスツーウィン法は、クライアントが提示している予算に対して金額を算出する方法です。システム開発にどれだけ金額がかかるかというよりも、予算内でできるシステム開発に対して見積もりを行う方法です。
予算が決まっている前提で算出するため、実際の金額との差が大きくなりにくいというメリットがあります。 一方、予算内でできることが限られるため、クライアントの要望通りにならないケースもあります。要望に合わせて必要な機能を追加する際は、その分、コストも上乗せになります。
システム開発見積もり前の準備
システム開発を依頼しても、開発後に見積もりと金額が大きく変わってしまうことや、想定していた仕様と違いがあるといったトラブルが発生してしまう事があります。 そのようなトラブルを防ぐためにも、しっかり準備しておくことが重要です。
まず「前提条件」をしっかり確認しましょう。 前提条件とは、システム開発の仕様や期間のことです。 どのプログラミング言語を使用するのか、ハードウェアやソフトウェアは何を使うのかなどの仕様をしっかり確認することで、後のトラブルを防ぐことに繋がります。
また、プロジェクトの期間を見積もりに明記することで、見積もりをより正確にすることができます。
現状の問題点や解決すべき課題を明確にする
システム開発の目的を達成するためには、現状の問題点や解決すべき課題点が明確化されていなければなりません。業務で発生している課題やボトルネックを洗い出し、システムの導入によってどのように解決できるか具体化する作業が必要です。
具体的には、次のような手順で解決すべき課題を明確にします。
- 現状の業務プロセスを分析する
- 非効率な業務を洗い出す
- 問題点が発生した原因を探る
現状分析や問題点の洗い出しができていないと、必要な機能が備えられていないシステムとなる可能性があります。また課題にアプローチできると考え実装した機能が、実際に使ってみると不要だったということにもつながりかねません。
課題点を明確にしてから見積りを依頼することで、提示金額の正確性が向上し、開発に必要な機能や範囲が把握できるようになります。多角的な視点から問題点を洗い出し、効果的なシステム開発の実現を目指しましょう。
実装したい機能に優先順位をつける
限られた予算の中で最大限の効果を得るためには、実装したい機能に優先順位をつけることが大切です。予算内で実現可能な機能を絞り込むことで、コストオーバーを防ぎ、精度の高いシステムを構築できます。
優先順位をつけるためには、洗い出した現状の課題点をカテゴリー化し、ビジネスに与える影響を考慮しましょう。そこから定量的な目標を設定することで、各機能の重要度を明確化できます。
たとえば「データ入力に時間がかかる」「人為的なミスが多い」などの課題を持っているとしましょう。これらを解決できる業務効率化システムの開発のために、作業時間の短縮やエラー率の低下といった指標を立てます。そして、非効率な部分を改善するために必要な機能をピックアップします。
また、各機能が課題解決にどれだけ貢献するかについて評価しながら、優先順位を定めることが重要です。機能の実現にかかるコストを比較し、費用対効果の高い機能から優先的に取り組めるようにしましょう。
委託先と連携できる体制を整える
システムを開発するには専門知識が必要となるため、多くの企業が外部へ委託します。しかし、知識や技術がないからと任せきりにならないよう注意してください。
委託先との連携が上手くいかないと、開発の遅延を招いたり、期待していたシステムが完成しなかったりといった問題が発生するかもしれません。プロジェクトを成功させるためには、システム開発の目的を共有し、双方が同じ方向に向かって取り組めるように共通認識を形成することが重要です。
また、担当者と定期的に進捗状況を共有できる体制で進めることが望ましいでしょう。プロジェクトの進捗状況を共有することで、問題点や課題点を早期に発見し、素早く対応できるようになります。円滑なコミュニケーションが取れる企業を選ぶことで連携力が高まり、期待どおりのシステムに仕上がりやすくなります。
システム開発の見積りは費用項目を知った上でチェックしよう
以上、システム開発時の見積もりについてのチェックポイントを解説しました。 開発者によって見積もり方法や金額が変わるため、上記の事柄をしっかり確認することが大切です。
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この記事を書いた人
編集部員 濵岸
編集部員の濵岸と申します。コンテンツ作成と取材を主に担当しております。身長が低いため学生時代は「お豆」と呼ばれていました!豆らしく、皆様の役に立つ記事を「マメに豆知識を!」の意識で作成します!どうぞよろしくお願いいたします!