組み込み系システム開発の資格6選!特徴やスキルなどを解説
公開日:2021.05.25 最終更新日:2023.11.14
組込み系・制御系システムとは、パソコンなどで使用するソフトウェアとは違い、家電製品や自動車、通信機器などのハードウェアに組み込まれ、コンピューターを制御するシステムのことです。
本記事では、このような組み込み系・制御系システム開発に関連する資格について解説します。組込み系・制御系システムの開発依頼を考えている事業者様は、ぜひ参考にしてください。
組み込み系システムとは?
組み込み系システムとは、家電製品や自動車、通信機器、工業機器などに組み込むシステムのことです。家電製品や自動車などが正常に動作するのは、内蔵されたシステムによってコンピューターが制御されているためです。
特に、近年はIoTやAIの進歩が著しく、たとえば家電製品とスマートフォンをインターネットでつなぐこともおこなわれており、組み込み系システムは大変需要がある産業です。
そういったIoTの要となる技術のひとつが外部環境を精密に捉えるセンサーです。センサーが捉える情報は明るさや音、振動、温度、湿度などさまざまです。
組み込み系システム開発をおこなうエンジニアは、必要なセンサーがどのような情報を読み取ってどうやってシステムに反映させるのかを的確に判断しなければいけません。
こういったIoTやAIは今後も進歩していくため、さらに組み込み系システムの需要は高まると予想されています。
組み込み系システムの一例
組み込み系システムの一例として、電子レンジが挙げられます。
電子レンジはボタン操作をすると「何分間、何度で加熱する」「決められた時間だけ加熱したら、ストップする」「加熱温度を変更する」など、さまざまな制御をおこなっているのです。
正常に動作するのはもちろんのこと、近年では小型・省電力・早い、という性能を求められるようになっています。より性能のよい組み込み系システムが求められているというわけです。
組み込み系・制御系システム開発に関連する資格
組み込み系・制御系システムの開発をおこなう際、資格が必ず必要になるわけではありません。しかし、各種資格は、持っている知識やスキルを客観的に保証するものです。
そのため、これから紹介する6つの資格を持っているかどうかも、ひとつの判断材料にして、組み込み系・制御系システム開発を依頼する会社を選んでみてもよいかもしれません。
組み込み系・制御系システム開発で確認しておきたい6つの資格
- 組込み技術者試験(ETEC)
- JSTQB認定テスト技術者資格
- OMG認定組込み技術者資格(OCRES)
- 基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
- LPIC・LinuC
資格①組込み技術者試験(ETEC)
「組込み技術者試験(ETEC:Embedded Technology Engineer Certification)」は、一般社団法人組込みシステム技術協会が実施している組込みソフトウェア技術者試験のことで、国家試験ではありません。
組込みソフトウェア技術者試験は、パソコン受験である「CBT(Computer-Based Testing)」を採用しており、出題分野ごとの正答率をもとに評価がおこなわれます。
受験者には、点数の証明書が発行されるため、組み込み系・制御系システム開発に関連する知識やスキルの証明にする人もいます。
このような仕組みをとることで、単なる合否判定の試験ではなく受験者のスキルとやる気を向上させることを目標としています。
試験内容は「エントリレベル」「ミドルレベル」の2種類で、点数によってA~Ⅽの段階で評価されます。
エントリレベルとは、上級者の指導のもとにプログラミング作業をおこなえる技術者程度の知識があるかどうか試験するものです。
ソフトウェアの勉強をしている学生や、実務経験はなくても社内でプログラムの教育を受けている方が対象となっているため、組込み技術者試験(ETEC)を受けるならまずエントリレベルの合格を目指すとよいでしょう。
対して、ミドルレベルは、中級技術者として評価するもので、要求からテストまでの各工程における知識から分析能力までの総合力や、現場リーダとして不可欠な実装およびQCDなどの知識・能力、実装の実務能力があるか試験されます。
資格②JSTQB認定テスト技術者資格
「JSTQB認定テスト技術者資格」は、JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)が認定する資格です。
ソフトウェアテストに関する国際的な資格認定をおこなう組織として、ISTQB(International Software Testing Qualifications Board:国際ソフトウェアテスト資格認定委員会)があります。そのISTQBの日本における加盟組織がJSTQBです。資格や教育などの認定についてISTQBと相互認証をおこなっています。
そのため、JSTQBが運営するソフトウェアテスト技術者資格は海外でも有効な資格となっており、ソフトウェアの品質・安全性・信憑性の確保のためシステムのテスト技術向上を目的として実施されています。
試験内容は「Foundation Level」「Advanced Level」の2種類です。Foundation Levelは、ソフトウェアテストにおける基礎知識全般が問われる試験です。
対して、Advanced Levelは、テストに関するマネジメントや評価の知識が問われ、Foundation Levelに合格すると受験できるようになります。
JSTQB認定テスト技術者資格のシラバスや試験内容は、加盟しているISTQBの内容にもとづき日本語に翻訳および作成されたものです。
JSTQBはシラバスから出題まですべて日本語で書かれており、受験場所も日本国内となっているため、英語に苦手意識がある人でも問題なく受験できます。
資格③OMG認定組込み技術者資格(OCRES)
「OMG認定組込み技術者資格(OCRES)」は、国際標準化団体OMGが実施する世界標準の技術者試験で、130ヶ国で実施されています。
この試験は組み込みシステムの開発をおこなうアーキテクト・開発者・プログラマーを対象としています。試験区分は「ファンダメンタル」「インターエディメント」「アドバンス」に分かれており、ファンダメンタルから受験して合格する必要があります。
ファンダメンタルは、「OCUP2」の初級に合格していることが必須となっており、リアルタイムシステムや組み込みプログラミングに関する基礎知識が問われます。
続いて、インターメディエイトでは、ファンダメンタルよりも高度な知識が問われ、リアルタイムシステム・組み込みソフトウェア開発の設計や仕様に関する試験がメインです。
最後のアドバンスは、OCRESでは一番難易度が高く、リアルタイムシステムや組み込みソフトウェア開発すべてにおける知識やプロジェクト責任者としての知識が試されます。
いずれも高度な専門知識が問われ、リアルタイムシステムや組み込みプログラミングについての知識と経験を測ります。
資格④基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」は、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施している、一般的に認知度が高い資格です。
どちらの資格もシステムエンジニアの登竜門的な位置付けとされており、新卒入社後から3年程度以内に取得することを推奨しているIT企業もあります。
そのため、多くのテキストが発売されており、勉強して取得しやすい資格のひとつとされています。
基本情報技術者試験の対象者は、ITを活用したサービスや製品、システムおよびソフトウェアづくりに携わるうえで必要な基本的な知識や技能を持ち、実践的な活用能力を身に付けている人です。
ITを活用した戦略の立案、システムの企画・要件定義、設計・開発・運用について、幅広く知識が問われます。
対して、応用情報技術者試験の対象者は、ITを活用したサービスや製品、システムおよびソフトウェアをつくる人材に必要な応用的知識や技能を持ち、高度IT人材としての方向性を確立した人です。
その名の通り、基礎情報技術者試験よりも応用情報技術者試験のほうが、より難易度が高くなっています。
応用情報技術者試験では、システム開発のプログラム作成などはもちろんのこと、プロジェクトリーダーなど、実務面での中心的な役割を担う際に必要になる知識やスキルを身に付けているかが試験されます。
資格⑤エンベデッドシステムスペシャリスト試験
「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」は、同じく独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施している試験です。
対象者は、高度IT人材として確立した専門分野を持ち、IoTを含む組み込みシステムの開発に関係する広い知識や技能を活用して、事業戦略や製品戦略から製造までおこなう人です。
高度な専門知識が問われる国家資格のひとつであり、IoTを含む組み込みシステムに関する事業戦略や製品戦略の策定、ハードウェアとソフトウェアの要求仕様の策定、開発・実装・テストを計画および実施する業務に従事し、ときには指導することもできるレベルの知識を問います。
試験は4つに分けられており、筆記にておこなわれます。それぞれ、出題される問題数や解答数が異なり、多肢選択式(四肢択一)だけでなく、記述式で解答する問題もあります。
組み込み系・制御系システムの開発には、広範囲の専門知識と発想力、さらにプロジェクトチームを管理する能力まで求められますが、それらを認定する資格がエンベデッドシステムスペシャリスト試験だと考えておくとよいでしょう。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の合格率は、近年は15%前後ですので、難易度が高めになっています。そのため、この資格を持っているエンジニアには期待できるかもしれません。
資格⑥LPIC・LinuC
「LPIC」と「LinuC」は、試験内容や合否の判定方法などの詳細には違いがあるものの、共にLinuxというOSに関する知識やスキルが身に付いているか試される資格です。
Linuxは、アプリ開発やサーバー構築などのシステム開発において、世界中で使用されているため、Linuxを中心に開発をおこなう現場では大変役に立ちます。
LPICは、国際標準資格で、世界180カ国以上で試験が実施されている国際資格です。日本語だけでなく、英語をはじめ9か国語の中から自由に選択できます。
対して、LinuCは日本国内でのみ実施される資格試験です。海外では通用しない資格ですが、日本市場に合った試験内容が出題されるようになっています。国際水準ではないものの、より実務に活かしやすいかもしれません。
また、LinuCは2018年から開始された試験ですが、LPICはそれより遅れて2000年から開始しました。そのため、LinuCのほうが試験受験の体験談や学習方法を教えてくれるサイトなど、情報を多く見つけやすくなっています。
もちろん、LPICとLinuCで共通している箇所もあるため、両方の資格を持っているエンジニアもいます。こういったエンジニアは勉強熱心でより多角的な視点を持っていると評価できるでしょう。
システム開発会社を選ぶ際に確認する項目
続いて、組み込み系・制御系システムの開発依頼を考えている事業者様が、ぜひチェックしたい資格以外の観点についてもお伝えします。
資格以外にも、以下のことを重視すると、スムーズにプロジェクトを進められるのではないでしょうか。
- 実績や評価・評判
- 開発の得意分野
- 料金
実績や評価・評判がよくても、あまりにも料金が高かったら、システム開発を依頼するのは現実的ではないかもしれません。
上記3つのバランスを考慮して、自社にとって適切なシステム開発会社に依頼できるとよいでしょう。3つのポイントの詳細は以下の通りです。
実績や評価・評判
まず、実績や評価・評判はしっかり確認して慎重に選びましょう。具体的には以下がポイントになります。
- 依頼したいシステムに似た開発実績はあるか
- 自社開発をしているか
- 担当者は親身になって相談に乗ってくれて相性はよいか
- 納品後の運用・保守への対応はよいか
実際に、依頼したいシステムに似た開発実績があるか質問しましょう。まれにWebサイトで公開していることもありますが、非公開にしている会社も多いため、担当者に直接聞くのが早いでしょう。
依頼したいシステムに似た開発実績があるなら、よくある要望やトラブルについても把握している可能性が高いため、問題なくプロジェクトを進められるかもしれません。
また、すべてを自社開発しているかどうかも聞くことをおすすめします。システム開発の工程は、要件定義から設計、開発、保守・運用までなどいくつものフェーズに分かれているため、一部を他社に依頼しているケースもあります。
もちろん、他社に依頼しているから悪いというわけではありませんが、品質にばらつきが生じることもあるため、そのあたりをきちんと管理してくれるか確認しておくと安心です。
ただし、すべてを自社開発しているのであれば、それだけ知見やノウハウがあるということは言えます。
そのほか、直接やりとりをすることになる担当者の技量や誠実さ、相性なども考慮して、システム開発会社を選ぶとよいでしょう。ストレスなくコミュニケーションをとれるということは重要なポイントです。
加えて、納品後の運用・保守への対応についても確認しましょう。システムは作ったらそれで終わりではなく、ときにはメンテナンスやアップデートが必要になることもあります。保守・運用の費用が高額でなく、手厚いところを選びましょう。
開発の得意分野
組み込み系・制御系システムに限らず、システム開発会社は、企業ごとに得意な開発分野が異なります。
たとえば、特定のプログラミング言語に長けていたり、家電製品系の組み込みシステムの加発に強かったり、医療系の組み込みシステムに強かったりと個性があることも少なくありません。
そのため、組込み系・制御系システムの開発依頼を考えている事業者様は、それぞれのシステム開発会社の得意な分野を確認し、依頼したいシステムの内容と一致しているか確認しましょう。
依頼内容を先に伝えてしまうと、営業トークでうまく調整されてしまうこともあるため、まず「貴社の得意分野は何ですか」と聞いてみたり、公式Webサイトを確認したりすることをおすすめします。
料金
組み込み系・制御系システム開発会社を選ぶときは、料金の目安を知っておきましょう。
よくある失敗事例として、一括見積もりをとったが、対応範囲がさまざまで正しく判断できなかったというものです。何にいくらかかるのか明確にしてもらい、かかる料金を比較検討するとよいでしょう。
見積もりは複数社からとることをおすすめします。料金の安さだけで選ぶことは避けたほうがよいですが、依頼するうえで重要なポイントであることは間違いないため、細かくチェックしたいところです。
料金については、システム開発会社のWebサイトを見ても料金の目安が書かれていないことがほとんどのため、問い合わせをして担当者を通じて教えてもらうことになります。
納得できないポイントや不透明なポイントがあるなら、依頼は控えて別のシステム開発会社を検討したほうがよいかもしれません。
組み込み系・制御系システム開発会社はしっかり見定めましょう
本記事では、組み込み系・制御系システム開発に関連する資格について解説したうえで、資格以外にも注目したいシステム開発会社の選び方についてお伝えしました。
ただし、組み込み系・制御系システム開発に関する資格と一口に言っても、依頼する内容により、必要な知識やスキルが異なってくることもあります。
また、同じ資格でも、基礎知識があれば取得できるレベルから高度な知識が必要なレベルまでさまざまなため、どの程度のスキルが必要か把握しておくことも大切です。
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この記事を書いた人
編集部員 濵岸
編集部員の濵岸と申します。コンテンツ作成と取材を主に担当しております。身長が低いため学生時代は「お豆」と呼ばれていました!豆らしく、皆様の役に立つ記事を「マメに豆知識を!」の意識で作成します!どうぞよろしくお願いいたします!