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システム開発工程で必要なKPIの概要とメリット・設定するポイント

公開日:2021.05.23 最終更新日:2023.11.14

この記事では、システム開発工程を設定する際に欠かせないKPIについて解説します。
KPIの概要について知りたい事業者様は、ぜひご一読ください。

システム開発に欠かせないKPIとは

KPIとは、掲げた目標に対してどのぐらい達成しているのか示す指標です。
中間目標の指標と言い換えることもできるでしょう。

本来KPIはマーケティングにおいて策定される指標ですが、システム開発分野でも取り入れられています。
目標の度合いを定めることで、品質やコスト・納期を守り顧客の要望に沿ったシステム開発ができるのです。

そのため、プロジェクトの進捗においては、KPIで目標達成度合いをチェックするのが好ましいでしょう。

KPIとあわせて覚えておきたいKGIとは?

KPIとあわせて覚えておきたい考え方にKGIがあります。

KPIとは、Key Performance Indicatorの略です。「重要業績評価指数」などと訳されています。一方のKGIは、Key Goal Indicatorの略で、「重要目標達成指数」などと訳されます。

KPIが中間目標の指標であるのに対し、 KGIは最終的な到達目標のことを指します。

KGIは、企業や団体全体で共有するものなので、よりわかりやすい指標が求められます。KGIに必要な要素は「いつまでに(期限)」「何を(指標)」「どのくらい(高さ)」あげるのか、です。「何を(指標)」に関しては、数値で測れる必要があるため、「売上高」「利益率」「来客数」「成約数」などが設定されることが多いです。KGIを設定することで、そのチームが何を目指しているのかが明確になり、努力の方向性が定めやすくなります。

長期的な目標としてKGIがあり、KGI達成のための短期的、中期的目標としてKPIがあるイメージです。ひとつのKGIに対して、KPIは複数立てることが一般的です。

KGIとKPIは、最終的に目指すところは同じですが、KGIは結果を評価するのに対し、KPIは過程を評価します。KGIだけを策定してもその目標達成のためにどうすればいいのかがわかりません。また、KPIだけを策定してもその目標を達成することが何につながるのかが見えづらいです。KGIとKPI、両方を適切に設定することで、目標達成のために何をすればよいかが明確になり、具体的な行動が取れるようになります。

例えば、従業員アンケートをとったところ、現在の労働環境に不満がある、と答えた人が30%いたとします。ただぼんやりと労働環境をよくしたいな、と思っているだけでは、労働環境は改善されません。「2年後のアンケートで、労働環境に「不満がある」と答える人を10%にまで減らす」というKGIを設定しました。その実現のために「労働時間を短くするために、売上に対する利益率をあげる」というKPIをたて、その実現のために「各契約内容を精査する」「自社の営業方針を見直す」「社内での事務手続きを簡略化する」などのKPIが出てくる、といった具合です。

「契約内容を見直したことでより利益率の高い取引へと誘導でき、同じ労働時間でも高い売上を達成することができた」というような、KPIの達成の積み重ねの結果、KGIが達成できていた、というのが理想的な形です。

このように、KPIの達成の積み重ねの先にKGI達成があります。つまり、KGIと今の状態を把握し、その間をKPIで埋めていくことで、KGI達成が見えてきます。

KGIは上層部で決定され、各部署に降りてくることが多い傾向にあります。一方、KPIはそのKGI達成を任された各部署において、KGI達成から逆算して設定していくものです。自社のKGIから逆算して設定したある部署のKGIが、別の部署のKPIと同じ、ということも多々あります。それぞれの部署で達成すべきことが異なるのですから、きちんと自社の強み・弱みを検討して決めた部署としてのKGIならば、それで構いません。

KGIを設定することで、会社全体や部署全体の目標が明確になります。また、チームの団結力が高まったり、個人個人の課題が明確になったり、モチベーションが高まったりといったメリットもあります。

適切なKPIの決め方

KPIを決める時には、具体的なKPIの案をできるだけ多く出し、それがKGIとうまくつながるものなのか、精査する必要があります。

KPIに用いる指標を決める際によく使われるのが、ロジックツリーです。左から右へどんどん木の枝のように枝分かれしていくことから、ロジックツリーと呼ばれています。

直面している問題の要素を分解していくことで、何が本質的な問題で、何に行き詰まっているのかを明確にでき、論理的に解決策を導けるため、問題解決をする際によく使われます。

KPIを作成する際にもロジックツリーを用いることでKGIを分解し、関連するKPIを整理し、可視化することができます。これにより、KGIをよりよいパフォーマンスで実現するにはどうすればいいのかが明確になります。

また、図式化することによって、社内や部署内で、KPIの共有がしやすくなります。ただKPIを共有するだけでなく、なぜそのKPIを設定するに至ったかが、ロジックツリーを見ればすぐにわかるので、社内や部署内で共通認識を深めることができます。

意図が明確なKPIには、組織のメンバーの目線を揃え、同じ方向に向かわせる力があります。意図を伝える手段として、ロジックツリーは有効なのです。

また、KPIの決め方を考える時によく言われるのが、「SMART」の観点を持つことです。

SMARTとは、

  • Specific/明確であるか、具体的であるか
  • Measurable/計測可能か
  • Achievable/達成可能か
  • Related/(ゴールと)適切に関連しているか
  • Time-bound/期限が定められているか

の頭文字を取ったものです。

つまり、

  • 設定した目標が誰の目から見てもわかりやすいかどうか(Spefific)
  • 値という誰が評価しても同じ結果になる指標で計測することができるかどうか(Measurable)
  • 現実的にみて努力すれば達成できるレベルで目標が設定されているかどうか(Achievable)
  • 社の経営指標や企業理念、KGIと関連性があるかどうか(Related)
  • 達成すべき期限が定められているかどうか(Time-bound)

という5つの観点から設定したKPIを見た時に、全てきちんとクリアできていれば特に問題はないということです。

昨今ではSMARTの5観点に、MECEの4つの観点を合わせて、「SMART-MECE」とする動きも出てきています。

MECEは、

  • Mutually/お互いに
  • Exclusive/唯一の、重複しない
  • Collectively/集合的に、全体的に
  • Exhaustive/網羅されている

の頭文字を取ったものです。

SMARTが「〇〇できるか」というプラスの観点から見るのに対し、MECEは「〇〇ができていないということはないか」というマイナスの観点から見ています。

両方の観点から見ることで、設定したKPIが適切なものであるかどうかをより多様な観点から見ることができます。また、社内・部署内のさまざまな立場・属性の人の目を通すことにより、より一層KPIが洗練され、KGI達成に近づけるものとなるでしょう。

システム開発でKPIを設定するメリット

システム開発を行ううえでKPIを設定するメリットは、主に3つ考えられます。

メリット①スケジュール遵守と品質維持がしやすくなる

KPIを設定する1つ目のメリットは、スケジュールを優先しながら必要な機能を実装できることです。

システム開発はスケジュール優先で開発が進められますが、納期が迫ってくると機能の実装が甘くなることもあります。
また、トラブルなどがあった際に時間を取られてしまうと品質が担保できなくなるケースもあるでしょう。

そこで、開発段階の目標を複数回に分けてKPIを設定します。
スケジュールと機能品質の2つについてその都度目標を設定し、達成度をチェックすることでスケジュールの遵守と品質の担保が可能になるでしょう。

メリット②リリース後のブラッシュアップの指標にできる

システム開発のKPIは、リリース後の機能改善の指標にもなります。

システムは開発して終わりでなく、リリース後にどのような効果をもたらしたかまで測定して機能などの改善をしていく必要があります。
改善といっても漠然とした内容の場合、具体的にどのような改善を優先させるのかが分からなければ効率的にブラッシュアップができません。

そこでKPIを設定する際に、運用後の改修も視野に入れて設定しておくことによりスムーズな機能改善ができるでしょう。
あらかじめ計画的な指標なため、急なコスト増大や納期の延期を回避することができます。

メリット③エンジニアに最優先事項を意識させられる

3つ目のメリットは、プロジェクトメンバーに最優先事項を意識させられることです。

KPIは全体の流れや開発工程を考慮して決められるため、最優先事項が明確になります。
例えば、顧客満足度を最優先にしてKPIを策定すれば、それを重視したシステム開発が行われるのです。

KPIは優先的に取り組む指標のため、さまざまな工程においてバランスよく設定する必要があります。
まずは何を優先させた以下の比重を明確にしてから、KPIを設定しましょう。

システム開発のKPIを設定する際のポイント

KPIはシステム開発をスムーズにするために、重要な作業だとお分かりいただけたかと思います。
ここからは、システム開発においてKPIを設定する2つのポイントを解説します。

ポイント①シンプルな策定を心がける

1つ目のポイントは、シンプルな策定を心がけることです。

システム開発には多くの人が関わるため、もし複雑にKPI策定されているとエンジニアごとに認識のズレが生じ効率的に開発できません。
そのため、KPIは明瞭で誰でもわかる用語などを使用して策定するのがおすすめです。

ポイント②計測対象を明確にする

システム開発でKPIを設定する際、抽象的な指標では達成できたかどうかを図りづらいです。
例えば、『顧客満足度を上げる』という指標と『顧客満足度を20%上げる』という指標では、後者の方が数値的に計測がしやすく達成までの目標値が分かりやすいです。

KPIは具体性を持たせることが重要なため、計測対象を明確にして絞り込む必要があります。
計測対象の幅が広いとエンジニアは計測作業に多くの時間を割くことになるため、開発が滞ることも考えられるので注意が必要です。

また、各KPIには期限も設定しておかなければ効果を発揮しないため、必ずKPIには達成期日を設けましょう。

ポイント③達成可能な目標を設定する

KPIを設定する際には、「努力すれば達成可能」なレベルのものにしましょう。

基本的にKGI、KPIは達成されることが前提で定められます。とはいえ、成長のために目標を定めているわけですから、「普通に業務をこなしていればできる」レベルでは現状維持にとどまってしまいます。 

KPIを設定する際には、KGIから問題を細分化し、現実的なレベルに落とし込んでいきます。
そのひとつひとつのKPIを実現するためにどのようなことが必要か、1レベル下のKPIを複数設定します。
また、そのひとつひとつのKPIを実現させるためのKPIを複数設定します。

このように、KGIから、より現実的、より具体的なレベルに落とし込んだKPIを設定していきます。
最終的に最下層にくるKPIは「努力すれば達成可能」なものでなくてはなりません。

現実を見ずにKGIを設定しても達成不可能なKPIばかりが出てくることになり、チームが疲弊してしまいます。

ポイント④期限を定める

KPIを定める際には、必ず達成期日を定めましょう。達成期日がなければ、ついつい先延ばしになってしまいます。また、進捗状況も定期的に確認しましょう。KPIはあくまでもKGI達成のためのものです。達成状況を定期的に確認しなくては、進捗状況もわかりません。

ただし、確認のスパン設定には注意しましょう。

ある小売店が「1日の来客者数を1500人以上にする」という目標をKPIとして掲げたとします。しかし、来客者数というのは、天候や、その日が平日か休日かなど、外的な要因で左右されるものです。そのような基準を「1日あたり」という短いスパンで評価することにしてしまうと、来客者数に振り回され、業務の進行が滞ります。

KPI自体を「頑張れば達成できる」レベルのものにするのはもちろんのこと、達成までの期限も、目標の内容に応じて無理のない期限を定めるようにしましょう。

ポイント⑤計測結果を改善につなげる

ポイント②でお伝えしたように、KPIは計測可能な指標で設定してあるはずです。定期的に進捗状況を計測し、把握したら、その結果を改善につなげるようにしましょう。

KPIの進捗管理には、「実績の取得」「目標達成状況の確認」「達成・未達成の要因仮説と検証方法の検討」の3ステップがあります。

まず、「実績の取得」では、KPIを設計した時の頻度や指標で実績取得を行います。そのためには、継続的かつ安定的に計測できるKPI指標を定めておくことが必要です。また、取得方法や実績の確認形式も事前に設計しておきましょう。

次に、「目標達成状況の確認」です。進捗状況を把握したら、目標と現時点での数字がどのくらい離れているのかを確認します。達成している場合、未達成の場合、どちらであっても、KPIのどの要素が影響しているのかを分解して確認しましょう。

最後に「達成・未達成の要因仮説と検証方法の検討」です。目標や実績の進捗状況を確認したら、「どのようにしたら今後も達成し続けられるのか」「なぜ未達なのか」について仮説を立てて、改善行動を決定します。KPIを設定する際に、「達成していたらどうするのか」「未達成だったらどうするのか」まで設計しておきましょう。KPI計画が承認された時点で次に行動を起こすこと自体は決定事項となり、その後の動きがスムーズになります。

なお、計測の際に気をつけたいのが、手段の目的化です。KPIはあくまでもKGIを達成するための中間目標であり、KGIを達成するための手段です。

例えば、あるスーパーが、人件費削減のために、「セルフレジの推進」というKPIを設定し、セルフレジを増設し、有人レジの台数を減らしました。セルフレジを使う買い物客は増えたものの、セルフレジの使い方を聞くために何度も従業員が呼ばれます。また、有人レジは長蛇の列となり、閉めていたレジを開くことも…。

このケースでは、目標は「人件費の削減」なはずです。しかし、「セルフレジの推進」というKPI「だけ」を見てしまうと、一見目標は達成できているかのように勘違いしてしまいます。手段が目的化しないよう、そして本来の目的を見失わないよう、最終的に達成したい目標を常に念頭に置きましょう。

システム開発のスケジュール遵守・品質維持の為にKPIは必ず設定する

以上、システム開発工程に不可欠なKPIについて解説しました。

KPIの策定は、システム品質やリリース後の品質改善、課題の絞り込みができるため非常に重要です。
逆を言えば、KPIの策定は開発工程に大きな影響を与えます。

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この記事を書いた人

編集部員 濵岸

編集部員の濵岸と申します。コンテンツ作成と取材を主に担当しております。身長が低いため学生時代は「お豆」と呼ばれていました!豆らしく、皆様の役に立つ記事を「マメに豆知識を!」の意識で作成します!どうぞよろしくお願いいたします!

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