MVP開発とは? 開発の流れやメリット・デメリットを解説
公開日:2023.11.16 最終更新日:2023.11.16
皆様の企業でMVP開発は実施されていますでしょうか?
MVP開発は、商品を開発する企業にとって非常に有益な手法とされています。
ビジネス環境が急速に変化している現代では、将来の予測が難しい状況です。
したがって、市場がどの製品を受け入れるかについても予測することは難しいです。
このような時代においては、素早くユーザーのニーズに適応できるMVPのような開発手法が求められます。
本記事では、MVP開発とは何か、その導入のメリットやデメリット、主な種類、そして開発のプロセスについて詳しく解説します。
MVP開発とは
MVP(Minimum Viable Product)は、ユーザーが価値を感じる必要最小限の機能を持つプロダクトのことです。
この手法では、必要最小限の試作品を開発し、リリース後にユーザーからの有効なフィードバックを収集し、繰り返し改善していきます。
リスクを最小限に抑えながら、ユーザーニーズに合わせて機能を追加したり、改善したりすることができます。
MVPを活用した方法を用いることで、効率的にユーザーニーズに応えた製品開発が可能です。
企業が成功するためには、優れた製品を開発し、それを継続して提供することが不可欠です。
しかし、多くの場合、時間と費用をかけて開発したにもかかわらず、市場での受け入れが芳しくないことがあります。
そのため、リスクを軽減し、ユーザーニーズを把握しやすいMVP開発手法が、スタートアップ企業から大企業まで広く導入されています。
プロダクト開発の失敗を避けるためにも、MVP開発のアプローチを理解しておくことは非常に有益です。
リーンスタートアップとの関係
「リーンスタートアップ」は、製品やサービスを開発する際に生じる無駄を削減し、失敗のリスクを最小限に抑えるマネジメント手法のことです。
最初の仮説検証段階では、たとえば自動車の一部の車輪を作っても、人はまだ移動できません。この段階での検証は不可能です。
したがって、ユーザーのニーズが本当にあるのかを確認するために、必要最低限の機能を備えた製品(Minimum Viable Product)を開発し、ユーザーの反応を評価します。
初期の仮説検証段階では、「移動できる最低限の何か」があれば十分です。
このようにしてMVPを定義し、検証・ユーザーの反応・検証を繰り返し、その都度、仮説の価値を検証します。
MVPは最小限の機能を備えた製品であり、仮説を検証し続ける手法として有効です。
PMFとの関係
PMF(Product-Market Fit)は、特定の市場における製品やサービスの最適な適合状態を指します。
具体的には、顧客の課題を解決する製品やサービスが提供され、それが適切な市場で受け入れられている状態のことです。
PMFの状態を達成するためには、以下のステップを踏む必要があります。
- 課題の発見と最適な解決方法の準備をし、PSF(Problem-Solution Fit)の状態を実現する。
- 最小限の機能を持つ製品を開発し、市場にリリースする。
- 仮説を検証し、製品を改善しながら、繰り返し市場のフィードバックを受け取り、PMFを目指す。
- PMFを達成できているかどうかを検証する。
PMFを実現するためには、MVPの開発と効果的な活用が不可欠というわけです。
通常のソフトウェア開発との違い
MVPを活用した開発は、最小限のコストで仮説を検証するために、製品の最小レベルを迅速に作成することを目指します。
ここでの焦点は、プロダクト全体の完成度ではなく、仮説検証に必要な機能が正しく実装されていることです。
通常のソフトウェア開発では、製品の完成度や品質を確保する必要があり、必要な機能の実装、UI/UX、セキュリティなどの要件を満たす必要があります。
バグは小さなものから大きなものまで修正されるべきです。
しかし、MVP開発と異なり、開発期間は長くなり、コストも大きくなります。
仮説が誤っていた場合や市場が変化した場合、プロダクトは失敗するリスクが高まります。
MVP開発のメリット
では、MVP開発の主なメリットを見ていきましょう。
メリット①ユーザー視点で開発できる
MVPを活用した開発は、ユーザー視点でアプローチできることが利点です。
プロジェクトの初期段階から顧客のフィードバックを取得し、継続的に仮説を検証することで、フィードバックの機会が増えます。
これにより、従来の開発手法と比べて、顧客のニーズを把握しやすくなり、顧客が求めるプロダクトを開発できるようになります。
また、顧客ニーズから外れたプロダクトを完成させるリスクも軽減できるでしょう。
現代のプロダクト開発では、顧客のニーズに適応できるかどうかが成功の鍵です。
その点で、MVP開発を採用することは重要であり、大きなメリットがあります。
メリット②少ないリソースで始められる
MVP開発は、初期に最低限の機能を備えた製品をリリースする手法です。
そのため、他のアプローチよりも少ないリソースで始められるという利点があります。
したがって、予算や人員の制約がある場合、特にスタートアップや新規事業部門などに適しています。
最初から多機能な製品を開発するには、初期段階から多大なリソースが必要ですが、MVP開発は最初に基本的な機能を持つ製品を開発し、段階的に機能を拡充していく手法です。
初期の製品は機能が制限されているため、開発に必要なコストや人員などのリソースを節約できます。
さらに、後続の製品も必要な機能を調査しながら効率的に開発できるため、最小限のリソースを活用して製品を効果的に完成させる手法と言えるでしょう。
メリット③開発期間が短い
MVP開発は、従来の開発手法よりも開発期間が短く、リリースが早いことも大きなメリットです。
通常はリリースまでの期間を2ヵ月以内に抑えることが目標とされます。
市場へのプロダクトの早期投入により、消費者の反応をすぐに受け取れ、競合他社よりも先を行く形で製品を提供でき、先行者利益を得て競争上の優位性を確立することが可能です。
メリット④PDCAサイクルを素早く回せる
MVP開発は、最小限の製品を早くリリースし、ユーザーからの意見や感想を聞いて、PDCAサイクルを速やかに回すことができる方法です。
通常の開発手法では、完成品をリリースするまでユーザーの意見を得ることができませんが、MVP開発では開発の初期段階からPDCAを実行できます。
これにより、修正や改良を素早く行い、市場の要求に合致した製品を効率的に成長させることが可能です。
なお、PDCAサイクルの「PDCA」は、以下を示しています。
- P : Plan(計画)
- D : Do(実行)
- C : Check(評価)
- A : Action(改善)
たとえば、フィードバックは、PDCAサイクルの中で「C(チェック)」の段階に位置します。
具体的なプランを立て(P)、その後、試験版をリリース(D)し、ユーザーからのフィードバックを受け取ります(C)。
受け取ったフィードバックを検証したら、次は「A(アクション)」の段階です。
ここで、不具合を修正し、良い点はそのまま残しながら改良を施します。
そして、再びリリースし、ユーザーの意見を取り入れるというサイクルを繰り返します。
このプロセスを迅速に進めつつ、確実な収益化を達成することを目指しています。
MVP開発のデメリット
MVP開発を実施する際に注意すべき点も確認しておきましょう。
デメリット①複雑な機能の開発に向いていない
MVP開発は、単純なアイデアを基に迅速にプロトタイプを作成するのに適しており、複雑な開発プロジェクトや多様な機能が必要な場合には向いていません。
MVP開発は迅速にリリースすることで、実際の価値を評価することができます。
開発に数ヶ月以上かかるような場合には、ウォーターフォール型の開発手法や他のアプローチを検討する方が良いでしょう。
それらの手法では、開発手順を段階的に確認しながら進めることができます。
デメリット②エンジニアのスキルに左右される
MVP開発に限りませんが、エンジニアがどれほどの専門的な知識や技術を持っているかによって、開発の進捗や成果が大きく変わってきます。
とくにMVPの開発プロセスでは、短期間でPDCAサイクルを迅速に回す必要があり、幅広いタスクを遂行する必要があります。
したがって、開発スキルだけでなく、ビジネスセンスやマネジメントスキル、コミュニケーション能力、さらに柔軟性や調整力も必要です。
適切なエンジニアがいない場合、MVPの開発はスムーズに進まず、推進が難しくなる可能性があります。
MVPキャンパスについて
MVPキャンパスは、MVP検証を効果的に行うための枠組みであり、仮説検証の内容を明確にする役割を果たします。
このフレームワークを使用することで、仮説検証の目標やMVPに組み込むべき機能を整理できるため、仮説を論理的に立てることが可能です。
MVPの実践において、曖昧なまま仮説検証を行うと、有益な情報を得ることが難しくなります。
したがって、事前に仮説検証の内容と手順を明確にしましょう。
MVPキャンパスを活用することで、必要な情報を整理し、効果的な仮説検証をスムーズに進めることができます。
MVPキャンパスは、「仮説」「目的」「方法」「データ・条件」「開発・制作」「コスト」「時間」「リスク」「結果」「学び」という10要素で構成されています。
MVP開発の種類
MVP開発には複数の種類がありますが、ここで主要な5つの種類の特徴を見ていきましょう。
種類①プロトタイプ
プロトタイプの場合、効果検証は試作品を使用して行います。
したがって、異なる利用シーンを検証する際には、それぞれのケースに適したデータや機能を用意する必要があります。
最近では、ノーコードやローコードという開発手法を使用して、プロトタイプを簡単に作成できるようになりました。
これにより、実際の製品の機能性やデザイン性をユーザーに評価してもらえます。
ただし、他の手法に比べて開発コストが高くなる可能性があります。
種類②スモークテスト
スモークテストとは、サービスへのユーザーの反応を検証するための特別なテスト手法です。
このテスト方法の代表的な例が、サービス紹介ビデオの使用です。
ユーザーが紹介ビデオを見て興味を示しているか、ユーザーの反応を即座に確認できます。この手法の代表的な例として、ファイル共有ツールのDropboxが挙げられます。
Dropboxは、公開した紹介ビデオが大きな反響を呼び起こし、一夜にしてベータテストの希望者が5千人から7万5千人に急増しました。
種類③コンシェルジュ
コンシェルジュは、サイトや製品を用意せずに、ユーザーから意見を収集する手法です。
つまり、対面でユーザーの意見を直接聞く方法のため、非常に正確な検証結果が得られます。
手作業やマニュアルを使用するため、コストを抑えながら、ユーザーの意見を直接取得できることがメリットです。
大規模なシステム開発などのプロジェクトでは、本格的な開発を始める前に、まずは人力での検証を行うという手法が取られることがあります。
種類④オズの魔法使い
オズの魔法使いは、ユーザーに画面だけを見せて操作してもらう手法で、実際にシステムは実装されていません。
担当者が裏でシステムの一部を操作し、システムが稼働しているように見せているのです。童話「オズの魔法使い」に出てくる、人々が恐れていた魔法使いが実はカーテンの後ろにいるおじいさんであったというストーリーから、この開発名がつけられました。
人間がシステムの一部を模倣して操作することにより、機能を新たに追加しなくても検証することができます。
種類⑤ランディングページ
ランディングページ(LP)は、製品の説明や価値、メリットを詳しく説明したウェブサイトです。
LPでは、興味を持っているユーザーが製品の詳細を確認し、商品を購入することができます。
また、ユーザーへのインタビューやフィードバックを通じて、製品の価値をより明確に把握することが可能です。
LPを通じて、提供する予定の製品・サービスに興味を持っている人の数やニーズを検証し、登録情報の顧客のプロフィールから、顧客層の特性を理解することができます。
MVP開発の流れ
ここでは、MVP開発の基本のプロセスについて解説します。
流れ①課題を設定する
まず、プロダクトやサービスにより、どのよう課題を解決したいか洗い出し、ゴールを設定します。
流れ②仮説を立てる
検証および評価する仮説を立てます。
同時に、必要最小限の機能について検討し、最も優先度の高い仮説に焦点を当てましょう。
明確な優先順位を設定することで、取り組むべき順序が明確になります。
流れ③MVPを開発する
必要な情報が揃った段階で、いよいよMVPの開発に取りかかります。
このプロトタイプは、ユーザーフレンドリーで魅力的なデザインであり、品質基準を下回ってはいけません。
できるだけ早くユーザーに解決策を提供するために、重要な機能にフォーカスすることが大切です。
流れ④フィードバックを得る
MVP(試作品)を実際にユーザーに提供し、実証実験などを行ってフィードバックを得ることで、プロダクトの改善を図ります。
流れ⑤プロセスを繰り返す
①から④までのステップを繰り返すことによって、製品をより多くのユーザーのニーズに適応させ、顧客満足度の向上を実現できます。
MVP開発のポイント
最後にMVP開発を成功へ導くポイントを3つ紹介します。
ポイント①検証の目的を明確にする
MVPを作成し、維持するには費用と時間がかかるため、検証したいポイントを明確にすることが不可欠です。
何を検証したいのかをはっきりさせないと、改善策を見つけるための意思決定ができません。
仮説を持つことで、検証すべき項目が明確になり、それに基づいてMVPの機能を絞り込むことができます。
これにより、低コストで短期間にサービスを開始することができます。
ポイント②要件定義を共有する
MVP開発を成功させるには、開発者との緊密な連携が不可欠です。
プロジェクトを開始する前に、アイデアや要件などを明確に定義し、開発者と共有することが最優先です。
明瞭なコミュニケーションを確保し、開発の進捗状況や課題を共有することで、プロジェクトを効率よく進行できます。
明確な機能要件とユーザー体験を定義することで、開発プロセスでの誤解を防ぐことができるでしょう。
さらに、プロトタイプを作成することで、開発者との意思疎通が円滑に行え、コミュニケーションツールの適切な活用によって、工数を効率的に削減できます。
具体的な要件を提供し、問題に対する対策を検討することも不可欠です。
そのため、定期的なミーティングを通じて進捗状況や課題を確認することが重要です。
ポイント③フィードバックを取り入れすぎない
初期の顧客、特にアーリー・アダプター層の意見には注意を払うべきですが、過度にフィードバックに依存しすぎないようにすることも重要です。
あまりにも多くのフィードバックを取り入れると、明確だった解決すべき課題に対するアイデアがぼやけてしまい、プロダクトの持続的な成長を妨げる可能性があります。
MVPの目的は、市場で最初のアイデアが受け入れられるかどうかを確認することであり、
最終的な目標は、市場で成功する製品に育て上げることです。
MVP開発を活用して市場優位性を確保
MVP開発は、最低限必要な機能を備えた製品やサービスを開発し、顧客の反応を元に改善を続ける手法です。
このアプローチは、ユーザーの視点に立脚し、少ないリソースで始められ、開発時間が短く、競合他社よりも早く製品を提供でき、競争上の優位性を持つことができます。
ただし、複雑な機能の開発には向いておらず、開発の成果はエンジニアのスキルや経験に左右されるというデメリットがあります。
自社にMVP開発に精通した人材がいなければ、経験豊富なシステム開発会社への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。
MVP開発に悩んだ際にはEMEAO!へのご相談を一度ご検討ください。
この記事を書いた人
編集部員 濵岸
編集部員の濵岸と申します。コンテンツ作成と取材を主に担当しております。身長が低いため学生時代は「お豆」と呼ばれていました!豆らしく、皆様の役に立つ記事を「マメに豆知識を!」の意識で作成します!どうぞよろしくお願いいたします!