ERPとは?パッケージ型や基幹システムとの違いなど詳しく解説
公開日:2024.08.21 最終更新日:2024.08.21
現代のビジネス環境では、企業の成長と効率的な経営のために情報を一元管理し、業務プロセスの最適化が欠かせません。このような課題を解決するために注目されているのが、ERP(Enterprise Resource Planning)です。
ERPは、企業のあらゆる資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元管理し、経営戦略の策定や意思決定を支援するシステムです。
本記事では、ERPとは何か、 種類や開発方法、導入メリット・注意点などを詳しく解説します。ERP導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ERPとは
企業の基幹業務プロセスを統合的に管理し、経営資源の最適化を支援するシステムです。財務会計や販売・在庫・人事管理など、企業活動における広範な業務領域を網羅し、一元的なデータ管理とプロセス連携を実現します。
ここでは、以下の項目についてさらに掘り下げます。
- ERPの背景や由来
- ERPが必要とされる理由
- 基幹システムとの違い
1990年代にERPとして確立され、現代のビジネス環境において重要な役割を果たしています。
ERPの背景や由来
ERPの概念は、1960年代に製造業の生産計画・在庫管理を効率化するための、MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)に端を発します。MRPは、製品の生産に必要な部品や原材料の所要量を計算し、適切な調達・在庫管理を行うことで、生産効率の向上とコスト削減を目指した手法です。
MRPはその後機能を拡張し、製造業以外の業務にも適用されるようになり、1990年代にはERPとして確立されました。ERPは、MRPの概念を基盤としつつ、財務会計・販売管理・人事管理など、企業活動におけるより広範な業務領域を統合的に管理するシステムへと進化しました。
ERPが必要とされる理由
グローバル化やデジタル化の進展に伴い、企業を取り巻くビジネス環境は複雑化の一途をたどっています。顧客ニーズの多様化やサプライチェーンのグローバル化・競争の激化など、企業はかつてないほどの変化と不確実性への対応を迫られています。
このような状況下では、変化への迅速な対応と競争優位性の確保が企業の重要課題といえるでしょう。ERPは、企業全体の情報を統合・分析することで、迅速な意思決定と業務プロセスの効率化を強力にサポートします。
顧客情報や販売実績・在庫状況などの一元管理で、需要予測の精度向上や在庫適正化を実現し、顧客満足度向上とコスト削減の同時達成が可能です。
基幹システムとの違い
ERPと基幹システムは、どちらも企業の基幹業務を支援するシステムですが、適用範囲が異なります。それぞれの違いについて、簡単にまとめました。
比較項目 | ERP | 基幹システム |
対象範囲 | 全体の業務を包括的にカバー | 特定の中核業務に特化 |
機能 | 財務や人事・生産・販売など広範囲 | 財務会計や販売管理・生産管理など |
特徴 | 業務のベストプラクティスを組み込む | 企業独自のプロセスに最適化 |
データ管理 | 全社的なデータを一元管理 | 部門ごとに独立して管理されることが多い |
カスタマイズ性 | 一般的には限定される | 高い(企業固有のニーズに対応) |
導入コスト | 比較的高い | 比較的低い |
ERPは企業全体を統合的に管理するのに対し、基幹システムは特定の業務に特化している点が大きな違いです。
ERPのおもな種類とそれぞれの機能
ERPは、その機能や導入形態によっていくつかの種類に分類されます。ここでは、代表的な4つの種類について解説します。
種類 | 特徴と機能 |
統合型 |
|
コンポーネント型 |
|
クラウド型 |
|
オンプレミス型 |
|
それぞれ詳しく見ていきます。
1つにまとめる統合型
統合型ERPは、企業のあらゆる業務プロセスを単一のシステムに統合し、一元管理するソリューションです。財務会計や販売・在庫・人事管理など、広範な業務領域を網羅し、部門間の連携を強化して、情報共有の促進を戦略的に実現します。
統合型ERPの導入により、データの一元管理による業務効率の向上、リアルタイムな情報共有による迅速な意思決定といった、多岐にわたるメリットが期待できます。一方、導入コストが高額になりやすい、カスタマイズの自由度が低いなどは留意すべき点です。
必要なものだけ組み合わせるコンポーネント型
必要な機能だけを選択して組み合わせられる、柔軟性の高いソリューションです。企業の規模や業種・業務内容に応じて最適な機能を選択し、段階的な導入を可能にします。
コンポーネント型ERPは、初期費用を抑えて必要な機能のみを導入できる点で、費用対効果の高い選択肢となります。一方で、システム間の連携が複雑化しやすい、統合型ERPと比較して機能が限定されるなどは、導入前に考慮すべき要素です。
クラウド型
インターネット経由でERPを利用する形態で、近年急速に普及が進んでいます。サーバーやソフトウェアなどのインフラを自社で保有する必要がなく、初期費用を抑えて導入できるのが大きな特徴です。
また、場所を選ばずにアクセスできるため、テレワーク環境にも適しています。さらに、ベンダーによる定期的なアップデートやセキュリティ対策も提供されるため、システム管理の負担を軽減できます。
たとえば、急成長中のスタートアップ企業が迅速かつ低コストでERPを導入し、事業拡大に対応したい場合は最適な選択肢となるでしょう。
オンプレミス型
自社内にサーバーを設置し、ERPを運用する従来型の形態です。セキュリティ面での安心感がある一方、サーバーの導入・維持費用やシステム管理者の確保など、運用コストが高額になる傾向があります。また、システムの拡張やアップデートにも手間がかかるため、変化の激しいビジネス環境への対応が難しい場合も。
オンプレミス型ERPは、高度なセキュリティを要する業界や、独自の業務プロセスを持つ大規模企業に適しています。また、法規制などの理由でデータを自社内で管理する必要がある企業にとっても、有力な選択肢となるでしょう。
ERPの開発方法と特徴
ERPシステムの開発方法は、企業のニーズや予算、時間的制約などによって選択されます。おもな開発方法として、以下の3つがあります。
- パッケージ型
- フルスクラッチ型
- オープンソース型
詳しく見ていきます。
パッケージ型
あらかじめ開発されたERPソフトウェアを導入するアプローチです。導入プロセスが簡素化されており、短期間でのシステム稼働を実現できます。また、開発コストが抑制できるため、予算に制約のある企業にとって魅力的な選択肢です。
パッケージ型ERPは、多くの企業で共通する業務プロセスに対応できるよう、汎用的な機能を備えています。ただし、自社の業務プロセスとの適合性を精査し、必要に応じてカスタマイズする必要があります。
フルスクラッチ型
企業独自の業務プロセスに合わせて、システムをゼロから開発するアプローチです。自社の業務フローに最適化されたシステム構築が可能となり、競争優位性の獲得や、業務効率の大幅な改善、さらには将来的な拡張性も確保できます。
しかしながら、開発期間が長期化し、それに伴いコストも増大する傾向も。また、高度な技術力と専門知識を要するため、経験豊富なエンジニアチームの確保や、開発プロジェクトの適切な管理が求められます。
オープンソース型
ソースコードが公開されているERPソフトウェアを導入するアプローチです。パッケージ型ERPと比較して柔軟なカスタマイズ性で、自社独自の要件に対応できるのが特徴です。さらにライセンス費用が不要なため、コスト効率にも優れています。
ただし、導入やカスタマイズには専門的なスキルが求められる場合があります。また、ベンダーサポートが限定的となる場合もあるため、導入前の慎重な検討と、技術的なサポート体制の確保が重要です。
ERPを導入するメリット
ERPの導入は、企業の成長と発展に不可欠な、さまざまなメリットをもたらします。ここでは、4つのメリットについてお伝えします。
- 情報を一元管理できる
- 業務効率化や標準化につながる
- 内部統制を強化できる
- リアルタイムで経営状況を可視化
これらのメリットは企業規模や業種を問わず、多くの組織にとって有益です。
情報を一元管理できる
情報の一元管理は、業務効率の大幅な向上をもたらします。従来は各部門で個別に管理していたデータを、ERPシステム上で統合的に扱えるようになるためです。これにより、データ入力の重複作業が削減され、人的ミスも減少します。
また、一元管理された情報は、部門を超えた分析や活用を容易にします。営業部門の販売データと生産部門の在庫データを組み合わせることで、需要予測の精度が向上し、適切な在庫管理が可能です。
さらに、情報セキュリティの観点からも、一元管理のメリットは大きいといえます。アクセス権限の一括管理やデータの暗号化など、統一されたセキュリティポリシーの適用が容易になります。
業務効率化や標準化につながる
ERPシステムの導入で、企業の業務プロセスが標準化され、効率化が進みます。これにより、各部門間の連携がスムーズになり、情報の一貫性が保たれます。また、手作業で行われていたプロセスの多くが自動化されるため、ミスが減少して生産性が向上するでしょう。
標準化されたプロセスは新しい従業員の教育を容易にするため、業務の引き継ぎも円滑に行えます。結果として全体の業務が統一され、企業全体の効率が高まります。
内部統制を強化できる
ERPシステムは、業務プロセスの監視と適切な権限管理を通じて、企業の内部統制を強化します。不正行為の防止やコンプライアンスの徹底が可能となり、企業の透明性と信頼性が向上します。
内部統制の強化はリスク管理を支え、持続可能な成長を促進する重要な要素です。ERPによる適切な統制は、企業の信頼性を高め、ステークホルダーからの評価を向上させます。内部統制の強化は、企業の長期的な発展に不可欠な取り組みといえるでしょう。
リアルタイムで経営状況を可視化
ERPは企業全体のデータをリアルタイムに収集・分析し、経営ダッシュボードなどで可視化します。売上実績や利益率、在庫回転率などの主要業績評価指標(KPI)を、視覚的に分かりやすいグラフやチャートでの表示が可能です。
この機能により常に最新の経営状況を把握し、迅速かつ的確な意思決定を下せます。リアルタイムな経営状況の可視化は、競争優位性の確保や市場の変化への迅速な対応、そして戦略的な経営の実現に大きく貢献します。
ERPを導入する際の注意点
ERPシステムの導入は多くのメリットをもたらす一方で、以下の注意点も存在します。
- 最適なERPシステムの選択が難しい
- 導入・保守コストがかかる
- 業務フローの再構築が必要
- 従業員への説明や指導が必要
これらの点に十分な配慮を払わないと、ERPの導入が期待どおりの成果を生まない可能性があります。
最適なERPシステムの選択が難しい
ERPシステムは、市場に多種多様な製品が存在し、それぞれ機能性や拡張性・費用対効果などが異なります。そのため、自社の業務プロセスや規模・業界特性、将来的なビジョンなどを総合的に考慮し、最適なERPシステムの選定が大切です。
選定プロセスにおいてはデモやトライアルなどを活用し、各システムの機能性や操作性・サポート体制などの比較検討がおすすめです。また、自社のIT戦略との整合性・将来的な拡張性、ベンダーの長期的なサポート体制なども考慮すべき重要な要素となります。
導入・保守コストがかかる
ERP導入には、初期費用(ライセンスやハードウェア費用、導入コンサルティング費用など)に加え、導入後の保守費用や運用費用も発生します。とくに、カスタマイズやアドオン開発が必要な場合は、追加費用が発生する可能性があります。
導入前にこれらの費用を詳細に見積もり、予算計画を綿密に策定することが重要です。また、長期的な視点でシステムの陳腐化やバージョンアップに伴う費用、さらには潜在的なリスクに対する費用なども考慮し、包括的な予算管理を行う必要があります。
業務フローの再構築が必要
ERP導入は、既存の業務フローを見直し、再構築する機会となります。ERPの標準機能に合わせた業務プロセスの最適化で、業務効率化・標準化・内部統制強化などを実現できますが、従業員の抵抗や混乱を招く可能性も。
導入前に現状の業務フローを詳細に分析し、ERP導入による影響を評価する必要があります。また、従業員への丁寧な説明と理解促進を図り、意識改革を促すことがスムーズな移行とERP導入の成功に不可欠です。
従業員への説明や指導が必要
ERP導入は、従業員の業務遂行方法や役割に大きな影響を与える可能性があります。そのため、導入前に従業員に対してERP導入の目的やメリット、新しい業務フローなどを体系的に説明し、理解と協力を得ることが重要です。
さらに、ERPの操作方法やデータ入力方法などのトレーニングを実施し、従業員のスキル向上を支援する必要があります。また、導入後も継続的なサポート体制を構築し、従業員からの質問や相談に迅速に対応することで、ERPの円滑な運用と定着を促進できます。
まとめ:ERPシステムの導入や開発は専門家への相談が最適
ERPは企業の成長を支援する強力なツールですが、導入には最適なシステム選定やコスト管理、業務プロセスの再構築・従業員教育など、専門知識と経験が不可欠です。
これらの課題を乗り越え、自社に最適なERPを構築するには、ERP導入経験豊富な専門家への相談が最適です。専門家は、企業の現状分析から導入計画策定・運用サポートまで、導入プロセス全体を総合的に支援します。
ERP導入は企業の未来を左右する重要な決断です。専門家と連携してERP導入を成功させ、企業価値の最大化を実現しましょう。
この記事を書いた人
hata