移動時間は労働時間?勤怠管理システム利用に役立つ知識
公開日:2019.12.23 最終更新日:2020.09.10
「今まで“なあなあ”で済ませてきたけど、出張の移動時間って労働時間に該当するの?」
「今まで“なあなあ”で済ませてきたけど、朝礼や着替えの時間は労働時間に該当するの?」
勤怠管理システムで細かく労働時間が管理できるようになったことで、今まで“なあなあ”で済まされてきた時間についても、労働時間に該当するか否かを判断する必要が出てきました。
上記のようなケースを労働時間と見なすかどうか、気になっている事業者様も多いことと思います。
そこで今回は、今まで“なあなあ”で済まされてきた移動時間や朝礼、着替えといった時間について、労働時間に該当するかどうかをご紹介します。
そもそも“労働時間”とは?
「労働時間」とは、「監督者もしくは使用者の指揮命令下におかれ、労働に服する時間」とされています。
労働時間には4つの区分がある
労働時間には、以下のような4つの区分があります。
法定労働時間 労働基準法で定められている労働時間(週40時間、1日8時間以内)
所定労働時間 会社が法定労働時間内で自由に定めることが可能な労働時間
実労働時間 監督者の指揮命令の下で実労働している時間(休憩時間は含まない)
拘束時間 実働時間と休憩時間を合わせた時間
当記事におけるテーマ「これは労働時間か否か問題」は、主に実労働時間と拘束時間との線引きが曖昧なものや、そもそも性質的に線引きの難しいものが対象となります。
以下にそれぞれをご紹介します。
出張時の移動時間は労働時間?
出張時の移動時間は、基本的に労働時間にカウントしません。
法令における見解では、「出張」とは「出張先で業務を行うこと」が目的であるため、これにかかる移動時間は、通常の「出勤」における移動時間と同じとされています。
物品の運搬を目的とした出張は、例外的に労働時間
ただし、物品(貴金属や有価証券、機密書類、現金など)の運搬を目的とした出張は、例外的に労働時間とみなされます。
なぜなら、「物品の管理義務」が移動時間中において生じているため、これを指して業務(労働に従事している)と考えられるからです。
業務の準備行為は労働時間?
業務の準備行為は、ざっくり言うと、参加が強制である場合は労働時間に該当し、任意である場合は労働時間に該当しません。
ここでいう「業務の準備行為」とは、例えば、作業着への着替えや、保護具などの装着、始業前における機械の点検、整備、注油作業、朝礼、洗身などを指します。
これらの線引きは非常に曖昧で、企業側はこれらを従業員に課す際は注意が必要です。
三菱重工業長崎造船所事件(最高裁平成12年3月9日判決)
業務の準備行為が労働時間か否かに関する裁判例(最高裁平成12年3月9日判決)を、1件ご紹介いたします。
三菱重工業長崎造船所事件(最高裁平成12年3月9日判決)では、作業準備や装具の装着などといった時間が労働時間に該当するかどうかが争われ、最終的には以下のような見解が裁判所から出されました。
就業行為を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ,又はこれを余儀なくされたときは,当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても,当該行為は,特段の事情のない限り,使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ,当該行為に要した時間はそれが社会通念上必要と認められるものである限り,労働基準法の労働時間に該当する
引用:最高裁判所判例集
この判決では、「作業服の着脱時間は労働時間ではないが、作業服に加えて保護具、工具などの着脱まで要求したこと、そしてそれらを会社内の所定の場所で行わせたこと」が、これを労働時間だとみなす決定的要因となりました。
仮眠時間は労働時間?
建物の管理会社などの従業員については、仮眠時間は労働時間だとみなされます。
なぜなら、法令における「休憩時間」とは、「当該時間に労働者が労働から離れることを保障されること」を持って定義づけられるからです。
そのため、実質的に、警報や電話が鳴った際の対応を義務付けられている「待機時間」である場合は、例えそれが仮眠時間や昼休みといった名目であっても、労働時間だとみなされます。
労働時間とみなすか否かの線引きは、拘束時間における実労働時間と休憩時間の線引きが主な論点
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、移動時間は労働時間かといった、勤怠管理システム利用に役立つ労働時間について、詳しくご理解いただけたと思います。
労働時間とみなすか否かの線引きは、拘束時間における実労働時間と休憩時間の線引きが論点になることが多いようです。
そのため、企業は従業員の勤務時間を適切に把握することがまず重要となります。
勤怠管理システムでは、出張やシフト制、夜勤など、もろもろの勤務形態に対応することができ、上記のような「出張」における実労働時間などにも容易に把握することができます。
実労働時間の把握、および集計に苦心していらっしゃる事業者様は、ぜひEMEAO!のコンシェルジュにご相談ください。
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この記事を書いた人
編集部員 M・S
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