業務用エアコンとビル用マルチエアコンの3つの違い
公開日:2021.03.25 最終更新日:2024.07.11
今回の記事では、業務用エアコンとビル用マルチエアコンの違いについて説明します。
どちらのエアコンを設置すべきかわからないという事業者様は、ぜひご覧ください。
マルチエアコンとは?
マルチエアコンとは、1台の室外機で容量が違う複数の室内機を、個別に運転できる機器を指します。
特徴は、全室内機の合計機器容量が、室外機の機器容量であること。
たとえば1台の室外機が馬力10だとして、5つの室内機とつながっている場合、5つの室内機の合計馬力が10までということになります。
5つの室内機は、運転中と停止中を自由に選択できるため、使っていない部屋でもエアコンを動かさなければならない、といった無駄がありません。
また、機種によっては室内機を「天井埋込型」や「壁掛け型」、「床置き型」などから自由に選ぶことも可能。
主に使われているのはオフィスやホテル、病院、介護施設などで、部屋ごとにエアコンの運転調節が必要な建物です。
マルチエアコンのメリット
マルチエアコンには、通常の家庭用や業務用エアコンとは違うメリットがいくつかあります。
以下の5つが、マルチエアコンのメリットです。
マルチエアコンのメリット
- 複数の部屋を1台の室外機でまかなえる
- 種類や組み合わせの自由度が高い
- すぐに暖かい空気がでる
- 導入費用が安い
- 床暖房やパネルヒーターとの接続が可能な商品もある
それぞれの詳細を、紹介します。
メリット①複数の部屋を1台の室外機でまかなえる
業務用エアコンや家庭用エアコンは、1台の室外機に1台の室内機がペアで動きますが、マルチエアコンは、室外機1台に対して最大5台の室内機をつないで使えます。
建物の周辺に数多くの室外機があれば、見た目の美しさはどうしても低くなるでしょう。
せっかく好みにまとめた外観も、ごちゃごちゃとして見えるうえ、メンテナンスも大変です。
そこで、マルチエアコンを使えば、外観を損ねることなくすっきりとおさまります。
さらに、室外機を設置するために多くの場所も不要なうえ、室外機と室内機をペアで設置するよりもコストがかかりません。
メリット②種類や組み合わせの自由度が高い
マルチエアコンは、室内機を自由度高く選べるため、場所にあった室内機の設置が可能です。
たとえば、和室には和室壁埋込型タイプ、リビングや寝室にはすっきりした壁掛け型や天井埋込型タイプなど、デザインやタイプを好みで選べます。
インテリアを邪魔しないため、ホテルや会議室などにも、存在感を消しながらの気温管理が可能で便利です。
メリット③すぐに暖かい空気がでる
冬場は、室外機を温めるのに時間がかかるため、エアコンから温風が出るまでに時間がかかります。
運転開始から部屋が暖かくなるまでに、時間がかかることが不満な方もいるでしょう。
しかしマルチエアコンであれば、その待ち時間は不要です。
すでに1台の室内機が温風を出している場合、そのほかの室内機は、スイッチを入れるだけですぐに温かい風が出てきます。
室内機のどれでも1つが稼働していれば、他の室内機も同じようにできることは、大きなメリットでしょう。
メリット④導入費用が安い
多くの方が驚くメリットの1つに、マルチエアコンの導入費が安いという点があります。
導入費が安く済む理由は、室外機が1台で済むから。
5台のエアコンを設置する場合、それぞれに室外機がある場合と比べると、大幅に費用を抑えられます。
また、電源は室外機に直接分配されるため、室内機側に専用のコンセントを取り付ける必要がありません。
見た目もすっきりできるうえ、室内機それぞれのためのコンセント造設工事も不要で、その分の費用も浮きます。
メリット⑤床暖房やパネルヒーターとの接続が可能な商品もある
メーカーによっては、エアコンのみならず、床暖房やパネルヒーターと接続できる商品もあります。
部屋全体の温度はエアコンで調節し、暖まりにくい床は床暖房で温めるといった使い方です。
室内温度や状況に合わせ、さまざまな空調設備を一緒に使用できます。
マルチエアコンのデメリット
マルチエアコンは、メリットだけでなくデメリットもあります。
導入後に、こんなはずではなかったと後悔せずに済むように、デメリットも必ず確認しておきましょう。
代表的なデメリットは以下の5つです。
マルチエアコンのデメリット
- 同時運転で能力が落ちる
- 室外機が故障すると全ての部屋で使用できない
- 電気代が高くなる場合がある
- 機種の選択肢が少ない
- 電気工事が必要
デメリット①同時運転で能力が落ちる
室外機と室内機が、それぞれにペアのエアコンに比べると、やはり室外機1台で運転することは負担がかかります。
そのため、複数の室内機を同時に運転すると、冷暖房能力は低下します。
最近の日本では、真夏の気温が高くなりますが、室外機が熱くなっていると余計に負担がかかるもの。
さらに、複数の室内機を同時にハイパワーで運転しようとすれば、室外機の負担は相当のものです。
快適な室温になるまでに時間がかかるうえ、あまり冷えないとか暖かくないといったことになるかもしれません。
関連記事:業務用エアコンの同時運転と個別運転はそれぞれ何が違うのか
デメリット②室外機が故障すると全ての部屋で使用できない
1つの室外機で全てをまかなっているため、そのメリットは当然デメリットにもなり得ます。
室外機が故障してしまうと、全ての室内機も使えなくなってしまうのです。
室外機の交換となると、当然室内機も買い替えが必要です。
そのため、室外機の故障では、経済的な負担がかなり大きくなります。
トラブル時の負担が過大であることは、大きな痛手となるでしょう。
また、急なトラブルなら仕方ありませんが、劣化による買い替えや入れ替えを検討している場合は、春や秋などエアコンなしでも快適に過ごせる季節で日程を決めましょう。
真夏や真冬では、いくつかの都合で作業が遅れると大変なことになります。
デメリット③電気代が高くなる場合がある
マルチエアコンは、一般的なペアエアコン(室外機と室内機が1台ずつペアになっているエアコン)に比べると需要が少ないため、省エネ基準が低いという事実があります。
省エネの成績係数は「COP」という英文字で表されるので、導入前にたしかめてみてください。
そして、需要が少ないため開発に力を入れられず、新作の発表も数年に1回程度。
つまり、省エネも一般的なエアコンに比べると劣るため、電気代の負担も高くなるのです。
また、一般的なエアコンの電源は100Vですが、マルチエアコンの電源は200Vです。
このことからも、マルチエアコンは電気代が高くなることがわかります。
たとえば、夏場にマルチエアコンで6畳の部屋と8畳の部屋の2つを冷やす場合、一般的なエアコン2台分の方が電気代は安いもの。
そのため、ある程度大きな建物での使用でなければ、マルチエアコンのメリットを感じにくいでしょう。
デメリット④機種の選択肢が少ない
前述したように、マルチエアコンは需要が少ないため、限られたメーカーからしか発売されていません。
そのため、導入するときに、さまざまなメーカーから性能やデザインで選ぶということができないのです。
商品が少ないため、価格競争も激しくなく、その点に不満を抱える方もいます。
デメリット⑤電気工事が必要
マルチエアコンは、室内機に専用コンセントは不要ですが、室外機には専用コンセントが必要です。
つまり、野外に電源がなければ、工事をして室外機専用の電源確保をしなければなりません。
もし電源の確保がスムーズにできない場合、ブレーカーまでの電気工事や配管工事が必要です。
その分のコストや時間も、別にかかります。
業務用エアコンとビル用マルチエアコンの違いとは
業務用エアコンとビル用マルチエアコンは混同されがちですが、厳密には違います。
大きく分けて3つの違いがあるため、それぞれ見比べていきましょう。
なお、業務用エアコン・マルチエアコンの設置にかかる費用については、以下の業務用エアコンの種類別費用相場をご覧ください。
違い①設置対象
業務用エアコンとビル用マルチエアコンの違いは、設置される場所が異なります。
業務用エアコンの場合、一般的に店舗や事務所などが設置対象になっています。
ビル用マルチエアコンの場合は、3000㎡以上の建物を対象に設置する空調システムのため、主にホテル・病院・大型オフィスビルなどで使用されることが多くあります。
違い②システムの目的
業務用エアコンとビル用マルチエアコンの2つ目の違いは、システムそのもの目的が大きく異なる点が挙げられます。
業務用エアコンは、全てのエアコンが同時運転することができる空調システムです。
ビル用マルチエアコンは、部屋ごとに運転調整することができる空調システムとなっています。
ホテル・病院などではビル用マルチエアコンによって、個室ごとに温度設定をすることで個別に快適な環境を作ることができます。
違い③機能の特徴
業務用エアコンとビル用マルチエアコンの違い3つ目は、それぞれ機能面での特徴に違いがあります。
業務用エアコンの機能
業務用エアコンの機能は、変則的な形の部屋や広い空間をムラなく冷暖房することが可能です。
業務用エアコンは、室外機を電源に接続し室外機から室内機に送電する仕組みになります。
室外機に出力を制御する膨張弁があるため室内機側で出力を調整することはできません。
ビル用マルチエアコンの機能
ビル用マルチエアコンの機能は、同じ空間でも窓側と廊下側で運転状態をアレンジすることができるのも特徴の1つといえるでしょう。
ビル用マルチエアコンでは、室内機と室外機にそれぞれ別の電源が使用されており、室内機が個別に動くようになっています。
さらに、室内機には出力を制御できる膨張弁がついているため、いろいろな種類を選択することができるのです。
業務用エアコンの種類
業務用エアコンには、複数の種類があります。
室内機の形状や用途に合わせて、さまざまなタイプがあるのですが、その中でも代表的な6種類を紹介しましょう。
業務用エアコンの種類
- 天井埋込型
- ビルトイン型
- ダクト型
- 天井吊型
- 壁掛型
- 床置型
天井埋込型
天井埋込型は天井に穴を開け、天井裏に本体を設置して使う業務用エアコンです。
広い空間のエアコンとして活躍します。
特徴は、天井に埋め込んでいるため、すっきりとした外見になること。
そして埋込型には、さらに吹出口の数に応じた以下の4タイプがあります。
関連記事:埋込型業務用エアコンが持つ2つの特徴と代表的な機種
4方向天井埋込型
吹き出し口が4つあるタイプで、正方形のエアコンです。
4方向から送風できて効率的で、送風が届かないといったスペースがありません。
基本的には950mm×950mmのサイズが標準ですが、700mmから760mmのコンパクトなサイズも展開しています。
2方向天井埋込型
吹出口が2方向のタイプで形は長方形のため、長方形の部屋によく使われています。
オフィスにある照明ラインと調和しやすくなっているうえ、インテリアにマッチするパネルも選択可能です。
1方向天井埋込型
吹出口は1方向だけですが、吹き出し口方向の選択が可能です。
部屋のコーナーや下がり口などに最適な形をしており、下がり天井でも設置できます。
4方向ラウンドフロー
360度からムラなく送風できるタイプで、天井にスペースが取れないところでも設置できます。
工事費は高くなりますが、これ1台で済むため、狭い店舗やミニショップでよく使われています。
ビルトイン型
室内機を天井の中に設置し、本体の吸いだし口だけを天井から露出させたタイプです。
吹き出し口を分散設置できるため、間取りが特殊なお店でも対応可能。
インテリアを邪魔せずに、快適な風を送ることができます。
ダクト型
室内機をすべて天井に隠し、本体からダクトで吸い込み口と吹き出し口をつなぐタイプです。
こちらも、天井に設置します。
部屋のインテリアに合わせて配置も自由度が高いですが、部品や工事費は他よりも高めになってしまうでしょう。
何よりも、インテリアを重視したいという方におすすめです。
関連記事:ダクト型業務用エアコンが持つ2つの特徴と代表的な機種
天井吊型
天井吊型は、天井から吊り下げるタイプの業務用エアコンです。
埋込型と違って、天井に穴を開ける必要がないため、工事費は比較的安価。
長方形の部屋では使い勝手がよく、遠くまで送風できます。
関連記事:天吊り型業務用エアコンが持つ2つの特徴と代表的な機種
壁掛型
壁掛型は、家庭用エアコンと同じく壁に設置するタイプです。
業務用エアコンの中では最もお金がかからないタイプのため、工事費や本体代などのコストを軽減したい方にはおすすめ。
また、メンテナンスも簡単です。
なお、風量は家庭用に比べて強いのですが、風を遠くまで届かせることはできません。
小さな事務所や、応接間などで使われています。
関連記事:壁掛け型業務用エアコンが持つ4つの特徴と代表的な3つの機種
床置型
昔の飲食店などでよく使われていたタイプで、床に直接設置する業務用エアコンです。
6馬力まではコンパクトな商品もあり、省スペースで設置も可能。
施工性や操作性、サービス性に秀でています。
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今回は、業務用エアコンとビル用マルチエアコンの3つの違いについて解説しました。
業務用エアコンとビル用マルチエアコンでは、設置対象やシステムの目的・機能に違いがあります。
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この記事を書いた人
竹中 崇紘
EMEAO!編集部員の竹中です。EMEAO!前身サービスのBtoBお問い合わせメディアの営業責任者を経て、 現在はEMEAO!のWebコンテンツの作成を担当しています。 営業で培った経験を活かし、皆様にとって実のある情報を発信していきます!よろしくお願いします。