プライバシーマークとは?取得方法やメリットなどを解説
公開日:2023.11.12 最終更新日:2023.11.12
自社の信頼度の向上を目的に、プライバシーマーク(Pマーク)の取得を考えている企業もあるでしょう。プライバシーマーク制度は個人情報保護の意識向上を目的に制定されたもので、2023年9月時点で17,000社以上が認証を取得しています。
本記事ではプライバシーマーク制度の概要や取得方法に加え、メリットとデメリットなども解説します。
認証を検討している企業の方は、ぜひ最後までご覧ください。
プライバシーマーク制度とは
プライバシーマーク制度は、日本産業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム―要求事項」の基準に適合した事業者に与えられる制度です。
取得すれば事業活動に関してプライバシーマークの使用が可能となるため、企業の信頼向上につながります。
取得対象は国内に活動拠点を持つ事業者で、法人のみが対象です。ただし医療法人や学校法人など、一部例外もあります。
なお、プライバシーの付与に関する規格は下記のページで閲覧できます。自社が欠格事由に該当しないか、申請する前に確認しておきましょう。
プライバシーマークを取得するメリット
プライバシーマークを取得するメリットは、大きく分けて以下の3つです。
- 顧客や取引先への信頼向上
- 個人情報保護意識の向上
- 官公庁や自治体との取引の拡大
1つずつ詳しく解説します。
顧客や取引先への信頼向上
プライバシーマーク制度を取得することで、顧客や取引先への信頼向上が期待できます。
プライバシーマークは、第三者機関により厳しい審査をクリアした企業にしか付与されません。多くの個人情報を取り扱う企業にとって、個人情報の管理は重要な課題です。個人情報が漏洩したことで、信用失墜へとつながるケースもあります。
プライバシーマークは個人情報保護に対する意識の高さを社外へアピールできるため、自社の信頼向上へとつながります。
個人情報保護意識の向上
プライバシーマーク制度の取得は、社員の個人情報保護に対する意識の向上にもつながります。プライバシーマーク制度を取得するためには、企業全体の個人情報保護に対する体制やルールの整備が必要です。
そのため取得プロセスを通じて、社員の個人情報保護に対する意識が高まります。社員一人ひとりの意識が向上することで、情報漏洩のリスクを低減できます。
官公庁や自治体との取引の拡大
プライバシーマーク制度の取得は、官公庁や自治体との取引拡大も図れます。なぜなら官公庁や自治体によっては、入札や受託の条件の1つとしてプライバシーマークの取得を指定するケースがあるためです。
もし委託先の企業が原因で個人情報が漏洩したとなれば、委託した官公庁や自治体も責任を問われるでしょう。
プライバシーマーク制度を取得すれば、プライバシーマーク制度の取得を要求する官公庁や自治体とも取引できるため、機会の拡大につながります。
プライバシーマークを取得するデメリットや注意点
プライバシーマークを取得するデメリットや注意点は、大きく分けて3つです。
- 費用と手間がかかる
- 2年毎に更新手続きが必要になる
- 業種によっては取得するメリットが小さい
それぞれ詳しく解説します。
費用と手間がかかる
プライバシーマークを取得するためには、下記のように多くの手間を要します。
〜プライバシーマークを取得するための流れ〜 社内担当者を選出する→マネジメントシステムの構築→システムの運用(3か月ほど)→プライバシーマークを申請する→審査が入る→審査通過→プライバシーマークの付与 |
制度取得まで平均7〜8か月と、期間が長い点にも注意が必要です。
また審査費用に加え、コンサルティング(サポートを受ける場合)やシステム変更に伴う諸費用などもかかります。手間と費用を考慮して、それでもメリットが上回るようであればプライバシーマークの取得を検討してみましょう。
2年毎に更新手続きが必要になる
プライバシーマークは取得したら終わりではなく、2年毎の更新手続きが必要です。プライバシーマークを維持するためには、更新審査に合格しなければなりません。
また更新の申請は、有効期限満了日の4〜8か月前までです。更新できない場合は新規申請からやり直しになるため、早めの準備が必要です。
業種によっては取得するメリットが小さい
プライバシーマークの取得は、業種によっては取得するメリットが小さい場合もあります。
プライバシーマーク制度は、個人情報保護に関する制度です。そのため取り扱う個人情報が少ない業種は、取得するメリットが小さくなります。たとえばtoBの取引が中心の法人などは、toCがメインのサービス業などと比べると取り扱う個人情報の数が少なくなります。
プライバシーマーク制度はすべての事業者に対してメリットがある訳でななく、業種によっては取得するメリットが少ないことも把握しておきましょう。
プライバシーマークの取得は意味がない?
プライバシーマーク取得のデメリットや注意点を聞いて、「プライバシーマークの取得は意味がないのでは?」と考える方もいるでしょう。
たとえば以下のような企業であれば、プライバシーマークの取得を見送るのも1つの手です。
- すでに社内で個人情報保護に対してのルール化ができている
- 手間と費用によるコストが取得メリットを上回る
- 『JIS Q 15001』の要求事項に該当していない
またプライバシーマークを取得している企業の中には、運用体制の確立ができたことを理由に更新をやめるケースもあります。
とはいえ、プライバシーマーク制度の取得は決して意味がない訳ではありません。現に取得事業者数は右肩上がりで、近年は毎年5%程度の増加率で推移しています。
プライバシーマークの取得は信頼向上や競合他社との差別化、官公庁や自治体との取引拡大などメリットも多くあります。
上記の理由から「プライバシーマークの取得は意味がない」とは断言できません。メリットとデメリットを比較した上で、取得するか検討すべきでしょう。
プライバシーマークの取得企業を確認する方法
プライバシーマークの取得企業は、下記のページから簡単に確認できます。
事業者名称もしくは登録番号を検索窓に入力すれば、対象の事業者情報を確認可能です。また都道府県や五十音順など、条件を細かく指定して検索もできます。
プライバシーマークの取得方法
プライバシーマークの取得方法は、以下の通りです。
- 取得計画を立てる
- 必要文書を取り揃え申請する
- 認証審査を受ける
- 証明書が発行される
では、それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。
取得計画を立てる
まずはプライバシーマークを取得するための計画を立てましょう。取得計画で盛り込むべき項目は、おもに以下の通りです。
項目 | 概要 |
担当責任者 | プライバシーマーク取得プロジェクトの責任者を選出 |
取得期日 | いつまでに取得するか具体的な期日を決める |
審査機関の選定 | プライバシーマーク指定審査機関から自社に合ったものを選定 |
コンサルティング会社 | コンサルティング会社のサポートの有無を決める |
上記をもとに取得計画ができたら、プライバシーマークの取得に必要な書類の準備にとりかかりましょう。
必要文書を取り揃え申請する
プライバシーマークに必要な文書や記録は、下記のページから確認できます。
申請する審査機関によっては、一部書類が異なるため注意しましょう。JIPDECに申請する場合は、申請書類の他に登記事項証明書や定款の写しなども必要です。
また申請するにあたっては、下記3つの条件を満たしていなければなりません。
- 申請事業者の社会保険・労働保険に加入した正社員(または登記上の役員)が2名以上いること
- 個人情報保護マネジメントシステム構築・運用指針に基づいた個人情報保護マネジメントシステム(PMS)を定めていること
- 個人情報保護マネジメントシステム(PMS)に基づき実施体制の整備および個人情報の適切な取り扱いができていること
プライバシーマークの審査では、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の運用体制が重要となります。申請する際にはしっかりと体制を整えておきましょう。
認証審査を受ける
プライバシーマークの審査は、下記のように「形式審査・文書審査・現地審査」の3つに分かれています。
審査の種類 | 概要 |
形式審査 | 提出書類の不備を確認する |
文書審査 | 提出書類がプライバシーマーク付与の要求事項に則っているか確認する |
現地審査 | 規程に則りPMSが運用されているか審査員が現地で確認する |
なお文書審査で引っかかった項目は、現地審査までに修正が必要です。おおむね現地審査の2〜3週間前には通知されるので、引っかかった場合は早急に改善しましょう。上記3つの審査を経て、すべて問題なければプライバシーマークが付与されます。
証明書が発行される
認定審査を通過すれば、「認証書」という形でプライバシーマーク取得の証明書が発行されます。ただし、登録にあたっては付与登録料を納付しなければなりません。
新規登録の場合の付与登録料は、会社の規模により5万円から20万円程度です。また付与登録料とは別に、申請料や審査料も必要です。
総額で小規模事業者なら30万円程度、中規模から大規模事業者なら60〜120万円程度かかるので注意しましょう。
まとめ:プライバシーマークを取得して信頼向上を図ろう
プライバシーマーク制度は個人情報保護の意識向上を目的に策定された制度で、取得することで自社の信頼度向上につながります。
プライバシーマークを取得するためには、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の運用を確立し、認定審査に合格しなければなりません。
ただし個人情報の扱いが少ない業種などは、取得するメリットを感じにくい点もあります。取得までの手間と費用を考慮し、取得コストが無駄にならないようにしましょう。
この記事を書いた人
hata