ISO認証を自力で取得する方法とは?審査費用や期間を解説
公開日:2024.01.24 最終更新日:2024.01.24
ISO認証を取得したいけど、なるべく費用を抑えたいという方は多いでしょう。
自力取得であれば、コンサルタントに依頼する場合と比べ費用が抑えられるだけでなく、知識理解が深まるなどのメリットもあります。
今回はISO認証を自力で取得したいと考えている方に向けて、方法や審査費用などを解説します。メリット・デメリットもわかりますので、ぜひ最後までお読みください。
ISOとは
ISOとは、国際貿易の発展を目的に、モノや製品に対して世界共通の基準を定める機関のことです。
一般的には規格を指し、ISO規格にはモノの大きさなどを定めたモノ規格と、企業や工場で定めた目標に向かって業務が円滑に進められるよう、仕組みづくりを行うマネジメントシステムに対する規格(マネジメントシステム規格)があります。
よく使われる「認証取得」はマネジメントシステム規格を意味し、品質や環境、情報に関するものなど17種類あります。
ISO9001とは
品質マネジメントシステムに関する規格がISO9001です。
品質を維持・向上させるための仕組みづくりを行うもので、PDCA(計画・実施・評価・改善)を回すことが継続した改善につながり、結果として顧客満足度を上げられると考えています。
ISO14001とは
環境マネジメントシステムに関する規格がISO14001です。
企業活動を行う過程で環境に与える負荷を減らし、環境を保護するための仕組みづくりを行います。省エネルギーや資源の節約など環境パフォーマンスを向上させることは、企業にとっても無駄の削減や効率化の促進などメリットを生みます。
ISO認証を自力で取得するメリット
ISO認証を自力で取得するメリットは以下の3つです。
- コンサルタント費をかけず安く取得できる
- ISOの知識が身につく
- 当事者意識を持って真剣に取り組める
それぞれ解説します。
コンサルタント費をかけず安く取得できる
自力で取得する場合、コンサルタント費をかけずに済むため安く認証を取得できます。ISO認証は1年後の維持審査や3年ごとの更新審査もあるため、継続的にかかるコンサルタント費を削減できるのは大きいでしょう。
ISOの知識が身につく
ISOを自力で取得に向けた勉強をすることで、知識が身につきます。ISOには1年後の維持審査や3年ごとの更新審査など、知識が求められる場面が何度もあります。インプットとアウトプットを繰り返すことで知識を身につければ、さまざまな場面に対応できるでしょう。
当事者意識を持って真剣に取り組める
すべて自分たちで行う必要があるため、自然と当事者意識が芽生えます。他人に任せたりせず自分の責任と考え、真剣に取り組むでしょう。その結果、生産性やパフォーマンスの向上につながります。
ISO認証を自力で取得するデメリット
ISO認証を自力で取得するデメリットは以下の2つです。
- コンサルタントへの依頼と比べて負担が大きい
- 手間(時間)がかかる
自社ですべて行うため社員の負担と手間が増えることは避けられません。進め方のポイントがわからなければ、さらに時間がかかるでしょう。
また、システムを構築してもできが悪い可能性や、運用の負担が大きくなる可能性もあります。
ISOを自力で取得する手順
ISOを自力で取得する手順は以下のとおりです。
手順と要求項目 | 詳細 |
要求事項に沿ったマネジメントシステムを組み立てる【要求項目4~7】 | ISOの適用範囲や方針、活動計画の決定、権限の明確化などを行います。社員が意欲的に取り組める環境づくりをトップが行うことも必要です。また、社内の資源を特定し管理するために、管理対象の文書化も行います。 |
実際にマネジメントシステムを運用する【要求項目8】 | 計画どおりに行うために、ルールやマニュアルの周知が必要です。正確な運用記録をとることが改善につながります。 |
運用結果の評価と改善を行う【要求項目9.10】 | 内部監査やマネジメントレビューを行います。社内のISO担当者やトップによる運用状況の確認と評価を行うことで、改善すべき箇所を決めます。 |
取得審査を受ける | ISOの認証機関による審査を受けます。要求事項に適合していれば、認証の取得となります。 不適合の場合は「重大」か「軽微」かに分かれ、審査の受け直しか不適合の原因究明と改善(是正処置)が必要です。 |
手順について知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
ISO9001認証を取得するまでの流れを期間の目安とともに解説
ISOを自力で取得するときに必要な費用と審査内容
ISOを自力取得するときにかかる費用と審査内容を解説します。
ISO認証取得にかかる費用
認証取得には審査登録料金と認証を維持するための登録後料金が必要です。
審査登録料金は企業の規模によりますが、おおよそ30万~100万円程度、登録後料金は3年で150万円ほどと見積もっておきましょう。
審査登録料金と登録後料金の内容は以下のとおりです。
審査登録料金 | 申込料 基本設計料 予備審査料 登録料 |
登録後料金 | サーベイランス料(1~2回/年) 更新審査料(3年に1回) 登録維持料 |
さらにコンサルタントへ依頼する場合にはコンサルタント費用が追加でかかります。
審査を行う人数や時間は国際的な規格で決められていますが、費用は認証機関が自由に設定できるため認証機関によって料金が異なります。そのため、見積もりを複数とって比較することがおすすめです。
ISOの審査内容
ISOを取得する際の審査の種類は以下の4つです。
審査 | 内容 |
登録審査 | 認証取得に必要な審査で、書類審査(一次審査)と現地で行う審査(二次審査)がある。 現地では担当者立ち合いが求められる他、トップへのインタビューも行われる。 規格に適合しない箇所があった場合、再審査となる。 |
サーベイランス審査 | 認証取得後のマネジメントシステムが正しく機能しているか、計画どおりに行われているかチェックされる。 規格不適合があれば是正処置を行うことになる。 |
更新審査 | 認証の有効期限は3年のため3年毎に行われる審査。登録審査と同じように書類審査や現地での審査がある。 |
内部監査 | ISOの要求事項に定められている監査。企業内部の人員によって規格に適合しているかチェックが行われる。 内部監査のための人材の育成もしくはコンサルタントへの依頼が必要になる。 |
日本におけるISO9001認証の取得企業数
日本適合性認定協会によると、日本で最も多く取得されているISO規格はISO9001(品質マネジメントシステム)です。その数は26,232件と2万件を超えています。
2番目はISO14001(環境マネジメントシステム)で14,408件、3番目はISO27001( 情報セキュリティマネジメントシステム)で4,535件です。
4~17番目は平均500件程度にとどまっています。
ISO取得をやめた企業の具体的な理由とは
ISOの取得や更新をやめた企業の具体的な理由には、費用や書類作成・管理に関する負担の大きさがあげられます。
たとえば、費用について考えてみるとISO取得時にかかる審査料金だけでなく、1年後の維持審査や3年ごとの更新審査でもお金がかかります。
ISOの取得で顧客からの信頼が増すとしても、必ず利益がでるかわからない状況では取得や更新を見送る企業も多いでしょう。
他にも通所の業務と並行しながらISOのためだけに書類作成の準備をし、さらに更新審査に備えて継続して保管が必要な点も原因となっています。
まとめ:ISOの自力取得は可能
ISOの自力取得は本来の業務と並行して進めなければいけない、手探りの状態で進めることになるなどハードルが高い側面があります。
しかし、コンサルタントへの依頼と比べて費用が抑えられることに加え、ISOに関する知識が深まり社員が主体性を持って取り組めるなどメリットも多いです。
ISOでは自社に合ったマネジメントシステムを構築できるかがポイントのため、いわゆる「重いISO」と呼ばれる、認証が目的になっているシステムの構築は避けましょう。
この記事を書いた人
hata