ISOを取得するには?申し込みから取得の流れを解説
公開日:2023.11.20 最終更新日:2023.11.20
社内体制の整備の一環で、ISO認証の取得を検討している方もいるでしょう。ISO認証の取得により、生産性が高まり業務を改善できる可能性があります。
今回は初めてISOを取得する方へ向けて、申し込みから取得の流れをわかりやすく解説します。
ISOの取得を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
ISOとは?
ISOとは「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略称です。国際的に通用する規格を制定しており、制定された規格をISO規格と呼びます。
またISOの制定や改定は、参加国である世界160カ国以上の投票で決定されます。ISOの規格の具体例としては、非常口のサインやクレジットカードのサイズなどが有名です。
なお、ISO規格には「モノ規格」と「マネジメントシステム規格」の2種類があります。
モノ規格は製品そのものを対象とし、マネジメントシステム規格は組織の品質や環境活動などを管理する仕組みを対象にしています。
ISOを取得するメリット
ISOを取得するメリットは、次の3つです。
- 信頼感と安心感の向上につながる
- 生産性が高まり業務効率化につながる
- 取引先の拡大につながる
それぞれ詳しく解説します。
信頼感と安心感の向上につながる
ISO規格は国際的に認められた製品や、組織活動の仕組みに制定される規格です。取得することで企業の信頼感と安心感の向上につながり、より取引がしやすくなります。
またISO取得のためには、第三者機関へ製品や環境活動の仕組みを提供しなければなりません。そのため透明性が高い企業と判断され、社外的な印象も良くなります。
生産性が高まり業務効率化につながる
ISO認証を取得するためには、業務の仕組み化や文書管理などが必要不可欠です。業務を見直し無駄を省くことで、生産性が高まり業務効率化につながります。
またISO認証は取得した後も、維持や更新のための定期審査があります。継続的な改善が必要になり、PDCAサイクルの好循環が生まれるのもポイントです。
取引先の拡大につながる
ISOの取得は、新規取引先の拡大にもつながります。とくに海外市場においては、ISOの取得が有利に働くケースも多くあります。
海外取引においては、取引条件の1つとしてISOの取得が含まれている場合もあります。今後海外への事業展開を検討している企業などは、ISOを取得するのも有効な方法です。
ISO認証を取得するまでの流れ
ISO認証を取得するまでの流れは、大きくわけて以下の通りです。
- 取得するISOの規格や認証範囲を決める
- マネジメントシステムを構築し試験運用する
- 内部監査を実施する
- 認証審査とISO登録
では、それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。
取得するISOの規格や認証範囲を決める
ひとくちにISO規格といっても、業種や適応範囲によりその種類はさまざまです。代表的なISO規格の種類は、以下のとおりです。
規格番号 | 規格名 | 概要 |
ISO9001 | 品質マネジメントシステム | 品質管理体制が整っているかを証明する |
ISO14001 | 環境マネジメントシステム | 製品の製造から廃棄にいたるまでの環境負荷に対する取り組みを証明する |
ISO27001 | 情報セキュリティマネジメントシステム | 情報漏洩対策への取り組みを証明する |
ISO45001 | 労働安全性マネジメントシステム | 労働者の健康管理や労働災害対策への取り組みを証明する |
ISO22301 | 事業継続マネジメントシステム | 事業継続計画(BCP)への準備や取り組みを証明する |
ISO22000 | 食品安全マネジメントシステム | 安全性の高い食品を提供する仕組みを証明する |
ISO39001 | 道路交通安全マネジメントシステム | 交通事故の発生リスクの低減に対する取り組みを証明する |
どのISO規格を取得するかに加え、認証範囲も決定します。全社や事業所ごと、一部製品にのみ適応など目的に応じて検討しましょう。
マネジメントシステムを構築し試験運用する
取得するISO規格の要求事項に沿ったマネジメントシステムを構築し、試験運用します。
マネジメントシステム構築の第一歩は、既存書類の見直しからです。現在使用している社内規定やマニュアルを見直し、要求事項に対し不足している項目がないかを洗い出します。
システムの運用に必要な準備ができたら、実際に運用できるか試験しましょう。運用後に支障が生じた箇所は、都度修正および改善します。
内部監査を実施する
試験運用の後は、自社でマネジメントシステムの運用状況を内部監査します。
内部監査は認証審査への準備だけではなく、マネジメントシステムの有効性を継続的にチェックするためにも効果的です。
また、内部監査の結果を踏まえたマネジメントレビュー(経営者チェック)も合わせて実施します。内部監査とマネジメントレビューに問題がなければ、審査機関による取得審査を受けましょう。
認証審査とISO登録
ISOの審査機関による認証審査を受けます。認証審査にて要求事項に適合していると判断されれば、ISO認証取得となります。
もし不適合となった場合は、マネジメントシステムを再構築し審査の受け直しが必要です。
また不適合事項は「軽微な不適合」と「重大な不適合」の2つにわかれており、法令違反などの重大な不適合については、審査時にその場で宣告されます。
軽微な不適合の場合は、一か月程度以内に修正内容や是正措置を審査員に報告しましょう。認証機関内で実施される判定委員会にて問題がなければ、認証取得となります。
取得後の定期審査にも備えておく
ISO規格は一度認証を取得したら終わりではなく、取得後も定期的な審査を受け認証の更新が必要です。
なお定期審査は認証書の発行から6か月後に実施され、定期審査日から起算して1年ごとに実施されます。認証審査に通過するためにその場しのぎの対応をしていた場合、定期審査にて問題が生じる可能性があります。
ISO取得後も適切にマネジメントシステムを運用し、PDCAサイクルを回し継続的に改善を図りましょう。
ISO認証でよくある質問
ISO認証でよくある疑問や質問を紹介します。いずれもISO規格の取得を目指す上で、知っておきたい内容です。
これからISO認証の取得を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
ISO認証を取得していないor更新をやめた大企業はありますか?
ISO認証は取得までに手間とコストがかかり、取得後も定期審査への対応が必要です。
そのため、ISO認証を返上する企業や組織が存在するのも事実です。返上の理由は手間と費用がかかること以外にも、保有する理由がなくなったなどさまざまです。
なおJR西日本は、以下の理由からISO14001の認証を返上しています。
〜(中略)〜 当社独自の環境マネジメントシステムが成熟した仕組みとして事業活動に定着したと判断したため、2022 年度以降、ISO14001:2015 の認証については、認証取得箇所の維持・更新時期にあわせて自主返上することといたします。 引用元:https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220427_06_ISO14001.pdf |
JR西日本のように社内独自のマネジメントシステムが成熟したことで、ISO認証を更新する必要がなくなるといったケースもあります。
ただし一度ISO認証を返上すると、再度取得する際にはマネジメントシステムを構築し直さなければなりません。またISO認証を返上したことで、運用体制に支障が生じ業務に影響が出るといったケースも考えられます。
ISO認証の取得にかかるコストは?
ISO認証にかかるコスト(費用)の目安は、以下の通りです。
内容 | コスト(費用)の相場 |
取得審査 | 30〜100万円程度 (登録料、文書審査料、現地審査料など) |
定期審査 | 取得審査費用の1/3~2/3程度 |
更新審査 | 取得審査費用の2/3程度 |
またコンサルタントにサポートを依頼したり、審査対象が遠方などの場合は、別途依頼料や宿泊費等が発生します。
まとめ:ISO認証までの流れを理解し早めに対策しよう
ISOの規格には「モノ規格」と「マネジメント規格」の2つがあり、取得することで信頼感の醸成や新規取引先の拡大などにつながります。ISOを取得するためには、要求事項に沿ったマネジメントシステムを構築し、問題なく運用できていることが前提です。
審査機関による認証審査にて問題がなければ、ISO認証所得となります。指摘事項があった場合は1か月以内を目処に改善し、審査員への報告が必要です。また認証後も維持審査や定期審査への対応が必要なため、PDCAサイクルを回し継続的にシステムを改善しなければなりません。
本記事の内容を参考に、ぜひISO取得を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
hata