ISO14001とは?ISO9001との違いやメリット・デメリットを解説
公開日:2023.11.20 最終更新日:2023.11.20
ISO14001とは
ISO14001とは、スイスにある国際標準化機構が定めた「環境マネジメントシステム(以下、EMSという)」に関する国際規格を指します。企業の環境リスク改善の取り組みを示す国際的認証です。国際的認証である
ISO14001は、企業の事業活動において環境に悪影響を及ぼす場合、その改善のための仕組みを構築している企業に与えられる国際的認証です。 たとえば海外企業との取引では、ISO14001認証マークがあることで環境への取り組みが評価され、信用が高まり円滑な取引を実現します。 あらゆる組織が認証取得できるISO14001ですが、2022年の総取得件数は世界で529,853件となりました。ISO規格のなかでも2番目に多く、国際的に環境への配慮が重要視されていることが分かります。環境マネジメントに関する認証
ISO14001は環境マネジメントを指す国際規格です。 「環境」とは、企業活動を取り巻くあらゆる自然環境(空気や水など)・企業に関わる人(政府自治体、従業員、顧客など)などを指します。 ISO14001では、企業活動に関わるすべての環境への影響や起こり得るリスクの改善を、環境マネジメントとして分析することが求められています。企業の環境リスク改善のための取り組み
ISO14001は企業の行動により環境に悪影響を及ぼす場合、そのリスクを改善するための仕組みが企業にあることを証明する認証規格です。 具体的にはEMSの構築です。その仕組みはPDCAサイクルが基本とされ、計画の策定、実施、点検、改善を行います。 EMSは一時的な取り組みではなく、環境への悪影響を継続的に減らす仕組みでなければなりません。企業がISO14001を取得する目的
ISO14001取得する目的は、以下のとおりです。- 企業の社会的信用獲得
- 取引拡大の可能性
- 社内改善への取り組み
社会的信用の獲得
ISO規格は、第三者機関としての国際的認証です。そのため、国内外の取引先や顧客から社会的信用を得やすいメリットがあります。 社会的信用があることで、取引の円滑化など企業活動を行う上でプラス材料です。CSR活動(企業の社会的責任)の一環を果たしていると言ってもいいでしょう。取引拡大の可能性
ISO14001認証マークを企業パンフレット・ホームページ・CMなどの媒体に載せることで、ビジネスのきっかけとなることがあります。 下のグラフは、ISO14001の認証取得を外部へ伝達したことの効果を示しています。自社のアピールになったり、新たな取引開始のきっかけとなるなど、一定の効果が確認できます。 ISO規格取得の効果は国内だけにとどまりません。海外企業に向けて、EMSの国際基準レベルの管理・運用能力を対外的に示すことができます。海外企業との取引拡大の可能性も否めません。社内改善への取り組み
ISO14001を社内体制の改善による業務効率化を目的として、取得する企業もあります。 EMS構築にあたり、さまざまな社内体制やルールの明確化が必要です。そうすると無駄な業務が減り、新たなルールの必要性も見えてくるでしょう。 さらに、従業員へ環境リスク改善を呼びかけることで意識改革も行われ、全社的な社内改善取り組みが実現します。ISO14001とISO9001の違い
ISO14001は環境、ISO9001は品質に違いがあります。しかし、企業の生産性向上や経営状態の改善という最終目標は、両者とも共通事項です。以下はISO14001、ISO9001の比較表です。ISO14001 | ISO9001 | |
マネジメントの種類 | 環境マネジメント | 品質マネジメント |
手順書 | 必要に応じて作成 | 必要 |
最終目標(共通) | 生産性向上や経営状態の改善 |
ISO14001取得のメリット
ISO14001取得するメリットは大きく分けて以下の3つです。- 環境リスクを減らす
- 企業ブランディング強化
- 管理コストの減少
1.環境リスクを減らす
ISO14001取得後の継続的な企業活動により、環境リスク低減に貢献ができます。そのためにはEMS構築に際し、環境目標の達成に向けた企業内ルールが必要となります。 たとえば電気・水道の節約・ごみの削減などに限らず、廃棄物処理方法の改善・グリーン調達(環境への負荷が少ない商品を調達)を行うなどが挙げられるでしょう。 ルール化することで全社的に取り組むことができ、環境リスクを減らすことにつながります。2.企業ブランディング強化
ISO14001取得は、企業のブランディング強化となり信頼度が高まるでしょう。 昨今、環境破壊とも取られかねない企業の生産活動は問題視され、企業の信用度が問われています。ISO14001認証マークを持つ企業は、環境への配慮を国際的に認められた企業です。環境リスク低減への積極的な姿勢を評価され、信頼ある取引先と認められるメリットがあります。 グリーン調達を行う企業など、環境への意識が高い企業との新規取引を希望する場合、ISO14001認証を持つ企業が認められやすい傾向があります。3.管理コストの減少
ISO14001を取得すると、企業の管理コストの無駄や、非効率の部分に気付く場合があります。 PDCAサイクルをもとにEMSの行動計画を作る過程で、いくつかの無駄が浮き出てきます。たとえば、必要以上の工数、消費エネルギーの無駄使いなどです。 これらを踏まえ、新たなルールを設け体系的に実践することで、省エネルギー・省資源が実現でき、管理コストの減少につながります。ISO14001取得のデメリット
ISO14001取得のデメリットはコストがかかる点、従業員の負担が大きい点です。以下で詳しく解説します。1.コストがかかる
ISO規格取得には毎年審査が必要で、取得・維持に費用がかかる点がデメリットです。 以下は、JABが定めるマネジメントシステム認証機関の手数料等と審査関連費用です。初回認定申請は50万円、審査関連費用は認証機関ごとに異なります。 ISO14001のマネジメントシステム認証機関数は34(2023年11月時点)、料金は各所見積もりが必要です。 【手数料等】 【審査関連費用】 また、環境保護という社会的意義が強いため、売上に直結しにくい部分もデメリットといえるでしょう。継続的な企業環境活動があってこそ、さまざまなメリットを享受することができます。2.計画実施において従業員の負担が大きい
EMS構築・実施には従業員の協力が不可欠であり、負担が大きくなりやすい点がデメリットです。 計画策定や実施という言葉で言い表すのは容易ですが、研修の実施・文書の管理など、従業員にとっては業務負担が大きくなります。 また、業務が定着するまでの間、従業員への説明やフォローアップ体制など、細やかな配慮も必要となるでしょう。取得企業・取りやめた企業について
これまでのISO取得のメリット・デメリットを踏まえ、実際に認証を取得した企業は20,892件(2022年)で、前年21,976件(2021年)と比べるとほぼ横ばいです。 2年前は17,804件(2020年)であったことから、環境への関心が引き続き高いことがわかります。 産業分野別では、製造業・建設業・小売業に多く、法令順守や環境に配慮した製品であることのアピールのためなど、自主的な理由による取得によるものが大半です。 反面、顧客から取得を要求されるなど、外部からの要求によるものは、その半分程度です(注3)。 取得したものの効果を実感できない理由として、製造業100人・建設業100人にとったアンケートの内、約50%の企業がその理由を「ISO14001が環境パフォーマンスの向上に直接つながらないため」と回答しています。ISO要求事項の概要
ISO14001は、要求事項として以下のことを求めています。- 環境目標の設定・環境パフォーマンス向上
- 順守義務を満たす
まとめ:コンサルタントの協力のもと、ISO14001を取得しましょう
環境改善への取り組みは、企業を次世代へ引き継いでいくために重要です。ISO14001を取得しなくても取り組みは可能ですが、一時的に行うだけでは効果が出にくく、環境リスクを減らすという本来の目的を果たすことは難しいでしょう。 やみくもに行うより、自社に合ったISOを構築し、持続可能な範囲で継続することが重要です。書類の準備やISO構築が困難な場合、ISOコンサルタントへ依頼してみてはいかがでしょうか。 環境改善へ積極的な取り組みを行い、ぜひ国際的認証のISO14001を取得しましょう。この記事を書いた人
hata