プライバシーマークは意味ない?取得するメリット・デメリットを解説
公開日:2023.12.15 最終更新日:2023.12.15
個人情報保護に関する消費者意識の向上や、取引先からの要求を理由に、プライバシーマークを取得する企業が増えています。
しかし、申請には時間と費用が必要なうえ、業務に一時的な負担もかかるため、取得に意味を感じない企業も少なくありません。
そこで本記事では、プライバシーマークを取得するメリットを解説します。必要性についても取り上げるので、取得に意味があるのか悩んでいる企業はぜひ参考にしてください。
プライバシーマーク(Pマーク)取得の必要性
プライバシーマークは、企業の個人情報保護体制や運用状況が適切なことを証明するための制度です。
JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)により、1998年から運営が開始されました。
日本産業規格「JIS Q 15001 個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に基づく一定の基準に適合した事業者だけが、使用を認められています。
2023年12月8日時点で17,577の事業者がプライバシーマークを取得しています。
プライバシーマークは、自社の個人情報管理体制が確立していることを、取引先や顧客に示す重要な要素です。しかし、なぜこれほどまでに重要視されているのでしょう。
ここからは、プライバシーマークの必要性を解説します。
- 消費者意識の高まり
- セキュリティリスクへの対応
順番に見ていきましょう。
消費者意識の高まり
個人情報の取り扱いに関するトラブルや情報漏えいが相次いだことで、消費者の情報セキュリティに対する意識が高まっています。
「個人情報を預けても問題ないか」「取り扱いが適切か」など、企業の個人情報保護体制を加味したうえでサービスを選ぶ消費者も増えています。
セキュリティリスクへの対応
近年、電子マネー決済やオンラインショッピングなど、個人情報を必要とするサービスが増えています。
しかしその一方で、個人情報を狙うサイバー攻撃や無断提供など、情報セキュリティリスクも増加傾向にあります。増大する情報セキュリティリスクに対応するためにも、プライバシーマークを取得し、個人情報保護体制を確立することが求められています。
プライバシーマークのメリット
プライバシーマークを取得することで、自社の個人情報管理体制が確立していることを第三者に示せます。また、それほかにも以下のようなメリットがあります。
- 取引先からの信用を得られる
- 顧客からの信頼を獲得できる
- 個人情報に対する社内意識を向上できる
- 情報漏えいのリスク軽減につながる
- 公共案件の契約条件を満たせる
順番に見ていきましょう。
取引先からの信用を得られる
企業間の取引では、相手企業を信用できるかが契約に深く関係します。とくに大企業における重要な取引では、相手企業を調査したり、アセスメントが実施されたりします。
また、委託先に個人情報の処理を依頼する場合は、管理体制や取り扱いにおけるルールを確認するケースも少なくありません。
プライバシーマークを取得している=個人情報保護体制が確立している企業のため、取引先からの信用を獲得しやすいです。
顧客からの信頼を獲得できる
個人情報関連のトラブルや情報漏えいが相次ぐ昨今では、顧客の個人情報保護に対する意識も高まっています。
個人情報保護の取り組みが実施されているかが、サービスを選択するうえで重要な要素になりつつあるのです。そのため、プライバシーマークの取得は顧客からの信頼獲得にもつながります。場合によっては、収益上プラスに働く可能性もあるでしょう。
個人情報に対する社内意識を向上できる
プライバシーマークを取得する際、従業員に対して、個人情報保護の社内教育をおこなう必要があります。
従業員を定期的に教育し、重要性を広めることで、個人情報の取扱いに対する社内意識を向上できるでしょう。
情報漏えいのリスク軽減につながる
プライバシーマークを取得し、維持するには、年に一度内部監査をおこなう必要があります。
内部監査を実施することで、自社の個人情報保護体制を定期的に把握できます。また、必要に応じてルールを見直すことで、運用を徹底する環境が整い、情報漏えいのリスク軽減につながります。
公共案件の契約条件を満たせる
政府機関や地方自治体では、公共案件の参加条件にプライバシーマーク取得を設定しているケースがあります。
たとえば官公庁が実施する一般競争入札では、入札の条件にプライバシーマークの有無を問われることが多いです。 プライバシーマークを取得していれば、入札案件を有利に進められる可能性があります。
プライバシーマークのデメリット
プライバシーマークには、第三者からの信頼獲得や社内意識向上などのメリットがありますが、その一方で以下のようなデメリットも存在します。
- 取得に時間がかかる
- 諸費用を用意しなければならない
- 社内監査や教育の手間がかかる
- 適用範囲が国内に限られる
企業によっては業務負担が大幅に増える恐れがあるため、デメリットも理解したうえで取得するか検討しましょう。
順番に解説します。
取得に時間がかかる
プライバシーマークの申請から取得までは、2〜4か月程度かかります。
また、申請時には要求事項に沿ってマニュアルやルールを作る必要があるため、最短でも5か月、長くて1年ほどかかるケースも珍しくありません。
諸費用を用意しなければならない
プライバシーマークの取得には申請費用や審査費用、付与登録費用などの諸費用がかかるので注意が必要です。
取得費用は企業の規模によって異なりますが、多いと数百万円程度かかることもあります。なお、プライバシーマーク取得に専門のコンサルタントを起用する場合は、別途費用がかかるため注意しましょう。
社内監査や教育の手間がかかる
プライバシーマークの取得前後には、個人情報保護に関する従業員教育や内部監査をおこなわなければなりません。
余分な業務が増えるため、通常業務の生産性が落ちる恐れがあります。
適用範囲が国内に限られる
プライバシーマークは国内に拠点を持つ企業が対象で、海外で優遇されることはありません。
国際取引が多い企業は、日本産業規格 JIS Q 15001のプライバシーマークではなく、国際標準規格 ISO 27001のISMSの取得を検討しましょう。
プライバシーマーク | ISMS | |
準拠する規格 | 日本産業規格 JIS Q 15001 | 国際標準規格 ISO 27001 |
取得範囲 | 企業全体での取得 | プロジェクトや部門、部署単位で取得可能 |
保護対象 | 個人情報 | 取得範囲の情報資産 (個人情報を含む) |
プライバシーマークの取得方法
プライバシーマークを取得する具体的な流れは以下の6つです。
- マニュアルとルールの作成
- マニュアルとルールの運用
- 申請
- 文書審査
- 現地審査
- 結果通知
まず、個人情報保護に関するマニュアルとルールを作成します。自社の都合よくルールを設定できるわけではなく、JIS Q 15001の要求事項に沿って作成する必要があるため注意しましょう。
作成が終わったら、実際にマニュアルとルールを運用しながら、JIPDECにプライバシーマークの申請をおこないます。文書審査と現地審査が実施され、内容に問題がなければ、プライバシーマークが付与されます。
このように、プライバシーマークの取得には多くの時間と労力がかかります。しかし取得すれば、顧客や取引先に自社の個人情報保護体制が確立されていることを示せます。
競合他社がいる場合、プライバシーマークを取得していたほうが有利に働くケースもあるでしょう。
まとめ:プライバシーマークには多くのメリットがある
プライバシーマークを取得することで、取引先・顧客からの信頼獲得や情報漏えいのリスクを軽減できます。個人情報の取扱いが重要視される現代では、プライバシーマークの有無が取引の判断基準になります。
マニュアル作成や内部監査の工数、申請に必要な費用とメリットを照らし合わせたうえで、プライバシーマークを取得するべきか検討しましょう。
この記事を書いた人
hata