Pマーク(プライバシーマーク)の運用とは?重要性や注意点を解説
公開日:2023.12.20 最終更新日:2023.12.20
データが価値のある資源として扱われる現代社会では、個人情報の取り扱いや情報セキュリティが重要視されています。
そんな中、顧客や取引先から信頼を得るために、Pマーク(プライバシーマーク)を取得する企業が増加しています。
Pマークを取得・維持するには、決められたルールに沿って適切に運用する必要があります。しかし担当者の中には、Pマークにおける運用とは何か、具体的にわからない方もいるでしょう。
そこで本記事では、Pマークの運用について解説します。重要性や注意点も取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
Pマーク(プライバシーマーク)の運用とは
Pマークを取得・維持する際は、個人情報保護マネジメントシステム(※以下PMS)を確立し、個人情報を安全に管理する体制を整える必要があります。
PMSは個人の権利保護を目的とした仕組みで、事業で利用する個人情報の重要性を認識し、正しく運用するための指針です。日本産業規格「JIS Q 15001」で定義されています。
計画・実施・評価・改善のPDCAサイクルを回しながら運用することで、個人情報保護体制を強化し、漏えいを防ぐ役割を果たします。
なお、Pマーク取得時はもちろん更新審査の際も、PMSが適切に運用されているか確認されます。過去2年間の運用記録や、個人情報の取り扱いに問題がないと判断された場合、以降もPマークを利用できます。
Pマーク(プライバシーマーク)の運用の重要性
Pマークの運用は、自社の個人情報保護体制を高めるうえで欠かせません。また取得時だけに注力するのではなく、運用と改善にも継続的に取り組むことで、精度を上げることも可能です。
ここからは、Pマーク運用における5つの重要性を解説します。
- 個人情報保護体制の構築
- 顧客や取引先からの信頼性向上
- 情報セキュリティの強化
- 顧客のプライバシー保護
- データ連携の円滑化
順番に見ていきましょう。
個人情報保護体制の構築
企業が顧客や取引先の個人情報を扱う際は、個人情報保護法を中心とする関連法令に基づき、適切に利用・管理する必要があります。
そのため、Pマークを取得して正しく運用することで、自社の個人情報保護体制を構築できます。
また、Pマーク付与事業者=法的要件に対応していることの証明にもなります。法的なリスクを軽減することにもつながるでしょう。
顧客や取引先からの信頼性向上
Pマークは、第三者機関から個人情報の取り扱いが適切だと認定された事業者に対して付与されます。
Pマークを取得することで、個人情報を慎重に取り扱い、適切に管理している体制を証明できます。顧客や取引先からの信頼を獲得できるのはもちろん、競争の激しい市場での差別化にもつながるでしょう。
情報セキュリティの強化
社内で個人情報保護体制を構築することで、不正アクセスや抜き取りなどのサイバー攻撃から情報を守れます。
また、すべての従業員に対して個人情報の取り扱いルールを教育することで、内部からの漏えいにも対応可能です。Pマークを正しく運用することで、自社の情報セキュリティ強化につながります。
顧客のプライバシー保護
Pマークの運用は、顧客の個人情報だけでなく、プライバシーを保護する観点でも重要な手段です。
また、Pマークが適切に運用されていることが外部からわかれば、信頼性や自社の評価向上にもつながります。それによって長期的な顧客関係の構築も見込めるでしょう。
データ連携の円滑化
Pマークを取得していれば、他の付与事業者とのデータ共有や連携を円滑化できます。
共通の規格を共有することでデータの受け渡しがスムーズに進むため、会社間取引の業務効率化が図れます。
Pマーク(プライバシーマーク)の運用手順
Pマークを運用する際は社内でPMSを確立し、その内容に沿ってPDCAサイクルを回すことが求められます。
具体的には、以下5つの手順で進めます。
- ポリシーを定める
- リスクアセスメントを実施
- セキュリティ対策を実行
- 監視と評価をおこなう
- 運用プロセスの改善
順番に見ていきましょう。
ポリシーを定める
まずは、情報セキュリティとプライバシー保護に関するポリシーを定めます。これには、情報の取り扱い方針やセキュリティ対策方法などが含まれます。
なお、ポリシーの内容は企業によって異なります。自社のニーズにあわせて都度カスタマイズしましょう。
リスクアセスメントの実施
続いて、情報セキュリティとプライバシー保護に関するリスクアセスメントを実施します。
リスクアセスメントとは、自社が保有する情報においてどのようなリスクが存在するかを洗い出し、対応方法を定める一連の流れを指します。潜在的な脅威やシステムの虚弱性を特定し、適切な対策を講じることが目的です。
定期的に実施し、細かな変化やトラブルにすぐに対応できるよう整備しましょう。
セキュリティ対策を実行
次に、ポリシーで定めたセキュリティ対策を実行します。
具体的には、アクセス制御やデータの暗号化、セキュリティトレーディングなどが該当します。技術や人的な側面を考慮したうえで実行することが重要です。
監視と評価をおこなう
実行したセキュリティ対策を監視し、効果を評価します。セキュリティ上の脅威を早期検出することと、適切に対応できるかが重視されます。
また、定期的に内部監査を実施することも有効です。Pマーク運用が規定に準拠しているかを文書にまとめ、見える化してチェックするとよいでしょう。
運用プロセスの改善
評価をもとに、セキュリティ対策や運用プロセスを改善しましょう。継続的に改善することで、個人情報保護体制に関する不適合を正せます。
あわせて、従業員への教育とトレーニングも実施してください。社内で個人情報保護のマニュアルやルールを共有することで、取り扱いの意識を高められます。
なお、Pマークは永続的な制度ではありません。維持するには2年に1度更新審査を受ける必要があります。
更新審査ではPマークが適切に運用されているかがチェックされるため、本項目で解説したPDCAを継続的に回すことが重要です。
Pマーク(プライバシーマーク)を運用する際の注意点
Pマークを運用する際は、以下の4点に注意が必要です。
- 年1回個人情報を見直す必要がある
- 法律に従ってルールを作成しなければならない
- 内部監査をおこなう必要がある
- 代表者へ運用状況を報告しなければならない
適切に運用するためにも、事前に把握しておきましょう。
1つずつ解説します。
年1回個人情報を見直す必要がある
新規事業を始めたり、反対に撤退したりした際、取り扱う個人情報の種類や量は変動します。そのため、最低でも年1回以上は保有する個人情報の見直しをおこない、最新の状態に反映しましょう。
不要なものは削除して管理する量を減らすことで、個人情報の保護体制を適切に整備できます。
法律に従ってルールを作成しなければならない
Pマークの運用マニュアルやルールは、施行された法律や法令をもとに作成する必要があります。
法令遵守できていない管理体制では顧客や取引先の個人情報を十分に保護できず、結果的に自社が損害を負うことになるでしょう。
法律や法令が改正された際は、内容に沿って自社の個人情報保護マニュアルやルールを変更しましょう。
内部監査をおこなう必要がある
Pマーク付与事業者は、自社で確立したPMSが以下に当てはまっているかを内部監査で確認する必要があります。
- 事業者が定めた要求事項および指針の要求事項に適合している
- 個人情報保護マネジメントシステム(PMS)が有効に実施・維持されている
ルールに沿って個人情報が適切に保護されているかを文書化し、理解度の不足や管理方法に改善の必要がないかチェックしましょう。
なお内部監査は、少なくとも年1回は実施しなければなりません。実施記録がない事業者は、Pマークを更新できないため注意してください。
代表者へ運用状況を報告しなければならない
Pマーク運用でPDCAを回した後は、必ず代表者へ状況を報告しましょう。
なぜなら、個人情報保護にあたって代表者が率先して守る体制を、「個人情報保護方針」で宣言する必要があるからです。
運用状況の問題点や内部監査での指摘を代表者に報告して、ようやく一つのPDCAを完了できます。
まとめ:PDCAを回しながら継続的にPマークを運用することが重要
Pマークを維持するには、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)を確立し、適切に運用する必要があります。運用の際は、体制構築・実行・評価・改善と、PDCAを回すことが求められます。
なお、Pマークは永続的に適用される制度ではありません。2年に1度更新審査を受ける必要があるため、常に実行と改善を繰り返し、運用していくことが重要です。
この記事を書いた人
hata