プライバシーマーク(Pマーク)取得は海外で意味ない?
公開日:2023.12.20 最終更新日:2024.08.24
企業経営において、個人情報の管理は厳重に実施されなければいけません。 プライバシーマーク(Pマーク)の取得は、社内での意識はもちろん顧客に対しても、個人情報管理において信頼できる企業としてアピールできます。 日本では浸透しているPマークですが、海外ではどのように扱われるのでしょうか。
本記事では、Pマークの海外での扱いやPマークに似た国際規格などを解説します。
海外におけるPマークの扱い
Pマークを付与する機関であるJIPDEC(日本情報経済社会推進協会)では、「プライバシーマーク付与の対象は、国内に活動拠点を持つ事業者」で「法人単位」と定められています。
そのため、海外は対象外として扱われます。海外に拠点を持つ企業はPマークの対象外となり、取得できません。
しかし、日本拠点の海外支社での扱いや国際相互承認団体などがあることで、扱いが変わることも。以下では、Pマークの海外での扱いについて解説します。
現地法人の海外拠点
現地法人の海外拠点は、基本的に管理の対象外です。そもそも現地法人は、Pマークの取得ができません。 海外で法人を立ち上げる場合は、自社のPマークを取得は考える必要はないでしょう。
国内事業の海外支社
国内事業の海外支社では、状況に応じて扱いが変わります。 海外のみで扱う個人情報はPマークの対象外となります。例えば、海外の取引先や顧客の個人情報などです。
また、日本から管理・干渉ができる個人情報は、管理すべき対象として扱われます。海外に支社を持つ企業は、従業員が移動で海外拠点に行くこともあるでしょう。
そのような場合も、従業員にはPマークに関する認識を教育しておく必要があります。
国際相互承認団体であれば海外でPマークが認められることも
Pマーク制度には、国際相互団体というものが存在します。相互認証団体とは、Pマークの取得制度と同様の認証制度を持つ海外の団体で、双方の国の認証を適用し合える関係です。
国際相互承認団体として、大連ソフトウェア産業協会や韓国情報通信産業協会が挙げられます。
Pマークに類似した国際規格
Pマークに類似した国際規格にはISMS(Information Security Management System)と、ISMSの構築と運用に関する方法を定めたISO 27001がPマークと同格のものとされています。 以下では、ISMSとISO 27001について解説します。
ISMS
ISMSは、組織の情報セキュリティを管理するための仕組みや枠組みのことです。ISMSの三要素として、以下のポイントがあります。
- 機密性:Confidentiality
- 完全性:Integrity
- 可用性:Availability
ISMSではこれらの要素の維持とリスクを適切に管理していると示すことが目的の一つとされています。 ISMSの保護対象は、組織が保有する情報資産の全てです。また、Pマークが法人単位で付与されるのに対し、事業所単位、部門単位、事業単位の取得もできます。
ISO 27001
ISO 27001とは、ISMSの構築と運用に関する方法を定めた国際規格です。2005年にISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の共同で定められ、日本ではよくPマークと比較対象にされます。
ISO 27001は組織の情報資産のセキュリティ・管理方法・マネジメント方法について定められています。
Pマークの取得企業が多い業界
以下の業種は、特に個人情報を慎重に扱うことが求められることが多く、Pマークの取得が浸透している傾向が強いです。
- 情報サービス業・調査業
- サービス業
- 出版・印刷業
海外へ事業展開を考える場合、以上に該当する業種はPマークと類似した国際規格の取得を検討しましょう。
情報サービス業・調査業
情報サービス業といえば、個人情報を管理するツールを開発する事業者やシステム管理を行う会社が当てはまります。調査業では、コンサル業などが挙げられるでしょう。 顧客の名前や住所、電話番号、クレジットカード番号などを取り扱うことも多い業種なので、厳重な個人情報管理・使用が求められます。
管理する個人情報の量はもちろん、サービスの展開やマーケティングを行う上で個人情報を使うでしょう。
サービス業
サービス業にもさまざまな業種がありますが、コールセンターや人材派遣サービスなどは頻繁に個人情報を扱います。個人情報を委託されるような仲介サービス事業などは、厳重な管理が求められるでしょう。
出版・印刷業
名刺をはじめ印刷物や出版物に記載される個人情報は厳重な管理な管理が求められます。 出版物に個人情報を記載する出版業や印刷業では、ほとんどの企業でPマークが取得されていると言えるでしょう。
Pマーク取得にかかる期間
Pマークの取得には、一般的に半年〜1年ほどかかると言われています。 取得と言っても、マニュアルや社内ルールの策定などの準備期間や必要書類の提出、調査などさまざまなプロセスが発生します。それぞれのプロセスがスムーズに進まない可能性もあるでしょう。
しかしPマーク取得支援サービスを利用することで、短期間での取得が期待できます。コストは発生しますが、スムーズに開発したい場合はおすすめです。
Pマーク取得にかかる費用
Pマークの取得には、新規取得・更新の場合において事業規模に応じた申請料、審査料、登録、付与料を合わせた費用が発生します。
新規の場合 | 更新の場合 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業規模 | 小規模 | 中規模 | 大規模 | 小規模 | 中規模 | 大規模 |
申請料 | 52,382 | 52,382 | 52,382 | 52,382 | 52,382 | 52,382 |
審査料 | 209,524 | 471,429 | 995,238 | 125,714 | 314,286 | 680,952 |
付与登録料 | 52,382 | 104,762 | 209,52 | 52,382 | 104,762 | 209,524 |
合計(円) | 314,288 | 628,573 | 1,257,144 | 230,478 | 471,430 | 942,858 |
引用元:JIPDEC
Pマークの取得だけではなく維持するためにもコストが発生します。
Pマーク取得でコンサルを利用するメリット
コンサル会社を利用するメリットは、下記3点があげられます。
- 専門知識によるアドバイスとサポートを受けられる
- 時間とコストを削減できる
- 審査への準備を正しく行える
それぞれ解説します。
専門知識によるアドバイスとサポートを受けられる
Pマークの取得には、専門的な知識が必要です。コンサルの場合は、Pマーク取得に精通した専門家によるアドバイスとサポートを行っているのが特徴です。
最新の個人情報保護法や関連規制も把握しており、自社がPマークの取得要件を満たすために、最適なサポートを受けられます。
これによって、Pマーク取得までの手順を確実かつ効率的に進められます。また、取得後の運用や継続的な改善にも役立つでしょう。
時間とコストを削減できる
自社でPマークの取得準備を進めようとした場合、多大な時間とコストがかかります。しかし、経験豊富なコンサルに依頼すれば、無駄のない計画を立ててくれます。試行錯誤の時間を抑えられ、スムーズにPマーク取得まで行えるでしょう。
また、必要な文書や効果的な内部監査の実施方法の指導など、時間のかかる作業の効率化も図れます。さらに、躓きやすいポイントを回避することで、取得時間の短縮が可能です。
これらの時間を削減することで、直接的な自社のコスト削減にもつながります。社内のリソースを効率的に活用できるため、本業への影響を抑えたい企業は、コンサルを利用するのがおすすめです。
審査への準備を正しく行える
コンサルは、審査のポイントや審査員の視点を熟知しています。現役の審査員が在籍している場合も多いため、ノウハウを活かして審査への準備を正しく行える可能性が高いです。
また、審査機関とのコミュニケーションや、提出書類の準備についても適切なアドバイスが得られます。これらの準備により、審査でのスムーズな対応が可能になり、指摘事項を最小限に抑えられるでしょう。
さらにPマークを一発で認証取得できる可能性が高くなるため、結果的に再審査などによる追加コストや時間の発生を防げます。
Pマーク取得でコンサルを利用するデメリット
コンサルを利用する際は、下記2点のデメリットが挙げられます。
- コストがかかる
- 社内の学習機会の損失・独自性を失う可能性がある
コンサルの利用を検討している方は、チェックしておきましょう。
コストがかかる
専門知識を持つコンサルサービスを利用する際は、それなりに費用が発生するため、中小企業は負担になる可能性があります。
企業規模や業種、サポート範囲によって費用は異なりますが、数十万円から数百万円程度はかかります。また、Pマークは取得して終わりではなく、2年に1度更新の審査があるのが特徴です。
そのため、システムの維持管理・更新審査対応のためにもコンサル費用が継続的に発生する場合があります。
これらの費用は短期的に企業に負担をかける可能性はありますが、長期的な投資として捉え、Pマーク取得後の効果と比べて判断することが大切です。
社内の学習機会の損失・独自性を失う可能性がある
コンサルに依存しすぎると、社内スタッフが個人情報保護に関する深い知識や実践的なスキルを獲得する機会が減少します。長期的にみると、社内での自立的な運用や改善能力の低下につながる可能性も。
そのため、Pマークを取得できても運用をすべてコンサルに任せるのではなく、作業のバランスを考えることが大切です。
Pマークコンサル会社を選ぶポイント
コンサル会社を選ぶ際は、下記3つのポイントを押さえましょう。
- 費用とサービス内容のバランス
- 実績と専門知識を重視する
- サポート体制
詳しくみていきます。
費用とサービス内容のバランス
複数の会社から見積もりを取り、費用の妥当性を比較しましょう。ただし、単に安価な会社を選ぶのではなく、提供されるサービスの内容や質を慎重に判断することが大切です。
また、追加費用の発生条件や支払い条件なども事前に確認しておくと安心です。費用対効果を考慮し、自社のニーズと予算に最も適した会社を選びましょう。
実績と専門知識を重視する
Pマークコンサル会社を選ぶ際は、Pマーク取得支援の実績数や成功率を確認しましょう。とくに、自社と同じ業界や規模の企業への支援実績があれば、より適切なアドバイスが期待できます。
また、コンサルタントの経歴や資格、専門知識のレベルも重要な判断材料となります。可能であれば、実際に支援を受けた企業に直接話を聞くのもおすすめです。
実績と専門知識が豊富な会社を選ぶことで、スムーズなPマーク取得と効果的なシステム構築につながります。
サポート体制
自社のニーズに合ったサポート体制を持つコンサル会社を選ぶことで、スムーズなPマーク取得と、その後の効果的な運用につながります。
担当者が不在の際のフォロー体制や、複数の専門家による支援体制など確認しておきましょう。また、サポートの時間帯や緊急時の対応体制もチェックしておくのがおすすめです。
長期的にみて、サポート体制が整っているかどうかは重要なポイントとなります。
まとめ:海外展開の際はPマークの運用を慎重に考えよう
Pマークは国内において信頼されやすくなるというメリットがありますが、期間と費用がかかります。 また、海外拠点はPマークの対象外となるため認知度が低い上、運用方法について知識を改めることが必要です。
海外展開を考えている場合、国際規格にあたるISMS、ISOのほうが効果的な場合もあります。Pマークの取得を慎重に考え、企業に合ったセキュリティ対策を実施しましょう。
この記事を書いた人
hata