AWSでアプリを開発する手順とは?注意点や身近な事例も解説
公開日:2024.09.25 最終更新日:2024.09.25
スピーディーで簡単に、自社サーバー不要のサーバーレスアプリケーションを開発できると多くの企業で採択されているAWS。
AWSは数百というサービスを提供しているため、どのサービスを使えば希望が叶うか簡単に判断できないとお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、AWSを使い簡単にアプリ開発する7つの手順と、AWSを利用するメリットと注意点も解説します。貴社のアプリ開発に最適な方法がAWSなのかも含め理解いただける内容となっておりますので、お目通しください。
AWSとは
Amazonが提供するクラウドサービスプラットフォーム、AWS(Amazon Web Service)は、従量課金制で気軽に利用できると広く活用されています。提供サービスは多岐に渡り、データ分析・モバイルアプリ・管理ツール・機械学習(AI)などさまざまあります。
AWSは現時点で数百種と多数のサービスを提供しており、単体ではなく、複数を組み合わせたオリジナルのシステムを気軽に制作できるのも利点です。またAmazonの手がける安定したネットワークを利用できるため、システムダウンするリスクがなく、セキュリティ面も安心です。
もともとは自社運営にと開発されたAWSは、「パブリッククラウド」の1種としてサーバー・ストレージ・データベースを提供しています。
- AWSでアプリ開発する9つのメリット
- AWSでアプリ開発する際の注意点
続けて上記についても解説します。
AWSでアプリ開発する9つのメリット
AWSでのアプリ開発は、料金面やセキュリティ面などで9つのメリットがあります。
- クラウドシステムゆえサーバーレスで開発可能
- 安定したサービス提供が可能
- 使えば使うほど安い従量課金制でコストダウン
- セキュリティ面が安心
- 高品質かつ高機能
- 拡張性・自由度が高い
- 自動アップデートで常に最新技術が利用可能
- 24時間365日いつでも日本語サポート対応
- ITノウハウのない企業も自社でアプリ開発可能
詳しく見てみましょう。
クラウドシステムゆえサーバーレスで開発可能
一般的なアプリ開発では、アプリ運営に用いるサーバーを自社で立ち上げ、管理する必要があります。サーバー構築・設計・運用保守とさまざまな業務が不随し相応に人材とコストもかかりますが、AWSにおいてそれらは必要ありません。
AWSはサーバーレスコンピューティングプラットフォームです。サーバー環境だけが用意され構築から行わなければならないクラウドサーバーとも異なりますから、専門知識なしでアプリ開発できます。
安定したサービス提供が可能
常にハード面・ソフト面が最新にアップグレードされ続けているAWSは、そのパフォーマンスの安定感も高い評価を受ける理由の1つです。実際に自社運営(オンプレミス)からAWSへ切り替えて安定して高水準のパフォーマンスが維持でき、業務効率が上がったという声が多いです。
現状AWSでは数百という多くのサービスが提供されています。利用者の意見・要望を採り入れ新たな機能やサービスをリリースしており、今後も永続的な成長が期待されています。
使えば使うほど安い従量課金制でコストダウン
AWSは従量課金制で、ボリュームディスカウント制度も採り入れています。
ボリュームディスカウントについて以下をご覧ください。
- 毎月最初の50TB:0.023USD/GB
- 以降の450TB:0.022USD/GB
- 500TB以上の場合:0.021USD/GB
AWS S3へのデータの取り込み・移行でどのくらいの課金になるかは、公式サイトの料金計算ツールで試算できます。
セキュリティ面が安心
AWSはPayPay・マクドナルド・CIA・国立研究機関・NTTドコモで採択されるほど、セキュリティ面で厚い信頼を寄せられているマネージドサービスです。クレジットカード業界でのセキュリティ基準である「PCI DSS」のような、第三者機関の認証を複数取得しています。
高品質かつ高機能
顧客からのリクエストをもとに新機能を積極的に実現しているAWSは、顧客体験に直結するサービスを展開することに注力しています。また全国84か所のデータセンターを設け、安定したサービス供給も実現済みです。
AWSはソフトウェアやハードウェアに関しても、常に最新にアップデートされています。そのため自社でシステムやサーバーのアップデートといった労力は必要なく、安定敵に最新技術でのサービス提供が叶います。自社サーバーのように「アクセス集中でサーバーダウン」となることもありません。
拡張性・自由度が高い
AWSは利用したいサービスを1つから好きに組み合わせて利用でき、利用したい分だけストレージの拡張・縮小ができます。自社サーバーを構える場合増減には多くのリソースが必要不可欠ですから、無駄なコストがかからないことも大きなメリットになるでしょう。
バックアップデータ・復元用データ・分析データなどさまざまなデータを保存でき、繁忙期や閑散期の利用料の差も気にする必要がなくなります。
自動アップデートで常に最新技術が利用可能
AWSはマネージドサービスですから、必要な機器の導入や設定、ソフトウェアの導入・管理・更新をすべてAmazonで対応しています。AWSを活用したサービス提供する企業としては、インフラ周りに注力する必要がなくなり、本業にリソースを割けるのも大きな利点でしょう。
24時間365日いつでも日本語サポート対応
AWSのビジネスサポートは、問い合わせ回数の制限もなく、電話やチャット、メールによる問い合わせ対応が利用できます。緊急度別に返答時間の目安が以下のように異なります。
- 緊急度low:24時間(機能要望や質問など)
- 緊急度normal:12時間(開発中の急ぎの問い合わせなど)
- 緊急度high:4時間(重要機能に障害発生など)
- 緊急度urgent:1時間(システム停止など)
ITノウハウのない企業も自社でアプリ開発可能
AWSの提供するAmplifyというフレームワークを活用すれば、バックエンドのリソース構築・データベース・認証・API・ストレージなどを簡単に設定できます。開発者は開発以外のことに労力を割かずに、アプリケーションの機能の開発に注力可能です。あわせてユーザー管理を簡素化するCognitoの活用で、認証システムを構築する必要がありません。
AWSでアプリ開発する際の注意点
予算を思いがけず超えたり、使えるサービスに気づかず無駄に開発してしまうリスクを避けるため次に留意してください。まずはどのようなサービスがあるかリサーチすることです。また、どのくらいの費用がかかるか、公式ツールを使い事前にチェックしておきましょう。
そのほか、外部APIへの接続が必要な場合は、追加で開発作業が必要になるケースもあります。AmplifyはAWSに特化したシステムですから、外部連携などする際はAWS開発を得意とする企業に委託するのもおすすめです。
AWSでできること|身近なアプリ開発4つの事例
AWSで何ができるか、身近にある4つのアプリ開発事例をチェックしてみましょう。
- PayPay
- Super Mario Run|Nintendoスマホアプリ
- GREE|ソーシャルゲームプラットフォーム
- スシローアプリ|あきんどスシロー
PayPay
PayPayでは「できるだけ早くローンチする」目標を実現するため、インフラ基盤にAWSを採用しました。結果開発決定から3ヶ月でのリリースを実現し、他社を大きく引き離し、スマホ決済サービスとして広く活用されるまでにシェアを獲得しました。
少しの遅れが市場シェアに及ぼす影響は大きいこともあり、現在のPayPayの普及率はAWSに支えられているといっても過言ではないでしょう。
Super Mario Run|Nintendoスマホアプリ
任天堂の「Super Mario Run(スーパーマリオラン)」も、AWSをインフラに活用した開発事例の1つです。こちらはネイティブアプリの1つとして配信開始から4日間で、4,000万ダウンロードを実現した人気アプリです。150か国に同時リリースすることは、大きなチャレンジでもありました。
あわせて多くのアクセスに耐えうるインフラを短期構築すること、個人情報保護も各国ごとに規制対応することが課題でした。このため、高い拡張性と強固なセキュリティを誇るAWSの採用で、全世界一斉リリースを無事乗り越えた事例です。
GREE|ソーシャルゲームプラットフォーム
ソーシャルゲームプラットフォームGREEを運営する株式会社グリーは、数千台に及ぶ自社サーバーをAWSに1年で移行しました。あわせてインフラ調達時間とコスト削減にと20以上のAWSサービスを導入し、目標を達成しています。
500名というエンジニアすべてがAWS導入による業務フローを理解し、的確に運用できるよう計ったことも成功のポイントでしょう。
スシローアプリ|あきんどスシロー
スシローはAWSの先進ユーザーです。レーンに流すネタの量を適正に保つため、40億件を超えるデータの分析が必要と考えAWSを導入しました。自社対応するには高額になるサーバーコストが大きな障壁でした。AWSを利用すれば、わずかなコストで必要なデータ分析が可能になる柔軟性に目をつけ、成功した事例です。
そのほかにも消費者が使用するネイティブアプリ「スシローアプリ」にもAWSを活用し、業務効率化とコスト最適化を同時に実現しています。
AWSのアプリ開発7つの手順
AWSを活用し初歩的なアプリ開発の、7つの手順を解説します。
- AWSアカウント作成~初期設定
- AWSマネジメントコントロールの利用開始
- AWS Amplifyでアプリ作成
- AWS Lambdaで関数(機能)の作りこみ
- Amazon API Gatewayで関数とアプリをリンク
- Amazon DynamoDBでデータテーブル作成
- アプリからAPIの呼び出し設定
AWSアカウント作成~初期設定
無料アカウント作成ページにアクセスし、アカウントを作成しましょう。続いて、画面の流れにそってルートユーザーのパスワード設定、連絡先や支払い方法を設定します。本人確認と利用プランを選択し、初期設定が完了します。
AWSマネジメントコントロールの利用開始
使いたいAWSサービスにアクセスするなどする管理画面が、AWSマネジメントコントロールです。「Service」と表示されている部分の横の検索ボックス(画像の4)で、サービスを調べられます。200以上のサービスが提供されているので、検索ボックスを活用してスムーズに利用したいサービスを見つけましょう。
AWS初心者の方はAWSダッシュボードウィジェットも活用してください。ウィジェットでは、AWSをどう活用するか、サービスコストの概要、などとあわせ使い初めに役立つウィジェットも確認できます。
AWS Amplifyでアプリ作成
AWS Amplifyで必要なバックエンドリソースや機能選択などを行います。また、任意のテキストエディタで作成したhtmlファイルから、静的リソースのデプロイが可能です。AWS Amplifyは以下の3つの機能があります。
- Amplify CLI:コマンドラインで直感的な操作ができ、各種設定を行うもの
- Amplify Framework:迅速な開発をサポートするオープンソースフレームワーク
- Amplify Console:静的Webサイト・SPA開発・デプロイ・ホスティング
AWS Amplifyは開発者がアプリ開発に注力するため開発された、フルスタック開発フレームワークです。開発に付随して行うAPIやデータベース、認証やバックエンドリソースを簡単に設定できます。AWS AmplifyはJavaScriptのバグが発生しやすい課題を解消するため開発された、Typescriptで定義されます。Typescriptはコンパイルすると自動的にJavaScriptコードに変換されるので、互換性の高さが特徴です。
AWS Amplifyコンソールから各種設定やデプロイが簡単に行えます。手順を詳しく知りたい場合は公式ページでチュートリアルを参照してください。
AWS Lambdaで関数(機能)の作りこみ
AWS LambdaはサーバーレスのFaaSサービスです。自動スケーリングによりイベント数に関係なく、安定的にイベントに応じたコード(関数)の実行が可能です。AWS Amplifyで作成したものと同一リージョンに関数を定義し利用します。
Pythonなど外部ライブラリを利用する場合は、レイヤ機能を使えます。レイヤ機能で取り込んだ外部ライブラリを、AWS Lambdaで作成した関数から呼び出し実行可能です。
Amazon API Gatewayで関数とアプリをリンク
Amazon API Gatewayは、効果的なAPIの作成・管理を行うツールです。AWS Amplifyで作成したアプリと、AWS Lambdaで作成した関数をルーティングします。
おもに以下の機能があります。
- API作成
- APIレスポンスの監視・モニタリング
- 認証
- バージョン管理
- インフラ運用・管理
コンソール画面操作は直感的に操作できるよう、簡単で分かりやすく作られています。公式ページで20分ほどで完了できる演習が解説されていますので、こちらも参考にしてください。
Amazon DynamoDBでデータテーブル作成
Amazon DynamoDBを使い、アプリで使用するデータテーブルを作成します。Amazon DynamoDBはNoSQLで、データの永続的に保管し、高速かつ柔軟なデータベースサービスです。NoSQLとは、SQLだけでなく、さまざまな言語やインターフェースで利用できるデータベースを指します。
Amazon DynamoDBでアクセス許可を設定すると、作成したアプリ・関数からデータベースへのアクセスが可能になります。
アプリからAPIの呼び出し設定
最後に行うのが作成したアプリやAPIの呼び出しを行うよう、アプリのソースコードを変更する手順です。これによりアプリ・関数・API・データベースのすべてがつながり、作成したアプリが実行可能な状態になります。
AWSで初心者でも簡単にサーバーレスアプリを開発できる
AWSは直感的な操作で、初心者でもサーバーレスで安定稼働するアプリの開発が行えます。Webアプリ、ネイティブアプリどちらにも対応でき、自社サーバーも不要なため、今後も多くの企業で採択されるのではないでしょうか。
Webサービス全般的に、他社より圧倒的に早く、UXに優れたものをリリースすることが自社製品のシェア率向上に大きく寄与します。細かな作りこみや外部連携など必要な場合には、自社内製にこだわるよりAWSでの開発に長けた企業に委託するのをおすすめします。
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