ISO9001とは?認証取得までの流れやメリットなどを解説
公開日:2023.11.23 最終更新日:2023.11.23
商品やサービスの品質管理を高めるために、ISO9001の取得を検討している企業もあるでしょう。ISO9001を取得すれば国際基準の品質管理であることを証明でき、信用力やブランド力の向上につながります。
本記事ではISO9001を取得するメリットや注意点、認証までの流れを解説します。取得を検討している企業の担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
ISO9001とは?
ISO9001とは国際標準化機構(International Organization for Standardization)が定めた、品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
ISO認証の種類はさまざまですが、ISO9001はおもに顧客満足に関する規格を証明するものとして制定されています。そのためISO9001の最終目標は顧客満足の達成となっており、求められる要求事項も顧客満足に関するものが中心です。
では、ISO9001の要求事項と品質マネジメントについて詳しく見ていきましょう。
ISO9001の要求事項と品質マネジメント
ISO9001の要求事項は、以下の10項目で規定されています。
項目 | 概要 |
適用範囲 | ISOの適用範囲について |
引用規格 | 規格適合に不可欠な文書の参照について |
用語及び定義 | 規格に適合される用語と定義について |
組織の状況 | 目標設定や達成に向けた課題について |
リーダーシップ | トップマネジメントの管理について |
計画 | PDCAサイクル(Pに該当)の制作について |
支援 | 内部資源の活用について |
運用 | 組織運営のための管理方法について |
パフォーマンス評価 | 組織を客観的に評価する際の判断基準について |
改善 | システムの継続または改定する際の判断基準について |
また各章での要求事項は、品質マネジメントの基本となる下記7つの原則に基づいています。
項目 | 概要 |
顧客重視 | 顧客満足度の向上に努めること |
リーダーシップ | リーダーは組織の目的及び目指す方向を一致させ、成長へと導くこと |
人々の積極的参加 | 力量を備えた積極的な人物へ権限を与えること |
プロセスアプローチ | PDCAサイクルを回しマネジメントするここと |
改善 | 必要に応じて課題を改善し成長へとつなげること |
客観的事実に基づく意思決定 | 数値に基づく分析と評価で最終的に判断すること |
関係性管理 | 利害関係者とよりよい協力関係を構築すること |
ISO9001の認証審査では、上記の要求事項に1つでも欠けていると不適合と判断されます。マネジメントシステムの構築だけで非常に手間がかかるため、簡単には取得できません。では、実際に国内ではどれくらいの企業がISO9001を取得しているのでしょうか。
ISO9001の取得企業数と有名企業
ISO9001の認証企業取得数は、2023年8月時点でおよそ22,000件あります。おもな有名企業は以下のとおりです。
企業名 | 業種 |
東急建設株式会社 | 建設業 |
株式会社安川電機 | 電気機器製造業 |
トヨタ自動車株式会社 | 自動車製造業 |
味の素株式会社 | 食品製造業 |
イオン株式会社 | 小売業 |
ISO9001は商品やサービスの品質向上に関する規格のため、製造業や建設業や製造業といったモノづくりを中心とした業界で多く取得されています。
とはいえ、ISO9001の目標は顧客満足の向上です。製造業や建設業だけではなく、さまざまな業界で活躍できる規格と言えるでしょう。
ISO認証をやめた企業はある?
ISO認証は取得に膨大な手間がかかる上に、取得後も維持審査や定期審査への対応が求められます。そのため、ISO認証を返上する企業があるのも事実です。
- 書類作成に手間がかかる
- 更新費用が高い
- 規格要求に沿った運営が維持できない
- 取得後にメリットを得られなかった
- 維持する必要がなくなった など
上記のような理由が重なり、ISO認証を返上したり、取得しない企業が見られます。
ただしISO認証を返上した場合、再度取得するためにはマネジメントを再構築し、審査を受け直さなければいけません。
また第三者機関によるチェック体制がなくなることで、運用体制に支障が生じる可能性もあるでしょう。返上する場合はそのようなデメリットも考慮し、慎重な判断が必要です。
ISO9001を取得するメリット
ISO9001を取得するメリットは、以下の3つです。
- 生産性が向上する
- 信頼性が向上する
- 新規取引先の拡大につながる
それぞれ詳しく解説します。
生産性が向上する
ISO9001は商品やサービスの品質向上に関する規格のため、取得することで生産性が向上する可能性があります。
ISO認証を取得するためには、要求事項を漏れなく満たさなければなりません。そのためマネジメントシステムを構築する過程において、多くの改善点が見つかるはずです。ISO取得の準備を整えることで、業務の無駄が減り生産性の向上につながります。
信頼性が向上する
ISO認証は、企業の信頼性の向上にもつながります。ISO認証は第三者機関の審査に合格することで、取得できる規格です。
合格するためには製品やサービスの情報をすべて公開しなければならないため、消費者や取引先にクリーンな印象を与えられます。
また消費者や取引先からの評価が上がれば企業のイメージアップにもつながるため、ブランド力を上げたい場合も有効です。
新規取引先の拡大につながる
ISO認証の取得が取引条件となっている場合、取得することで新規取引先の拡大につながります。
とくに海外市場においては、取引条件の1つとなっていることも多くあります。海外展開を視野に入れている製造業などは、取得を検討すべきでしょう。
ISO9001を取得するデメリットや注意点
ISO9001を取得するデメリットや注意点は、次の3つです。
- 書類やマニュアルの準備が大変
- 取得費用がかかる
- 取得後も維持管理が必要
1つずつ解説します。
書類やマニュアルの準備が大変
ISO9001を取得するためには、マネジメントシステムを構築するための書類やマニュアルが必要です。
- 組織図
- プロセスマップ
- 仕様書
- 手順書 など
上記の他にも、生産スケジュールや検査計画といった品質改善につながるような書類も用意します。なお、いずれも日常業務とは別で準備が必要な点にも注意しましょう。
取得費用がかかる
取得費用がかかる点も、デメリットの1つです。費用は業種や組織の規模により異なりますが、目安として30万〜100万円ほどかかります。
またコンサルタント等にサポートを依頼する場合は、別途依頼料も必要です。なお取得後は定期審査があり、審査時には認証取得時の6〜7割ほど費用がかかります。
取得後も維持管理が必要
ISO9001の取得後は、認証維持のためには毎年審査を受ける必要があります。定期審査に備えて準備が必要な上に、審査費用などのランニングコストもかかります。
また取得後の維持管理が原因で、ISO認証を返上するケースも珍しくありません。
ISO認証を取得するまでの流れ
ISO認証を取得するまでの流れは、大まかにわけて以下の通りです。
- プロジェクトの担当者と認証範囲の決定
- 品質マネジメントシステムの構築
- 品質マネジメントシステムの試験運用
- 審査&認証取得
1つずつ解説します。
プロジェクトの担当者と認証範囲の決定
まずはISO取得にあたってのプロジェクトの担当者と、取得する認証範囲を決めます。チームを編成したり、認証を受ける範囲を決めるのがおもな内容です。
チームの編成からキックオフまで、1か月ほどを目安に準備を整えましょう。
要求事項に沿った品質マネジメントシステムの構築
ISO9001の要求事項に沿った、1〜3か月を目安に品質マネジメントシステムを構築します。要求事項が1つでも抜けていると不適合となるため、漏れのないように注意しましょう。
マネジメントシステムの構築で大切なのは、業種や業務内容などに応じ運用に支障のない体制を作ることです。
他社事例などを参考に自社に見合わないマネジメントシステムを構築した場合、適切に運用できず失敗する可能性が高くなります。
品質マネジメントシステムの試験運用
品質マネジメントシステムが構築できたら、3〜4か月ほどの試験運用を設けましょう。
実際に試験運用することで、マニュアルではわからなかった問題点が浮かび上がるはずです。PDCAサイクルを回し、問題なく運用できるまで試行錯誤を繰り返しましょう。
また試験運用後は、内部監査とマネジメントレビューも実施します。指摘事項がなければ、審査機関に申し込みましょう。
審査&認証取得
ISO認証の審査は文書審査と実地審査の2つに分かれており、ともに問題がなければ認証取得となります。
一次審査となる文書審査では、提出された書類がISOの要求事項に沿ったものか確認されます。文書審査で指摘があった場合は、次の現地審査までに改善しておくと良いでしょう。
二次審査の実地審査は、文書審査のおよそ1か月後に実施されます。実際に審査機関の審査員が現地へ赴き、適切な運用ができているかチェックします。
現地審査で指摘があった場合は、期日までに改善報告書の提出が必要です。文書審査および現地審査ともに通過すれば、取得費用を支払い認証取得となります。
まとめ
ISO9001は製品やサービスの品質を適切に管理し、顧客満足度の向上を目的に定められた国際基準の規格です。取得すれば生産性や信頼性が向上し、新規取引先の開拓につながる可能性もあります。
またISO認証を取得するためには、要求事項に沿ったマニュアルの運用と審査の通過が必須です。本記事の内容を参考に流れを理解し、ISO認証取得へと取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
hata