ISOの品質マネジメントシステム(QMS)とは?重要な7原則を解説
公開日:2023.12.16 最終更新日:2023.12.16
国際規格であるISO9001を取得するためには、品質マネジメント(QMS)を正しく理解しなければなりません。
本記事では品質マネジメントの基本的な考え方や、マネジメントシステムを構築する上で重要となる7原則などを解説します。
ISO9001の取得を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
品質マネジメントシステム(QMS)とは?
品質マネジメントシステム(QMS)とは、製品やサービスの品質維持および向上させるためのシステムです。
ISO9001では製造物やサービスの品質を高めるための仕組みが、要求事項に沿って構築されているかをチェックします。品質マネジメントシステムの導入により、PDCAサイクルを回し継続的な改善ができているかがポイントです。
またISO9001の目的は、顧客満足度の向上にあります。そのため製造過程や価格、納期なども重要な指標となっています。
品質マネジメントシステムの重要性
適切な品質マネジメントシステムの導入は、不良品やクレームといった顧客満足度の低下を防ぎます。
品質マネジメントシステムが確立されていない場合、製品やサービスの品質が安定しにくく、不良品や顧客からのクレームが出やすくなります。
さらに製品やサービスの捏造や偽造といった、顧客を騙すような行為も発生しかねません。属人的な対応が習慣化している場合は、こうした事態を防ぐのが難しくなります。
品質マネジメントシステムは製品やサービスの品質を一定に保ち、もし悪意のある従業員がいたとしても品質管理に関与できない体制を構築できるのです。
品質マネジメント7原則
ISO9001の要求事項の中には、品質マネジメントシステムの構築で重要な7原則が組み込まれています。
- 顧客重視
- リーダーシップ
- 人々の積極的参加
- プロセスアプローチ
- 改善
- 客観的事実に基づく意思決定
- 関係性管理
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
顧客重視
顧客重視とは、単に顧客の要求を理解し満たすだけではありません。顧客の期待を超えるための努力を欠かさないことが、顧客満足度を高めるためには重要です。
顧客の要望のままに製品やサービスを提供するだけでは、顧客重視とは言えません。顧客の期待を超えるために、顧客ニーズの把握と製品やサービスの改善を継続しているかどうかがポイントになります。
リーダーシップ
リーダーシップとは組織の目的と方向性を定め、その実現に向けて全従業員を導くことです。
リーダーシップを発揮するためには、まず組織のビジョンやミッション、目標を明確に掲げます。その上で、目標実現へ向け全従業員の理解と協力を得なければなりません。
また従業員のモチベーションを高め、能力を最大限に発揮できるよう環境を整える必要があります。目標実現のための支援も、リーダーシップの重要な役割です。
人々の積極的参加
人々の積極的参加とは、すべての従業員が組織の目的達成のため、積極的に参加することです。
従業員それぞれが組織のビジョンを理解し、自分の役割と責任を認識しなければなりません。
そのためには従業員の意見や提案を尊重し、従業員のモチベーションを高める必要があります。なお、この全員参加の考え方は、品質マネジメントの基本となるものです。
プロセスアプローチ
プロセスアプローチとは、目標達成へ向けた必要プロセスを特定し管理することです。
プロセスアプローチを実践するためには、各プロセスの目標と責任者を明確にします。仕事の流れを細かく分解し、各プロセスで無駄がないか見極めます。
また各プロセスのパフォーマンスを測定および評価できるようにし、維持管理できる体制を整えるのも重要です。
改善
継続的に組織のパフォーマンスを改善することです。問題が起きたから改善するのではなく、常に前進するための鋭意努力がされているかどうかが重要になります。
組織の活動を定期的に評価し、問題点を洗い出します。仮に現状で問題がなくても、時代や条件が変わることで改善が必要なケースも出てくるでしょう。
現状に満足せず、常により良い製品やサービスが提供できないかを考え、効果的な改善策を実施し続けることが重要です。
客観的事実に基づく意思決定
客観的事実に基づく意思決定とは、客観的なデータと情報を基に適切に意思決定していくことです。経験や勘などではなくデータを活用し、確かな根拠のもとマネジメントシステムに改善を加えます。
そのためには意思決定に必要なデータと情報を収集・分析し、その結果を基に判断しなければなりません。さらにその過程を記録し、効果検証することも重要です。
関係性管理
関係性管理とは、利害関係者との関係を構築し維持することです。組織とその利害関係者(ステークホルダー)は、対等かつ平等でなければなりません。
そのためには、組織活動に影響を与える利害関係者の特定と把握が必要があります。利害関係者と供給者がWin-Winの関係を維持することで、顧客満足度の向上につながります。
品質目標を設定する際の注意点
品質目標を設定する際の注意点は、以下の3つです。
- 品質方針と整合性が取れること
- 測定可能であること
- 必要に応じて更新すること
それぞれ詳しく解説します。
品質方針と整合性が取れること
品質目標と品質方針の間には、ズレが生じないようにしましょう。両者は前提として、整合性が取れなければなりません。
品質方針とは、達成可能な品質に対する指針です。目標は目的を達成させるために掲げるものであり、無関係の目標は掲げるべきではありません。
品質マネジメントの場合、最終的な目的は「顧客満足度の向上」です。この品質方針と整合性が取れる目標を設定するのが前提です。
測定可能であること
品質目標は、データで測定可能なものでなければなりません。データに基づき、具体的な数字で管理できるようにしましょう。
たとえば「廃棄率を減らす」のが目標であれば「〇〇%まで減らす」と、数字で設定した方がより効果検証しやすくなります。
必要に応じて更新すること
品質目標は、一定ではなく必要に応じて更新しましょう。時代の流れや変化に伴い、顧客の要求も変化するものです。
これまでは問題なかった目標設定でも、顧客ニーズの変化によりアップデートが求められる場合もあります。
たとえば自動車業界においては一時、軽自動車の低燃費争いが各社で加熱していました。しかし今では燃費競争は落ち着きを見せ、各社違ったアプローチで勝負しています。
時代の流れや変化から顧客ニーズを読み解き、必要に応じて改善を加えることが顧客満足度の向上につながります。
ISO認証でよくある質問
ISO認証でよくある質問を2つ紹介します。
- ISO認証の取得は意味がない?
- ISO9001の取得が多い業種は?
いずれもISO認証を取得するにあたり、把握しておきたい情報です。では、1つずつ解説します。
ISO認証の取得は意味がない?
意味がないことはありませんが、以下のような理由によりISOの取得は意味がないと考える企業があるのも事実です。
- 費用がかかる
- 各種文書やデータ集めが大変
- 認定後の維持審査や定期審査が面倒
また上記とは別に、契約終了に伴いISO認証を維持する必要がなくなったというケースもあります。
ただしISO認証の効果はすぐに出るものではなく、継続的な改善を繰り返すことで徐々に効果が出始めるものです。
さらに1度ISO認証を返上した場合、再取得の際にはマネジメントシステムも新規で構築し直す必要があります。もし返上を検討している企業があれば、返上時のデメリットも考慮し慎重に判断すべきでしょう。
ISO9001の取得が多い業種は?
ISO9001の取得が多い業種は、おもに以下の通りです。
- 製造業
- 建設業
- 学術研究・専門・技術サービス業
- 情報通信業
- 運輸・郵便業
- 電気・ガス・熱供給・水道業
- 鉱業・採石業 など
ISO9001は品質マネジメントの規格です。そのため、関係性の深い製造業や建設業などで取得が多く見られます。
とはいえ、ISO9001の目的は「顧客満足度の向上」にあるため、決して製造業向けの規格ではありません。多くの業種にて適用可能な規格だと言えるでしょう。
まとめ:QMSの概要を理解し適切に設定しましょう
品質マネジメントシステム(QMS)とは、製品やサービスの品質の維持および向上させるためのシステムを指し、ISO9001における要求事項で基本となる考え方でもあります。
また品質マネジメントシステムはISO9001の要求事項に記載される品質マネジメント7原則に基づき、適切に設定しなければなりません。
品質目標を設定する際には、品質方針との整合性を合わせ測定可能な目標を設定し、必要に応じて更新することが重要です。
この記事を書いた人
hata