ISOの更新審査はどう対策する?維持審査との違いやポイントを解説
公開日:2023.12.16 最終更新日:2023.12.16
ISO認証は取得したら終わりではありません。認証を維持するためには維持審査と更新審査の2つの定期審査を受審します。
審査ではおもにマネジメントシステムの運用が適切に維持できているかを確認され、問題があれば期日までの是正が必要です。
そこで本記事はISOの定期審査について、維持審査と更新審査の違いや受かるためのポイントを解説します。定期審査をスムーズに終えるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
ISOの更新審査とは?
更新審査とは、ISO9001や14001といったマネジメントシステム認証を登録してから3年毎に実施される審査です。
マネジメントシステム認証がその場しのぎのものではなく、3年後も継続的に実施されているかをチェックするために実施されます。
3年も経過すれば取得した当初と違い、さまざまな問題点が生じる場合もあるでしょう。更新審査はそういった課題についても、対処できているかチェックされます。
更新審査と維持審査の違い
ISOの定期審査には更新審査の他にもう1つ、維持審査があります。維持審査は更新審査と違い、前回からの運用状況の確認がメインです。1年または半年に1回の頻度で実施され、マネジメントシステムのメインとなる部分だけを抜き出し審査します。
一方、更新審査ではマネジメントシステムの全体を細かくチェックします。維持審査で指摘箇所は、指定期日までの是正が必要です。
また更新審査で指摘箇所があった場合、同様に、指定期日までの是正を求められます。期日までに是正できなければ有効期限切れとなり、認証を維持できなくなります。
更新審査・維持審査で落ちるケース
更新審査・維持審査で落ちるケースは、以下の通りです。
- 審査費用の未払い
- 内部監査やマネジメントレビューの未実施
- 期限内に指摘箇所の是正ができない
定期審査で不適合箇所があっても、適切に是正すれば認証を維持できます。そのため基本的に審査に「落ちる」という概念はありません。
ただし上記の4つのケースに該当する場合は、認証を更新できないため有効期限切れとなります。では、それぞれケースを詳しく解説します。
審査費用の未払い
ISO認証は更新時にも審査費用がかかります。何らかの事情で審査費用が未納となれば、当然ながら認証を維持できません。なお費用は一律ではなく、業種や規模により異なります。
また審査地が遠方の場合は、審査員の交通費や宿泊費も別途必要です。さらにコンサルタントにサポートを依頼する場合も、依頼料が発生します。
内部監査やマネジメントレビューの未実施
定期審査では、内部監査とマネジメントレビューの内容が必ず確認されます。内部監査とマネジメントレビューは、システムを運用する上で必ず実施しなければいけません。
もし何らかの事情で内部監査とマネジメントレビューが実施できない場合は、更新を維持できず新規取得からやり直しになると考えておきましょう。
期限内に指摘箇所の是正ができない
期限内に指摘箇所の是正ができない場合も、認証を維持できません。
ISOの更新審査にてまったく指摘が出ないというケースは、ほとんどありません。必ず何かしらの指摘が出ると考えておくべきです。
大切なのは指摘された後の対応です。期日までに是正処置さえ取れば、いくら指摘を受けたとしても、問題なく有効期限を更新できます。
ただしその場しのぎの対応をしてしまうと、次回の定期審査時で再び苦労することになります。原因を分析し、根本から問題を解決するようにしましょう。
ISOの更新審査・維持審査で受かるためのポイント
ISOの更新審査・維持審査で受かるためのポイントは、次の2つです。
- 前回の認証審査以降の状況を確認しておく
- 最新の規格要求事項を把握しておく
1つずつ詳しく解説します。
前回の認証審査以降の状況を確認しておく
前回の認証審査以降の状況は、必ず確認しておきましょう。維持審査では前回からの運用記録が、更新審査では3年間分の運用記録がチェックされます。
なおここで必要な運用記録とは、以下のような文書のことです。
- 内部監査記録
- マネジメントレビュー記録
- 目標管理記録
- 作業記録
- 教育記録 など
上記のような記録をもとに、前回審査以降からどう状況が変化したかを把握しておきましょう。
ただし当日の審査では、全ての運用記録を審査員に提示する必要はありません。審査員の要望に応じて、必要な記録を都度提示できるようにしておけば十分です。
最新の規格要求事項を把握しておく
ISOの最新の規格要求事項は、必ず確認しておきましょう。ISO規格は時代の流れや変化に伴い、規格要求事項も変わることがあります。
たとえばもっともポピュラーなISO9001は、経済や技術の変化に伴い初版発行後から4回にわたって改丁されています。頻繁に改丁される訳ではありませんが、最新の規格要求事項は確認しておくようにしましょう。
ISOの更新審査でよくある質問
ISOの更新審査でよくある質問を、3つ紹介します。
- ISOの更新審査にかかる費用は?
- 維持審査を基準日までに受けないとどうなる?
- ISO認証を更新しない場合のデメリットは?
いずれも審査を受ける上では、把握しておきたい項目です。では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ISOの更新審査にかかる費用は?
ISOの更新審査にかかる費用は、一律ではありません。企業の規模により変動しており、維持審査なら新規取得時の3割ほど、更新審査なら6割ほどかかります。
(例)ISO認証取得の費用目安
初回取得時 | 維持審査 | 更新審査 |
100万円 | 30万円程度 | 60万円程度 |
※企業規模や業種により異なる
また上記の費用に加え、審査員の宿泊費や交通費、コンサルタントへの依頼料(サポートを受ける場合)などが別途必要です。
維持審査を基準日までに受けないとどうなる?
維持審査は基準日の前後1か月での受審が必要です。そのため万が一、基準日が過ぎたとしても審査日を調整すれば受審できます。
ただし予備日が用意される訳ではないため、基準日を2ヶ月も3ヶ月も過ぎての受審は不可能です。そのため、多くの企業では基準日より早めに日程を調整しています。
基本的には基準日より前に受審日を設定し、万が一都合がつかない際には基準日以降に設定するという方法が無難でしょう。
ISO認証を更新しない場合のデメリットは?
ISO認証を更新しない場合のデメリットには、以下のようなものがあります。
- 取引の難易度が上がる
- 再認証取得時の負担が増える
- 内部監査が機能しなくなる
- 第三者によるチェックがなくなる など
とくに海外取引を視野に入れている企業は、ISO認証を取りやめることで取引の難易度が上がる可能性があるため注意が必要です。
海外企業の多くは、国際基準であるISO認証を取引条件として含んでいるためです。ISO認証を更新しないことで、海外企業と取引できなくなる可能性があります。
まとめ:事前に対策を講じて審査に望みましょう
ISO認証は取得後も、毎年審査が実施されます。取得の翌年と2年後には維持審査の、3年後には更新審査の受審が必要です。
基本的に維持審査も更新審査も、指摘事項に対し適切に対処すれば問題ありません。ただし指摘事項を放置したり、審査費用が未納の場合は更新できないため注意しましょう。
更新審査を問題なく進めるためには、最新の規格要求事項を把握し、前回の認証審査からの記録を整備しておくことが重要です。
本記事の内容を参考に対策し、ISOの更新審査をスムーズに乗り切りましょう。
この記事を書いた人
hata