Pythonを使ってアプリ開発!手順や作れるツールを分かりやすく解説
公開日:2024.09.25 最終更新日:2024.09.25
Pythonは、データ分析やAI開発の分野で人気が高いプログラミング言語です。一方、アプリ開発にも広く使われていることはご存知でしょうか。
Pythonは、アプリ開発に便利なライブラリやフレームワークが豊富です。そのため、GUIを必要とするスマホアプリなどの開発も容易に行えます。
この記事では、Pythonが向いているアプリの種類や開発の流れを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
Pythonとは?
Pythonは、データ分析やAI開発の用途で人気が高いプログラミング言語です。ライブラリが豊富で、汎用性が高いため、アプリ開発でもよく利用されています。
また、記法がシンプルで理解しやすいことから、プログラミング初心者にも人気です。Web上に情報も多く、比較的学習ハードルが低い言語です。電卓などの簡易的なアプリであれば、Pythonを少し学習すれば誰でも作れるでしょう。
アプリ開発にPythonがおすすめな理由
Pythonは、下記3つの特徴からアプリ開発と相性がよいです。
- 文法がシンプル
- ライブラリが豊富
- 実行環境を問わない
事前にPythonの特徴を理解しておけば、プログラムを簡略化し、効率よくアプリを開発できます。それぞれ詳しく解説します。
文法がシンプル
Pythonでは、比較的英語に近い文法が採用されています。そのため、初めてコードを読む人でも感覚で理解できることが多く、構造を把握しやすいです。記号の使用も最低限に留められているため、JavaScriptなどにありがちな「;」の付け忘れによるトラブルも防げるでしょう。
またPythonはコーディング規約が細かく定められています。同じプログラムを作る場合、誰が書いても同じようなコードになるため、チームでの開発もスムーズに進められます。
ライブラリが豊富
Pythonは、ライブラリが豊富な言語として有名です。ライブラリとは、特定の目的のために機能をまとめたパッケージのことです。アプリ開発に便利な機能があらかじめ用意されているため、プログラミングを効率化できます。
中でも、AI系のライブラリはほかの言語と比べて群を抜いて多いです。現代需要が増えているAIサービスの開発も、スムーズに行えます。
実行環境を問わない
通常、アプリはOSの仕様に合わせて記述や言語を変える必要があります。しかしPythonは、OSに関係なく実行できるプログラミング言語です。そのためプログラムを1つ作れば、下記のようなあらゆる環境で動かせます。
- macOS
- Windows
- Android OS
- iOS
- Linux
通常アプリの対応デバイスを増やすと、工数が増えるため費用も高くなります。Pythonで開発すれば、デバイスごとの仕様を考えなくて済むため、比較的安価に開発できるでしょう。
Pythonでアプリ開発を行うデメリット
Pythonを使ったアプリ開発には、下記のようなデメリットもあります。
- 日本語の情報が少ない
- 実行速度が遅い
アプリの仕様上致命的になる場合、別の言語を選択したほうがよいケースもあります。そのため、必ずデメリットを理解しておきましょう。
日本語の情報が少ない
Pythonは、オランダ人のプログラマーによって開発されたプログラミング言語です。そのため、公式ドキュメントに日本語の情報が少ない傾向にあります。
メジャーなライブラリであれば、Web上に日本語の情報も溢れていますが、マイナーなものは自分で和訳するしかありません。しかし苦労して解読した結果、ほかの言語を使ったほうが早かったというケースも多いです。すぐに解決策が見出せない場合はPythonの利用は避けたほうがよいでしょう。
実行速度が遅い
Pythonは、インタプリタ型のプログラミング言語です。プログラムを実行する際に、コードを1行ずつ解釈し実行するため、動作が遅くなります。実行速度が使用感に直結するアプリを作る際は、C言語やJavaなどのコンパイル型の言語で開発するのがおすすめです。
しかし、インタプリタ型の言語にはエラー箇所を特定しやすいという特徴もあります。そのため、頻繁に修正が発生するスマホアプリやWebアプリの開発には、Pythonが向いているといえるでしょう。
Pythonが向いているアプリ
開発にPythonが適しているアプリは、下記の2つです。
- スマホアプリ
- Webアプリ
向いている理由を理解することで、効率的にアプリ開発を進められます。
スマホアプリ
Pythonには、「Kivy(キビー)」と呼ばれる、スマホアプリの開発と相性がよいオープンソースライブラリが用意されています。Kivyとは、GUIアプリ開発に特化したライブラリで、iOSとAndroid OSの両方で動作するアプリを効率的に開発可能です。Kivyを利用すればタッチパネルへの対応が容易になり、初心者でも簡単にスマホアプリを制作できます。
ただし、まだ日本語の情報が少なく、複雑な機能は実装しにくいなどのデメリットもあります。そのため、中長期的に運用する前提でアプリを開発する場合は、SwiftやJava、Kotlinなどで開発するのがおすすめです。
Webアプリ
Pythonには、Webアプリの開発に向いているライブラリが豊富です。代表的なライブラリは、下記のとおりです。
- Django(ジャンゴ)
- Tornado(トルネード)
- Flask(フラスク)
- Bottle(ボトル)
中でもDjangoは、Webアプリのフルスタック開発を支えるために制作されたライブラリです。利便性と汎用性が群を抜いています。シンプルなプログラムであれば、数分で開発できるほど便利なメソッドなどが用意されているため、さまざまなWebアプリの開発に使用されています。
Pythonが向いていないアプリ
下記2つのアプリはPythonでの開発に向いていません。
- ゲームアプリ
- デスクトップアプリ
作れないわけではないですが、ほかの言語を使用したほうが適切なケースが多いです。理由を詳しく解説します。
ゲームアプリ
Pythonは実行速度が遅い言語です。そのため、データの通信量が多いゲームの開発には向いていません。たとえばアクションやシューティングは、大量の映像データと入力信号を同時に処理する必要があります。処理が追いつかなくなり、ラグが生まれやすくなることから、ゲームの品質が低下しやすいです。
そのため、ゲームアプリの開発にはCやC#、C++などのC系言語が使われることが一般的です。ただし、ノベルゲームなど複雑な処理が不要なゲームは、Pythonで開発されることもあります。
デスクトップアプリ
デスクトップアプリとは、パッケージをダウンロードし、PCにインストールして使用するアプリのことです。Pythonでの開発も可能ですが、下記のような言語のほうが向いています。
- Java
- C#
- C++
- Node.js(JavaScript)
上記の言語は、デスクトップアプリの開発に特化したフレームワークや環境が用意されているため、効率的に作業できます。一方Pythonの得意領域は自動化であるため、同様の環境がありません。そのため、あえてPythonで開発する必要はないでしょう。
Pythonを使ったアプリ開発の手順
Pythonを使ったアプリ開発は、下記の手順で行います。
- Pythonのインストール
- 開発環境の構築
- ライブラリをインストール
- プログラミング
- パッケージング
- テスト・ストア申請
- 公開
ただし、具体的な方法は開発に使うPC(OS)やアプリの種類によって異なります。以下では、Android OS用のアプリをWindowsのPCで開発するケースを例に、手順を解説します。
Pythonのインストール
WindowsのPCには、Pythonがインストールされていません。そのため、公式サイトからPythonをインストールします。
その際、できるだけ新しいバージョンをインストールするようにしてください。2024年9月現在、Windows11で動作する最新バージョンは「Python 3.11.10」です。ただし、OSが古いと動作しないおそれもあるため、事前に互換性を確認しましょう。
開発環境の構築
次に、開発環境を構築します。開発環境とは、プログラミングに必要なソフトウェアを1つに統合したものです。PCにインストールするソフトウェアは、下記の3つです。
ソフトウェア | 役割 |
エディター | コードの記述・編集・実行 |
デバッガ | デバッグ(エラーやバグの発見)の効率化 |
バージョン管理ツール | プログラムのバージョン管理 |
エディターはMicrosoft社が提供している「Visual Studio Code(VSコード)」がおすすめです。無料で使え、Pythonでの開発向けのプラグインが豊富なことから、プログラミングを効率化できます。また、VSコードにはデバッガが標準搭載されているため、環境構築に必要な作業を1つ減らせます。
バージョン管理ツールは、さまざまな選択肢がありますが「pyenv」と「venv」の組み合わせがシンプルでおすすめです。開発環境が構築できたら、一度コードを書いて動作するか確認してみましょう。
ライブラリをインストール
環境を構築できたら、必要なライブラリをPCにインストールします。今回はAndroid OSの開発と相性がよい「Kivy」を以下の流れでインストールします。
- 「コマンドプロンプト」を管理者として実行
- 下記のコードを記述し、実行する
pip install kivy
簡単なコードでKivyの動作を確認し、問題なければ開発の準備は完了です。
プログラミング
エディターを開き、Kivyを用いてPythonでプログラミングしていきます。Android端末はポインティングデバイスであるため、GUIとして機能させる仕様が必要です。
必要なボタンやラベル、ウィンドウを、Kivyの独自言語である「kv」を用いてコーディングしていきます。その際、Pythonのファイル(.py)とKivyのファイル(.kv)は、同じフォルダ内に保存する必要があります。Kivyの公式サイトを参考にしながら、詳細なGUIの作成方法を確認しましょう。
テスト
プログラムが完成したら、テストを行い不具合がないか確認を行います。必要なテストは、おもに下記の3つです。
- 単体テスト
- 総合テスト
- システムテスト
テストの際は、プログラム単体から複数システムの連携、包括的な動作確認と、徐々に検証範囲を広げると効率的です。
また、テストの際は、複数人で検証を繰り返すことが大切です。マンパワーでは、見落としが起こりやすくなり、複数回実行することで初めて見つかる不具合もあります。
利用者は想定外の使い方をすることもあります。あらゆる可能性を考慮し、不具合のリスクを潰していきましょう。
パッケージング
パッケージングとは、プログラムをAndroid OSで動作する形式(APK)に変換することです。Kivyを使用してプログラミングした場合、一般的に「Buildozer(ビルドーザー)」というツールを使います。
「Buildozer」に「python-for-android」をインストールし、Androidアプリとしてビルドすれば、パッケージングは完了です。
ストア申請・公開
Google Play Storeでアプリをダウンロードできるようにするには、ストア申請が必要です。アプリのAPKファイルをGoogle Play Consoleにアップロードし、審査に出しましょう。審査期間は特殊なアプリでなければ最大7日と公式に記載がありますが、大半は24〜48時間程度で完了します。
通過したら、アプリを公開できるようになります。公開範囲は下記4つがあるため、目的に応じて設定してください。
リリースの種類 | 公開範囲 |
オープンテスト版 | Google Play Storeの掲載情報から集まったテスターに公開 |
クローズドテスト版 | 選択された限られた人数のテスターに公開 |
内部テスト版 | 公開者が選択した最大100人のテスターに公開 |
製品版 | 選択した国のすべてのGoogle Playユーザーに公開 |
必要に応じてテスト版として公開することで、社外のユーザーのフィードバックを集めることも可能です。問題がなければ、製品版として公開すれば、事前に設定した地域のすべてのGoogle Playユーザーがダウンロードできるようになります。
ただし、アプリは一度リリースしたら終わりではありません。口コミやフィードバックを確認しながら、定期的なアップデートを行い、長く利用されるアプリに成長させましょう。
初心者におすすめなPythonの学習方法
初心者のPython学習に、おすすめの方法は下記の3つです。
- 書籍
- プログラミング学習サイト
- YouTube
なお、いきなりプログラミングスクールに通うのは推奨できません。Pythonに限らず、プログラミングはある程度独学でできるようになるケースも多いです。3つの方法を先に試し、上手くいかなければスクールを検討しましょう。
書籍
Pythonの学習書を使って勉強する方法です。より深い情報が得られる反面、映像がないためイメージが沸きにくいなどのデメリットがあります。
また種類も多いため、書籍選びが重要になります。最初は初学者向けを謳っている書籍からはじめましょう。
プログラミング学習サイト
プログラミング学習サイトは、Web上でプログラミングを学習できるサービスです。動画やスライドなどで作られた教材を見ながら、自分のペースで学習を進められます。
また、Pythonの動作環境をサービス側が用意していることが多いため、初めてプログラミングに触れる方でも気軽に学習を始められます。大半のサービスは無料で試せるため、一度使ってみましょう。
YouTube
YouTubeには、現役のエンジニアが投稿しているPythonの学習動画があります。完全無料で視聴できるため、一度確認してPythonの概要や学習の流れを掴むのがおすすめです。
ただし、動画選びには注意が必要です。誰でも動画を投稿できる特性上、情報が古かったり、正確性に欠けていたりするおそれがあります。なるべく投稿日が新しく、投稿者の信頼性が高い動画を選んで視聴しましょう。
初心者でもPythonで作れるアプリ3選
初心者でも作れる、簡単なPythonアプリを3つ紹介します。
- 電卓ツール
- スクレイピングツール
- ToDoリストツール
電卓ツール
Pythonにはtkinterなど、電卓のGUIを実装するライブラリが豊富です。そのため、複雑なプログラムを自作しなくても簡単にアプリを作れます。
また電卓アプリの開発には、プログラミングの基本である四則演算を多用します。そのため、基礎を身に付けながらツールを作成可能です。
スクレイピングツール
PythonにはBeautifulSoupやrequestsなど、スクレイピング用のライブラリが充実しています。また条件分岐やループ処理など、プログラミングで最初に学習する技術の応用が必要となるため、学習にも最適です。
ただし、Webサイトによってはスクレイピングを禁止していることがあるため、注意が必要です。安易に行うとサーバーに負荷がかかり、Webサイトを一時的に閲覧不可にしてしまうこともあります。ツールの実行は慎重に行いましょう。
ToDoリストツール
リストや辞書は、Pythonの基本データ構造です。そのため、ToDoリストに項目を追加したり、削除・更新したりする機能が簡単に実装できます。また、JSONなどのデータ形式をセットで学習できるため、完成させればプログラミングの幅が広がります。
tkinterやPyQtなどのライブラリを組み合わせれば、GUIの実装も簡単なため、スマホアプリを作る練習にもなるでしょう。
まとめ:Pythonを使ってアプリを開発してみよう!
Pythonは、アプリ開発に便利なライブラリが豊富なプログラミング言語です。そのため、初心者でも比較的簡単にアプリを開発できます。
しかし、ゲームなどの複雑な処理を必要とするアプリには実行速度が遅いPythonは向いていません。この記事を参考にPythonの特徴を理解したうえで、スマホアプリやWebアプリを作ってみましょう。
この記事を書いた人
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