食品衛生法で義務化されているHACCPとは
公開日:2019.11.01 最終更新日:2021.08.13
食品を扱う業種の事業者様は、HACCP(ハサップ)という言葉を聞いたことはありませんか?
実は、2021年6月までに飲食店を含む全ての食品事業者に対して導入の義務化がされている国際規格なのです。
そのため、まずはHACCPとは何か? という基礎的な部分を正しく理解しておきましょう!
今回は、HACCPの概要とともに、取得が義務化される理由を詳しく解説していきます。
食品関連の事業者様は、ぜひ最後までお読みください。
HACCPとは?
HACCPとは、原料の受入から食品の製造までの各工程における、食品の衛生や安全を確実に管理するための手法です。
Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとり、このように呼ばれています。
Hazard Analysisとは「危険分析」、Critical Control Pointは「重要な管理点」を意味します。
感染症や食中毒といった健康被害を未然に防ぐことを目的としています。
具体的な内容としては、まず健康被害の要因となる、微生物や異物の混入がどの段階で起こり得るか?ということを分析します。
分析結果に基づき、どの工程でどのような対策を行うか?という具体的な対策方法を定め、これを重要管理点(CCP)といいます。
重要管理点を継続的に監視、および改善を重ねることで、食品の品質と安全が確保できるというわけです。
HACCPの誕生とその性質
HACCPとは本来、宇宙食などの食品の安全性を保つためという目的のもと、NASAを含むアメリカ合衆国の各機関によって1960年代に構想されたものです。
なぜ宇宙食なのかというと、この時代はアポロ計画が進められていたためです。
1963年に国際連合食糧農業機関と世界保健機関によって、食品に関する消費者の健康の保護などを目的とした「コーデックス委員会」が設立されました。
現在に至るまで、HACCPの方式はコーデックス委員会により作成されています。
そして、1973年にアメリカで缶詰食品の製造基準としてHACCPが採用されたのをきっかけに、世界的に普及することとなりました。
従来の衛生管理方法では、出荷段階の製品をランダムにピックアップして検査する「抜き取り調査」が主流でした。
しかし、この方法では当然、ピックアップされていない製品の安全性を確実に保証することはできず、問題のある製品がすり抜けて流通してしまうというデメリットがありました。
しかしHACCPであれば、出荷段階に至るまでのすべての段階が検査対象となり、リスクを未然に防ぐことが目的であるため、製品の品質と安全性が確実に保証できるのです。
HACCPの特徴とは
非常に重要な国際規格であるHACCPには、特に注目すべき3つの特徴があります。
- 7つの原則が定められている
- HACCP認証には様々な種類がある
- 世界中で導入されている
ここからは、HACCPの3つの特徴について、それぞれ詳しく紹介していきます。
特徴①HACCPには7つの原則が定められている
HACCPには、「12の手順」という実行のための細かな手順が定められており、HACCPの導入には12の手順すべてをクリアしなければならないとされています。
さらに、その中でも手順6から12の計7項目は特に重要性が高いため、「HACCPの7原則」と呼ばれています。
なぜ後半の7項目のみピックアップされているのかというと、手順1から5は7原則を実行するための準備について示したものであり、食品の衛生管理に直接的に関わる内容を示しているのが手順6から12の7原則であるためです。
以下に7原則の概要をまとめました。
1.危害要因分析 | 各工程において健康被害の要因になり得るものを分析し、対処方法を挙げる |
2.重要管理点の決定 | 危害要因を除去または低減すべきための、特に重要な工程を決める |
3.管理基準の決定 | 重要管理点が適切に管理されているかを判断するための基準を決める |
4.モニタリング方法の決定 | 重要管理点が適切に管理されているかどうかの確認手段を決める |
5.改善措置の決定 | モニタリングの結果、管理基準を満たしていなかった場合の改善措置を決める |
6.検証方法の設定 | HACCPに基づいた適切な衛生管理が行われているか確認するための検証方法を決める |
7.記録と保存方法の設定 | HACCPを実施した証拠を記録に残す手段を決める |
上記の7原則をきちんと行うことがHACCPに基づいた衛生管理になります。
特徴②HACCP認証には様々な種類がある
「HACCP」は食品の衛生管理の手法ですが、このHACCPがしっかりと機能した組織であることを証明するために「HACCP認証」というものがあります。
今回の法改正で求められているのは、あくまでHACCPという衛生管理手法の導入ですが、認証規格を取得することで、より確実なHACCP運用と社内外への安全性のアピールができるというメリットがあります。
HACCP認証は業界・業種ごとに団体認証や審査機関が複数存在します。
一般的に、経営規模・流通範囲・取り扱っている食品の種類などによって自社にとって適したHACCP認証を取得していきます。
代表的なHACCP認証は下記の3種類です。
- 総合衛生管理製造過程
- 業界団体認証
- 地域認定HACCP
総合衛生管理製造過程
厚生労働省が食品衛生法によって定めているHACCP認証です。
容器包装のレトルト食品など、魚肉練り製品、乳、乳製品、清涼飲料水、食肉製品の6つの製品のみが対象となっています。
業界団体認証
民間団体によるHACCP認証です。団体が指定する特定の業界・業種のみが取得することができます。
地域認定HACCP
各自治体が独自に定めているHACCP認証です。中小企業でも比較的取得がしやすい傾向があります。
特徴③HACCPは世界中で導入されている
世界的な組織が制定していることからもわかるように、HACCPは非常に重要な衛生管理基準で、先進国を中心に義務化または奨励が進んでいます。
2006年、EU(欧州連合)はすべての食品会社にHACCPの導入を義務付けました。
アメリカでも、2011年1月に制定された食品安全強化法により、HACCPをベースとした管理手法の導入が食品会社に課せられました。
欧米にとどまらず、韓国、マレーシア、中国、タイといったアジア諸国においてもHACCPの導入が進んでいます。
HACCPが日本で義務化される背景とは
日本では2018年6月に、食品衛生法が改正されました。
これにより、2021年までにすべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が義務化されました。
参照:厚生労働省HP“食品衛生法の改正について”
日本国内においてHACCPが義務化される背景には、海外との貿易を見越した事情が大きく関係していると考えられます。
日本は2013年にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加表明し、またFTA(自由貿易協定)も各国との交渉が進んでいます。
TPPやFTAにより、将来的に関税障壁がなくなることとなれば、海外からの輸入食品が増えることが考えられます。
輸入食品が増えると、これまで以上に食品の安全性が求められるためHACCPが義務化されたといえます。
また、国際規格であるHACCPに沿った衛生管理のもと食品を製造することで、国産の食品を海外に輸出できる機会が増えることが考えられます。
HACCPとは、世界で導入が進んでいる食品の衛生管理ガイドライン
以上、HACCPとはどういったものなのか、詳しく解説していきました。
HACCPとは、1960年代アメリカでその構想が企てられた、食品の衛生管理のガイドラインの一つです。
日本では2021年6月までに、食品に関わるすべての事業者はHACCPに基づいた食品の衛生管理を行う必要があります。
食品汚染事故を起こさないためにも、できるだけ早くHACCPの導入に努めましょう。
また、より確実な安全性を保証するには、HACCP認証の取得がおすすめです。
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この記事を書いた人
編集部員 濵岸
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